風祭文庫・華代ちゃんの館






「勝負」


作・風祭玲
(原案者・真城 悠)

Vol.053





こんにちは、初めまして。

私は真城華代と申します。

最近は本当に心の寂しい人ばかり。

そんな皆さんの為に、私は活動しています。

まだまだ未熟ですけれども、

たまたま私が通りかかりましたとき、

お悩みなどございましたら是非ともお申し付け下さい。

私に出来る範囲で依頼人の方のお悩みを露散させてご覧に入れましょう。

どうぞお気軽にお申し付け下さいませ。

報酬ですか?

いえ、お金は頂いておりません。

お客様が満足頂ければ、それが何よりの報酬でございます。

さて、今回のお客様は――




「がんばれよーっ」

「きゃぁぁ!!!」

体育館の中は女子生徒の歓声と男子生徒の声援で溢れていた。

そして、彼等が注視している先には一面のバレーボールのコートがあり、

その中ではネットを挟んで短パン姿の男子選手6人と、

ブルマ姿の女子選手6人が対峙していた。

「女に負けるなよー」

「男なんて叩き出して!」

男子生徒と女子生徒からの声援を受けながら

タン

タン

コートの後方で男子選手がバレーボールを2回ついた後、

ハッ

勢いをつけて一気に打った。

すると、そのボールはネットを飛び越え、

女子選手たちの隙間へと向かっていくが、

しかし、床面につく直前、

伸びた手によって弾かれると、

天井に向かって上がっていく

試合はこう着状態。

男子がサーブ権を取ると、

すかさず女子が奪い取っていた。



と、そのとき、

「何をしているんです?」

響き渡った少女からの問いかけに観戦をしていた生徒の一人が

「何をって、

 あのコートの使用権を巡って男子バレー部と女子バレー部が勝負しているんだよ」

と説明をする。

「ふぅ〜ん」

少女は部の生き残りをかけた勝負を興味深そうに眺めた。

そして、眺めながら、

「ねぇ」

と聞き返すと、

「なに?」

生徒は手に汗を握り締めながら返事をする。

「負けた方はどうなるの?」

「あぁ、ここのコートが使えなくなるからなぁ

 まぁ実質上廃部になるだろうなぁ」

「えぇ、可愛そうじゃない」

「まぁね、仕方がないよ」

「仲良く使うことって出来ないの?」

「それが出来れば、苦労はしないんだけどね」

少女の言葉にと生徒はそう言うと、

「どうしてもダメなの?」

と少女は聞き返した。

「まぁねっ、

 双方の部長…

 といより男子の部長が絶対に譲歩はしない。

 そう明言しているから無理だと思うよ」

「そうなんだ」

「まぁ、もしも男子が負けたら女の子になってバレーをするしかないかな」

と自称気味に生徒が笑うと、

「うん、

 確かにそうかもしれないね」

と言いながら少女は素直にうなずいた。



ゲームはこう着状態から点の取り合いへと推移し

そして、ついに双方とも後がなくなった。

「おい、そろそろここから出て行く支度をしたほうがいいんじゃないか」

サーブ権が自分のところにあるのをいいことに男子の部長が挑発すると、

「なに言ってんの、泣きべそかいてここから出て行くのはアンタだからね」

すかさず女子の部長が言い返す。


そして

「そーれっ」

と運命のボールが中を舞った。

数回双方のコートを往復したのち

女子のコートから男子のコートへ鋭く突き刺さった。

「やったぁ」

女子の歓声が響く。

「くっそぉ、

 おいっ、おまえ等、
 
 絶対に失敗するんじゃないぞ」

男子の部長が怒鳴るが、

「女子を挑発したのは部長だろう、

 責任取ってくれよ」

部員たちが文句を言い始めた。

しかし、そんな内輪の事情には関係なく再びボールが中を舞う。

ところが、ボールは2回往復しただけで、

呆気なく男子のコートに床の上に転がってしまった。

「うわぁぁぁぁぁ」

その瞬間、女子の選手はまるで大会で優勝したように抱き合って喜ぶのに対して、

「馬鹿野郎!!」

男子のコートでは部長の怒鳴り声が響きわたる。

そして

「さぁ、勝負は決まったわね」

と女子の部長が男子の部長に迫ったとき



『そうれっ!』

ゴワッ!!

その叫び声と共に一陣の風が彼等の元を吹き抜けていった。

すると、

「なっなに?」

突然の風に驚く男子バレー部員の体に変化が起きた。

部員たちの体が見る見る細くなって行くと、

髪が急速に伸び始めていく、

「うわっ

 なんだこれぇ!!」

男子部員たちの体のサイズが変わり、

ダブダブになってしまったユニホームを押さえながら

自分の体の変化に戸惑う。

そして、時間の経過とともに彼等の変化は更に進み、

短パンから見えている足のすね毛が抜け落ちるようになくなると

徐々に内股になり、

また広い肩幅も女性のなで肩へと変化した。

そして、ユニホームが縮み始めると胸に2つの膨らみが現れはじめる。

「いやぁ

 なにあれ」

ネットの向こうから女子たちの悲鳴が上がる。

ついに彼等が穿いていた短パンが赤いブルマに変わってしまうと、

コートには同じユニホーム姿の12人の少女が立っていた。



「ふっふっふっ、

 ようし、これから女子バレー部のレギュラーの座をかけて勝負だ」

すっかりブルマ姿の少女になった元男子バレー部の部長は

今度は女子バレー部のレギュラーの座をかけて勝負を挑むと、


「ねぇどうする?」

「折角女の子になったんだから、あたし新体操をやりたいなぁ」

「あたしはバレエをやりたいわ」

燃える部長をよそに

元男子バレー部員たちは口々にコレからの身の振り方を相談し始めていた。



今回の依頼は簡単でした。

みんな女子バレー部員になってしまえば、

コートの取り合いもすることなく仲良くバレーをすることが出来ますね。

でも、部長さんはまたトラブルを起こしそうなそんな予感がします。

さて、何か困ったことがありましたら何なりとお申しつけ下さい。

今度はあなたの街にお邪魔するかも知れません。

それではまた。



おわり