風祭玲・駄文シリーズ






「尼寺」

作・風祭玲





「やれやれ…ついてないなぁ…」

道に迷った上に雷鳴の音とともに、ポツリポツリと降り出した雨を恨めしく見上げて僕はそぅつぶやいた。

学生時代に登山を始めてから毎年この山を訪れているので、

この山道は目をつぶって歩けるほど熟知しているはずなのに、

どこでどう間違えてしまったのだろうか、もぅ何時間も熊笹の生い茂る山道を歩いている。

「おっかしいなぁ…どこで間違えたんだろう…いつもならとっくに山頂についているはずなのに…」

僕は降りだした雨に急かされるような気持ちになり、ブツブツ文句を言いながら早歩きで歩いた。

ふと、学生時代先輩からずっと昔にこの山で行方不明になった人の話を思い出した。

そのときは笑い飛ばしたが、まさか自分がそういう目に遭うとは想像もしていなかった。

などと考えていると、大きな雷鳴が鳴り、雨は本降りになった。

「やばい!!」

僕は小走りになり、なんとか雨をしのげるところを探した。

ずぶぬれになって走っていると一件の家屋が目に入った。

「あれ?、あんなところに家がある……」

僕は「迷っているうちに麓に下りてしまったのかな?」と思い、

「しめた、雨宿りさせてもらおう」と考えてそこへ向かって走った。

そばに来ると、それは民家などではなく立派な山門を持つ山寺だった。

「陰月寺」と書かれた額がかかる山門を仰ぎ見て、

「お寺かぁ、でも、こんなところにあったかな?」

と思いながら山門をくぐったとたん、

近くに落雷があったのか大音響の雷鳴とともに当たりは一瞬真っ白になった、

と同時に突風がまるで僕を寺に押し込むように吹いた。

「うわっ」僕は目をつむり声を上げ前のめりになった、

ほんの一瞬の出来事のことだったのはずがなぜか長く感じられた。

目を開けると目に前に水煙に霞んだ寺の本堂があった。

とりあえず本堂の軒下に逃げ込むと、急いでザックのなからタオルを取り出し顔と頭を拭いた。

なんとか落ち着いた頃、寺の様子をよく見てみると、

境内は誰かに手入れをされているらしく荒れておらず、本堂の中も手入れが行き届いていた。

整然と整理されている寺の様子を見て「お坊さんがいるのかなぁ」と思っていると、

「どなたかいるのですか?」と言う声が寺の奥から聞こえてきた。

「えっ?」僕は声のした方をみると、

白衣の上に黒衣を羽織り、白頭巾を被った一人の若い尼僧が出てきた。

その尼僧の美しさに一瞬見とれていると尼僧が「どなた?」と声をかけたので、

僕はハッとなりドギマギしながら、

「いや…あのぅ…怪しいい者ではありません。

山で…道に迷ってしまって…そしたら雨が……」と言い訳にならない言い訳をすると、

尼僧はクスリと笑って

「それは難儀なことでしたね。さっ、そんなところにいたら風邪を引いてしまいますよ、お入りなさい。」と言って僕を招いた。

僕は「いやっ、あのぅ」と言ったところで、

尼僧は「さっ早くお入りなさい」と言って寺の奥へと入っていった。

僕は「えっ、じゃぁ…失礼します」と言うと、ずぶ濡れの靴を脱いで寺の中へと入っていった。

本堂にある大きな仏像を横にみて尼僧が去った後をついていくと、

尼僧は本堂から続きになっている母屋へと向かい、一つに部屋の前で立ち止まると振り返った。

そして「体が冷えたでしょう…ちょうど湯殿の支度が出来たとこでしたので、

湯に浸かって体を温めてくださいな」と言って戸を開けた。

僕はこの際、尼さんの厚意に甘えるかと思って「いや、すみません」と言って湯殿へと入っていった。

湯に浸かり、雨で冷えたからだが暖まったころ

脱衣所に尼僧が入ってきて「着替えをここにおいておきますね、着物の大きさが合えば良いのですが」と言ったので、

「あっ、重ね重ねご迷惑をおかけます」というと、尼僧の影は軽く会釈して出て行った。

湯から上がって脱衣所に行くと僕が着ていた衣服は片づけられ白衣と帯が置いてあった。

白衣の袖を通しながら

「これってあの尼さんが着ている着物なのかなぁ」

と思いつつふと着物の臭いをかいでみると、甘い匂いが鼻をくすぐった。

帯を締めて脱衣所から出たところで廊下を歩いてきた尼僧とバッタリぶつかってしまった。

突然の出来事だったので、慌ててしまった僕は何を思ったか尼僧を抱きしめてしまった。

尼僧からは抹香とさっき嗅いだ甘い匂いとが絡まった香りがしていた。

ハッと我に返って抱きしめていた尼僧に気がつくと、

僕は慌てて手を離して「どっ、どぅもすみません」と尼僧に謝ると、

尼僧は心なしが赤らんだ顔を僕に見せ、

「いえ、前をよく見てなかった私もわるいんです。」

「この雨、今日中には止みそうにはないですね、今夜ここに泊まっていかれなさい。」

と言ったので、僕は「えっ、よろしいのですか?」と聞き返すと、

「えぇ、よろしいですよ、それにあなたが着ていた服も明日には乾くでしょうし…」

「えっ、あのぅ僕の服を乾かしてもらっているのですか?」

僕はこの尼僧に自分の下着をみられたのが妙に恥ずかしくなった。

尼僧は辺りを見回すと

「ここで立ち話をするのもなんですから、居間の方にでも…」

と言うと廊下を歩きだした。

僕はおとなしく、尼僧の後に続いていくと居間へと通された。

