風祭文庫・黒蛇堂の館






黒蛇堂奇譚

〜第4話〜
「タイムの上げ方」
(マサイの館「お守り」より)


作・風祭玲

Vol.430





タッタッタッタッ

Tシャツにブルマ姿の少女がトラックを駆け抜けていく。

「がんばれー」

「気を抜くな!!」

周囲より声援や色々な声が挙がるが、

しかし、走る彼女には風の音しか聞こえていなかった。

やがて遠くに一本のラインが姿を現すと

グン!!

少女は最後の力を振り絞るようにしてスピードを上げていく、

見る見る迫るライン…

「くっ」

何も考えずにそのラインを通過したところで

彼女は一気に力を抜くと走るのを止めた。

「よしっ」

はぁはぁ

手応えを感じつつ大きく肩を揺らして深呼吸をしながら、

彼女はタイムを計っていたコーチの元へと向かっていく、

しかし、

「ダメねぇ……柴本さんっ」

彼女の期待とは裏腹の返事がコーチから返ってきた。

「この前より、1秒もタイムが延びたわ」

「え?」

コーチの言葉に彼女は驚くのと同時に力無く返事をすると、

「このタイムでは今度の競技大会はあきらめるのね」

まるで突き放したかのように告げるコーチの言葉に

少女・柴本洋子は悔しさからからか口を真一文字に結んだ。


と、その時、

「コーチっ

 今度はあたしをお願いします」

スタートラインにはいつの間にか別の少女が立っていた。



裾野美和…

彼女は洋子にとって昔からのライバルだが、

しかし、彼女に未だ負けたことがないのが洋子の小さな誇りだった。

その美和がココに来て快調にタイムを縮めていて、

それが不振に喘ぐ洋子の気持ちをさらに焦らせていた。



「とにかく予選まであと一週間時間があるから、

 それまでに最低であと2秒縮めることね。」

コーチは洋子にそう言うと美和のタイムを計り始める。



2秒も…

コーチの言葉に洋子は絶望にかられた。

中学からずっと陸上一筋だった彼女にとって、

今度の競技会が高校3年の彼女が出られる事実上最後の大会になっていた。

しかし、現在のコンディションでの2秒の短縮はまさに絶望的の上に、

さらに、美和の追い上げも手伝って洋子の心は焦りの色が出ていた。



「2秒かぁ…」

学校帰り…

自分に突きつけられた無理な要求を考えながら洋子はトボトボ歩いていると。

ふと一軒の古色蒼然としたレンガ造りの店が目に入った。

「あれ?、こんな所にお店なんてあったかな?

