風祭文庫・華代ちゃんの館






「水泳部奇譚」


作・風祭玲

Vol.777





こんにちは、初めまして。

私は真城華代と申します。

最近は本当に心の寂しい人ばかり。

そんな皆さんの為に私は日々活動をしています。

まだまだ未熟な私ですが、

もしもお傍を通りかかったときなど、

お悩みなどをお申し出てください。

微力ながらご依頼人様のお悩みを露散させてご覧に入れましょう。

報酬ですか?

いえ、お金は頂いておりません。

お客様が満足頂ければ、それが何よりの報酬でございます。

さて、今回のお客様は――



真夏の太陽が照りつける夏休みのプール。

「はぁ、

 良いよなぁ女子は…」

そのプールサイドで水泳部員である俺・瀬川純一は

競泳パンツ一枚の姿で水しぶきを上げる女子水泳部員たちを見ていた。

キラッ

真夏の日差しを受けて輝く彼女達の身体を包む白い競泳水着、

白アシと呼ばれるその競泳水着に包まれた彼女たちは、

とても魅力的で、

そして何よりもセクシーであった。

「はぁ…

 俺も女だったら…」

白く輝く彼女たちを俺は羨望の眼差しで見ながら、

白アシを身につけて泳ぐ自分を思い馳せる。



ミーンミンミンミン

近くの木陰で蝉が大きく鳴き声を上げると、

ピッ!

ホイッスルの音が高らかに響き渡り、

タンッ!

スタート台の女子部員達は一斉に水面に向かって飛ぶと、

バシャッ!

ほぼ同時に水の柱を立てた。

「がんばれー!」

その途端、女子達から一斉に声援が挙がったとき、

「よーっ、

 瀬川っ

 余裕だなぁ」

突然、俺の背後から男の声が掛けられた。

「ん?」

その声に俺は振り返ると、

ドーン!

毛むくじゃらの脚とモッコリ盛り上がっている競泳パンツが数人分、

俺に迫って立っている様子が目に入ってきた。

「(ちっ、面倒くさい奴が来たな…)」

立ちはだかる脚を鬱陶しそうに思いながら、

俺は面倒くさそうに顔を上げると、

「自分は泳がずに女子部員の見学とは、

 優雅じゃないかよ」

と男共のリーダー格・笹川武が俺を睨みつける。

「ん?

 なんだ?

 予選落ちの笹川君じゃないか?

 僕に何か用かな?」

見下ろす武に向かって俺はわざとらしく言うと、

「なに?」

その武の口元が歪み、

「おいっ、

 いまなんて言った?」

と俺に向かって食って掛かる。

「ん?

 聞こえなかったのか?

 予選落ちの笹川君っ」

そんな奴に向かって俺はワザと語気を強めて言ってやると、

武の脚が一瞬、宙に浮き、

俺にめがけて飛び出してくるが、

「おっと」

その直前、俺は身をかわすと、

ガシッ!

武の脚は俺が残した湿り気を含んだ影を思いっきり蹴りつけた。

「いてぇ!!!」

その途端、武の悲鳴がプールサイドに響き渡り、

俺の前で痛む脚を庇いながら武はケンケン脚を始めだす。

「お前、バカか?」

そんな武に向かって俺はそういうと、

「もぅ勘弁ならねぇ!!」

何を逆恨みしたか武は怒鳴り散らし、

俺に殴りかかろうとするが、

素早く俺は奴の手をねじり上げると、

「プールサイドで暴れるなっ

 バカッ!

 水泳部員なら水泳の記録で競えよ!」

と言い聞かせるように怒鳴ると、

そのまま、プールに向かって突き飛ばした。

たちまち水柱が上がり、

キャァァァッ!

