戻る

ちぇりお!  Tactics

 鈴うた以来の娘太丸氏原画ってことで期待していたこのゲーム、システムは1週間のスケジュールを立てて実行するADVとなっています。ただしここでの選択は全くと言っていいほどゲームの進行には影響しません。とりあえずアルバイトで金さえ稼いでいれば問題ないでしょう。ゲーム的に意味がある部分は土曜日放課後の移動場所選択ですが、これも2回目からのプレイでは、基本的にどこに誰がいるのか判るようにマーキングされるので難易度は限りなく低いです。この手の恋愛ADVのほとんどは、オンリープレイでゲームが進行するようなゲーム性の低いものですし、割り切ってしまえばこのくらい簡略化した方がゲーム進行もスムーズになるかもしれません。本作もゲーム期間は4月から12月と長いのですが、1プレイ3時間ほどで終わります。
 さて、ゲームの内容・・・

 先輩であり、実は彼女だったりする日向あきらが遠くの大学に行ってしまって1か月。彼女と一緒の大学目指して受験勉強に励むが、季節の移ろいと共に彼の周りも微妙に変わってきて・・・

 ということで遠距離恋愛ADVって感じなんですが、そういう話ではありませんでした。結論から言っちゃうと、日向あきらの存在は別のヒロインのサブシナリオ的扱いであり、主人公が受験生であることを意味づけるということ程度なようです。そのせいか、あきらの出番は少なく、本人メインのシナリオでさえ登場イベントはかぎりなく少ないです。こういう扱いのヒロインというのは珍しいかもしれませんね。まぁ、彼女については更に珍しい展開もあるのですが・・・。これについてはネタバレになりますので詳しくは書きませんが、クライマックスでのありがちなシナリオに安心していたら、「え、まじでやっちゃてるの?主人公が憤慨するのも仕方ないかも」という展開です。真面目な彼女らしい行動なのかもしれませんが・・・・・・。

 その他のヒロインは4人います。まず主人公の幼なじみで意地っ張りの古雅たつき。鈴うたの七海の流れを組む貧乳暴力キャラです。全体を通しても登場イベントが多く、シナリオ的にも手堅く一番うまくまとまっていますし、個人的に幼なじみネタは好きということで、実質的に彼女がメインヒロインと考えるのがよいです。

 次に、主人公の従妹の杉浦真尋。家事万能で学力優秀、可憐な乙女だが、自己中心で高飛車な態度をとる。うるさいだけの嫌みなキャラと思わせつつ、心とは裏腹な行動で無理をしているのがばればれで可愛い。っていうか最高。なんといっても治癒学生だし。きゃんきゃんうるさいキャラは嫌だという人には勧められませんが、彼女との会話での「みるもーん。ばりばり見ちゃうよ?もうばりばりだよ?」「なに?なんですと?もういっぺんいってごらん!!」というような三段活用のような独特な台詞回しはノリもよく、何度見ても楽しめました。
 ただし、伏線の張り方がわかりにくく、説明不足的なシナリオは×。本作に限らず最近のゲームでよく見かけるのですが、主人公が「そうなんだ」と一人で納得しても、プレイヤーは状況証拠で主人公の考えや行動を理解するしかありません。これはある意味、シナリオライターの独りよがりといっても良いかも。しかし話自体は良いので、もう少しイベントを増やして主人公との過去などを明らかにしてくれるとわかりやすく感情移入もできると思います。

 残り2人は、謎の同級生である八坂悠とドジで童顔な新任教師の天ヶ瀬琳子。どちらもゲーム開始後に主人公と知り合うキャラであり、日向あきらとの絡みも皆無で、おまけシナリオという扱いになると思います。しかし、このシナリオがかなり問題あり。

 このゲームのシナリオライターは2人いまして、あきら・たつき・真尋を他氏、悠・琳子をSAY氏が担当しています。この2人のシナリオは完全に分離していると考えた方がいいかもしれません。まずサブキャラクターも含めて人物相関が分離しています。そして主人公の性格も分離しています(^^;
基本的に本作の主人公はあまり口が良いとはいえず、ちょっと図々しい態度をとるタイプなのですが、他氏のシナリオではもともとヒロインたちと親しい関係ということもあって、普段の激しいやりとりも微笑ましく感じられます。たまに暴走はしますが、他人を傷つけてしまっても自らフォローをしますし、第三者への配慮もある。まぁ、この手のゲームでは一般的なキャラですね。
 対して、SAY氏のシナリオでは、知り合ったばかりの、ましてや先生に見下したような態度をとり、発言は自分勝手で他人への配慮も皆無、屁理屈こねる割に行動が頭の悪いガキといった感じで、プレイしていて不快感というか殺意を抱かせます。たとえばサブキャラである生真面目なクラス委員を毎度おちょくるのですが、あまりに悪意が感じられて笑う場面も不快感しか感じられません。ちょっと毒のある主人公というのは、キャラクター性を高めるスパイスとして有効であり、最近のゲームでもよく見かけますが、成功している例は少ないようです。毒物の取り扱いは慎重に!
 ということで、この主人公の悪さに加えて後半でのシナリオ展開が強引で、悠と琳子のシナリオの評価は最低。メインの3人のシナリオがうまくまとまっていただけに評価が引きずられてしまい残念です。

 残念ついでですが、CGも鈴うたの時に比べて原画の娘太丸氏の色が薄まっているように感じられました。娘太丸氏の独特の雰囲気の絵が好きなので、ある意味一般向けになってしまったのは残念。そして、何よりも魅力的な漢キャラがいないのが残念!っていうか、まともな男キャラが皆無。鈴うたの岡田のようなキャラが一人いれば、雰囲気はもっと明るく楽しい物になったでしょう。(01.2.2)

評価:67

戻る