(確か、ここは数年間シャッターを下ろしたままの空きビルがあったはず)」

そう思いながら”黒蛇堂”と看板が掛かる重厚なドアに手を触れると、

ギィ…

そのドアはまるで洋子を招き入れるように開いた。

「あっ」

ぽっかりと開いた四角い黒い口を洋子は眺めると、

一歩、

突然、脚が勝手に動き洋子を店の中へと押し込んでしまった。

「うわっ」

その店に入った途端、

洋子の目の前に溢れんばかりの商品が迫ってきた。

「うわぁぁぁぁぁ…

 なにこれ?」

元々このような奇妙なモノが好きな彼女は目を輝かせながら店の中を歩いていると、

「いらっしゃぃませ」

少女のような女性の声が響き渡った。

「キャッ!!」

突然かけられた声に洋子が振り向くと、

洋子より年下と思える、14、5歳ぐらいの女の子が立っていた。

長い黒髪を後ろに垂らし、一見魔女かと思うような真っ黒な服を身に着けた少女の姿に

「えっ…と、ここのお店の人?」

洋子はそう尋ねると、

「はい。私がこの黒蛇堂の主です…。

 人は私のことを黒蛇堂、と屋号で呼びますが。」

と少女は自己紹介をした。

「そ…そう…ですか。」

洋子は愛想笑いをしながら

「えっ、あぁっ、失礼しました」

と返事をしてそそくさと店から出ようとしたとき、

『あなた、自分の足が遅いことを気にしていますね。』

と黒蛇堂は眼孔鋭く指摘した。

「え゛?」

最も気にしていることを指摘されたその言葉に洋子は一瞬身体の動きが止まると、

「そっそんなのあなたには関係ないでしょ」

と返事をしてさらに一歩踏み出そうとした。

すると、

『それなら、いいのがあります。

 これをお使いなさい』

そう言いながら黒蛇堂が積み上げられた商品の中から選び、

そして洋子の前に出したのは、

長さ20cmほどで細長くて赤黒く染まった角のような物体だった。

「これは?」

不思議そうに洋子はその素性を訊ねると、

「これは…

 ウルカと言ってアフリカのある部族が肌身に付けているものです。

 この部族はアフリカでも1・2を争うくらい足の速い部族で、

 これを身につけると身につけた者の足が驚異的に速くなりますよ」

黒蛇堂は笑みを浮かべながら洋子に説明をする。



しかし、

「アフリカ?」

黒蛇堂のその言葉で洋子は以前TVで放映されていた映像に、

裸の男達がコレによく似たモノを股間につけていたのを思い出し、

「イヤよ、だってそれってキタナイものでしょう」

とウルカがら遠ざかりながらそう叫ぶと、

「これをご存じなのですか…」

黒蛇堂は意外な顔をする。

「だって、この前TVでやってたもん

 そんなモノは買えないわよ」

キッパリと洋子は言い切ると、

「そうですか、それは残念です……

 実は先日貴方と同じような女の子がコレをお買いあげになって、

 足が速くなったと喜んでくれたのですが」

とウルカを眺めながら黒蛇堂が呟くと、

「私と同じような女の子?」

「そうです……

 えぇっと美和さん…
 
 とか言いましたか?」

思い出すようにして黒蛇堂がそう呟いた途端、

「美和って、まさか、裾野美和?」

洋子は身を乗り出しながら聞き返すと、

「えぇ、そうそう、

 裾野美和っておっしゃっていました

 お客様、ご存じで?」

と黒蛇堂は尋ねた。

「えぇっよく知っているわよ」

黒蛇堂の言葉に洋子は仁王立ちになってそう言い放つと、

「そっか、最近美和のタイムが縮んでいると思ってたら…

 こんなのを使っていたのね。」

そう思いながら、再びウルカを見つめると、

「気が変わったわ、コレもらえる?」

と洋子は黒蛇堂にウルカを購入する意思を伝えた。