泳いでいた女子部員の悲鳴が響き渡る。



「また、お前らか」

顧問の美津柴が呆れた声を上げ俺達を見上げた。

ここは男子水泳部の部室、

俺と武は美津柴の前に並ばされ、

そして、美津柴の横には女子水泳部の顧問が腕を組んで立っていた。

「せんせー、

 先に暴力をふるったのは笹川くんでぇーすぅ。

 暴力はいけないと思いまぁーすぅ」

俺は棒読みで非は武にあることを言うと、

「なにをっ、

 お前が嗾けたんだろうが」

と武は俺に掴みかかってきた。

「止めろっ!」

そんな俺達に美津柴は怒鳴ると、

「瀬川に笹川っ

 お前らなぁ、

 俺が本気で怒る前にいい加減ケンカをするのは止めろよぉ」

身体をワナワナ震わせながら美津柴はそういうと、

「悪いのは笹川っ」

「悪いのは瀬川っ」

俺と武はお互いに指差した。

だが、

その直後、

「いい加減にしろっ!」

美津柴の怒鳴り声が響くと、

俺と武は罰として

明日、部活が終わったあとの

二人っきりのプール掃除を命じられたのであった。



「ちっ面倒くさいなぁ」

放課後、

そう思いながら俺は更衣室で競泳パンツに着替えようとするが、

だが、いくらスポーツバックを探っても俺の競泳パンツは出てこなかった。

「おっかしいなぁ?

 たしか、ここに?」

そう思いながら俺はバッグの中を探していると、

パサッ!

いきなり俺の目の前に白いものが投げつけられ、

「今日からあなたが着るのはそれよ」

と言う声とともに武が俺の前に現れた。

「なんだとぉ?」

俺はムッとしながら武を睨みつけるが、

「あれ?」

水泳部のジャージを着る武のシルエットがどこかおかしい。

背は小さく、

肩は細く、

そして、全体に華奢に見える。

「さっ笹川か?」

そんな武の姿に俺は思わず聞き返すと、

「ふっ」

武は憂う表情を一瞬して見せ、

徐にジャージを脱いで見せた。

すると、

ムチッ!

ジャージの下から出てきた武の身体には

女子用の競泳水着・俗に言う白アシが着せられていて、

それどころか、

武の胸は膨らみ、

ウェストは括れ、

ヒップは大きく張り出していたのであった。

「なっ、

 おっ女ぁぁぁ?」

ツルリとしたMラインに脛毛が一本もなく、

ムッチリとした太ももを見せられた俺は思わず指さして叫んでしまうと、

「うふっ、

 見てぇ…

 あたし女の子になっちゃたのよ」

と武は媚びた声で俺に向かって言う。

「なっ、

 何があったんだ一体…」

あの武が女になってしまった。

俄に信じられない現実に俺は混乱すると、

ドタドタ…

突然、武と同じ白アシを身に着けた少女達が乱入してくるなり、

「瀬川っ!

 あなたもわたし達と同じになるのよっ」

と俺を指差し叫び声を上げた。

「はぁ?

 一体、何がどうなって?」

状況がさっぱり読めない俺は小首を捻ると、

「先生っ

 どうぞ、こちらです」

と彼女たちは外に向かって声をかけた。

すると、

「はーぃ!」

という元気の良さそうな女の子の声がひびくと、

トタタタタッ!

年は10歳ぐらいだろうか、

フリルのついた白いワンピースに、

つば広の帽子を被った少女が部室に入ってくると、

キラキラと目を輝かせながら俺を見詰めた。

「えっ

 えぇっと、

 きっ君は?」

あまりにも突然の展開に俺は困惑しながら名前を尋ねると、

「はい、これ」

と少女は言いながら1枚の名刺のような紙を差し出した。

「なになに?

 ココロとカラダの悩み、お受けいたします 真城 華代」

渡された名刺にはそのように書いてあり、

俺がその文面を読み上げると、

「はーぃ、

 ココロとカラダのカウンセラー 

 兼。

 心の奥に秘めた密かな願望をかなえて差し上げる

 夢の執行人の華代ちゃんですっ」

と少女・華代は胸を張る。

「で、そのカウンセラーが俺に何のようで?」

胸を張る少女・華代に俺は尋ねると、

「うふっ、

 判ってます判ってます。

 瀬川純一君。

 あなたは白アシの似合う女の子になりたいんでしょう?

