風祭文庫・人形変身の館






「個人指導」



作・風祭玲

Vol.985





「え?

 あたしがですか?」

新体操の大会を明日に控えたミーティング。

P高校新体操部の練習用レオタードに身を包んだ1年生部員の西田佐織は

思わず驚いた声をあげてしまうと、

ザワッ

佐織の周囲に詰めていた部員達も一斉にざわめきだす。

「みんな、静かに!

 えぇそうよ、

 明日の大会は安形さんの代わりに西田さんに出てもらいます」

皆の声を抑えて新体操部コーチの河岸直美は大会メンバーに佐織を加えることを言い聞かせると、

「そんな…あたしには無理ですっ

 第一、あたし以外にも柴田さんとか光山さんとか甲田さんとか…

 あたしよりも上手な人がいっぱいいます」

佐織は一歩進み出るなりそう言い切るが、

しかし、

「西田さんを推薦したのはあたしだけど、

 何か不満があるの?」

その声と共に松葉杖を付き、

右足に痛々しく包帯を巻いているキャプテンの安形由美が話しかけてきた。

「安形キャプテン…脚は大丈夫なのですか」

昨日の練習中に痛めてしまった由美の右足を気遣いながら佐織は尋ねると、

「あたしのことは大丈夫」

と由美は微笑みながら返事をし、

「それよりも明日の大会の件。

 何で受けてくれないの?」

と厳しい表情で聞き返した。

「それは…

 あたしなんて全然ダメで、

 あっあたしよりももっと上手な人がいます。

 何でその人たちにお願いしないのですか?」

由美の視線に臆しながらも佐織は聞き返すと、

由美は一瞬視線を床に落とし、

そして、小さく頷きながら、

「コーチと一緒に色々考えてね。

 そして、色々考えた結果、

 あたしの代わりには西田さんが適格だと思ったの…」

と佐織の目を見つめながら彼女を選んだ理由を告げる。

「でっでも…」

事情を聞かされてもなお佐織は言い返そうとすると、

スッ、

一本の手が挙がり、

「コーチっ、

 わたくしには納得が行きませんが」

の声と共に大会の出場メンバーである柴田光子の声が響いた。

「光子…」

常に由美とライバル関係にある彼女の声に由美は振り向くと、

「わたくしも西田さんが相応しいとは思いませんわ」

と光子は指摘する。

すると、

「あたしの人選が不満とでも言うの?」

その光子の指摘に直美が聞き返すと、

「西田さんはミスが多すぎます。

 まして、明日の大会はインハイにつながる大事な大会です。

 そのような所に彼女を出させた場合のリスクが大きすぎますっ」

と光子は言い切った。

「確かにそれはあるわね」

その言葉に由美は頷いてみせると、

「でも、あたしは西田さんが持っている力に希望を持っているわ」

と佐織に視線を向けながら告げる。

「希望だなんて…

 そんな曖昧な」

由美の言葉に光子は呆れた表情を見せると、

「はい、そこまで、

 実は既にメンバーの届出は出しています。

 明日はこのメンバーで行きます」

縺れかけた話を断ち切るように直美が言うと、

「はぁ…」

光子はため息を付き、

そして、由美をにらみつけると、

「そうなっているのなら仕方が無いです。

 でも明日、西田さんがミスをしてしまったら、

 責任を取ってもらいますからね」

と由美を睨みつけながら光子はそう言い、

「さーさ、

 練習練習!、

 あたしだってミスは出来ないんですから」

手具を手に取りその声と残して立ち去っていく。



「どうしよう…」

自分ひとりのせいで険悪な空気が流れ始めたことに佐織は困惑していると、

「西田さん」

そんな佐織に由美は声をかけ、

「あなたは人一倍練習をして来ています。

 もっと自分に自信を持ちなさい」

と耳元で囁くと、

由美は杖をつきながら一人練習場から去っていった。

だが、

「あぁ、棍棒がそっちに行かないで」

「うわっ!フープが」
 
「リボンが…脚に」

と佐織の練習は相変わらずミスの連続であった。

「まったくタイミングは合っているんだけど…

 彼女、思い切りが悪いのよね」

そんな佐織の姿を見ながら光子は一人呟くと、

「でも、誰が手取り足取り教えてあげるものですか」

そう気持ちを決め、

シュルッ!

