風祭文庫・天使の館






神将ハンター・真織
第2話:熱闘・天ヶ丘中央公園

作・風祭玲
(原案:少年少女文庫・100万Hit記念作品製作委員会)

Vol.267



「天使のお仕事」の詳細については

http://www14.big.or.jp/~yays/library/novel/200104/20050818/100title.htm

を参照して下さい。





「十二神将図?」

ディディアルより真織が神将ハンターとして任命を受けた翌朝…

朝食の食卓で思い切って真織から十二神将すのことを切り出すと

痛めた腰を庇いながら守衛は首をひねった。

「知らないの?」

「そう言えば…

 宝物庫の目録で見かけたような気がしたな…」

思い出すようにして守衛が呟くと、

「それがどうかしたんですか?」

横で話を聞いていた伊織が真織に尋ねた。

「えっまぁ…まぁね」

カァ…

昨夜、ディディアルによって変身したところを、

伊織に見られてしまったのを思い出して真織は思わず赤面したが、

しかし、伊織はそのことについて何も言わなかった。

『だぁいじょうぶですって…

 こう見えてもぼくは記憶操作の資格を持っていますから』

全身に痣を作りながらディディアルは済ました顔で言うが、

けど、真織にはその説明も眉唾にしか思っていなかった。

現に、ディディアルの記憶操作術は

魔法的に天使・パラレルの支配下にある伊織には全く効き目がなかった。

『…真織さんにあんな趣味があっただなんて…知らなかった…

 ひょっとして、

 コ○ケとか言う所にも行っているのかなぁ…』

朝食を食べながら伊織は真織を見ながらそう考えていると、

「なっなに?」

その伊織の様子に思わず真織が訊ねると

「え?、イヤ別に…」

慌てるようにして伊織は視線を背けた。

『うぅ…ディディアルの嘘つきぃ、

 伊織ちゃんの夕べのこと覚えているよぉ』

心の中で真織は泣いていた。



キーンコーン

「おーすっ」

「なんだ瑞樹かぁ…」

「なんだじゃないだろう」

軽くジャブを打ち交わす伊織と瑞樹の会話を眺めながら

「はぁ…」

真織は思わずため息をもらした。

「どうしたんです?、早川さん?

 浮かない顔をして…」

そんな真織に声を掛けたのは進藤伊織だった。

「あぁ、進藤君…うん、ちょっとね」

真織はそう返事をすると、

「悩み事だった相談に乗りますよ」

と進藤伊織が言う。

「うん…でも…いいわ

 ありがとう…心配してくれたんだね」

そう真織が返すと、

「そうですか…

 でも、何か相談事があったら何なりと言ってくださいね、

 僕…こう見えても天…」

と言ったところで、

ヒュン!!

猛ダッシュで掛けてきた伊織が進藤伊織の身体を鷲掴みにすると、

「すみません、進藤君、ちょぉっとお話が…」

と言う言葉を残して消えていった。

「なんなの?」

真織が呆気にとられていると、

いつの間にか瑞樹の姿も教室から消えていた。

「やっぱり、あの二人……」

そう思っていると、

ブルルル…

ポケットの中の携帯電話が振動した。

「電話?」

授業開始までさほど時間がなかったので

真織はこっそり携帯電話の画面を見ると、

それはディディアルからのメールだった。

『神将みつけた至急来られたし』

液晶ディスプレイに浮かび上がった文字を眺めながら、

「もぅ、これから授業なのに…」

真織は膨れながら、

『夕方まで見張れ』

と素早く打ち返すと、そのまま電源を切ってしまった。

しかし、この情報はその日一日、

真織の精神を乱すのに十分効果があった。

「どうしたんです、真織さん?」

終業のホームルームの前、

心配そうに伊織が訊ねると、

「なんでもなぁぃ」

机の上に突っ伏して真織が答えた。

「もぅ、ディディアルめ…

 朝っぱらからあんなメールを送って来るから

 気が散ってしょうがないじゃないのっ」

いつしか真織のはけ口はディディアルへと向けられていた。

そして、

ホームルームが終わった途端、

真織の姿は教室から消えていた。



「ディディアルのヤツ、

 絶対にお仕置きよ!!」

そう文句を言いながら真織が携帯電話の電源を入れた途端。

ブルルル!!

