風祭文庫・黒蛇堂の館






黒蛇堂奇譚

〜第21話〜
「店の奥にて」
(風祭文庫・総数1000物語記念作品)


作・風祭玲

Vol.781





チチチ…

初冬の街角にいつもと変わらない鳥のさえずりが響き渡ると、

『今日も良い天気みたいですね』

重厚な窓より外の景色を眺めながら、

黒衣を纏った少女・黒蛇堂が店の奥に向かってそう話しかける。

すると、

『はぁ…

 外の天気などはわたくしにはあまり関係有りませんが…』

店の奥より男性の声による返事が返ってくると、

『ふふっ、

 こういう良い天気の日は人が動くものですよ』

と黒蛇堂は呟いた途端。

ギィ…

重々しいドアがゆっくりと開くと、

「あっあのぅ…」

スカートスーツ姿の一見OLと思える女性が恐る恐る店内に入ってくるなり、

黒蛇堂に向かって声をかけてきた。

『はいっ、

 ようこそ、黒蛇堂へ』

窓辺に立っていた黒蛇堂は振り返りながら

女性に向かって挨拶をすると、

「……」

女性は少し戸惑った表情を見せながらも、

「あの…

 こちら…

 ツェツェさんのお店でよろしいのでしょうか?」

と尋ねてきた。

『ツェツェさん…』

その言葉を聞いた黒蛇堂は少し考えた後、

『あぁ、

 モランのツォツォさんですね』

と返事をすると、

「え?

 あっはいっ、
 
 そうです。
 
 そっか、
 
 ツォツォさんだっけ」

女性は自分が言い間違えていたことに気がつくと、

慌てて言い直した。

『はいっ、

 ココで構いませんよ、

 ご予約なされている方ですか?』

そんな女性に黒蛇堂は聞き返すと、

「はいっ、

 小島…と言います」

女性は自分の名前を黒蛇堂に告げた。

すると、

『ツォツォさんはこの奥におります。

 どうぞお入り下さい』

その女性に黒蛇堂は闇が支配する店の奥を手で指し示すと、

「は・はい」

女性はおっかなびっくりしながら店の奥へと向かい、

闇の中へと姿を消していった。



『ツォツォ?

 あのマサイのご老人がまた何かをはじめたのですか?』

姿を消した女性の見送りながら声は黒蛇堂に尋ねると、

『えぇ…

 なんでもストレスを溜め込んだ人を癒すのはサバンナが一番だと申されまして、

 それでこの店の一部を貸して欲しいと…』

と黒蛇堂は事情を話す。

『なんと…

 よろしいので?』

それを聞いた声は驚きながら黒蛇堂に聞き返すと、

『はいっ、

 わたくしは一向に構いません。

 それで救われる方がいらっしゃるのであるなら』

と返事をし、

『さて、

 さっきの方は一体何を悩んでいたのでしょうか?』

そう言いながら黒蛇堂は彼女が消えた闇へとその緋色の瞳を動かした。



「えっと、

 こっちでいいのかな…」

黒蛇堂の言葉に従い、

店の奥へと向かっていった小島香奈は闇の奥で微かに光る光に向かって歩いていた。

「うーん、

 そんなに広いお店には見えなかったんだけどなぁ」

少し不安になりそうになりながらも香奈は引き返すことなく光に向かって歩き続ける。

職場での人間関係に並んでいた香奈はこの日、

半ば強引に有休を取り、

黒蛇堂を訪れたのであった。

「ツォツォさん。

 本当にあたしをマサイにしてくれるのかな…

 マサイになればあたし強くなれるのかな…」

学校を卒業し、

香奈は希望に胸を膨らませて大手メーカーに就職したのだが、

しかし、そんな彼女を待っていたのは理不尽とも言える上下関係と、

身内をも敵と見る行きすぎた成果主義であった。

そんな職場環境に香奈は疲れ果て、

そして、そんな時に香奈の元に1通のメールが届いたのであった。

”生きていくことに疲れ果てたあなたへ…

 凝り固まった人生を脱ぎ捨てて、

 広大なサバンナを自由奔放に生きるマサイになってみませんか”

