風祭文庫・華代ちゃんの館






「彼の願い」



作・風祭玲


Vol.200





こんにちは、初めまして。

私は真城華代と申します。

最近は本当に心の寂しい人ばかり。

そんな皆さんの為に、私は活動しています。

まだまだ未熟ですけれども、たまたま私が通りかかりましたとき、

お悩みなどございましたら是非ともお申し付け下さい。

私に出来る範囲で依頼人の方のお悩みを露散させてご覧に入れましょう。

どうぞお気軽にお申し付け下さいませ。

報酬ですか?いえ、お金は頂いておりません。

お客様が満足頂ければ、それが何よりの報酬でございます。

さて、今回のお客様は――



「ふぅ……」

梅雨入り直前のある晴れた朝、

学生服姿の一人の男子高校生・藍沼孝が

ため息をつきながら学校へと続く道を歩いていた。

ザワザワ…

彼の周囲には同じ漆黒の学生服に身を包んだ学生達が学校へと向かって歩いて行く。

「はぁ…」

その様子を一目見て孝は再びため息をつくと、

「憂鬱だなぁ…」

とポツリと呟いた。

その途端、

「おはようございます!!」

と言う声と同時に、

真新しさが漂う制服に身を包んだ男子学生数人が彼を追い越していく、

「………」

そんな彼らの姿を彼は無言で見送っていた。

「男に挨拶されてもなぁ…」

ポリポリ…

頭を掻きながらそう呟くと彼は足取り重く再び歩き出した。

「はぁ…せめて、俺の隣に

 髪が腰まで長く、

 やや控えめで、

 傍にいるだけで心休まるような女の子が居てくれたらなぁ」

などと呟きながら歩いていると、

「それが、お兄ちゃんの望みですか?」

と言う声が響いた。

「え?」

彼は立ち止まると周囲を見渡しながら声の主を捜し始める。

ツンツン

すると彼の脇腹がつつかれ、

「ここよ…ここ…」

と囁かれた。

「!!」

バッ

っと彼は身を翻すと、

「えへへ…」

「きっ君は?」

突然現れた少女の姿に彼は驚き、そして声を上げると、

「はいコレ…」

そう言って少女はポシェットより名刺を取り出すと彼に手渡した。

「ココロとカラダの悩み、お受けいたします 真城 華代?」

と彼は名刺に書かれている文句を読み上げた。

「はいっ」

それを聞いた少女・華代はそう返事をして微笑みながら、

「お兄ちゃん…

 なにか深刻な悩みがあるように見えたけど、

 もしも良かったら華代に相談して」

と彼女は孝に告げた。

「悩み?」

彼は怪訝そうな視線を華代に向けると、

「あっ、その目はあたしを疑ってますね。

 でも、華代に出来ないことは無いんだよ」

と言いながら華代は胸を張った。

「なんだそりゃぁ?」

孝がそう言うと、

「で、お兄ちゃんの悩みだけど、

 ひょっとしてさっきの言っていたのは、

 お兄ちゃんの悩み?…

 だったら、もぅちょっと華代に詳しく教えて」

と華代は孝の手を引っ張りながらせがんだ、

「うん?、

 あぁ…実は…

 俺んちって爺っちゃんから代々の医者でね…

 で、俺も親父やお袋から将来医者になるように

 って言われてきたんだ」

「あらまぁ…」

それを聞いた華代が両手で口をふさぎながら返事をすると、

「まぁ、それはそれで良いんだよ、

 俺も医者になった方が何かと便利だから…
 
 ただなぁ…
 
 親父から”医大に入るにはこの高校が有利だから”

 と言う理由で半ば強制的にこの東進高校を受けさせられたんだけど…」

と言いながら孝は露骨にイヤな顔をした。

「何か問題でも?」

華代の問いに孝はオーラを吹き上げながら、

バッ

「判らないのかっ、この葬列のような男どもの流れを!!」

孝はそう声を張り上げると、

「女が居ないのだよ、女が…

 毎朝一時間以上髪におしゃれに気を遣い、

 キラキラと輝く髪と
 
 コロンの香りが香しいセーラー服、

 そして、短いプリーツのスカートから覗くピチピチの股!!

 とツンと上向く胸の膨らみ!!

 これらを兼ね備えた人間がこの学校には全く居ないのだよ!!」

と華代に迫りながら付け加えた。

「はっ、はぁ…」

孝の異様な迫力に華代は押されるように返事をする。

「あーぁ、この周りにいる薄汚く汗臭い野郎どもが、

 みな女の子だったら僕はどんなに幸せだったか!!」

そう孝は言うと、

ガックリと項垂れてしまった。

「うふふふ…」

彼の演説を聞いた華代は含み笑いをすると、

「…出来ますよ」

とポツリと呟いた。

「え?」

その言葉に孝は信じられない顔をすると、

「そう言うことなら、この華代ちゃんに任せて!!」

と言いながら華代は

ドンっ

と胸を叩くと、

「じゃぁ、ちょぉっと準備をしないとならないから、

 孝さんは先に学校に行って下さいね」
 
華代はウインクをしながら彼の元から去っていった。



キーンコーン…

ガヤガヤ…

登校してきた学生達の喧噪に包まれている教室で

孝は難しい顔をして座っていた。

「おっす、藍沼っ」

そう挨拶をしながら彼の隣の席に男子学生が座ると、

「どうしたんだ?、

 いつも以上に難しい顔をして…」

と尋ねたが、

「………」

孝はそれには答えなかった。

「なんだ?」

憮然とした表情を彼がすると、

「あの華代って娘…俺を馬鹿にしたのか?