電話が激しく振動した。

「はいっもしもし」

『なにやっているんです!!

 半日近くこっちは何度も電話をして居るんですよ!!』

まるで堰を切ったようにディディアルの怒鳴り声が鳴り響いた。

そして、その言葉に真織がカチンとくると、

「あのねっ、

 こっちは学校なのっわ・か・る?

 朝っぱらからあんなメールを寄越して、

 お陰であたしは気が散ってしょうがなかったんだからねっ

 いいこと、今度からは夕方に連絡をしてよねっ」

そう真織がまくし立てると、

『なっなんですかっ、

 折角情報を送ったのその言い方は無いでしょう?

 こっちも相手を押させるのに必死なんですからっ』

もはや、完全にけんか腰である。

「なに言ってんのっ

 あんた、天上界の者でしょう?

 封印は出来なくても、

 足止めくらいは出来るようになりなさいよ」

『無茶を言わないでくださいっ

 とにかくスグに来てください、

 場所は天ヶ丘中央公園…その…

 うわぁぁぁぁ!!

 (ぶもぉぉぉぉ)』

電話はディディアルの叫び声と獣の声が聞こえると電話はとぎれてしまった。

「もっもしもーしっ

 ちょっと、ディディアルっ

 どうしたの?」

途切れた電話に真織は幾度も話しかけたが、

しかし、ディディアルからの返事は帰ってこなかった。

「あいつ…まさか…」

真織の足は見る見ると速くなっていくと、

一直線に天ヶ丘中央公園へと向かっていった。

そして、

「なっなにこれぇ…」

真織が天ヶ丘中央公園に到着するとその園内の様子に驚いた。

「そんな…いつもなら人が必ずいるのに…」

そう思いながら真織は園内を歩いていくが

しかし、

ジョギングをする人、

ベビーカーを押す女性、

ベンチで夕方の景色を眺めている老人、

犬の散歩している人…

普段ならそう言った人たちが公園のあちらこちらに必ず居るはずなのに、

何故が何処にもそのような人の姿はなかった。

それどころか、

公園の隅にいる野良猫や

道端でつつくハトの姿すら無く、

まるで公園内からすべての生がかき消されたような不気味な静かさだった。

「誰も居ませんか?」

真織が公園内ある事務所に立ち寄ってみると、

そこはつい今しがた係員が席を立ったような状態になっていた。

「誰も居ないの…

 これってなに?

 まさか神将の仕業なんじゃないでしょうねぇ…」

ディディアルからの言葉を思い出した真織は

ゾクゥ

思わず悪寒を感じてその場で震えると、

「そうだ、ディディアル!!

 あいつ、ここにいるって言ってたわよねぇ」

ディディアルのことを思い出した真織は、

「ディディアル!!っ

 何処にいるの!!」

と声を上げながら無人の園内を探し始めた。

そして、

”白鳥の池”と呼ばれている池の畔に着たとき、

「真織さん、

 こっち

 こっちです!!」

茂みの中からディディアルの声が響いた。

「ディディアル、そんなところで何をしているの?」

ディディアルを見付けた真織がホッとした表情でそう言うと、

「しーっ

 静かに…

 神将に見つかる!!」

慌てながらディディアルは真織の口を塞いだ。

「(ポショッ)ねぇ

 なんで、公園に誰も居ないのよっ

 まさか神将の仕業なの?」

真織が率直に疑問をぶつけると、

「事故が起きないようにぼくが結界を張ったです。

 いまこの公園は

 この付近にいる人間すべての記憶からは完全に消えています」

と理由を説明すると、

「へぇ…ディディアルってそんなことが出来るんだ」

真織は驚きと関心の声を上げた。

しかし、ディディアルは自慢することなく

「しーっ、静かに…」

とひととこ真織に注意をすると、

「あっゴメン」

ディディアルの注意に真織は慌てて口を手で覆った。

すると、

「言って置きますが、

 こう見えてもぼくのスキルは高いんですよ、

 他の天使と一緒にしないで欲しいですね」

と案の定、自慢げに話し始めた。


そして、同じ頃…

ハックション!!

