風祭文庫・人形変身の館






「勇者の目覚め・異聞」



原作・あむぁい(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-118





「どうしても、勇者様の力が必要なんですっ。

 この通りお願いしますっ。

 あなたのお力を貸して下さいっ!」

ニーナと御付の侍女達は深々と頭を下げる。

「・・・・・・・・・・・・・」

なんだか日本語では無い言葉を彼女らはしゃべるが、

しかし、何故だかそれは翻訳されて俺の耳に聞こえる。

「あー」

そんな事言われてもな。

「この世界は魔王ネクロンの侵略に晒されているのですっ。

 勇者様の力が無いと太刀打ちできないのです…」

「それで、俺を召還…したと」

いい迷惑な話だ。

折角、剣道の全国大会に優勝し、さぁ祝賀会…

そして、美由紀と約束の…そのっ。

あー、それが召還とやらで無茶苦茶だ。

俺は汗だくの防具の中、身をよじる。

「勝手な話だな…」

「まあまあまあ。

 先ずは、お風呂にでも入って頂いてですねっ。

 話はそれから…」

ニーナの指示で、侍女たちがずずずいっと前に出る。

その時、俺は彼女らが相当レベルが高い美女ばかりなのに改めて気づく。

彼女らは尊敬と憧れの眼差しで俺を見る。



お風呂で美女達に囲まれて俺は隅々まで綺麗に洗われた。

どうもこの世界では男は威張るのが当たり前で。

女は従順なのが当たり前のようで。

俺はたちまちこの世界が好きになった。

彼女らは本当に素直で可愛い。

美由紀の奴は生意気だし。

ちょっと待たせといて、

先にこっちの世界を救うのもいいかもしんない。

俺はそう思い始めていた。

「ああ…

 そこそこ…、
 
 くぅぅ効くぅ」



浴室から出たあと、

俺は大理石のような色合いのベッドのようなものに載せられマッサージを受けていた。

試合の…

大会の疲れが取れて…

はぁ…

俺はすっかりいい気持ちになった。

「気持ち良いでしょ。

 この娘たちはみんな勇者様のサポート部隊なんですよぉ。
 
 なんせ勇者様に魔王ネクロンを倒してもらわないと、
 
 あたし達の世界は終わりなんですよぉ。
 
 ね、
 
 あたし達を助けると思って、
 
 あなたも協力して下さいな…」

ニーナが夢うつつの俺に甘く囁く。

やばい…

思わず”うん”と言ってしまいそうだ。

しかもニーナがまた結構俺の好みで…

お風呂での事を思い出して俺は紅くなる。

「でも…」

「超高校級の期待の新星。

 切れ味抜群の剣士、聖(ひじり)剣(けん)
 
 その切っ先を逃れられるものはいない…
 
 その才能、
 
 闘志…
 
 平和な日本で埋もれさすのは余りにも惜しいわ。
 
 それはこの剣と魔法の世界でこそ真価を発揮するもの。
 
 その力、是非、あたし達の為に…」

うわっ褒め殺しだ。

分かってはいるけど…

正直言って、ホンモノの剣で人…か

魔物かよく分からないけど、

それを斬ると言うのはなんだかすごく魅力的な選択肢に思えた。

今の日本で俺の敵になるほどの剣士がいないと言うのも多分事実…

強いものと戦いたい…

それは剣士のサガのようなもの…

俺は迷っていた。

「それに剣様の命に危険はありませんし…」

「へ…そうなの?」

「?

 はい?
 
 そうですけど」

「あは。

 あはははは」

なんだそうか。

命掛けじゃないんだ。

俺は安全なんだ。

それなら…キラーン☆

「お嬢さん、

 俺にすべてを任せて下さい。

 必ずやネクロンとやらの野望を粉砕し、
 
 あなた達を守って見せます」

試合でも見せたことのない素早さで俺はニーナの腰を抱き寄せると

キラリ☆

清潔そうな歯を輝かせながら笑顔で宣言した。

「きゃぁぁぁぁぁ!!!」

「ありがとうございますぅぅぅ」

忽ち俺は歓声につつまれ、飛び込んできた侍女達にもみくちゃにされる。

「うわはっはっはっ!!

 大丈夫大丈夫、
 
 大船に乗ったつもりでいなさい!!」

まさに両手に花!!

俺は思いっきり鼻の下を伸ばしながら声を上げた。

ふっ美由紀のやつを待たせるのは悪いけど。

まずはこの世界を救ってやるか。

それが勇者の役目!!!

