風祭文庫・華代ちゃんの館






「勇輔の趣味」


作・風祭玲

Vol.700





こんにちは、初めまして。

私は真城華代と申します。

最近は本当に心の寂しい人ばかり。

そんな皆さんの為に、私は活動しています。

まだまだ未熟ですけれども、たまたま私が通りかかりましたとき、

お悩みなどございましたら是非ともお申し付け下さい。

私に出来る範囲で依頼人の方のお悩みを露散させてご覧に入れましょう。

どうぞお気軽にお申し付け下さいませ。

報酬ですか?

いえ、お金は頂いておりません。

お客様が満足頂ければ、それが何よりの報酬でございます。

さて、今回のお客様は――



「あっあの、

 和田キャプテン…」

男子の競技用競泳パンツ・白アシを穿かされ、

そして、恥ずかしげに胸を隠しながら1年の水上香織が声を掛けると、

「なに?」

と男子水泳部キャプテンの和田勇輔は笑みを浮かべながら返事をした。

「和田キャプテンはどうして女子の水着に興味があるのですか?」

そんな勇輔に香織は質問をすると、

「そうだな…」

勇輔は考える振りをする。

考え込む勇輔の身体には香織が着ていた競泳水着が水に濡れ、

ピッタリと張り付くと、

月の光を受けキラキラと輝いていた。

「僕は前から女の子になりたかったんだよ、

 この男の身体で居るのがイヤだったんだ、
 
 だから、こうして女子の水着を着て、
 
 その時だけも女の子の気分になりたかったんだよ」

と勇輔は心の内を香織に告白した。

「そんな…

 和田キャプテン、
 
 まさか、ニューハーフになるつもりなんですか?」

それを聞いた香織は驚き、

思わず問いただすと、

「いや、そこまでは…」

と勇輔は困惑した表情で返事をする。

すると、

「キャプテン、

 女の子になりたいなんてことは考えないでください」

と香織は身を乗り出すなり、

「女子部員のほとんどはキャプテンに憧れをもって居るんです。

 キャプテンが男子部を引っ張っているのを見て
 
 みんな頑張って居るんです。
 
 だから、それを引き裂くようなマネだけはしないでください」

そう力説をした。

「そっそうか?」

「そうですとも…

 だから、あたし、
 
 キャプテンの力になれたら…
 
 と言う一心で競泳パンツを穿いて居るんです。
 
 キャプテンが望まれればあたし、
 
 どんなでも格好もします。
 
 だから…」

縋るようにして香織は言う。

「うっ、

 判った判ったよっ

 だから…
 
 なっ、
 
 君の競泳パンツ姿を良く見せてくれ」

と勇輔は請うと、

「はっはい…」

香織は勇輔から離れ、

その股間を隠す男子用の競泳パンツ・白アシのみの姿を見せた。

女性の身体に戒めのように張り付く白アシを勇輔は満足そうに眺めると、

「美しいよ、

 まるでマーキュリーのようだ…」

と思わず呟いた。

「え?」

それを聞いた香織は少し驚くと、

「あぁ、

 ゴメン…
 
 いや、君の姿を見ていたらふとそう思えて…」

と勇輔は顔を赤くしながら俯いた。

「マーキュリーってギリシャ神話の神ですね」

腰を下ろしながら香織は聞き返すと、

「あぁ…

 いつも水平線近くに出ていて、

 太陽を追いかけるようにして直ぐに消えていく、
 
 どことなくスイマーに似てないか?」

と勇輔は言うと、

「うふっ

 和田キャプテンって面白いですね」

香織は感心したように返事をし、

「女の子になりたくて水着を着たと思えば、

 そうやって、水泳の事をいつも考えている。

 女子部の狩野キャプテンよりとは比べものにならないくらい」

と褒め言葉を織り交ぜながら続ける。

「あはは、

 そうか?」

その言葉に雄輔は笑うと、

「はいっ、

 だから、
 
 今のところでガマンしてください、
 
 お願いします」

と香織はそう言うと頭を下げた。



その翌日、

「キャプテン、

 お疲れ様です」

「おうっ」

その日の練習が終わった部室に一足先に帰宅する部員達の声が響き渡り、

そんな彼らを勇輔は送り出していく。

そして、

「じゃっ鍵をお願いいたします」

の声と共に最後に副部長が出て行くと、

ポツリ

部室には勇輔1人が残っていた。

「さて、

 みんな帰ったか」

皆居なくなったことを幾度も確認しながら、

勇輔は鍵を下ろすと、

「ふっ」

香織と交換して得た女子の水着を手に取り、

そして、ニンマリと微笑むと、

クンクンと臭い始めた。

ムッ

水泳部の練習で染みこんだ塩素の香りを嗅ぐうちに、

ムクッ

勇輔の股間は急速に硬くなっていく、

すると、

ギュッ!