リボンを回し始める。

一方で、

「思い切りが悪いことには気が付かないか、

 これだけはあたしが手取り足取り教えても…」

由美も練習場の外から佐織の練習を眺めながらそう思っていると、

「安形さん、

 西田さんのことでちょっと話しがあるんだけど、

 部室まで来てくれない?」

直美が練習場から出てくるなり話しかけてきた。

「え?

 はっはい…」

直美に誘われるまま由美は新体操部の部室へと入り、

脚を庇いながら由美は備品の椅子に座る。

すると、

「正直言って、

 西田さんのあの状態では無理だと思うわ」

と直美は由美に告げたのであった。

「わっ判ってます。

 でも、あたしは彼女の持つ才能に掛けてみたいんです」

その言葉に由美は語気を強めながら言い返すと、

「でも、いまの状態はまだそのきっかけも掴めていないわね」

と直美は率直な指摘をする。

「うっ

 はぁ確かに…」

彼女の指摘に由美は俯いてしまうと、

一瞬、直美の目が輝き、

「二人羽織の術を使いますか…」

と囁いたのであった。

「はい?…」

直美が囁いた言葉に由美は顔を上げると、

「うふっ、

 実は良い手があるのよ」

由美の背後に回った直美が囁き、

そっと、自分の手を由美の胸元に差し込んだ。

「ひっ!!っ、

 いきなり何をするんですか!」

思いがけない直美の行為に由美は飛び上がって拒絶すると、

「うふっ、

 試合に出られなくてもちゃんとレオタードを着て着ているのね、

 しかも試合用の…」

指の感触から直美は由美がトレーニングウェアの下に

試合用のレオタードを着ていることを指摘する。

「べっ別に良いじゃないですか、

 これを着てないと落ち着けないんですから」

身構えつつ由美はそう言い返すと、

「うん、良いのよ、

 それで…

 あなたが試合用のレオタードを着ていてくれたことは非常に好都合なんだから」

と直美は囁き、

由美を見下ろしながら、

「さて、

 じゃぁ、取り掛かろうかしらね」

そう言いながら腕を捲り上げる。

「こっコーチ?