あまりにも唐突で、

あまりにも非現実なその内容に、

香奈はスグにメールを削除しようとしたが、

だが、その手が止まると、

「マサイかぁ…」

香奈は学生時代に旅行で訪れたサバンナのことを思い出し、

そして、そのサバンナを誇らしげに生き抜くマサイ達の姿を思い出すと、

「はぁ…

 あんな姿になって生きていくのも良いかも…」

と呟きながら、

届いたメールを改めて目を通す。

そして、メールの送り主は”ツォツォ”と名乗るマサイの呪術師であること、

現在、黒蛇堂と言う店で香奈が来るのを待っていることが書かれてあった。

「黒蛇堂?

 うーん、そんな店って何処にあるのかな…」

地図も無い文面を読みながら香奈は小首を捻るが、

今日の朝、

出勤途中の香奈は路地裏に黒蛇堂と書かれた看板が掛かる古風な店を見つけると、

即座に持っていた携帯で職場に有給休暇の申請をして、

黒蛇堂のドアを開けたのであった。



光に向かって歩いていく内に

その光は徐々に大きくなってくる。

「あっなんか、

 近づいてきたみたい」

その光を見ながら香奈はそう呟くや否や、

光は香奈の身体をすっぽりと包み込んでしまうと、

フッ!

「あれ?」

気がつくと灯りの炎がユラユラと揺らめく小屋の中に立っていた。

「ここは…

 どこ?」

手で塗り込められたような土壁と、

黒く慰撫されたような垂木が剥き出しになっている天井を物珍しげに眺めると、

『そろそろ来ると思っていた。

 待っていたぞ』

と年老いた男性の声が小屋に響いた。

「え?」

その声に香奈は振り返ると、

ムクリッ!

使い込まれた山羊皮の敷物にどっかりと腰を据えた黒い肌が微かに動く。

「ひゃっ!」

それを見た途端、

香奈は小さく悲鳴を上げると、

ジロッ!

黒い肌から左右二つの目が開き、

『悲鳴を上げなくても良かろうが、

 さて、

 ここに来たと言うことは、
 
 お前はマサイになりに来たのだな』

と香奈に尋ねた。

「え?

 えぇ…

 ってあなたがツォツォさんですか?

 ほっ本当にあたしをマサイにしてくれるのですか?」

香奈は見開いた目に向かって聞き返すと

『その様なこと、造作もないこと』

とツォツォは香奈に向かって返事をする。

「そうですか、

 あたし…

 マサイになりたいのです。

 いまの生活が嫌なんです。

 お願いします」

ツォツォに向かって香奈は頭を下げると、

『よかろう…

 では、いま着ている物を脱ぎ捨て、

 私の前に身を横たえよ』

頭を下げた香奈に向かってツォツォをそう指示をした。

「え?

 着ている物をですか?」

その言葉に香奈は驚きながら聞き返すと、

『当たり前だ、

 マサイにはその様なものは必用はない』

そんな香奈にツォツォをそう言い切った。

沈黙の時間が流れ、

「……」

その間、香奈は躊躇して見せるが、

だが、ツォツォに背を向けると、

着ていたスカートスーツを脱ぎはじめた。

そして、下着姿になり、

「こ、コレで良いですか?」

と尋ねると、

ツォツォは静に首を横に振り、

『全てだ』

と告げる。

「うっ」

その言葉に香奈は顔を真っ赤にするが、

しかし、手先を動かしはじめると、

先にブラを、

続いてパンティを脱ぐと、

「あの…

 これで…」

と胸と股間を隠しながら尋ねた。

その途端、

『マサイになろうとしているものが何を恥ずかしがっている。

 堂々としろ』

ツォツォはそう指摘すると、

「はっはいっ」

香奈は胸と股間を隠している手を動かし、

ふくよかに膨らんでいる乳房と、

飾り毛が覆う股間を晒した。

すると、

『さぁ、ココに身を横たえるんだ』

そんな香奈にツォツォは自分の前に広げている山羊皮の敷物を指さすと、

「はい…」

香奈はその指示に従い、

その白い身体を横たえて見せた。



トプン!