それを押さえつけるように、

股間を締めながら、

「はぁ、女の子になり…」

と呟いたとき、

「おにぃ〜ちゃんっ」

といきなり少女の声が響いた。

「うわぁっ」

突然の呼びかけに勇輔は思わず声を上げて

振り返るとそこには一人の少女が立っていた。

「あらっ、驚かしちゃった?

 ゴメンね
 
 はい、これ」

驚く俊輔に少女は軽く謝ると、

1枚の名刺のような紙を差し出す

「なになに?

 ココロとカラダの悩み、お受けいたします 真城 華代」

と名刺には書いてあり、

その文面を読み上げると、

「悩みの相談?」

と勇輔は訝しげに訊ねる。

「うん

 そうよ、」

その問に少女は笑みを浮かべながら頷くと、

「うーん、

 悩みねぇ…」

そう呟きながら勇輔は考えるぞぶりをした後、

「今度の大会で優勝かな?」

と返答をした。

すると、

「むーっ

 残念ながら華代ちゃんにとって”勝利の女神”は管轄外なので、

 その願いは却下です」

と華代は胸を張って返事をした。

「なにそれ?」

その返事に勇輔は眉を寄せると、

「それ以外でお願いすます」

と華代は言いきった。

「それ以外ぃ?」

華代の申し出に勇輔はため息をつきながら部室をぐるりと見回すと、

「んじゃ、

 この汚い部室を綺麗にする」

と言うと、

「ブーッ!!」

華代は再び拒否をし、

「部屋の片付けは華代の仕事ではありません」

と告げる。

「じゃぁ、

 何が出来るんだい?

 雨を降らせる?
 
 地震を起こす?
 
 競馬の予想?
 
 それとも、俺を女にしてみせるか?」

手当たり次第勇輔は言うと、

ピクッ

その最後に言った言葉に華代の耳が動き、

キラッ☆、

つぶらな瞳が一際輝いた。

「え?」

華代の変化に勇輔は身を引くと、

「ふむ、

 ちゃんとあるじゃない、
 
 女の子になりたいってお願いが」

そう言いながら華代はゆっくりと迫い始めると、

「え?

 あっそれは…
 
 その、つい勢いで」

迫ってくる華代を引き留めるように両手を差し出し、

勇輔は拒否するように言う。

だが、

「さっき、お兄ちゃん、

 女の人用の水着を抱きしめて似たようなことを言っていたよね」

と華代が現れる直前、

勇輔が呟いていたことを指摘した。

「うっ

 きっ聞いていたのか」

華代のその指摘に勇輔は次第に追いつめられていくと、

「ふふっ

 華代ちゃんにすべてをまかせればいいのよ、
 
 大丈夫、
 
 痛くしないから」

そう言いながら、

華代はゆっくりと両手を挙げ、

そして、

「あっという間よ、

 あっという間にお兄ちゃんはお姉ちゃんになるわ

 その水着がとっても似合うお姉ちゃんにね」

と告げるなり、

「そーれっ!!」 

華代のかけ声が響き渡り、

同時にブワッと突風が部屋の中を駆け抜けていった。

「えっ

 うっうわぁぁぁ?」

その風と共に勇輔の身体は変化してゆく。

…シュゥゥゥッ

絞られるように見る見る細くなっていく腕… 

…プクゥゥゥッ

風船が膨らむように2つの膨らみが盛り上がっていく胸…

…キュゥゥゥッ

引き締まり細く括れていく腰… 

…ムリッ!!

大きく張り出すお尻…

…ズズズズズッ
 
そして、身体が小さくなっていくと、

サワッ…

伸びた髪が首筋にまとわりつきはじめだした。

「か、華代ちゃん…

 これは一体…」 

変化してゆく身体を身ながら、

勇輔がようやく発したときは、

すでにその声は少女の声になっていた後のことだった。

「!!っ」

女性の声が飛び出した事に勇輔は口を押さえていると、

「じゃぁ、次はその格好ね

 これは華代ちゃんからのサービスよ」

と華代が言うなり、

「それっ」

再びかけ声をかけた。 

すると身体の変化に置いて行かれ

すっかりダブダブになっていまっていたジャージが姿を消すと、

シュッ!

勇輔が持っていた水着が姿を消したのと同時に、

ピチッ!

っとその身体に張り付いた。

「うわっ!」

文字通り女子スイマーを化してしまった自分の姿に勇輔が驚いていると、

「はーぃ、

 以上で終了です。
 
 じゃ、立派な水泳選手になってくださいね。

 オリンピック楽しみにしていますから」

と華代は言い残し、

フッ!

その姿を消してしまった。

「そんな…

 僕が女子部員だって?
 
 これからどうすれば…」

胸からツンと盛り上がる乳房を身ながら勇輔は呆然としていた。



今回の依頼も実に簡単でした。

勇輔さん、

女性スイマーとしてぜひオリンピックに出てくださいね。

さて、何か困ったことがありましたら何なりとお申しつけ下さい。

今度はあなたの街にお邪魔するかも知れません。

それではまた。



おわり