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フォークソング  リューノス

 ほとんど小池定路さんの絵で前評判の高かった感のあるフォークソングですが、実際に同様に小池さんがグラフィックを担当した終末の過ごし方からの流れで購入した人も多いようです。まぁ、マニュアルに終末の過ごし方の広告が入ってるくらいだし、かなり意識してるんでしょうね。
 でもどちらもヴィジュアルノベルであり、本筋はテキストのはず。そのテキストを書いている人間がフォークソングと終末の過ごし方とでは違うわけだから同一視するのも変な話なんですけどね。尤も、小池さんの絵あっての作品であることは間違いありませんが(絵だけが売りってわけではなく、絵とテキストの方向性が一致してるという意味でね)。

 CGについては雑誌に紹介されてるクオリティで問題なし。画面の切り替えのエフェクトも凝っていて良いですね。何度もプレイしているとうざったくなることもありますが(^^;
 音楽は落ち着いた感じのクオリティは高いものですが、あんまり印象に残らなかったです。なんか似たような曲ばっかりな気がして、メリハリが無いというか盛り上がりに欠けるというか・・・
 システムはいわゆるヴィジュアルノベルでマルチエンディング。ゲーム開始時に3組のカップルから1つを選び、そのカップルを中心としたシナリオが展開されます。そのときプレイヤーは特定の人物視点ではなく完全に第三者視点であり、途中の選択肢も不特定のキャラの台詞を選択するものです。また途中の選択肢がプレイ回数によって増えますが、一度エンディングを迎えると最初からプレイし直さないとプレイ回数にカウントされないので注意。ちなみに今までに見たイベントのチャートが表示される機能もあります。

 で、問題のシナリオなんですが・・・・・・
 まず内容を簡潔に書くと「感動ではなく共感」をコンセプトにした「田舎町を舞台にした普通の3組のカップルによる普通の恋愛話」です。その3組のカップルは同じ学校の友人グループで、「喧嘩ばかりしてる幼なじみの2人」「ちょっと無愛想な男の子に一目惚れしたけど自分の気持ちをうまく伝えられない女の子」「恋人のいるクールな女の子に惚れている正直者の男の子」となっており、うだうだ悩んで、最後は自分の気持ちに素直になることにより結ばれちゃうみたいな、非常にわかりやすい展開です。いわゆる泣きゲーってやつではなく、「そうだよね」「そんなこともあったよね」といった共感できる話ってことですね。

 さて、8割方プレイしての感想ですが、確かに感動は無かったですね。そのかわり共感できたかというと、どうでしょう。このシナリオはしつこいくらいに「田舎いいとこ」みたいなことを強調していますが、私は生まれ育ちが都市部の下町なので田舎の生活というのにあまり馴染みがないためかもしれません。門前町ではあるので近しい部分もあるのですけどね。まぁ普通の恋愛話でキャラの行動やシナリオ展開が自然というか予想しやすいってのを「共感」とすれば共感してるのかな。

 それにしても話に面白味が無かったと思う。テキストのボリュームはかなりあり、内容的に半年から1年に渡って展開するのですが、季節毎にいくつかのエピソードが描かれるってかんじで、そのエピソードも友達同士の日常会話というか、色恋沙汰の悩みの相談みたいなものがほとんど。なんか事件らしいことが起きてもあっさり片づけられてしまう。「おばあちゃんが入院した!」普通なら20分くらいは粘れるネタも3分くらいで終わりって感じ。そういう事件的なことは舞台のセットというか状況設定であり、メインはやはり日常会話なようです。学生のありきたりな日常風景を切り取ったような青春映画というかドキュメンタリーというか文芸作品というか、なんかそういうイメージですね。

 そんな中で3組目の透と志帆のSLコンビ(^^)は三角関係的な話で面白味もあるものの、HappyEnd以外の展開の選択肢の多くが透のさっぱりした無邪気な性格とは違う気がして違和感を感じました。透って孫悟空みたいで、すごくいいやつなのになぁ。それからHappyEndにしてもHへの流れが不明確なのがもったいない。他のカップルでも違和感を感じる部分もあるのだが、若い二人だからそうなっちゃうのは仕方ないのか?もう少し初々しさみたいなものがあってもいいと思うのだけど。
 あとHappyEndではある程度フォローされていますが、志帆の恋人である久志が基本的に敵役としてしか描かれてないのが残念。そのため志帆が久志を好きな理由もよくわかりません。そういえば、登場するカップルが皆、互いになんで相手を好きなのか本人にも理由がはっきり判っていないようなんですよね。実際の恋愛ってのもそんなもんなんですけど・・・・・・

 その他の気になる点がいくつか。
 まず、テキストの会話部分に

  陽太「やらせろ〜」
  美夏「ふざけんな!」

というように名前がはいるのがうざったい。全体的に台本的なテキストなんですが、ノベルとしては読みにくかったです。第三者視点ってことを強調しているのかな?

 次にプレイするたびに選択肢は増えていくのですが、基本的に同じ話の違う会話とかちょっと違う視点ってだけで、本筋は大して変わらず。つまりマルチエンディングではあるもののマルチシナリオではないってわけで、繰り返し最初からプレイするスタイルなのに何度も同じイベントを見ることになりすぐに飽きがきます。その代わり途中に全く本筋に関係のないカップルのエピソードが挿入されるのですが、単なるH増量剤って感じ。本筋の話の流れが著しく阻害されるので、これはいらないんじゃないの? また総エンディング数や総CG数がわからないため、自分がどこまでクリアしたのかが確認できないのが辛い。

 最後にメインの登場人物が学生(ソフ倫の都合もあるけど、たぶん高校生)なんですが、なんで学生なんでしょうね。学校のシーンは皆無といってもいいですし、冬休み、春休み、夏休みのシーンがほとんどなので制服着ているシーンもほとんどなし。学校の話も象徴的にしか出てこない。絵的にもシナリオ的にも彼らは20歳前後って設定の方が私はしっくりくるのですが。それぞれ店の手伝いしたり役場や工場に勤めたり、仕事もしないでぷらぷらしてたり。この方が話に広がりが出るし、キャラクター性も日常感も強まると思います。ソフ倫の自主規制で面倒なときにわざわざ学生の設定にすることはないでしょうに(^^;
 もし続編がつくられるならば、同じキャラクターで卒業後の話を作ってもらいたいです。というか、本作で後日談まで入れて欲しかったなぁ・・・・・もしかしてコンプするとおまけシナリオが発生するとか?(あったらいいけど)

 これまでのことをまとめると、本作は絵、シナリオ、音楽などを統一コンセプトでまとめた雰囲気ゲーってところかな? 個人的にはドラマチックな恋愛にあこがれているので起伏の少ないシナリオに物足りなさを感じました。(99.12.3)

評価:66(好きな人は好きだろうね)

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