「ウルカ一点お買いあげ…ありがとうございます」

黒蛇堂はそう言ってウルカを紙袋に入れると洋子に渡した。

そして、洋子はその代金を渡しながら、

「で、これをどぅ使えばいいの?」

尋ねる。

すると、

「走る前にコレをそうですねぇ…

 女の子の場合はおへその下あたりにくくりつけて、
 
 そしてこの呪文を言いなさい」

と黒蛇堂は洋子にある呪文を教えた。

「ありがとう、判ったわ」

洋子はそう言って店を後にしようとしたとき。

「あっ、そうそう」

「え?」

「1日に呪文は4回までですっ

 それ以上使ってはいけませんよ」

「1日に4回?」

「そうです、もしも5回目の呪文を唱えると、

 あなたの身にとんでもないことが起こります」

と注意した。

「判ったわ」

洋子はそう返事をすると店を後にした。

「これで、美和に勝てる」

そう思うと彼女の足取りは軽くなっていた。



翌日、

着替えのとき洋子は周りに誰も居ないのを確認すると、

素早く紙袋からウルカを取り出し、

そっとウルカの紐を自分の腰に巻きつけた。

そして、店主から教えてもらった呪文を唱えると、

自分の急に身体がフッと軽くなった感じがした。

「すごい、早速効果が出たみたい」

洋子はウルカの効果に驚くが、

それよりも彼女のタイムはどんどん縮まり、

ついに、彼女に課せられた2秒の壁を楽々と越えてしまった。

「凄いわ、柴本さん…」

時計を見ていたコーチが驚きの声を上げる。

「コーチコレなら大会に出られますね」

洋子は念を押すようにしてコーチに訊ねると、

「それはもぅ大丈夫よ」

っとコーチは喜びを隠しきれないような表情で洋子に言った。

「ヤッタ!!」

洋子は心の中で喜んでいたが、

しかし、そんな彼女を苦々しく見ている少女が居た。

そう、美和である。

「くっそう、洋子めぇ…」

美和は洋子に対抗心を燃やし始めていた。

そして、あと一歩で選手に選ばれるはずだった美和は悔しさから練習を繰り返した。

しかし、彼女のタイムは全然縮まらず、

あせった彼女はついに禁じられた5回目の呪文を唱えてしまった。

その途端、

「いやぁぁぁぁぁ!!」

彼女は悲鳴と共に姿を消してしまった。

無惨に引き裂けたユニホームを残して……


洋子は美和の失踪が気になったが、

逆にライバルが消えたことで晴れ晴れした気分になっていた。

「美和に何があったかは知らないけど、

 これで今度の代表は私のもの…」

そうほくそ笑んでいた洋子だったが、

しかし、彼女は店主の忠告を聞きウルカを一日に4回以上使うことはなかった。



そして迎えた大会はなぜかトラブル続きだった。

些細なトラブルの上に番狂わせが生じたために、

洋子は5回走ることになってしまった。

「5回目…って大丈夫かなぁ…」

更衣室に戻っていた洋子はちょっと不安になっていたが、

しかし、コーチやみんなの期待に答えるために、

彼女はついに

「…………」

禁じられた5度目の呪文を唱えてしまった。


ドクン!!

その途端、洋子の下腹部が急に熱くなった感じがした。

しかも、それがみるみるうちに全身へと広がり、

やがて体中の筋肉がめくり上がるような激痛を起こしながら

ミシミシ

音を立て始めた。

「熱い!!」

「痛い!!」

「助けて!!」

洋子は熱さと激痛に苦しみながら床の上を転がり回る。

ググググググ…

身体の奥から何かが大きく伸びると洋子の身体を突き破ろうとする。

「くぅぅぅぅぅ〜っ」

洋子は必死になって堪えたものの、

しかし、

バシッ!!

彼女の身体が弾け飛ぶ感覚を襲った後気を失った。



どれくらい時間が経っただろうか、

ビン!!