早川家で留守番をしているシリアル・リンクと、

伊織と共に下校しているパラレル・リンクが同時に大きくくしゃみをした。

「(ぐずっ)、誰か噂をしているなぁ…」

鼻をかみながら二人は同じ事を呟く。



「で、なに?

 神将がこの近くに本当にいるの?」

屈みながら真織が小声で訊ねると、

「えぇ…いま、あそこで水を飲んでいます」

そう答えながらディディアルは池の真ん中にある噴水を指さした。

「うへぇ…あの水を飲んでいるの?」

そう言いながらしきりに真織は噴水の辺りに視線を送ったが

しかし、何度見てもそのような者の姿は見えなかった。

「本当にいるの?」

疑い深い目でディディアルを見ると、

「はい…

 人間の目から姿を消しているだけで、

 そこに居ます」

ディディアルはそう呟くと、

「でも、あんな汚い水を飲んで

 お腹壊さないの?」

呆れながら真織が尋ねた。

「まぁ、神将と言っても元は獣だから…

 その辺の衛生観念は無いと思ういますよ」

イヤそうな表情をしながらディディアルが答える。

「そうなんだ…」

「まぁ、元を正せば神様が自分の仕事の補佐をさせるために、

 12匹の動物を神様に仕立て上げたのがそもそもの始まりなのですが…」

「ふ〜〜ん」

ディディアルの説明に真織が大きく頷いていると、

「よし、じゃぁ早速変身してください。

 隙だらけの今なら簡単に封印できます」

そうディディアルが急かすと、

「あんな格好をするのはもぅ懲り懲りよ」

真織はそう言うとツンと横を向いてしまった。

「えぇっ!!

 でも変身しないと封印は難しいですよ」

真織の態度に困惑しながら思わずディディアルが口走ってしまうと

「え?、難しいってことは

 しなくても出来るの?」

パッと明るい表情で真織が聞き返した。

「(はっ)しまった!!」

「出来るの?、出来ないの?」

真織がディディアルに判断を求めると、

「そっそれはぁ…

 竜鉄槌だけを出す方法はありますが…」

渋々ディディアルがそう答える。

すると、

「ほぅら、出来るじゃないのっ

 サッサとその方法を教えなさいよ」

真織がディディアルを小突きながら尋ねた。

「もぅ…」

むくれながらディディアルが、

「そのブレスレットは3つのパーツが組み合わさって出来ています」

と言うと、

「そうなの?」

真織はブレスレットをシゲシゲと眺めると、

クックッ

っと動かしてみた。

すると、確かにブレスレットの一部が動いてく、

「あっ本当だ…」

真織のその言葉を聞いたディディアルは

「で、そのブレスレットの緑の石がついた輪と

 赤い石がついた輪を動かして

 真ん中の輪にあるにある四角い石にの所で3つ合わせて、

 呪文を詠唱して見てください、

 変身は起こらずに竜鉄槌だけが出て来ますから…」

とディディアルが説明すると、

「こう…こう…こうね」

真織は言われたとおりにブレスレットのリングを回し、

そして、立ち上がって呪文を詠唱した。

すると、変身は起こらず、

シュンッ!!

真織の目の前に竜の透かし彫りがされた枝を持った竜鉄槌が姿を現した。

「ようしっコレでいいわ」

満足そうに真織が竜鉄槌を手にすると、

ズシッ!!

ガクン!!