 大丈夫…って言ったって、

 何かあてでもあるのか?

 大体そんな女の子をどこから連れてくるというのだ!!」

と孝は一人ブツブツ呟いていると、



その彼の真上にある屋上に、

ハタハタハタ…

スカートをはためかせながら、

立つ一人の少女の姿があった。

「さぁて…

 この間の依頼人は途中でキャンセルしちゃったけど、

 今日はそう言うこともなさそうだし、

 思いっきり行くわよぉ〜☆」

コキコキ…

華代は文字通り手の関節を鳴らしながら大きく構え、

「じゃぁ、孝さん、行きまぁ〜すっ」

と呟きながら気合いを込めると、

「そうれっ!!」

と叫び声をあげた。



「起立ーっ」

孝の教室に担任が入ってくると、

生徒達は一斉に自分の席へと戻り、

そして立ち上がった。

「礼っ」

日直のその一言共に全員が頭を下げる。

とそのとき、

ビクン!!

孝は体の中に強烈な電気が走ったような感覚を受けた。

と同時に、

スー

と彼の喉仏が静かに消えていった。

「?」

「着席!!」

日直の言葉と共に他のクラスメイト達は一斉に着席するが、

孝一人はそのまま立ったままだった。

「どうした?、藍沼」

彼の様子を見て担任が訊ねると、

「あっはい……え?」

それに対して孝が声を出すと、

彼の口からはまるで少女のような鈴の音のような声が出てきた。

「?」

突然響いた少女の声に教室中が静まった。

「?っ?っ?!!!」

この事態に一番困惑したのは他ならない孝自身だった。

「いっ今の藍沼の声か?」

「まるで女みたいな声だったが」

ひそひそ声がクラス中を這いずっていく、

「どっ、どうした、早く座りなさい」

動揺を抑えながら担任が孝に座るように促すと、

ムニムニムニ…

次の変化が襲い始めていた。

孝の両胸にある乳首が

ピンっ

と敏感になっていくと、胸が膨らみ始めた。

「あ・あ・あ・あ・あ・あ……」

彼は自分の胸に手を置くと、

掌の中で確実に育っていく乳房の感覚に声が出なかった。

さらにゆっくりと萎むように孝の身体が小さくなっていくが、

しかし、腰だけは逆に大きく張り出し、

ダブダブになっていく上着に対してピッチリと張り付くズボンと言う

アンバランスな姿になっていった。

「おっおいっなんだなんだ」

彼の身体の変化が目に見えて現れてくると、

クラス中がざわつき始めた。

ムリムリ…

ムリムリ…

まるで坂道を転げ落ちるボールのように孝の身体は女性化していく、

バサッ!!

髪が伸び始めると、サラサラの髪が孝の腰まで伸びていく、

そして、肉体の変化が一段落すると

スススス…

今度は彼のズボンの丈がすね毛のないスベスベの脚を見せながら

腰に向かって上がり始めた。

「いっいやぁ!!」

少女の声を上げて孝が脚を閉じたが、

ズボンは膝上まであがると

フワッ

と一瞬膨らむと、瞬く間に濃紺のプリーツのスカートに替わり、

さらにその中の無愛想なトランクスも純白のパンティーとなって、

秘所から腰を優しく包み込んでいた。

しかし、彼の変身はそれだけではなかった。

続いて学生服からボタンが消えると、

丈が短くなり、

バチン!!

閉めていた詰め襟が開いく、

すぅぅぅ…

開いた襟は見る見る大きく胸元へと下がり始め、

そして、衣服全体が彼の身体に合わせるように萎縮していくと、

ツンッ

ブラに包まれた胸の2つの膨らみが誇張されていった。

最後に

キュッ!!

っと赤のタイが巻かれると、

そこにはセーラー服姿の一人の女子学生が呆然とした表情で立ちつくしていた。

「かわいい…」

その様子を見た一人がそう呟くと、

ガタン!!

みな一斉に立ち上がると孝に向かって飛びかかってきた。

「きゃぁぁぁぁぁ!!」

孝の悲鳴が上がるまもなく、

「うわぁぁぁぁぁ!!」

クラスメイト達の悲鳴が上がった。

シュワァァァァ…

一人、また一人とまるで伝染病に冒されていくようにして学生服姿の男子生徒は、

次々と長い髪をなびかせたセーラー服姿の女子学生へと変化していった。

「にっ逃げろ!!」

その様子を見た者は顔色を青くして我先にと教室から逃げ出したが、

しかし、

その者達も次々と美しい脚線美を露わにした、

女子学生へと変身していく、

そして、この集団性転換劇は孝のクラスの中だけではなかった。

「うっわぁぁぁぁ!!」

別のクラスでも悲鳴が上がると、

次々と男子学生はセーラー服が似合う女子学生へと変身し、

一方で、体育授業中のところでは、

「いやぁぁぁぁぁ!!」

体育教師が呆然とする中、

ムチムチのブルマ姿になった元男子生徒達が逃げ回っていた。

こうして、孝の変身からほぼ30分以内で、

東進高校から男子生徒の姿は消えていった。



「しくしく…

 そんなぁ…
 
 かっ華代ちゃぁん…

 あたしは女の子になりたいんじゃなくて
 
 女の子を連れてきて欲しかったのよぉ…」

孝はペタンとへたり込むとスカートを抑えながら泣いていた。



今回の依頼も実に簡単でした。

孝君、今度は女の子がいっぱいだから存分にエンジョイしてね。

さて、次はあなたの街にお邪魔するかもしれません。

そのときはよろしくね。

では



おわり