この世界のヒーローになった自分の姿を妄想していると、

「えー、

 それでは先ず、勇者覚醒の儀式を行わなければなりません」

とニーナが俺に言った。

「ふむふむ

 そーだよなぁ
 
 儀式は大事だよなぁ…」

ニーナの言葉に俺は素直にうなづくいていると、

「まずはここに横になって下さい」

とニーナは自分の前に用意してある寝台を指差した。

「あっうん」

ニーナの指示に従い俺は頷いて横になる。

「剣様、ちょっとそこでブリッジして頂けませんか」

「(ブリッジ?)こ、こうか?」

何でブリッジ?

とか思うが、

俺は体の柔らかさを自慢するかのように、

素直にブリッジをしてみせた。

「ええっと、

 そうですね、
 
 足をもうちょっと、こう。
 
 そんで、手が…こんなもんかな。
 
 はい、フリーズ」

「え?」

ニーナは俺の姿勢を適当に微調整した後、

お腹をぽんと叩く。

たちまち俺の体は身じろぎできなくなる。

「あの…」

俺は混乱してニーナを問い詰めようとするが、

しかし、ニーナは紅い飲み物を口にすると口移しでそれを俺に飲ませようとする。

え?

それって…

ちょちょっと、

うわぁぁぁ

ゴクン!!

喉を通る甘い液体が俺の体を熱くする。

その一方で、

「あはん。

 あたしまで変な気持ちに…」

ニーナも顔を赤らめた。

なっなんだよ…

これぇぇ!!

姿勢を崩せないまま俺は心の中で叫んでいると、

はらりっ。

俺の下半身を覆っていたタオルが落ち。

屹立した俺のペニスが姿をあらわす。

やべぇぇぇ!!

ニーナを前にして素っ裸になってしまったことに俺は赤面すると、

「うふふ。

 ご協力感謝しますよ。
 
 剣さまっ。
 
 じゃあ、早速、勇者候補の方に入ってきてもらいましょう」

とニーナは俺に告げた。

「はあっ?」

いっいま、なんて言ったのですか?

確か”勇者候補”と…

ニーナが俺に告げた言葉に俺はキョトンとしていると、

ズシン!!!

最初にやってきた人物は筋骨隆々の巨人だった。

なっ

何だこれは!!

目を剥いておれは驚くと、

ムンズ!!

男は俺を掴むと乱暴にこすり上げる。

「ひぎぃ…」

あ、あれ?変だぞ?俺の声が下から聞こえる…

「う〜ん、不合格ですね。

 はいっ次の方」

俺の惨状を横目に見ながらニーナは事務的に進めていく、

『うぃーす』

次に入ってきたのは背中に刺青の人相の悪い男だ。

乱暴に俺を掴むと、俺の根元に爪を立てる。

「いてててて」

また、声が…あー、俺は…俺は…ペニスになってる!?そんな馬鹿な!?

「あー、不合格ですぅ」

その後も俺はお尻に指を突っ込まれたり、

しゃぶられたり、

ねじられたり、

ろうそくをたらされたり、

氷で冷やされたり、

さまざまな方法でいじられた。

その中で、俺は思い出して来た。俺は…俺様は世界を救う聖剣!

勇者と共に悪を斬らねばならないのだ!

「っかしーですねー。

 勇者様は聖剣を引き抜けるはずなんですけどねー。
 
 あー、次」

首を傾げながらニーナはそういうと、

「な?

 何だと…」

俺の本体の方は未だ理解していないようだ。

しかし、ニーナはそれには答えず

いつの間にか用意していた帳面にチェックを入れる。

ふむ。勇者とはどんな奴だ?

しかし、次の男も次の男も…

誰も俺を引き抜く事はできなかった。

ふむう…

その時、どこから紛れ込んだのか、

どう考えても場違いな一人の少年が、

俺のそばにとことこ近寄った。

どくんっ。

こいつだ。

「あら、なんでこんな子供が…」

どくんっ。

どくんっ。

さあ、俺を引き抜けっ!

「ああーっ、ああっ」

来る!

いよいよだ。

ひょいっと、少年は俺を掴むと。

俺はどうすれば良いのか全て理解した。

あたり一面に光が走る。

俺はすばやく、筋肉や神経を掻き集め、刀身を形成する。

ぶちぶちぶちぶちっ。

不要な部分、弱い部分は置いていく。

「こ、この光はっ、

 まさかっ、この子なのっ!?」

ずるずるずるっ。

俺の体に強烈な快感が走る。

「ああああああああっ?」

後ろから声が聞こえる。

俺はゆっくりと紅くて銀色がかかったその姿を現す。蛹から今美しい蝶へ!

聖剣の誕生だ!

