風祭文庫・黒蛇堂の館






黒蛇堂奇譚

〜第31話〜
「副作用」



作・controlv(加筆編集・風祭玲)


Vol.T-350





その日の夕暮、

一人の筋肉質の男が下を向きながら歩いていた。

「はあ」

男は溜息をついてばかりいる。

「お兄さん、お困りのようね…」

そんな男の前に一人の少女があらわれた。

銀髪で碧眼、


それに白装束を身にまとっている。

「あたしは白蛇堂、

 人の願いをかなえるものを取り扱っているの」

「そうなのか…?」

彼女の言葉に屈強な男はそう返事をする。

「あんた…今の姿に満足してないでしょ?

 ふふーん、

 たぶん女になりたいとかね?」

「なんでわかった…?」

男は白蛇堂の質問に対し否定することなく答えた。

「…そうなんだ。

 実はとってもかわいい女の子になっちゃう薬を手に入れたんだけど、

 最初のお客さんだから安くつけさせてあげるわ」

白蛇堂は嬉しそうに商品を勧めた。

「本当にいいの?

 どうもありがとう」

そういうと男は代金を支払うと薬を受け取った。

「どうもありがとうございました!」

そう男を見届ける白蛇堂であったが、

「(おかしいわね…

  普通ならいったんは変身願望を否定したり、

  商品を使うのもためらったりするのに、

  それがないなんて…

  しばらく見てみる必要があるわね。)」

白蛇堂は男の様子を遠見の鏡で見ることにした。

その夜、誰もいない空き地で

男は昼間購入した薬瓶を見ながら考え事をしていた

「これを飲めば元に戻れるのね…」

男はもともとは若いスレンダーな女性であったのだが、

とある露天商から入手した薬品を誤って飲んだところ、

薬が強力だったのか筋肉ムキムキな男になってしまったのだ。

男の姿のまま途方に暮れてずっと歩いていたのだ。

男は露天商から買った薬の瓶をまず空き地に放り投げると、

「こんな忌々しい薬のせいだわ」

と文句をいい、

そして、男は白蛇堂にもらった薬をすべて飲みほした。

これで男は元の女性に戻れるはず…であった。

しかし、

「うっ…うっ…」

男は苦しみながらその場に蹲る、

その間に男の心拍は激しく上昇し、

大量の汗が噴出してくる。

そして、男の体は小さくなるどころかさらに大きくなり、

筋肉もさらに隆起する。

ビリッ

隆起する体についていけなくなった服が破けてしまうと、

黒いビキニパンツを思わせる布だけが股間を覆い、

さらに男の顔の表情も猛々しくなっていくと、

鋭く尖った牙が男の口から覗く。

体の色は群青色に染まり、

眼の色は青くなると、

頭には2本の角が突き出し、

背中には羽が生えていく。

「がおおおおおおおおおおおおおおおお」

まるで悪魔を想像させるような魔物になってしまった男は

大きな雄たけびを上げ、

空き地にあったものを破壊しながらゆっくり前に進んでいた。



―――――――

「(なんてことなの、あたしとしたことが…)」

白蛇堂は自分が勧めた商品の副作用を知っていたが、

男が変身していたかどうかまではかんがえがまわらなかったのだ。

「あの薬品と今回の薬品は併用すると魔物になるということなのに…」

白蛇堂は自分のミスとともに依頼人を不幸にしてしまったことを悔やんだ。

こうなってしまった以上、

いまの白蛇堂にはどんな手段を使ってでも魔物を元の姿に戻すしかなかった。

「どうしましょう…そうだわ」

白蛇堂はある人物のもとへ向かうことにした。


夜の10時過ぎ、

閉館時間を過ぎたプールに白蛇堂は来ていた。

「ふう、久々のこの姿もいいわね」

今回の白蛇堂は久々に少年の姿となり、

青地に緑と白の柄が入った競泳パンツを着用していた。

「そろそろあの子も来るはずよね」

白蛇堂はプールサイドのベンチで待っていた。

しばらく待っていると、

一人の赤い髪の美少年があらわれた。

