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ジサツのための101の方法  公爵

 虎菱拓司は「灰色」と名付けたノイズを聞くようになる。そのノイズは拓司の中の現実感を喪失させ、妄想と現実の境界はあやふやになり、「現実に生きている」確証を得るため強く死を意識する。やがてそのストレスは拓司の精神を追いつめ、妄想と現実の境界は崩れてゆく。

 夏コミでもらったパンフレットでこのゲームの事を知ったのですが、TacticsのMOON.を思い出させる雰囲気が印象的で、もしかしたらいけるかな?って感じで期待しておりました。で、プレイしてみてプロデューサーがファンロードのK編集長こと銀英社の浜松氏だったことを知ってびっくり。15年前までろーでぃすとだったんで、私。

 それはさておき、音楽はMOON.、ONEのYET11氏。OP、EDはそれぞれタイプは違うが結構好み。折戸氏に比べるとインパクトは弱いがまずまずの感じ。でもBGMよりも効果音というか背景に流れている雑音の方が印象的。
 CGは・・・・原画、CGともうまいとはいえない。はっきりいってこのあたりもMOON.の頃の樋上氏原画のCGと同じ。でもどちらもシナリオと合わさることによりCGにヘボさは気にならなくなり、さらにこのCGじゃないと・・・と思えるようになる。ほめてるんだか、けなしてるんだか・・・(^^;
 それはともかくとして、男のCGがやたら多いです。ほとんど男しか描いてないCGも随分と多いぞ。普通のゲームだと、女の子のCGがメインなんだろうけど、本作では乱闘シーンなどシナリオで動きのあるところなど状況説明的に挿し絵としてCGを入れてあるようなので、男女分け隔てなくCGがあるのかも。

 登場人物はどれも個性的キャラクターでありました。
 義妹の早桃(さもも)は一般的ともいえるロリ系妹キャラですが、シナリオへの登場具合からすると実質的ヒロインといえるかも。後述しますが、受動的ではあるもののシナリオにおいて重要な存在となっています。

 美少女的外観とはうらはらに冷たい視線をもち死を求めるカンナは主人公に影響を与える強いインパクトがあるキャラだったのですが、後半はおとなしく普通の気の強い娘になってしまったのが残念。まぁ、もともとはまともだったということだろうが、もう少しあくが強くてもよかったような。たとえば最後にインパクトの強いところを見せて散ってくれるとか・・・・。とにかく発売前のパンフに書いてあったリストカットの「リス子」というあだ名という設定が登場しなかったのが残念で・・・・。

 それに比べて最初から最後まで強烈な印象を放っていたのが「ムー系少女」なたね。自分が宇宙人にレイプされ、人類は宇宙人の攻撃により絶滅の危機に瀕していると信じて行動するその姿はインパクト大。しかしその背後にあるものはさらに衝撃的である。エンディングはないものの、影のヒロインと言えるかもしれない。

 対して、エンディングがある割にほとんど脇役あつかいなのが紅葉。妹にならぶ「妄想」の要素として設定されたように思える紅葉ではあるが、ほとんど出番無し。その存在はあまりにも中途半端。どうせならはじめから脇役としてシナリオに役割を与えてあげれば良かったのに。

 システムは全画面テキスト表示のノベルADV形式で、通常の立ちキャラCGはなく、イベントCGが背景に入るとき以外はテキストのみというシンプルなもの。選択肢はそこそこあり、選択を間違えると即GameOverあり。逆にエンディングに至る重要な選択肢もあるようですが、いまいちはっきりしない。セーブは随時可能ですが、セーブファイルが少ないのが難点。
 システムとはちょっと違いますが、シナリオで重要と思われるところでは誤った選択で即GameOverとなる問答形式になっていたり、再度テキストを読み返せるようになっていたりして、プレイヤーがシナリオを安易に読み飛ばすことがないようになっているようで、ノベルの手法として興味深かったです。

