風祭文庫・華代ちゃんの館






「恋人達」



作・風祭玲


Vol.121





こんにちは、初めまして。

私は真城華代と申します。

最近は本当に心の寂しい人ばかり。

そんな皆さんの為に、私は活動しています。

まだまだ未熟ですけれども、たまたま私が通りかかりましたとき、

お悩みなどございましたら是非ともお申し付け下さい。

私に出来る範囲で依頼人の方のお悩みを露散させてご覧に入れましょう。

どうぞお気軽にお申し付け下さいませ。

報酬ですか?いえ、お金は頂いておりません。

お客様が満足頂ければ、それが何よりの報酬でございます。

さて、今回のお客様は――



「そんな…ウソだろう…」

夕方の公園に僕の声が響く、

「ごめんなさい…」

呆気にとられている僕の目の前で

Tシャツ姿の男性がすまなそうに俯いている。

大きく盛り上がった胸板や太い手足が

彼のたくましさを表現するが、

その表情にはどこか少女の雰囲気をかもし出していた。

「信じられるかよっ、おまえが男になったなんて…」

僕がそう叫ぶと、

「…………」

真希は返事をしなかった。



そう、3週間前までは彼いや、彼女はれっきとした女性だったが、

しかし、いま僕の前に居るのは筋骨たくましい男の体をした彼女だった。

僕と真希が付き合うようになったのは、去年のクリスマス…

年末商戦のバイト先でたまたま同じ学校ということで意気投合して以来、

ほぼ、恋人関係にまで順調に発展してきたのだが、


3週間ほど前の暑い水曜日、

体育の授業中、

校庭のトラックでランニングをしていた真希が突然倒れた。

スグに担ぎ込まれた保健室で校医は軽い熱射病だろうと診察したものの、

彼女の熱はなかなか下がらず、

その日の夕方には市立病院に緊急入院した。

そのことを知った僕も大慌てで見舞いに行ったものの、

ずっと面会謝絶が続き、

容易に彼女と会うことはできなかった。

「軽い熱射病と聞いていたけど、そんなに重いんですか?」

彼女の母親に病状を尋ねたが、

なぜかハッキリとした答えを聞き出すことができなかった。

不安と焦りの時間が過ぎていった。

そして、3週間が過ぎた今日、

真希が退院したと言う話を聞いた僕は彼女に連絡をとると、

この公園にくるように指示された。


そして、3週間ぶりに会った彼女から知らされた意外な事実…

「お医者様が言うには、思春期にごく稀だけどこういうことが起きる…って言ってた」

僕の横に座った真希がそういう。

「…で、どうするんだ」

「………明日にでも戸籍の書き換えをするってお父さんが言ってた」

「学校は…」

「………おそらく転校することになると思う」

「そんな…」

「だって、男の姿では学校には行けなし

 第一、クラスのみんなにこの身体を見せたくないもの…」

「………」

そういう真希に僕は言う言葉がなかった。


そのとき、

「おにちゃん達どうしたの?」

「え?」

気が付くと一人の少女が僕の傍に立っていた。

透き通る髪が夕日の光を受けキラキラと輝く、

「きみは…」

僕が彼女の素性を訊ねると、

「はいっ、これ」

そう言って一枚の名詞をさしだした。

「?」

『ココロとカラダの悩み、お受けいたします 真城 華代』

とその名刺には書かれていた。

「ココロとカラダの悩み…?」

僕が名刺に書かれている文句を読み上げると、

「そうだよ、なんかお兄ちゃんたち深刻そうだから

 華代が何かお手伝いできないかな〜ってね」

「お手伝いといってもなぁ…」

僕はチラリと真希の方を見ると、

「真希を…彼女を元の姿に戻せれることができればなぁ」

僕はポツリという。

「もとの姿?」

意味がわからない様子の華代に僕はコトの一部始終を話した。

「ふぅぅぅぅん、

 そういうことってあるんですね」

感心しながら華代は真希を眺める。

「男と男じゃ付き合うことはできない。

 けど、僕は彼女と分かれたくないんだ」

と僕が言うと、

華代は突然

パァ

っと何かを思いついたように、

パン!!

っと手を叩き、

「なぁるほど…要するに女の子になればいいんですね」

と声をあげた。

「あははは…

 まぁ、そうだけどお嬢ちゃんが仮に魔法使いだったとしても

 こんなことはできないよなぁ」

僕がそう言うと、

「ふふん、華代を見くびらないで…」

と良いながら、彼女は両手を上に挙げ、

「華代はその道のエキスパートだから……

 まっかせなさいっ、

 そうれっ!!」

と叫びながら両手を振り下ろした。

ぶわっ

一陣の風が僕を包み込む。

「うわっ、ぷっぷっぷ」

「達也っ」

真希が声を上げた。

「なっ、なんだよ…」

文句を言いながら服についた埃を払おうとした時。

ドクン!!

僕の体に異変が起きた。

「!!!」

ググググググ…

目前の手が見る見る小さくなっていくと、

腕も細くなっていく、

「なっなに?」

それだけではなかった。

僕の背丈も徐々に下がりだした。

「どうなってんだ?」

制服がどんどんとダブつき出すと、

手が袖の中に隠れてしまった。

「ちょちょっと華代ちゃん!!」

声を張り上げると、声色がハスキーに変化していた。

慌てて口を閉じる僕…

「そんな…達也が女の子になっていく…」

真希が声を上げた。

「なに?」

くすぐったくなった胸に手を持っていくと、

2つの膨らみが徐々に膨らんでいくことにが手を通してわかる。

「うわっ、むっ胸が…」

膨らみはさらに成長を続け、制服をしたから押し上げ始めた。

パサッ

伸び始めた髪が視界を遮りだす。

「そんな…そんな…

 なんで、僕が女になっていくんだ?

 女になってほしいのは真希の方だぞ…」

そう言いながらすっかりダブダブになったズボンを抑えていると、

そのスボンの裾が見る見る腿のほうへと上がり始めた。

程なくして、ズボンはプリーツが入ったスカート変わる。

ズボンだけではなかった。

上着もセーラーの上着へと変わり、

ブラが大きく膨らんだ胸を固定する。

「いやぁぁぁぁぁ」

僕は思わずその場に座り込んだが、

肩下まで伸びた髪が後頭部できれいにくくられると

かわいいリボンがつき、

靴下はソックスとなって、ひざ下を包み込む。

「達也…お前…」

「そんな…そんな…

 真希ぃ…僕…女の子になっちゃったよ…」

股間を抑えながら僕は真希を見つめると、

ぽん

真希は僕の肩に手を置き、

「まぁ、なっちゃったものは仕方がないよ」

と言うと、

ひょい

と僕を抱きかかえた。

「おっ、おぃ」

「まぁ、女の子の生活も悪くはないぞ…

 イザとなったら僕が嫁にもらってやるし」

ニッ

真希が笑った。

「おっおい、どこに行くんだ」

「折角だからさ、ラブホにでもしけこむ?

 お互い、オトコとオンナになった経験に…」

「ちょっと、待って、僕は…あたしはイヤよ!!

 降ろしてよ」

「ははは、大丈夫、僕がついている」

「降ろしてぇ…」

あたしの叫び声が夕闇に染み込んでいった。




今回の依頼も実に簡単でした。

これであの2人も円満解決ですね。

それにしても驚きました。

思春期って意外と危ないんですね。

あたしも男の子にならないように注意しなくっちゃ。

次はあなたの街にお邪魔するかもしれません。

では



おわり