「まったくこんな時間に…って、白姉か」

「あらあ、紅ちゃん、久しぶりね」

白蛇堂が待っていたのは三姉妹の末妹である紅蛇堂であった。

「実は、紅ちゃんに元に戻してほしいのがあるんだけど…」

白蛇堂は申し訳なさそうに頼んだ。

「白姉から商売を頼んでくるとは珍しいな、

 で、誰を元に戻すんだい?」

紅蛇堂は天界の中でも数少ない、

特に望まない変身をしてしまった人間を元の姿に戻したり、

元の姿に戻れない変身を

自由に変身できるように調節したりする商売を行っているのだ。

紅蛇堂は男性化すると、

数少ない変身を解除する精液を出すことができるため、

商売に有利なように男性の姿でいることのほうが多く、

話し言葉も基本的に男言葉である。

白蛇堂は筋肉男を経て魔物になったしまった元女性の話をした。

「それって、白姉が悪いんじゃん。

 男からどうして女になりたいのか聞いてなかったし」

「だって、あまりに困ってそうだったし、

 見せたらものほしそうに食いついてきた、

 それにあの薬を売りたかったのよ…」

「しょがねえなあ、実の姉に頼まれたんだ力を貸すか」

紅蛇堂は半ばあきれながらも魔物を元の姿に戻すのに協力した。

「ありがとう、紅ちゃん…

 それに、もうひとつ…」

「今度は何だ?」

「これをあの子に渡してほしいんだけど…」

白蛇堂は紅蛇堂に手紙のようなものを渡した。

「ああ、これか…わかったよ」

紅蛇堂はわかったとばかりに承諾した。

「ありがとう!

 このお礼はなんでもしてあげるわ…」

白蛇堂はそういうと、

「じゃあ、白姉のケツの穴でももらおうか?

 前の穴でもいいぜ?」

紅蛇堂は冗談交じりに答える。

「冗談よね、

 でも…紅ちゃん、こんなに可愛い顔と体してるのに、

 筋肉はしっかりついてて、

 それにずいぶんと立派なもの持ってるのね…」

白蛇堂は紅蛇堂の華奢でありながら、

張り出した胸板や6つに割れた腹筋、

過不足なく筋肉のついたしなやかな四肢、

少女のようなかわいらしい顔、

そして競泳パンツのもっこりの部分を触っていた。

「おいおい…

 白姉、変な風に触るから

 完全に勃ってしまったじゃねえか。

 それにこれは商売道具でもあるから、

 そう簡単には使えないぜ」

「そう、残念ね…」

白蛇堂は股間のテントを大きく張り上げながら答えた。



真夜中、魔物は街の中を暴れまわっていた。

人間と大して大きさは変わらないものの、

街の中のあらゆるものを破壊し、

口からは火を吹いて燃やしていた。

空を見上げればTSFの戦闘機が待ちの上空を周り、

事あるごとにパルスレーザー砲による掃射を掛けている。

今のところ死傷者が出ていないのが物の救いだろうか。

「あぶねえ、あぶねえ…

 武装してきて正解だな」

紅蛇堂は魔物の姿を見るなりそう呟く。

武装といってもタンクトップを着用して、

切れ味の悪そうな刀を持ってきたぐらいではあったが

「とりあえずあいつを黙らせるか…」

TSFの攻撃が収まるのを待って紅蛇堂は魔物の前に飛び出して行く。

思った通り、魔物は紅蛇堂に襲いかかった。

まずは鋭い爪をもった腕でなぎ払おうとするが、

「ふん!」

紅蛇堂は刀でかろうじて腕を抑えつけ、

「えいやあ!」

悪魔を滑り倒させた。

「ぐおおおおおおおおおおおお」

魔物は口をあけて大きな炎を吐こうとした

(まずいな…)

紅蛇堂はあたりを見まわし、

魔物がなぎ払った建物の中から一台の扇風機を見つけた。

「(コンセントはないのか…)」

そう呟く紅蛇堂のそばに倒れた高圧電線の電線が目に入る。

「よし、コレを使って」

すかさずゴム手袋を着用すると、

扇風機をすかさず改造すると扇風機を高圧電線とを接続させる。

同時に、

「ごおおおおおおおおおおおおおお」

魔物はすごい勢いで地獄の業火を吐くが

しかし、

カチッ!