その重みで真織の両腕が簡単に伸びてしまった。

「あっあのぅ、無茶重いんですけど」

そう訴える真織に

「ホラ、言わんこっちゃない、

 あの衣装は、パワードスーツも兼ねていますから、

 変身もしないで竜鉄槌を持つとそうなってしまうんです」

半ばあきれ顔でディディアルはそう告げた。

「そう言うことは…先に言ってよ!!」

苦しそうに真織が文句を言うと、



「あっ見つかってしまった!!」

「え?」

ディディアルの声に真織が池を見ると、

『モォォォォォ!!』

獰猛そうなウシが真織を睨み付けながら前足を盛んにかいていた。

「ウ…シ…なの?」

ウシの気迫に押されながら真織がディディアルに訊ねると、

「そうです…獰猛さでは一二神将中ナンバーワンの”丑神将”です」

1・2歩下がりながらディディアルは答えながら、

「では、ぼくの仕事はここまでですから

 後はよろしくお願いします。

 頑張ってミッションをこなしてください」

そう言い残して去ろうとすると、

ムギュッ

いきなりディディアルの尻尾が踏みしめられた。

「痛たぁ」

ディディアルが飛び上がると、

「こらぁ、女の子を一人置いて何処に行く気?」

真織のせっぱ詰まった顔がディディアルに迫る。

「そっそんなこと言われましても、

 ここから先はぼくにはどうすることも…」

「男の子は最後まで女の子をエスコートするのが義務ってモノでしょう。

 言っておきますけど、ディディアルはあたしと運命共同体なんだからね」

ディディアルにそう言うな否や真織は鞄から紐を取り出すと、

素早く自分の足とディディアルの首とを結んだ。

「うわぁぁぁ、

 こっこれを外してくださぁい…」

「終わったら外してあげます」

ジタバタするディディアルに真織はそう告げると

竜鉄槌を肩で担ぎながら走り出した。

『ブモォォォォ!!』

それを見た丑神将はすかさず真織を追いかけ始めた。

「うわっきっ来たぁ!!」

引きずられるようにして後ろを見たディディアルが叫び声を上げると、

「間に合わないかっ

 仕方がない」

真織はその場に立ち止まると竜鉄槌を構えた。

ズシリ…

竜鉄槌の重さが真織の細い腕にのしかかる。

「くぅっ…」

賢明に堪える真織に

ズドドドドド!!

見る見る丑神将が迫って来た。

「うわぁぁぁ、来たぁ!!」

ディディアルはその場に蹲ると、

「ふぅぅぅ」

真織は肺の空気を抜いて気持ちを落ち着かせると、

大きく息を吸って、

「我の手元より、散りし一二神将よ、

 いま再び我の手元に集うべしっ

 丑神将っ」

と叫びながら竜鉄槌を振り上げた。

すると、

ドドドドド…ピタッ

間近に迫っていた丑神将はなんと真織の手前で止まってしまった。

「しまった!!」

その様子を見ていたディディアルが声を上げる。

「えっうわっあっだっだめぇ」

振り上げた竜鉄槌に振り回されるようにして、

真織が悲鳴を上げると、

そのまま、

ドガン!!

っと丑神将から全く別の所に竜鉄槌を落としてしまった。

『ブモォォホホホホ』

それを見ていた丑神将はまるであざ笑うかのような声を上げる。

「ムカつくわねぇ…」

丑神将の態度に真織が怒り出すと、

『真織さんっ、ムキにならないでください、

 いま下手に攻撃をしても向こうの思う壺です」

すかさずディディアルが忠告をする。

「そんなこと判っているわよ、

 でも、結構コイツ…」

真織は相手が一筋縄でないことに気づくと、

その攻略法を考え始めた。

そして、

チラリと園内を見回しながら、

「人は誰も居ないから、

 あの格好に変身しても構わないけど…

 でも、いざ変身しても丑神将を封印させる保証はないし…

 なんとかして、アイツの頭に血が昇れば…」

と考えていると、

ふと、自分が着ている天ヶ丘高校の制服が目に入った。

「そうか…その手があった」

真織の脳裏にある考えが浮かぶと、

「ディディアルっこっち!!」

と言うなり、

竜鉄槌をそのままに丑神将の目の前から素早く消えてしまった。

『ブモッ?』

丑神将は真織の行動を理解が出来ず暫くその場所に立っていると、

ウロウロと公園の中を歩き始める。

「なっどうするつもりなんです?、竜鉄槌を放り出して…」

「よしこの辺でいいかな?