と立つ身体の一部が

シュッシュッ

と言う扱かれる感覚で洋子は目を覚ました。

シュッシュッ

シュッシュッ

「うっあぅぅぅ」

巧みな手の動きに洋子は感じると、

無意識に手が動き、

そして、

その手を止めた。

「目を覚ました?」

「え?」

その言葉に洋子はハッと目を開けると

目の前に筋骨逞しい男の身体に黒い肌、

そして身に付けているのは

股間のペニスケース・ウルカのみと言った出で立ちの男が膝をついて、

そして、2本の腕が洋子の下半身へと伸びていた。

「きゃっ」

男の姿を見た洋子は悲鳴を上げて後ずさりすると、

「あん、そんなに驚かなくてもいいわ、

 あたしよ、美和よ」

と男は自己紹介をした。

「美和?」

洋子が聞き返すと、

「そうよ、裾野美和よ」

と男は自分を指さしてそう言った。

「うそぉ!!」

洋子は目の前の裸族の男があの美和であることが信じられなかった。

「ウソじゃないわよ、

 その証拠に柴本さん、

 あなたのそのオチンチン、立派だわぁ」

と美和は洋子の股間を指さして言うと、

「え?」

洋子はハッと自分の身体を見下ろした。

黒い肌…

盛り上がった筋肉…

そして裸の身体にはまるで棍棒のように勃起したペニスが股間にそびえ立っていた。

そう確かに洋子も美和と同じ様に裸族の男に変身していたのだった。

「そんなぁ…馬鹿な」

洋子が自分の身体に驚いていると、

「柴本さん、あなたもあの珍品堂でコレを買ったんでしょう」

と言って美和は股間のウルカを指さした。

コクリ

洋子は素直に頷くと

「どうやら、禁を破って5回目の呪文を唱えると、

 その人は裸族の男になっちゃうみたいよ」

と美和は言い、

「しかも、ココはアフリカ……

 あたし達はここでウルカ一つの裸族として生きていくしかないみたいね」

と続けた美和の背景には遠くまで広がるサバンナの風景が広がっていた。

「そっそんなぁ〜」

洋子はただ唖然としてサバンナの風景を眺めていると、

「ねぇ…あたしにも…して…」

と言いながら美和は洋子を押し倒すと、

彼女の顔の上に自分の股間を跨らせた。

「いっいやぁぁぁぁ」

洋子は悲鳴を上げて暴れたが、

「うふふふふ…」

美和は小さく笑うと、

シュッシュッシュッ!!

っと洋子の勃起しているペニスを扱き始めた。

「あっあぁぁぁ」

途端に洋子は目を剥くと首を左右に振り始めた。

「そうよ、男の子になったばかりは

 感じ易いのよ、
 
 ねぇあたしの…して…」

美和はそう言って、

洋子の顔の上で腰を振った。

ピシピシ

勃起した美和のペニスが股に当たって音を立てる。

「うっ…」

最初は嫌がっていた洋子だったが、

その黒い彼女の手が美和の股間にのびていくと、

シュッ…

シュッ…

っと扱き始めた。

「あぁ、いいわ…

 もっと…
 
 もっと激しくして」

美和がそう懇願しながら洋子のペニスを激しく扱くと、

シュッシュッ

洋子の手の動きが早くなっていった。

「あっ」

「あぁ!!」

二人の黒い身体をした男の身体が絡み合い喘ぎ声をあげる。

「あっあっあっ

 出る、
 
 出ちゃう
 
 もぅダメ!!」

射精に向けて洋子のペニスの中を精液がさかのぼり始めると、

洋子は声を上げた。

「だめ、我慢して」

それを聞いた美和はそう言うと、

洋子のペニスの根本をギュッっと指で締め付けた。

「あぁ、いや、

 出させて、
 
 お願い」

洋子がそう懇願すると、

「ふふ…」

美和は口を開けると、

ニュボッ

っと洋子のペニスをくわえ込んでしまった。

「いっいやぁぁぁぁぁ」

突然洋子のペニスを包み込んだなま暖かい感覚に、

洋子は悲鳴を上げた。

「(ぷはぁ)さぁ…出したければあたしのを先に出させなさい」

美和はそう洋子に言うと、

「うぅぅぅ」

洋子は涙を流しながら美和のペニスを口に含んだ、

「あぁ…いいわ…

 あの洋子があたしのオチンチンを嘗めているなんて

 あぁん、萌えちゃう」

身体をくねらせながら美和はそう呟き、

そして、

「さぁ、洋子、

 出すときは一緒よ」

と叫ぶと、

激しく洋子のペニスを扱き始めた。

それにつられ、洋子も美和のペニスをむさぼった。

「あっ、でッ出る!!」

美和がそう叫ぶと同時に

シュッ!!

美和は洋子の口の中に射精をすると、

射精しないように締めていた美和の手がゆるんだ、

その途端、

「あぅぅぅぅぅぅ!!」

洋子はうめき声を上げると、

プシュシュ!!

っと白濁した精液を吹き上げた。

「おめでとう、洋子

 これであたしたちはズールー族の勇者よ、
 
 さぁ、ウルカを付けて村に行きましょう」

と言う美和の声が

射精し呆然としている洋子の脳裏にその言葉が響いていた。



『あのお客様は向こうに行ってしまわれましたね』

『在庫は如何なされますか?』

『返品には及びません。

 そのうち必要になるときもあるでしょう

 蔵のほうへ…』

『畏まりました』



おわり