居間は実に質素でまた電気は通ってないらしく、

中央に囲炉裏があり薪が赤々と燃えていた。

僕と尼僧は夕食を共にしながらその囲炉裏を挟んであれこれと世間話をした。

その話の中で僕は尼僧のことをいろいろと知った。

尼僧の名は「妙香」と言って、なにやら事情があって出家しこの人煙まれな山寺の庵主として生活しているそうだ。

といっても彼女がそういっているだけだったのだが。

でも、実際の年齢はわからず、顔の様子を見ると僕と同世代の様だが、

話す内容ではだいぶ年上のような感じがする不思議な尼僧だった。

雨は妙香尼の言うとおり一向に止む気配はなく降り続いていた。

ふと、胸の周りが痛痒くなってきたのに気づき、無意識のうちに僕は胸を掻いていた。

そしてその様子を妙香尼はじっとみていた。

夜も更け、僕は妙香尼が用意した床についた。

昼間に疲れもあったのかすぐに眠りに落ちたのだが…

どれ寝たのだろうか胸の痛痒みが徐々に増してそれが痛みに変わり、

やがて全身に広がった頃、僕は目を覚ました。

体に中からジワリジワリを吹き出してくる痛みに

「なんだ…これは?」と考えていると、

スッと襖が開いて人影が入ってきた。

僕はそれが妙香尼であることがすぐにわかった。

僕は「あっ妙香さんですか」と声を出したとき、

自分の声のトーンが上がっているのに気づき「えっ」っと言って口をつぐんだ。

すると妙香尼は「あぁ体が変わってきていますね」と言った。

が、その妙香尼の声は囲炉裏で話している時とは違って低い声になっていた。

そして、妙香尼は僕のそばに来ると布団をやや荒っぽく剥ぐと、

僕が着ている白衣の襟をグィっと広げて僕の胸をさらけ出した。

そこには饅頭のような肉の塊が2つ盛り上がっていた。

妙香尼はそれを見ると「まぁ、立派なおっぱいねぇ」と言うと、

「ねぇ…あたしのもみてぇ」と言って自分の胸元をさらけ出した。

しかし、そこには乳房はなく替わりに筋肉が盛り上がったたくましい胸板があった。

「!!」

僕の目は妙香尼のたくましく変化した上半身に釘付けになった。

妙香尼はそんな僕の様子を見透かすようにそっと呟いた。

「12年待った…長かった…でも、もぅすぐ外に出られる…」

僕は妙香尼に「それって…どぅいうことですか」と尋ねると、

妙香尼は僕の顔を見て「そうね、何も知らないまま「妙香」を受け継がせるのは酷ね」

と言うと、続けて「この尼寺「陰月寺」はそこいら辺にある寺とは違って、

自分の面倒をみてくれる庵主・尼僧妙香を寺に迷い込んできた者達に代々受け継がせているのよ、

私も12年前に道に迷いこの寺に迷い込んだときに、先代の「妙香」から寺のことを任されるために尼にされた…」

と言ったところで僕は、依然先輩から聞かされたこの山で行方不明になった人の話を思い出した。

そして僕は「「受け継がせる」っどういうことだ?」と聞き返すと、

妙香尼は「そぅ…今、貴方の肉体の変化は私から「妙香」を受け継ぐために女に…いえ尼になっていく途中…」

と言って僕の帯をほどき、白衣を剥いだ。そして

「私は貴方に「妙香」を受け継がせるために男の戻っている途中」と言うと自分の帯をほどき僕の前で全裸になった。

僕の目に飛び込んだ妙香の肉体は、女性的な特徴は残っているものの、

男性のシンボルがそびえ立つたくましい男の体そのものであった。

妙香尼は僕に近づくと片膝を落とすと、上から覆い被さるように僕をギュッと抱きしめた。

妙香尼からはさっきのような甘い香りは消え失せ、男の汗の強い臭いが僕の嗅覚を刺激した。

しかし、どうしたことだろうか、嫌なはずの男の臭いが心地よく感じられ、次第に僕は上気していった。

妙香尼は僕を抱きしめた僕が次第に上気してきていることを確認すると、

片手を僕の股間に持って行き、そこに有るべき物の存在を確かめたあと、

手で優しく・激しく攻めてきた。僕は、これまでとは全く違う感覚に喘いだ。

最初は声を出さずに我慢していたが、妙香尼の攻めが激しくなるの連れ次第に声を上げるようになっていった。

僕が最初の絶頂を迎えた後、妙香尼は手に着いた無色透明の僕の分泌物見せ、

「さぁ、ご覧なさい。これを出した貴方の穴を…」

と言って僕の腰を持ち上げ自分の性器の様子を見せた。

そこには夕方まであった男のシンボルは無く、替わりに女の唇が分泌物を流していた。

僕の体から次第に力が抜けていくと、妙香尼は「じゃぁ、あなたに「妙香」を渡します。」と言うと、

自分の男根を僕の女唇に押し当て押し込み始めた。

僕は「やめろぅ…」と叫んではみたものの、

力が抜けている上に男に戻った妙香尼の強い力で押さえつけられているために、妙香尼の思うがままだった。

やがて僕と妙香尼は一つとなり絶頂へと向かっていった。

絶頂を迎える際、妙香尼は「さぁ…今度はあなたの番よ…さようなら妙香…」言って絶頂を迎えた。

翌朝日が昇る頃、リュックサックを背負った一人の男が陰月寺の山門から出てきた、

彼にとって十数年ぶりの外界である。

同じ頃、陰月寺の本堂で白衣に黒衣を羽織り、剃り跡も青いツルツルの坊主頭にそっと白頭巾を被せた尼僧がいた。

先代から「尼僧・妙香」を引きつぎ今日からこの山寺の庵主となった僕の姿だった。





戻る