風祭文庫・華代ちゃんの館






「奉納相撲」



作・風祭玲


Vol.361





こんにちは、初めまして。

私は真城華代と申します。

最近は本当に心の寂しい人ばかり。

そんな皆さんの為に、私は活動しています。

まだまだ未熟ですけれども、たまたま私が通りかかりましたとき、

お悩みなどございましたら是非ともお申し付け下さい。

私に出来る範囲で依頼人の方のお悩みを露散させてご覧に入れましょう。

どうぞお気軽にお申し付け下さいませ。

報酬ですか?いえ、お金は頂いておりません。

お客様が満足頂ければ、それが何よりの報酬でございます。

さて、今回のお客様は――



ミーンミンミンミン!!

忙しなく降り注ぐ蝉時雨の中、

「はっけよぉーぃ!!

 残った!!」

とある神社の境内では相撲大会が催されていた。

「うりゃっ」

「でやっ」

日に焼けた肌を晒しながら白廻し姿の少年達が

土俵の上で全力を出し切っての勝負が始まると、

「ガンバレー」

「押せー」

観客席から盛んな声援が飛ぶ。

ところが、

「はぁ…」

これからの取り組みを待つ廻し姿の少年達の中でただ一人、

中学2年の植木直也は浮かない顔をしていた。

「どうしようかなぁ…」

「出たく無いなぁ…」

色白でさほど逞しくもない直也は

足で地面に幾何学的な模様を書きながらそう呟いていると、

「ようっ」

と言う声と共にでっぷりとした体格の少年・高橋淳哉が彼に声を掛けてきた。

「うっ、高橋君…」

淳哉の姿を見た途端、直也はそう呟くと、

「へへっ

 なんだ、女のお前が相撲を取るのかよっ

 ふ〜ん、全然オッパイが無いじゃないかっ」

そう言いながら淳哉はジロジロと直也の身体を見る。

すると、

「うるさいっ

 僕は男だ」

淳哉のその言葉に直也はそう言い返すと、

「なんだとぉ!!

 オカマのクセに生意気なんだよっ」

淳哉はそう怒鳴り、

ドンッ

っと直也を突き飛ばした。

「あっ」

その弾みで直也が尻餅を付いてしまうと、

その途端、

「こらっ!!

