風祭文庫・レンタルボディの館






… もぅひとつのヒミコ …
「退院・そして…」


作・風祭玲
(原案者・TWO BIT・真城 悠)

Vol.019



「RENTAL BODY」シリーズの詳細については

http://homepage2.nifty.com/~sunasan/

を参照して下さい。




「華代ちゃん」シリーズの詳細については、

http://www.geocities.co.jp/Playtown/7073/kayo_chan00.html

を参照して下さい。





こんにちは。初めまして。私は真城華代と申します。

最近は本当に心の寂しい人ばかり。

そんな皆さんの為に、私は活動しています。

まだまだ未熟ですけれども、たまたまた私が通りかかりましたとき、

お悩みなどございましたら是非ともお申し付け下さい。

私に出来る範囲で依頼人の方のお悩みを露散させてご覧に入れましょう。

どうぞお気軽にお申し付け下さいませ。

報酬ですか?

いえ、お金は頂いておりません。

お客様が満足頂ければ、それが何よりの報酬でございます。

さて、今回のお客様は――



――朝の人通りの少ない道を学生服姿の一人の少年が歩いていく、

「ふわぁ…やっぱ、男の身体の方が一番だねぇ」

などと暢気なことを言っているのは鳥羽祐介君(17歳)。

彼は先月バイクの運転中、飛び出してきたネコを避けようとして転倒。

最寄りの病院に搬送され診察の結果、

約一ヶ月間のメディカルマシンによる集中治療を受けることとなった。

なお、集中治療にあたって学生生活に支障がでないよう、

両親・教師並びに医師による4者協議の末、

彼の意識を一時的にレンタルボディへ移植する事で合意。

結果、彼は一ヶ月間「女子高生」として生活することになり、

そして一ヶ月後…

治療は無事終了し彼の意識は元の体に戻ると、

めでたく普段の生活に戻ったわけである。…が


「はぁ…

 結局何事もなく一ヶ月が過ぎてしまったか…

 なんか変なことでも起きないかなぁ、

 でも、何も起きなくてよかった…

 それにしても女の身体は重かったし、

 何かと不自由だったから…

 なんだか、こぅ解放されたような気分だな」

と祐介は独り言を言うとふと視線を足下に落とした。

すると、そこには昨日まで来ていたプリーツのスカートではなく、

学生ズボンが2本の足を包んでいた。

「……………でも、あのスカートのヒラヒラした感覚も…良かったな…」

ズボンを見ながらふとそう思うと、

祐介は大きく首を振り、

「何を考えているっ、あれは親父の策略じゃないか」

と強く否定したものの、

しかし、

体育の時に履いたブルマや水泳の水着など

男のモノにはない包み込まれるような感触を思い出すと、

女の子の生活も良かったかなぁ…

などと、ついつい思ってしまっていた。

「えぇぇぃ、あんなモノに惑わされてはいかん」

ブンブン!!

クビを横に振って祐介は心の中の憧れを強く否定したが、

しかし、彼の心の片隅に引っかかるものがあった。

それは昨日、病院へこれまで借りていた身体を返し、

代わりに治療が終わった身体を受け取って家に帰ってきたとき、

彼の父親は戻ってきた彼の姿を見ると落胆することもなく、

一言「おめでとう」とあっさり彼に言った。

…女の身体で帰ったときにあれだけ舞い上がっていた親父が、

 落ち込むことなく祝福をしてくれた…

 どうも変だ…この退院、何かウラがあるのでは…

と祐介は勘ぐったものの、

しかし、別に当たる心当たりはさっぱり浮かばないので、

「とにかく早く学校に行ってクラスの連中に、復活した俺を見せつけてやらねば」

と決意を新たにしているとき、

「ニャン…」

ネコの鳴き声がした。

「ん?」

祐介が声がした方を見ると、

居た!!

そう、彼が交通事故を引き起こすきっかけとなった。

あの白黒斑のネコが…

「あ〜っ、見つけた!!

 貴様のせいで、俺はどれだけの苦労をしたと思ってんだ」

祐介は我を忘れてネコを追いかけ始めた。

しかし、

シュタッ!!

ネコはすばしっこく逃げ回ると

瞬く間に祐介はネコを見失ってしまった。

「ったくぅ、すばしっこい奴め」

と捨て台詞を言っていると、

「おにぃちゃん、何しているの?」

突然祐介を呼び止める声がした。

「え?」

彼が振り向くと、そこに一人の少女が立っていた。

「ん?僕に何か用?」

屈みながら祐介が少女に訊ねると、

「あのね、お父様から頼まれたんだけどね…」

と少女が言う、

…親父から…

イヤな予感が祐介の頭をよぎる。

「頼まれたのってなにかな?」

祐介は本能的に少女から少しずつ離れなから聞く、

「あのね…」

と少女がにっこりと微笑むと、

「そぉれっ」

とかけ声を発した。

ぶわっ!!

一陣の風が祐介の吹き抜けていった。

「…………」

反射的に構え、そして瞑った目を開けると、そこには少女は居なかった。

「なっなんだ?」

何が起きたのか飲み込めなかった祐介だが、

ムズッ!!

急に胸がくすぐったくなると、

彼の胸がムクムクと膨らみだした。

「わわわ〜」

それだけではなかった。

腕が白く細くなっていくと、肩が小さくなで肩へと変わり。

さらに、ウエストが細く括れ、ヒップが張り出してくると、

彼の体型はみるみる女性のものへと変わっていった。

「ひぃぃぃ」

伸びてきた髪が肩に掛かるようになると、

学生服も詰め入りからセーラー服へと変化して、

プリーツのスカートが足を飾った。

そして、全てが終わったとき、

そこにはセーラー服姿の少女が立っていた。

「うっ、嘘だろう…おい…」

ついさっきまで少年だった少女が自分の身体を見て驚く…

「おはよう、祐介っ。」

後からやってきた琴美が挨拶をする。

「あれ?、昨日退院したんじゃなかったの?

 じゃぁ、今日の体育は女子の方だね、

 先生のそう伝えておくね。」

と琴美は祐介を見ながら言うと走り去っていった。

「あははは…おそらく…もぅ…

 ずっと、女子の方だと思うよ…たぶん」

少女の口から引きつった台詞が漏れた。

「ネコの祟り?…まさか…」



おはようございます。真城華代です。

お父様より頼まれた依頼、無事完了しました。

すでに一ヶ月間女の子として生活してきただけに、

彼いや、彼女が生活になじむのも早いコトだと思います。

さて、何か困ったことがありましたら何なりとお申しつけ下さい。

今度はあなたの街にお邪魔するかも知れません。

それではまた。



おわり
(1999.09.13)