身を横たえる香奈を横目に見ながらツォツォを瓶を自分の横に移動させ、

その中に手を入れると、

何かの脂だろうか、

ただでさえ黒いツォツォのてがさらに黒くさせながら、

黒い脂をすくい取った。

そして、

『よく聞け、

 これはモランの脂だ。

 いまからお前にコレを塗る。

 この油を塗られたお前は姿・形が変わり、

 さらに言葉から何もかもがマサイとなる』

と告げると、

ベチョッ!

ツォツォは香奈の乳房の上にその脂を塗りつけた。

すると、

シュワァァァ!

たちまち香奈の身体に塗られた脂から湯気が立ち上り、

「あうっ、

 熱い!」

香奈の口からその言葉が漏れる。

『耐えるのだ』

それを聞いたツォツォはそう言い聞かせ、

ベチョ!

ベチョ!

っと次々と脂を香奈の身体に塗り、

「あっ

 あっ
 
 あぁぁぁぁ!!!!
 
 熱いぃぃぃ!!!」

体中から湯気を吹き上げながら香奈は身もだえる。

しかし、そんな香奈に構わずに、

ツォツォはなおも脂を塗りたくり、

程なくして香奈の身体は脂で真っ黒になってしまった。

そして、脂を塗られ、

湯気を吹き上げる香奈の身体に変化が起こり始めた。

ムクッ

ムクムクッ

黒い脂をヌラヌラと光らせる香奈の身体から筋肉が盛り上がりはじめると、

ググググググ…

成人女子としては平均的な身長が伸び始める。

そして、ふくよかだった乳房が萎縮してゆくと、

乳房を吸収しつつ胸板が盛り上がり、

女性の線を描くなで肩が厳つく広がっていく。

「あっぐっ

 ぐふぅぅ」

苦しさから逃れようとパクパクと開く口の唇が膨らんでいくと、

肩に掛かるほどのストレートの髪が縮れてゆき、

メリィ…

腹筋が香奈のお腹に見事な田形を刻み込んでいくと、

ピクッ!

ムリムリムリ!!!

縮れ度を増した飾り毛の下から、

クリトリスが伸び始めた。

「くはぁ、

 ふぐぅぅぅ!」

唇を噛みしめ、

香奈が身体全体に力を込めると、

伸びゆくクリトリスはさらに勢いを増し、

プクッ!

その太さを増すと、

先端にカリ首を開かせ、

縦溝を開ける。

「はっはっはっ」

変身が終盤に入り、

香奈はマサイの戦士と見分けが付かなくなってくると、

ジッとその変身を見届けていたツォツォの手が動き、

出来上がったばかりのカリ首を開く肉棒・ペニスを鷲づかみにする。

そしてゆっくりと手を上下に動かしはじめると、

「あっ

 あっ
 
 あっ」

コレまで苦しさから目をキツク閉じていた香奈は、

カッ!

とその目を見開き。

ツォツォの手の動きに合わせて声を上げはじめた。

ジュルッジュルッ!

ジュルッジュルッ!

身体に塗られた脂が潤滑剤代わりとなり、

香奈のペニスは淫らな音を小屋の中に響かせる。

出来たばかりとは言え、

香奈のペニスは大きく剥けきり、

その長さは20cmを軽く超える凶器と化していた。



その凶器をツォツォは手慣れた手つきで扱き続けると、

ビクッ!