 直也くんに何をするのよっ!!」

という怒鳴り声と共に一人の少女・須藤冬実が淳哉の前に立ちはだかった。

淳哉は冬美を一瞥しながら、

「なんだぁ、男女が出る幕じゃねぇよ」

吐き捨てるようにして言うと、

「なんだってぇ〜っ!!」

そう言いながら冬美は淳哉の腕をねじ上げてしまった。

「イテ

 イテテテ
 
 判った、
 
 判ったから離してくれ!!」

腕をねじ曲げられた淳哉は悲鳴を上げると、

「土俵の上じゃぁ容赦しないからなぁ!!」

と捨て台詞を残してすごすごと立ち去って行った。



「ほらぁっ

 いつまで座っているのよっ」

淳哉が去った後、

冬美は直也の方を見るなりそう言って直也の手を掴むと、

グイッ

っと引き上げた。

「…………」

事実上冬美に助けられ、バツが悪いのか直也は黙っていると、

「はいっ

 頑張って、あの高橋のバカをやっつけるのよっ」

と冬美は言うと直也の肩を叩く、

しかし、

「もぅいいよっ」

膨れっ面をしながら直也は怒鳴るようにそう言いながら冬美の手を叩くと、

スタスタ

っと控えの所から歩き出してしまった。

「ちょちょっと

 取り組みはまだでしょう?」

そんな直也の後を冬美は追いかけていくと、

「相撲は取らないっ

 帰るっ!!」

直也はそう言い残すとそのまま更衣室へと向かって行ってしまった。

「ダメよっ

 これはお祭りなのよっ

 男の子は全員参加しなくてはいけない決まりじゃない」

直也の手を引き留めながら冬美はそう訴えるが、

「うるさいっ

 だったら冬美が僕の代わりに相撲を取ればいいじゃないかよ

 どうせ、僕には高橋を倒す程の力は無いよ」

振り向きながら直也は冬美に向かってそう怒鳴った。

その途端っ

「あのねっ

 あたしは女の子なのよっ
 
 土俵の上に上がれるわけがないでしょう?」

顔を真っ赤にして冬美がそう言い返すと、

「あのぅ…

 お取り込み中の所申し訳ありませんが…」

と言う少女の声が響いた。

「ん?」

「はい?」

その声に二人が声がした方を見ると、

サワッ

年は直也達より年下…

夏風に腰まで延ばした髪を揺らせ、

涼しげなワンピースに白く大きな帽子を被った少女が立っていた。

「あのぅ…」

「何か用ですか?」

直也と冬美は少女に向かってそう尋ねると、

「はいっ」

そう言いながら少女は一枚の名刺を差し出した。

「ココロとカラダの悩み、お受けいたします 真城 華代」

直也と冬美は声をあげてその名刺に書かれている文句を言うと、

ニコッ

「はいっ

 契約成立ですね」

と少女・華代は笑顔で微笑んだ。

「え?

 契約ってまだなにも…」

華代の言葉に戸惑いながら直也はそう言うと、

「まぁまぁ、

 固いことは言わない言わない。

 で、お兄ちゃんの悩みって何?」

と目を輝かせながら華代は直也に尋ねると、

「え?

 僕の悩み?」

華代が繰り出した唐突な質問に直也は思わず困惑してしまった。

「ん?

 お兄ちゃん、ここの相撲大会に出るんでしょう?

 それでいま、そこの彼女とケンカをしていたみたいだけど、

 それって立派な悩みじゃないの?」

首を捻りながら華代は直也に向かってそう尋ねると、

「ちょちょちょっと、

 華代ちゃん!!
 
 冬美は僕の彼女なんかじゃないよ」

「そうよっ、たっただの幼馴染みよっ」

華代にそう指摘された直也と冬美は慌てて華代にそう訂正させた。

「え?、違うの」

「まっまぁ…ね」

「ねぇ華代ちゃんっ

 悩みの相談って言うけど、
 
 一体何を解決できるの?」

華代を信頼できない表情で冬美がそう尋ねると、

「大丈夫っ

 華代に出来ないことは無いわよっ」

華代はポンッと胸を叩いてそう言いきった。

「はは、

 大した自身だね。
 
 じゃぁ、この相撲大会で僕があの高橋に勝てるようにすることは出来るのか?」

華代の言葉に直也はそう尋ねると、

「えぇ!!

 できますわっ」

そう返事をしながら華代は胸を張る。

「へぇ、

 どんなことをするんだい?」

その方法を直也は尋ねると、

「えへへへ…

 それは企業秘密よ」

華代はウィンクをしながらそう返事をした。

「はぁ?」

その言葉に直也は眉間に皺を寄せると、

「おーぃ、植木っ

 出番ぞぉ!!」

と言う声が響き渡った。

「え゛っ」

それを聞いた直也の表情が途端に曇ると、

「さーさ、

 出番出番」

冬美は嫌がる直也を引きずるようにして土俵へと連れて行ってしまった。

すると、

「あっちょっと…

 依頼はそれで良いんですね…」

置いてきぼりを食らった形になってしまった

華代は引きずられていく直也に向かってそう聞き返していた。



「ようっ

 逃げもせずに良く出てきたな」

土俵上では既に淳哉が直也が来るのを待っていた。

「べっ別に?」

「へへっ

 土俵の上じゃぁ手加減無しだ」

嬉しそうな顔をしながら淳哉はそう言うと、

グッ

両腕を静かの下げるとしきり線に付け、

ググッ

っと身体の筋肉を盛り上げた。

「うっうわぁぁぁ…

 勝てるわけはないだろうに」

そんな淳哉の姿に直也はすっかりビビってしまうと、

「がんばれ!!」

土俵の下から冬美が直也を応援し始めた。

「ったくぅ…

 冬美はいいよ…」

そんな冬美の姿を苦々しく思いながら直也はそう呟くと、

渋々、しきり線へと向かっていった。

「はっけーよーぃ」

そう言いながら審判の腕が下がる。



ちょうどその時、

スゥゥゥ

土俵から少し離れたところで華代は大きく深呼吸をするとゆっくりと手を上げ始めていた。

そして、

グッ

っと直也と淳哉の取り組みが始まろうとしている土俵を見据えると、

「では、行きますよぉ…

 そうれっ!!!」

っと声をあげながら両手を振り上げ、

そして、勢いをつけて思いっきり振り下ろした。

その途端、

ゴッ!!!

