風祭玲・駄文シリーズ






「バレエ教室(第1話)」

作・風祭玲





アキオが姉のユキコより呼び出され、バレエ教室のレッスン場に着い たのはその日の夕方だった。


アキオはかねてからバレエに倒錯した感情をもっていて、

ユキコが不在ときを見計 らっては姉の部屋に忍び込むと、レオタードをこっそり身につけ、

そして姿見に自分のレオタード姿を映しては、バレエのレッスンを受けている自分を妄 想していたりしていた。

そして「バレリーナになりたい。レオタードを着てバレエのレッスンを受けたい。」 っと密かに願っていた。

そんなある日アキオが学校から帰ると、自分の机の上に1通の置き手紙を見つけた。

「なんだろう」と思って開けてみると、差出人はユキコからで

「アキオに重大な用があるから直ぐにバレエ教室のレッスン場へ来い。」 と書いてあった。

アキオは「え?」っと一瞬不安になったが、

スグに不安よりも憧れだったバレエ教室のレッスン場に入れる言う期待で胸がいっぱい になった。

アキオはスグに家を出ると姉が待つバレエ団のレッスン場へと直行した。

しかし、アキオがレッスン場に到着するとその建物からは人の気配がなく、

近所の公園で遊んでいる子供達の声が響いているだけだった。

アキオは少し不安になり、建物に入るとレッスン室へと向かった。

建物の中はアキオが小学校の頃に姉のレッスンを見学に一度来たことがあるので レッスン室の位置は大方判っていた。

レッスン室に着くとアキオは大きく深呼吸すると、

「姉さん、僕だけど」っと言いながらレッスン室のドアを開けた。

そこにはレオタードにトゥシューズ姿のユキコが外をみながら一人で立っていた、

アキオは間近に見るレオタード姿の姉に一瞬欲情したが、 それをかみ殺して平静を装いながら、

「姉さん、ぼくに何か用なの?」と言うと、

ユキコは振り返るとアキオを一瞬キッと睨んだ、そして

「よくきたわね、アキオ」と言った。

アキオは姉の意外な目線にちょっとビックリしながら、

「手紙が置いてあったから着たんだけど、用って何?」と言うと、

ユキコは「あなたをココに呼んだのは、あなたにバレエを教えてあげようと思ってね…」と言った。

アキオは姉の言葉にドキッっとしながら「僕に…バレエを?」と尋ねると、

ユキコはアキオを再び睨み付けると、

「あら、あたしが何も知らないって思っているの?」

と言って一冊の本を床に放り投げた、

それはアキオがユキコの部屋から失敬して 自慰行為のおかずにしていたバレエ教室のパンフレットだった、

さらにそれには「バレエを踊りたい、バレリーナになりたい。」 と書いたアキオのメモを挟んでいたのだった。

ユキコはさらに付け加え

「あなたがあたしのいないときに、あたしのレオタードで ヘンな事をしているのも、ちゃんと知っているんだからね」と言った。

「バレタ…」

アキオの頭の中にその言葉が響くと一瞬の内に硬直してしまった。

ユキコはアキオの顔色が変わったのを確認すると、

「だから、あなたがこれ以上ヘンなことができないように、あなたにバレエの厳しさをみっちりと仕込んで上げるから、覚悟しなさい。」

っと言うと、トゥシューズの音を響かせてユキコは隣の部屋に行った。

そして、「なにそこで立っているの、早くこっちに来なさい。」と命令した。

アキオはユキコの命令にビクとした後、ユキコの後を追った。

ユキコが入った部屋は更衣室だった。

アキオが更衣室に入ると、そこにはバレエで汗を流した女性達の臭いで満ちていた。

「なにボサとしているの!」ユキコの強い声でアキオは我に返った。

そして「これに着替えなさい。」と言うとアキオに袋を渡した。

渡された袋を開くと中にはフリルのついたピンク色のレオタードと バレエシューズ・白のバレエタイツ、そしてサポータが入っていた。

アキオはユキコの監視の元、着ているものを脱ぐとそれらを身につけていった。

着替え終わるとユキコは小さく笑うと、

「さっ、バレエのレッスンを始めるわよ」

と言うとアキオの手を引きレッスン場へと連れていった。

ユキコはアキオを手近なバーに捕まらせると、

「さっ、まずバレエの基本である5つのポジションから覚えてもらうわよ」

と言ってバレエの稽古をはじめた。

しかし、バレエ初心者のアキオにとって、

ユキコからの次々と出される指示は とうていこなせるモノでなく、姉の罵声がレッスン場に響いた。