 さて、本作ですが、私がイメージしたのは先に書いたようにMOON.。MOON.のプロデューサーであったYET11氏が音楽で参加しているってのもあるかもしれないが、精神的強迫観念を持ったヒロイン達が閉塞された空間で精神的に追いつめられる物語や、主人公の位置づけ、MOON.の「花畑」や「謎の少年」に相当するような存在が登場する当たりも似てる。MOON.と同じくエヴァ最終回的なところ(特にラスト前とか)もありますが、この手の話を進めるに当たって避けて通れない道なのかも。オチは違いますけどね。ということで、全編に渡っておとぎ話なので明かされない謎などのない理論整然としたシナリオを求める人にはお勧めできないかも?とくに唐突な展開が多いからねぇ。主人公の設定もちょっと強引だし。

 私としては冒頭からエンディングまでの激しく変わる流れは先の見えない楽しさがあり、イベントもインパクトがあってよかったです。ただエンディングに関してはもうちょっとはっきりした何かを見せて欲しかったかも。というのも、3人のヒロインのエンディングはほとんど同じものであり、実際的に途中で誰のイベントを見るか?という程度の差しかないから。確かに面白い話なんですが、もう少し各ヒロイン独自のエンディングには出来なかったものか。せめてテキストはもう少し変えて欲しかった。
 またエンディングで「おまえが好きだ」って突然、恋愛的流れになってしまうのも違和感あり。無理にヒロインを設定して3つもエンディングをつくるより、主人公だけが救済される、全員救済される、くらいにした方が良かったのでは?あと残すとしたら個人的希望もあるが主人公・妹救済エンドか。

 さらに主人公を拓司に限定することもなかったのではないだろうか。。しかし本作は常に確固たる現実の存在しない誰かの妄想の世界であると思われるため、複数の視点の存在は世界に客観性を与えることになり、本作の世界観が崩壊してしまう。だから、拓司でクリアした後に、本編の世界とは異なる時間軸でプレストーリー、もしくは外伝としてカンナ達の物語を見せるというのはどうか。早い話が、発売前の冊子に載っていたカンナのプレストーリーがもったいないなぁってことなんですがね。もっとカンナや早桃の内面が見てみたかったなぁってことで。

 ところでこのゲームでは、いわゆるSEXというものがほとんど登場しません。そういう点では純愛系ゲーよりも少ないかも。もちろんHシーンが少ないというわけではなく、沢山あるのですがSEXはほとんどない。SEXとは基本的に互いに快楽を得るための行為であるけど、このゲームにおける性行為とは、一方的に相手を貶めるための行為、汚すための行為、道具として扱う行為。それは妄想であり、妄想は相手を汚すことにより精神的快楽を得る。別の見方をすればSEX不可能な2次元キャラへの発情であり、アニメキャラ見ながらオナニーするようなものですか?キャラに萌えるオタクの風刺ともいえるかも。
 その象徴は主人公の義妹である早桃で、オタク的萌えの「妹」という要素でオナペットとされる。「ロリ」で「つるぺたぷにっ娘」の「妹」が制服をブルマを下着を精液で汚される。特に冒頭の妄想はたまらんです。ちょっとヘボいCGも妙に綺麗なCGより妄想的でエロいです。早桃だけで86点あげますよ。個人的な趣味ですが、ビジュアル的表現はないものの精液が痰のようにからみつくドロッとした濃い粘液を想像させるものであり、相手を汚すアイテムとして頻繁に使われているのが印象的。

 とくかく全編妄想というか不思議時空というかおとぎ話であり、現実世界の話ではないと考えるのが一番か。冒頭で自殺した人物の妄想ではないかという説もなるほどと思えます。でもまぁ、そこが現実であろうと夢であろうと妄想であろうと、その場にいる人間にとってはそれが現実な訳でありますが。(01.10.10/01.10.18改訂)

評価:74

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