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思い出アルバム  トラヴェランス

 「桐沢商工」は今では珍しい木造校舎。しかしその木造校舎も取り壊しが決まる。この校舎の最後の卒業生となる主人公は、木造校舎の思い出を残すため「アルバム委員」に立候補する。

 ということで、いわゆる「中学生日記」とか「みんななかよし」といった教育テレビ的内容なんですが、いろんな意味で予想を裏切ってくれるゲームでした。どのへんがどう裏切ってくれたかというとネタバレになっちゃうのですが。

 とりあえずあたりさわりのないシステムの話からすると、ゲームは毎日昼休みと放課後にどこに行くかの選択と、各場所で出会ったヒロインに話しかけるかどうかの選択のみで進行するシンプルなADVです。インターフェイスは、30カ所のセーブ、既読・未読のメッセージスキップ、手放しでの自動メッセージ送り機能、既読テキストの再表示など非常に充実しており、プレイするにあたってはストレスは少ないと思います。全体の構成もアルバムづくりというものを意識しており、毎日の変わり目の際にアルバムに貼った写真という形で、その日の印象深いイベントを表示するなど、面白い試みがなされています。

 で、次にシナリオ。アルバム委員を中心に(というか、それ以外の人物はほとんど出てこない)ちょっとした諍いと和解、そして恋愛を描いた、まぁノスタルジックというか、若さ故の過ちというか、青い話となっています。先にも書いたように「中学生日記」ですね、まったく。これのどこが予想を裏切ってくれるかというと、思いの外「ちょっとした諍い」の部分が泥沼化してしまい、特に主人公が前向きにとりくんでいるだけに理不尽さを感じるような展開になります。なんか雰囲気がすご〜くさわやかそうな話に思えただけに落差が激しいんですよねぇ。私は初めの頃は特に意識しないで適当に移動して話を進めていたため、バッドエンド一直線で「なんかこのゲームって実は人間関係がえらく厳しいゲームなんじゃないか?」などと考えちゃいました。
 まぁ、実際の所はちゃんとメモしながらプレイすれば簡単にHappyEndになりますし、ある程度問題が解決すればさわやかな青春まっただなかの展開になるので安心してください。私も真面目にメモしていれば、あんな胃が痛くなるような思いをしなくても済んだのに・・・。とりあえず私の印象としては「殴りあい宇宙(そら)」って感じ。
 あとはちょっとボリューム不足を感じたかな。これは各ヒロイン共通のイベントがかなり多いということが影響しているのかもしれません。ヒロイン独自のイベントは確かに良くできていると思いますが、後半にヒロインが確定してからはもう少し日常部分でも人間関係が変化してヒロイン独自のイベントになっても良かったのではないでしょうか。

 さて、こんな辛い状況にしてくれる登場人物が全員アルバム委員で主人公を含めて5人。まず主人公の子安は木造校舎に特に思い入れがあり、アルバムづくりに意欲的(選択によりまったく意欲的でない行動もとれますが)に取り組もうとしています。次にヒロイン3人。クラス委員長の優等生で融通の利かない堅物の里浜、ソフトボール部キャプテンの男勝りな三崎、地味でおとなしい図書委員の長沢さん。眼鏡っ娘はいません。最後に主人公の親友みなみくん。
 この中で特に重要なのはみなみくんで、いわゆる佐藤「僕たち友達だよね」雅史くん的、独特な雰囲気を持った少年なのですが、彼が当初の印象とは異なり予想を裏切るような行動をしてくれ、さらにシナリオ的にも重要な地位を占めています。実際、辛い人間関係の中で彼の存在はありがたかったですよ、まじで。彼が本当は女だったとかいってHappyEndがあったらうれしいとか本当に思っちゃいましたもの。(実はまだCGが一枚埋まっておらず、その一枚はみなみくんEndなんじゃないかと期待しております)
 みなみ君の次に印象深いのが長沢さんで、非常に女の子らしくいい感じです。彼女も初めの印象とHシーンの差などいろんな面で予想外なところがあり萌え萌え。ジュース飲むシーンとかもいいですねぇ。彼女のシナリオも他の二人に比べてうまくまとまっているように思え、さらに理不尽さを感じさせないところが良かったです。
 ということで、残りの二人はなんか理不尽な思いをさせるキャラとなるわけですが、HappyEndを迎えれば実際はかわいい女の子なんですよ。でもなんかこれまでの展開を考えるとなんか引っかかるものがあるというかなんというか・・・・・。私だけかもしれないですけど。

 グラフィックに関してはキャラの頭が大きめでちょっと手が小さいのが気になるところではありますが、黒目がちな大きな目というのは好みであり、CGも丁寧かつ安定しており良かったと思います。キャラの表情の変化もデフォルメが効果的に使われていました。
 なお、女の子は微乳系(ツルペタではない)というか手のひらにほどよく収まる感じで個人的に非常に良い感じなのですが、文章中では「巨乳・爆乳」とか言われてしまうのには違和感有り。巨乳キャラで他のゲームでは普通となるくらいです。
 乳ついでにHシーンについて書けば、中学生日記的展開からの流れか若さ故の情熱ってのがあふれ出ており、女の子が「好き好き好き好き!!」と連呼したり、とにかく尽くしてくれたりするところがこれまた予想外で良かったですねぇ。

 なんとなく理不尽な思いを残すようなところもあるものの全体として予想を裏切るような展開があり興味深くプレイできたのですが、いくつか気になる点がありました。それはこの物語の発端である「木造校舎」の存在です。木造校舎は主人公と亡き父を結ぶ重要な存在であり、またアルバム委員の仕事は卒業アルバムの作成であると同時に木造校舎の記憶を形にするという重要な役割があります。しかし、その割にいまいち木造校舎の存在感が薄い。
 私も小学生の時に1年間だけ木造校舎で授業を受けたことがあるのですが、木造校舎には木の暖かさ、使い込まれたなめらかな触感、木の節やへこみ、ぎしぎしと音を立てる床、立て付けの悪い窓、古びて汚れたトイレ、古さ、暖かさ、汚さ、不便さ、いろいろな特色があると思います。残念ながらこのゲームでは絵的にもシナリオ的にもその辺の描写は少なかったと感じられました。もっと木造校舎ならではのエピソードというものがあれば、主人公たちにより共感できたと思い、ちょっと残念です。たとえば卒業アルバムといえば写真なわけですし、女の子達と木造校舎のいろんな思い出の場所を写真に撮って廻るというような展開も出来たのではないでしょうか。

 あとこれはあまり関係ない話になりますが、木造校舎にミニスカートってのは何となく違和感があるかも。東京女学館っぽい制服はシンプルながら良いデザインなのですが、都会的なミニとノスタルジックな木造校舎ってのは何となく違うような。昭和40年代が舞台のゲートキーパーズでミニスカートってのと同じくらいに。
 そういえば、木造校舎が舞台のエルフの遺作もヒロイン達は現代的なミニスカートの制服でしたが、あれは木造校舎とミニスカートというミスマッチが非現実感を演出しており逆に良かったと私は思いましたが・・・・・・本作の場合はせめて膝丈くらいにして欲しかった(T_T) (00.10.31)

評価:71

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