基礎レッスンが始まって2時間ほどが過ぎるとユキコは

「はい、じゃぁ今日のレッスンはここまで…」

と言うとアキオを見た。そして、

「あら、不満そうな顔をしているわね…」

「もっとレッスンをしたいの?」

「それなら仕方ないわねぇ…」と考える顔をした後

「じゃぁ、明日から午後4時にココにきなさい。」と言った。

「4時?」アキオが聞き返すと、

「そう、夕方の4時から6時まで、あたしがここでバレエ教室の中学・高校生コースを 教えているから、あなたはそこに混ざるの。いいわね。」と言った。

「バレエ教室に通うんですか?」アキオが聞くと。

「当たり前じゃない。」

「いーぃ?、アキオ。あなは明日からそのレオタードを着て、女の子として、あたしのバレエ教室に通うのよっ、判ったわね。」

とユキコは厳しい表情でアキオに言い放った。

アキオは仕方なく小さく頷いた。


翌日、アキオは鞄の中にレオタード・シューズ・タイツなどを忍ばせて学校に行った。

なぜなら、ユキコが指定した時刻にバレエ教室に向かうには学校帰りに直接行くしか なかったからだ。

部活を休んで、バレエ教室についたのは4時を少し回っていた。

レッスン室に入る前、アキオが中の様子を少し覗いてみるとレッスン室には既に中・高生位と思われる20人ほどレオタード姿の女の子達がユキコの指示に従って、基礎レッスン をしていた。

「あの子達の中に入るのか…」

アキオは自分があの中に入ったときの彼女達の反応が気になった。

すると、アキオの気配に気づいたユキコが窓を開けると、

「何をしているのです。早く着替えてきなさい。」

と強い調子でアキオに向かって言った。

「先生、どうしたんです?」

ユキコの態度が気になった、少女の一人が訪ねた。

「あぁ、今日からあなた達と一緒にバレエを習うお友達が来ます。」

アキオは更衣室に入ると、学生服を脱いでレオタードへ着替えた。

レオタード姿になったアキオは、レッスン室に繋がるドアのノブに手をかけようと したとき、

思わず躊躇してその場に立ち止まってしまった。

とその時「ガチャ」っと、ドアが勢いよく開けられた。

ドアを開けたのはユキコだった。

「なにをしているんです。着替えたらさっさとレッスン室に入りなさい。」

と言って、アキオを睨み付けた。

アキオは足下に視線を落としながらレッスン室へ入っていった。

レッスン室にはいるとざわめきが起こった。

「えっ、何?、オトコ…」

「いやぁ、レオタード着てる…」

「恥ずかしくないのかなぁ」

「オカマじゃないの…」

次々とアキオに屈辱的な言葉を浴びさせる。

「パンパン」とユキコが手を叩いて女の子達を黙らせる。

「はい、みなさんにお知らせをします。」

「今日から、みなさんと一緒にレッスンを受けることになったアキオくんです」

と言うと「ほら、あいさつしなさい」とアキオをつつく

「アキオです。よろしく」とアキオは恥ずかしさのあまりやや小さめの声で言った。

そのとき一人の女の子が

「はいっ先生っ、なんでアキオ君はレオタードを着ているんですか?」

と言う質問の声が挙がった。

ユキコは「ミホさん、それはアキオ君がバレリーナになりたい。と私に頼み込んだからです」と言って、

例のメモをミホに見せた。

「やだぁ…『バレエを踊りたい。バレリーナになりたい。』なんて書いてあるぅ」

と言うと、ミホは他の女の子に回して見せた。

アキオは顔から火が出るくらい恥ずかしくて、とても前を見ることが出来なかった。

しばらくして「判りました、アキオ君をレッスン・メイトとして歓迎します。」

「ただし、アキオ君ではなく女の子の『アキコちゃん』としてならの話ですが」 とミホが言った。

ユキコは「そぅねぇ…バレリーナを目指すのに、オトコのままと言うは問題ですね。」

と言うと、「アキオ、あなたは今日からアキコとしてココに来るのよ。」と言った。

そして「さぁ、お話はココまで、みんなバーの位置について…」と言い

アキオをみると「アキコ、あなたも位置に着くの」と言った。

アキオは近くのバーに掴まるとミホ達と一緒に基礎レッスンを始めた。


そんなアキオの姿を見ていたミホは「さて、どーやってイジメて上げようか…」

と考えを巡らせていた。





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