俺様に絡まった腸か内蔵か。

勇者はそれを無造作に掴むと引きちぎって捨てる。

力が漲る。

知覚が研ぎ澄まされる。

そして今、勇者と俺様の力が共鳴し、勇者の体にも変化が起こる。

みるみるうちに、筋肉は張り。

瞳には精悍さを湛え。

歴戦の勇者の雰囲気すら身にまとい始めた。

俺とお前なら、無敵だな。

俺は勇者に高らかに掲げられる!

あたりに光が満ち、誰もが俺様と勇者に傅く。

俺様と勇者の覚醒の瞬間だ。



勇者様&聖剣様、覚醒おめでとうパーティーはそれは華やかなものだった。

俺様は余興で人食い鬼オーガーを真っ二つにぶった切ってやった。

何、俺様と勇者にかかれば朝飯前だ。

勿論、破壊だけが俺様の特技じゃねえ。

女の子たちもヒイヒイ言わせてやった。

ははははは。最高に気分が良い。酒がうめえ。

野球拳もやったぞ。

俺様はパーしか出せないから、勿論女の子はグーしか出せないルールだ。

あははは。たのしーなー。最高だ。酒がうめえ。

俺様は真の姿を取り戻し、力を手に入れた。

俺様は無敵だ!勇者となら、魔王ネクロンと言えど俺様のサビになるのは間違い無い。

あはははは。

「あのっ、あのっ」

どっかで見たような女が俺様の前に現れたのは俺様も好い加減眠くなってきた頃だ。

「返して下さいっ!

 それはあたしのなんですっ!」

俺様を指差して言う。ははあ。俺様が欲しいってか。俺様も罪な男だな。

良いぜ。いれてやる。俺様を恭しく掲げて、お前のあそこにぶッ差しな。

「誰、君?」

勇者の言葉に衛兵が駆け寄り、女を押さえつける。

「は、離して…あたしは…」

「このモノはサヤ。

 聖剣様の覚醒時に脱ぎ捨てられた残りカスでございます」

ニーナが口をはさむ。

ああ…俺様の残りカスか。まだ生きていたんだ。

「どうも…駄目みたいですね。

 覚醒時に内臓を捨ててしまいましたので
 
 放っておけば3日と持ちますまい」

サヤは泣きそうな顔をする。泣くなよ。しょうがねーだろ?

「なんせ、食べてもすぐ出てしまうようで」

ニーナの視線の先にこぼれている食べ物。

ああ、こりゃあ確かに駄目だな。

「勇者様、このモノに最後のお情けを賜りたく」

「どうする?」

「お任せ下さい。

 立ちなさい、サヤ」

サヤは左右から抱えられて立たされる。

「聖剣様が欲しいでしょう」

「欲しい…欲しいです」

サヤはうわ言のようにつぶやく。

お?結構そそるじゃねえか。

「死ぬのは嫌でしょう?」

「いや…嫌です」

「大丈夫。

 何も心配しなくていいから」

「…はい…」



サヤは何杯も酒を飲まされ洗浄された。

ま、俺様が入るんだからな。

勇者もこいつが気に入ったようだ。

「ふむ。

 思ったより綺麗になった」

「ええ…気をつけの姿勢よ、サヤ」

サヤは気を付けの姿勢をする。

俺様もちょっと興奮して来た。

「上を向いて口を開けなさい。サヤ」

俺様の真下に口を大きく開けたサヤ。お尻の先から光が見えている。

「これが欲しいか、サヤ」

勇者の言葉にサヤはよだれをたらして頷く。

ゆっくりと。

俺様が。

口から侵入し。

胃を通って。

子宮へと進む。

肉壁の温度が心地よい。

ぬめぬめとした感触が気持ち良い。

俺様は何だか暖かくなって。

懐かしいような。

緊張がとけてリラックスしていく…

ああ。俺様は帰って…、

かちっ。

俺様はぴたりとサヤの体に嵌る。

俺の生まれ育った場所…

俺の刀身はすっぽり埋まり、柄だけが残る。

サヤが優しい眼差しで俺を見つめる。

ああっ。母さん…母さんなんだね。


ぽんっとニーナに肩を叩かれ。

母さんの体は縮み始める。

震えながら

光沢を放って

俺を締め付けて

締め付けて

締め付けて。

そして母さんは俺の鞘になる。

ああ。もう俺だけの母さんだよ。

勇者に掴まれて

俺と母さんは腰のベルトに結び付けられる。

そして、俺は胎児のように母さんの中でまどろむ。

ああ、だから。

息子って言うんだね。母さん。


おわり



この作品はあむぁいさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。