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堕ちゆく教室  アトリエかぐや

 社会見学で行ったおもちゃ工場で火災に遭い、避難した先は建設途中で放棄された地下ショッピング街。ここに閉じこめられた数十名のクラスメートは数人ずつチームを組んで出口を探すが、クラスのリーダー格である須藤亨が不穏な動きを見せ始め、次々にクラスメートが消えてゆく。唯一の情報源は見学の際に配られた限定使用のPHSだけ。そしてそのPHSの通信機能から行方不明になった女子学生たちが人身売買にかけられていることを知る。主人公達は無事にこの地下街から脱出することは出来るのか。

 このゲームではクラス全員が事件に巻き込まれ脱出を計るので、主人公の親しい友人たち以外のクラスメートも多数登場します。そういうあたり群像劇といえないこともないですが、実際はシナリオが進んでメインヒロインが決まると、関係ないキャラは次々に消えてゆき、最後は主人公とヒロイン、そしてそのライバルに絞られる結果になり、シナリオ自体も細かい違いはあるものの、ほとんど同じ展開になるというのがしょぼい。いろんなタイプのヒロインを用意して、その境遇や主人公との関わりなどを違えても、節目となるイベントがキャラやCGが違うだけで共通というようなゲームがよくありますが、本作もまさにそう。一度目のプレイでは変わった舞台設定も手伝って興味深くプレイすることができましたが、2度目以降ではヒロインが変わっても次の展開、酷いときは台詞まで予測がついてしまい、テキストを読む気にもなれません。とほほ。
 折角、登場人物が多いのだから、それぞれの人物に主人公と直接関係のないエピソードを盛り込み、それを主人公の行動(選択肢)と連動させれば、シナリオに深みが出たのにねぇ。

 ゲームシステムの見所は主人公達が持つPHSで、その機能には電話機能の他に地下街の地図表示と現在位置表示機能、人身売買オークションの情報の3つがあります。これらの機能を使い、情報を集めて地下街からの脱出を図るのですが、実はゲーム的には何の意味もありません。
 移動場所はシナリオの流れで自動的に決まるので地図は意味がありません。オークション情報は女の子の入札価格が出るだけで、プレイヤーが何か出来るというわけでもありませんし、主人公がそれに対して何か行動をとるという訳でもありません。まともに機能しているのはクラスメイトとだけ通話できる限定された電話機能ですが、これもシナリオの流れで使われるだけで、プレーヤーが好きなときにかけられるというものではありません。

 はっきりいって「情報やアイテムを集めて地下から脱出」という古典的アドベンチャーゲーム(もともと冒険・探検ゲームのことですからね、アドベンチャーゲームって)っての期待していたので肩すかしを食ったって感じ。雑誌の紹介でもそれらしい事が書いてあったからねぇ。当初はPHSをもっとメインに据えていたのが諸々の関係で削ったとか、そんなことでしょうか。雑誌の記事と実際のゲームシステムが違うってのは最近よくあることですが・・・。
 もし地図機能を使ってプレイヤーが「北へ行く」とか「広場に行く」とか自由に歩き回れるとか、オークションから情報を集めて捕らわれた女の子達を助けられたり、時間要素をいれて早く行動しないと仲間が犠牲になったりとか、もっとゲーム性があったらねぇ・・・・って、なんかそれってエルフの遺作っぽいね。
 やっぱりシナリオにゲーム性をくわえるではなく、ゲームにシナリオ性をくわえるっていう考え方も持っていないと駄目だということでしょうか。(01.8.28)

評価:58

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