ギンッ!!

首都圏への基幹幹線である50万ボルトの電力を供給された扇風機は

スイッチが入れられるのと同時に光り輝くと

ゆっくりと立ち上がり、

『くっくっくっ、

 私の戦闘力は50万パワーだ、

 しかもまだ2回変身を残している』

自信満々にそういいながら、

ブォォン!

迫る炎に向かって羽を回し始める。

すると50万パワーの最大風力を浴びた火炎は

魔物の方に向きを変えてしまうと、

ジュワァァァァァ!!!

業火は魔物を焼き始める。

「ぐわぁぁぁぁぁ!」

『くっくっくっ』

悲鳴を上げながらも業火を放つ魔物と、

笑い声を響かせる扇風機との戦いは白熱し、

やがて二人は熱が発する白い光の中へと消えていく。

その直後、

ドォォォォォン!

大地を揺るがす乙女の怒りが炸裂すると、

「(いまだ!)」

紅蛇堂はまず変身を解除する薬を

体が人間サイズに萎縮してもだえ苦しむ悪魔の口めがけて投げつけた。

そして、

魔物の後ろに回ると魔物が履いていたパンツをずり下げ、

その尻に紅蛇堂の巨大なイチモツを挿入した。



「ぐぎゃああああああああああああああああああああああああああ」

尻を犯された魔物は叫び声をあげた。

すると、魔物の体から力が抜け、

頭の角は消えると、

肌の色も白くなっていく。

さらに筋肉質の体もくびれが戻り、

女性らしい胸や尻の部分も再び出現した。

魔物はもともとの女性の姿に戻ったのだ

「さてと…」

紅蛇堂はパンツ1枚で倒れている女性に

自分が着ていたタンクトップ上下を着せると、

女性を安全なところに連れていった。



その後―――――――

「お久しぶりね、スカーレット。

 で、あたしに用って珍しいわね」

そういったのは黒い髪に赤い眼の少年…男性形態の黒蛇堂である。

「これ、白姉から…」

そういうと紅蛇堂は白蛇堂から渡された手紙を黒蛇堂に渡した。

その手紙の内容は普段から彼女がとっているようなものではなく、

姉らしく妹を気遣っている内容であった。

「まったく…姉さんてば…

 べ、別にこっちだって姉さんのこと

 心配してるんじゃないんだから!」

そう言いながら黒蛇堂は顔を赤らめる。

「黒姉もそういいつつ、

 白姉のこと結構心配してるよね」

それを見た紅蛇堂は指摘すると、

「…ゴホン…ところでスカーレット…

 実はあたしの店にも

 変身を解除してほしいっていう人が来たんだけど、

 あいにく副作用がありそうな薬で変身してしまったの。

 だからあなたの力が必要で…」

黒蛇堂はさらに恥ずかしそうに紅蛇堂に頼みごとをした。

当然、紅蛇堂は快く引き受けた。

「ありがとう、

 つくづく思うんだけど、

 あなた、結構魅力的よね」

「いやあ、そうでもないぜ…

 けど、黒姉のチンコも相当おったってるぜ。

 白姉もこれぐらいたってたよなあ」

黒蛇堂はテントを大きく盛り上げていた黒い競泳パンツを手で覆うと、

恥ずかしそうに…

「何よ、姉さんと一緒にしないで…」

そう答えた。

「(商売だから対立するけど、

  あの二人実はお互いのこと心配してるんだよね。

  間を取り持つのも大変だぜ…)」

紅蛇堂は末っ子故の気苦労を感じていた。



おわり



この作品はにcontrolvさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。