 華代ちゃんは全てお見通しよ」

と華代は俺に近づくとそっと耳打ちをした。

「え?

 別にそんなことは考えてないけど」

そんな華代に向かって俺は言い返すと、

「うふっ、

 そう言い切れるの?

 じゃぁ、なんで、

 いつも女の子ばかり見ているの?

 女の子になって白アシを着てみたいって思っているからでしょう?」

と華代は俺の心に真ん中に楔を打ち込んだ。

「うっ」

あまりにものの的確なその指摘に俺は言葉を詰まらせると、

「うふっ」

華代は小さく笑い。

「あの笹川武君を見なさい。

 彼もまたあなたと同じように白アシに憧れていたのよ、

 でも、華代ちゃんが堂々と着られる身体にしてあげたら、

 ほらっ、

 とっても幸せそうでしょう?」

と囁いた。

「え?

 そっそうか?」

その言葉に俺は戸惑いながら武を見ると

「(やはり、あいつは武だったのか、

  ちくしょー

  白アシが眩しいぜ)」

とムッチリとした身体を包む武の白アシを羨ましそうに眺めた。



すると、

「さぁ行きますよぉ」

そう掛け声をかけながら華代は大きく振りかぶると、

「今日はなんかとっても大切な記念日だそうだから、

 心を込めて術を掛けてあげます。

 そうれっ!」

と声を張り上げて手を降ろした。

すると、

ドワッ!

部室の中を猛烈な風が吹き抜け、

「うわぁぁぁ」

その風に俺は吹き飛ばされまいと、

ロッカーにしがみついた。

だが、その風は長くは続くことはなく、

程なくして収まってしまうと、

まるで何も無かったかのように更衣室は静まり返った。

「なんだ?

 なにがあった?」

突風が嘘だったかのように静まり返ってしまったことに

俺はキョロキョロと周囲を眺めるが、

既にそのときには俺の変身は始まっていたのであった。

無駄なく鍛えてあげていた胸板が突然消えると、

プルンッ!

その代わりにバストを思わせる膨らみが突き出し、

さらに、

キュッ!

ウェストは括れると、

ムチッ!

ヒップは大きく膨らんでいく。

俺の変化はこれだけではなかった

ミシッ!

肩幅は狭くなり、

手足は細く、

覆っていた体毛が消えていくと、

俺の股間から男のシンボルは消え、

縦に彫られた溝が刻まれていく。

そして、それから程なくして、

内股になった腿をピタリと閉じて、

飾り毛が覆う股間と、

たわわに膨らんだバストを俺は隠しながら、

「いやぁぁん、

 女の子になっちゃったぁ」

と俺は叫んでいると、

パラッ!

さっきの風で巻き上げられたのか、

俺の顔に白アシが落ちてきた。

「うっ

 これって、

 要するに…

 俺…じゃなくてあたしにこれを着ろ。と…」

白アシを手に取りながらあたしはそう呟くと、

その心にはもはや躊躇いも、

恥ずかしさも無くなり、

あたしはバストを揺らしながら、

白アシに脚を通すと、

ピチッ!

女となってしまた身体を白アシは優しく、

そして、引き締めるそうに包み込み、

あたしは女子水泳部員になってしまったのであった。

「これが、白アシの感覚…」

自分の身体を包む白アシの感触を確かめていると、

「うふっ、

 さぁ、一緒にプールへ行こう」

と武があたしの手を引いた。

「うん」

その声にあたしは笑顔で返事をすると、

二人揃ってプールへと向かっていく。

そう、あたし達は女の子なのだから…



今回の依頼も実に簡単でした。

武さん、純一さん、

これからは女子水泳部員としてのご活躍をお祈りします。

今度はあなたの街にお邪魔するかも知れません。

それではまた。



おわり