「うわっ」

「きゃぁぁ」

「なんだ?」

土俵を取り囲むかのように旋風がわき起こると、

直也や淳哉、そして、冬美や取り組みを控えている淳哉達を皆巻き込んでしまった。

ゴワァァァァァァ

旋風は10秒ほど吹き荒れると、

まるでウソのように四散霧消してしまった。

「なんだったんだ?」

「さぁ」

呆気なく消えてしまった旋風に皆が呆然としていると、

「はっけよーぃ」

審判の声が再び響き渡った。

「あっ」

その声に諭されるようにして直也と淳哉が仕切り線に手をつけると、

ムリッ!!!

正面の淳哉の胸が震えるように動いた。

「え?」

それに気づいた直也が驚くと、

「おいっ

 やる気あるのかっ」

そんな直也に向かって淳哉が警告をした。

「いっいやっ

 でっでも…」

ムリムリ…

と膨らんでいく淳哉の胸を指さしながら直也はそう呟くと、

「ん、なんだお前のその胸は…」

今度は淳哉が直也を指さした。

「え?」

淳哉の指摘に直也は自分の胸を見ると、

プクッ

これまで平面だった直也の胸に小さな膨らみが姿を見せていた。

「わっわっ

 なにこれぇ!!」

膨らんでいく胸に驚いた直也が両手で隠すと、

ジワッ

「あんっ」

何時のまにか固くなっていた乳首に手が当たると、

直也は思わず声をあげてしまった。

「わはははは…

 なんだ、その声は…
 
 って…なに、おっ俺の声がぁ!!」

直也のそんな様子をせせら笑っていた淳哉だったが、

しかし、彼の声がまるで少女のような声色に変わって居ることに気づくと、

顔を真っ青にして悲鳴を上げた。

そして、異変は土俵上だけではなく、

土俵下で取り組みを待っていた淳哉達にも襲いかかっていた。

「うわっ

 なんだこれぇ!!」

「いやぁぁ

 オッパイがぁ!!」

「さわらないでぇ」

次々と少年達の胸に膨らみが姿を見せると、

腰が括れ始め、

そして、ヒップが大きくなっていった。

「なっなに?

 一体何が起きたの?」

廻し姿の少年達が皆乳房を振るわせ

そして少女のような悲鳴を上げて逃げまどう中、

冬美は一体何が起きたのか理解する事が出来ずに呆然と立っていた。

そして、そんな冬美にも異変は起きていた。

スゥっ

彼女の胸が次第に軽くなっていくことに気づくと、

「え?

 やっだっ
 
 むっ胸がっ」

スルリ…

”支え”を失ったブラが上へと上がり、

そして、

モリッ!!

彼女のスカートの中では男のシンボルがゆっくりと鎌首をもたげ始めていた。



「どっどうなってんだ?

 これぇ」

見る見る変化していく身体に直也が驚いていると、

スルリ…

腰の形が変わってしまったために、

締めていた廻しが解け始めた。

「うわっ」

その様子に慌てて直也が落ちていく廻しを受け止めると、

「え?

 そんな…
 
 ナニが無い!!」

男のシンボルが消えてしまった股間に直也は目を丸くした。

すると、

「ねぇっ

 廻しを締めなさいよ」

と言う女性の声が響くと、

すっかり女性化した淳哉がタップンと触れる乳房を揺らせながら廻しを締め直していた。

「え?」

その光景に直也が驚くと、

「なによっ

 どうせ女同士でしょう?

 別に遠慮することはないじゃないっ
 
 さぁいくわよぉ」

淳哉はそう言うとゆっくりと仕切り線に両手をついた。



「そんなぁぁぁぁ!!」

廻し姿のナイスバディの女性達が見守る中、

直也の悲鳴が境内に響き渡った。



さて、今回のミッションも実に簡単でした。

相手が女の子になって仕舞えば問題は…

あっあれ?

なんで、みんな女の子になっているの?

おっかしいなぁ(何処で間違えたのかしら)

まぁいいわっ

直也君っ

女の子同士ならハンデは小さくなったでしょう?

さて、次はあなたの街にお邪魔するかもしれません。

華代はいついかなる時でも悩めるあなたの元に参上します。

ではまた会う日まで

では