 ディディアルはあっちを向いていて」

心配するディディアルを余所に真織はディディアルにそう言うと、

イソイソと制服を脱ぎ始めた。

そして、下着姿になると、

ブレスレットの石の位置を元に戻すなり、

手を掲げて再び呪文を詠唱した。

ブワッ

たちまち風がわき起こると。

瞬く間に真織の身体を包み込む、

そして、風が消えるとそこには

キシキシ

と音を立てるボンテージ衣装に身を包んだ真織の姿があった。

「なっなんで、どういう風の吹き回しなんですか?

 あれだけ嫌がっていたのに変身をするなんて…」

真織の姿を見ながらディディアルは驚いていると、

「この衣装は後で別のに変えて貰うとして、

 取り合えずいまは丑神将を封印することが第一とします」

真織はディディアルにそう告げると、

天ヶ丘高校の制服を抱えながら丑神将の所へと向かっていった。

そして、

「こらぁ丑神将!!

 さっきは良くもバカにしてくれたわねっ、

 今度はそうは行かないわよ!!」

と叫ぶと、

バッ、制服のスカートをその前に翳した。

『ブモッ…(ムカムカムカ)…』

真織りが翳す朱色のスカートにを見た丑神将は見る見るその目が血走っていく。

そして、

『ブモォォォォォ!!』

雄叫びを上げると真織に向かって突っ込んできた。

「うわぁぁぁ」

それを見たディディアルは悲鳴を上げるが、

「はっ」

真織は身軽にスカートを翻すと、

ズシィィィン!!

丑神将の身体はそのまま植え込みに突っ込んで行った。

「やっぱり、根はウシね」

丑神将の行動に真織は自信を持つと、

「ほらっ、何処を見ているの?

 こっちよこっち」

スカートをヒラヒラさせながら真織は竜鉄槌の所に丑神将を誘っていく、

そして、その誘いに乗るように丑神将が突撃してくると、

「もらった!!」

真織は竜鉄槌に飛びつくと、

「我の手元より、散りし一二神将よ、

 いま再び我の手元に集うべしっ

 丑神将っ」

と唱えながら突っ込んでくる丑神将の頭を思いっきり殴りつけた。

ゴォォォン!!

ブモォォォォォォォ!!

公園内に丑神将の絶叫が響き渡ると、

見る見る、丑神将の身体は光に包まれ、

やがて、

ヒラリ…

一枚の札となって真織の足下に舞い降りた。

「さっすがだなぁ…」

その様子を見ていたディディアルが驚きの声を上げると、

「えへへ…

 闘牛のことをふと思い出しちゃった」

真織がそう返事をすると笑みを浮かべる。

「ようし、ミッション終了です…

 もぅ公園の結界は要らないですね…」

ディディアルは真織にそう言ったとたん、

ヴン!!

天ヶ丘中央公園に張られていた結界が瞬く間に消えてしまった。

すると、

ゾロゾロ…

散歩の人などが公園内に入って来る。

「はぁ…終わったねぇ…」

公園内を歩き始めた人たちを眺めながら真織がため息をついていると、

何故か入ってきた人たちは皆一様に真織に視線を送ると、

サッ

と視線を動かしていく。

「?」

最初のウチはその意味が分からなかった真織だったが、

やがて、自分のいまの姿に気がついた途端。

「いやぁぁぁ…」

真織の悲鳴が公園内に響き渡った。



「えぇ…これ…ですか?」

夜…

真織の部屋にディディアルの残念そうな声が響いた。

「コレでいいのっ

 だから、ちゃんと登録しなさい」

「はぁ…」

ため息をつきながらディディアルが電子手帳を操作する向こうには

巫女装束姿の真織の姿があった。

「あんな、変な衣装に比べたらこっちの方がすっとマシよ」

そう呟く真織にディディアルは

「あっちの方が良いのに…」

と不満を漏らしながら真織のバトルスーツの登録変更を行っていた。

その一方で、

「何を見ているんだよ」

自室で真剣に雑誌を眺めている伊織にシリアルが訊ねると、

「うん…

 真織さん、コスプレに興味があるみたいだからね…

 ちょっと勉強を…」

伊織はそう答えるとコスプレ系の雑誌に目を通していた。



つづく