「あっあぁぁぁ

 でっ出るっ」

香奈は突然身体を強ばらせ、

敷物をギュッを握りしめながら限界が近づいてきていることを訴えた。

だが、ツォツォはこんな香奈の訴えには耳を貸さずにさらに扱き続けると、

「あぁぁぁ

 あぁぁぁ
 
 出るっ
 
 出るっ
 
 出ちゃう!!!」

そう香奈が訴えた途端、

ピクッ!

香奈のペニスが大きく脈打つのと同時に、

プッ!

プシュッ!

シュシュシュシュッ!

脂で黒く染まるペニスの先より、

白く濁った精液を高々と吹き上げてしまったのであった。



「くはぁぁ…

 はぁぁ
 
 はぁぁ…」

射精と同時に襲ってきた良いようもない虚脱感に香奈は、

さっきまで自分を苦しめていた苦しさを感じなくなっていくると、

『あぉっ

 ああああぁぁ?
 
 あれ?
 
 あたし。
 
 あぁ、頭が…
 
 何か変…』

と頭の中に怒濤のように流れ込んでくる知識と、

それとは裏腹に次々と消えゆく知識に混乱をはじめた。

そして、それがようやく収まってくると、

『あぁぁ?

 おっ俺…
 
 ここで何をして居るんだ?』

とマサイの言葉でツォツォに尋ねた。

『ふんっ、

 どうやら頭の中もマサイとなったみたいだな』

そんな香奈を見ながらツォツォはそう言うと、

『さぁ、立て、

 立って、槍を取るんだ』

と香奈に命じた。

すると、

『うっ』

香奈はゆっくりと肌を黒く光らせながら立ち上がり、

ツォツォの前に股間から伸びるペニスを誇らしげに見せつけた。

『ふんっ、

 見事なマサイとなったな。
 
 お前はいまからマサイ・カウッツと名乗るがいい』

マサイとなった香奈に向かってツォツォはマサイの名前を申し渡すと、

『カウッツ…』

香奈は自分の名前を復唱する、

そして、裸のままの自分の身なりを見ると、

『さぁ、これを身につけるんだ』

そう言いながら

バサッ!

ツォツォはやや使い込まれた鮮やかさを失っている朱染めの衣と、

飾りを香奈に渡した。

『…ツォツォ…

 これ、小さい…』

髪を結い上げ、

マサイの胸飾りを付けて、

朱染めの衣を纏った香奈がそう訴えると、

確かに香奈が纏った衣は香奈の体格には小さく、

その裾は股間から伸びるペニスがやっと隠れるほどしかなかった。

だが、

『図体はマサイらしくでかくなったが、

 だが、お前はまだ子供だ。

 衣はそれくらいで十分だ』

とツォツォは香奈に告げ、

『さぁ、

 その出で立ちでサバンナに向かい、

 そして、槍一本で生きて見せろ』

と続けた。

コクリ…

その言葉に香奈、いや、カウッツは小さく頷くと、

槍と手にとり、

ツォツォに背を向けると、

夜が明けたばかりのサバンナへと歩み出して行く、

『ふふっ、

 カウッツよ。

 お前の男根・イリガは、

 お前が溜め込んできていた陰の気の分だけ長く伸びている。

 お前がマサイとして生き、

 溜め込んできた気が抜けていくとイリガは小さくなり、

 そして、消えてしまうと、

 お前は元の姿に戻る。
 
 さぁ、このサバンナで裸体に衣を撒いただけの姿で生き抜いて見せろ』

去っていくカウッツに向かってツォツォはそう呟くと、

『さて、

 次の客人が来るまでしばしの眠りにつくか』

と呟いていた。



『黒蛇堂様…

 これでよろしいので?』

一部始終を見ていた声が黒蛇堂に尋ねると、

『これは面白いですね、

 あの彼女がこれからどのようにして生き抜き、

 そして、元の姿に戻ったとき、

 一体何を得るのか、

 興味がわきませんか?』

と黒蛇堂は興味深そうにサバンナへと歩んでいく一人のマサイを見ていた。



おわり