 なっなにをする気ですか?」

いつもとは違う直美の姿に由美は顔を強張らせながら聞き返すが、

「いいのよ、

 何も考えなくても…」

と告げながら直美は由美の顔に手を当てた。

冷やりとした手の感触に

「いやっ!」

由美は咄嗟に悲鳴を上げるが、

まるで金縛りにあったかのように由美の身体がピクリともせず。

指一本ですら動かせない状態になってしまっていた。

「(そんな、身体が…

  動かない…)」

目を見開いたまま由美は心の中で叫ぶと、

「うふっ、

 もぅ逃げられないわ」

直美の声が響くのと同時に、

シュワァァァァ…

今度は由美の体から湯気が吹き上がり始めた。

「(あぁ…

  身体が…

  身体が熱い!!)」

まるで火に炙られるようにシュゥシュゥと湯気を吹き上げながら

由美は身体を強張らせていると、

徐々に由美の身体は萎縮し始め、

ズズッ

ズズズズッ

由美の身体はトレーナーの中へ、

中に着ているレオタードの中へと没していった。

そして、その中で

シュルシュル…

彼女の身体が繊維化し始めると、

赤い糸、青い糸、白い糸と様々な色をした糸を噴出し始める。

噴出していく糸が次第に寄り集まり布地へと織りあがっていくと、

由美はある物へと姿を変えたのであった。



「そろそろいいかな」

そう言いながらさっきまで由美が座り、

今では主を失い無造作に積みあがっているトレーナーの中に直美は手を入れると、

由美の体臭を撒き散らすレオタードを引っ張り出す。

そして、そのレオタードの中に別のものが納まっているのを確認すると、

「ふふっ」

小さく笑いながら直美はそれをレオタードから引っ張り出した。

パサッ…

乾いた音を立てながら中から出てきたのは由美が着ていたのと全く同じ

P高校新体操部の試合用のレオタードであった。

濃紺から淡いピンク色へ、そして白へと

美しい光沢を放ち股間から胸元に向けて美しいグラデェーションを描く

レオタードを直美は手にすると、

「聞こえますか?」

とレオタードに向けて話しかけた。

すると、

『…あっあたし…なにが…どうなって…』

気が付いたのかレオタードの中から由美の声が漏れ、

ククッ

クククッ

とモノであるはずのレオタードが左右に蠢いて見せた。

すると、

パンッ!

直美はそのレオタードを一度叩き、

そして、部室の壁に掛けられている鏡の前へと進んでいくと、

「ほら、御覧なさい。

 これが今の安形さんの姿ですよ」

と手にしているレオタードを広げ話しかけた。

『…え?

 これがあたし?

 あたしが…レオタードに…

 そんなこと…』

鏡の前に広げられたレオタードから驚きの声が上がると、

「そう、

 ふふっ

 安形さん、あなたを試合用のレオタードにしてあげました。

 明日の試合に、西田さんにあなたを着てもらって、

 あなたが西田さんを個人指導してあげるの、

 文字通り、手取り足取り…あっ、脚は覆ってないんだっけ、

 でも、これで十分でしょう」

と直美は言う。

『そんな…

 あたしを西田さんが着るって…

 そんなこと…』

直美の提案に由美は声を詰まらせてしまうと、

「そうねぇ、

 いきなりレオタードから話しかけられたら、

 西田さんもひっくり返ってしまうわよね。

 肌に密着して指導してあげるんだから、

 前もってお互いに心を通じ合わせないとね」

レオタードに向かって直美はそう話しかけると、

パタン…

部室から出て練習場へと向かいはじめた。

『あっ、どこに連れて行くんですか』

直美の手に握られながら由美は話しかけると、

「練習場よ、

 うふっ、

 そうそう、一言言っておくけど、

 今のあなたは人間としての食事は一切出来ない身体だわ、

 レオタードがご飯なんて食げられる訳ないでしょう。

 でもね、

 レオタードが食べられるものが一つだけあるのよ。

 それは、汗よ。

 たっぷりとかいた汗がレオタードに染み込み、

 それが安形さん、あなたの食事となるわ、

 無論、汗以外にもあなたを着た西田さんが流すモノはあなたの食事になるのよ。

 そうそう、エッチときに出る愛液なんて一番のご馳走。

 でもね、何も食べないでいると、

 あなたはただの布着れになってしまうわ。

 そうならない為にも西田さんをあなたの魅力に引きこむのよ、

 うふっ、

 こういうのって面白いわね」

そう言いながら直美は新体操部の練習場へと入っていく。



「あれ?

 みんなは?」

佐織一人だけが練習を続けている練習場を見渡しながら直美は尋ねると、

「あっ…あの…

 みんな、今日の練習はもぅ終わりだって…」

と申し訳無さそうに佐織は事情を説明してみせる。

「全く、

 全然緊張感が無いんだから」

事情を知った直美は呆れ半分にため息を付くと、

「あの、

 ごめんなさい!」

と声をあげながら佐織は直美に向かって頭を下げた。

すると、

「いいのよ、

 そんなことよりも、

 はいっ、西田さんの試合用のレオタードを用意してきたわ。

 ちょっと袖を通してみてくれない?」

そう言いながら直美は持って着たレオタードを佐織に手渡した。

「え?

 あたしの試合用のレオタード…って、

 いいんですか?」

直美の言葉に佐織は目を輝かせて尋ねると、

「何を言っているのよ、

 それを着ないと明日演舞台に立てないでしょう」

と直美は言う。

「はいっ、

 うわぁぁぁ…

 これを着るの夢だったんだ」

そう言いながら佐織はレオタードを広げ、

そして、直美の前であることにも構わずに

イソイソと着ていた練習用のレオタードを脱ぎ捨てると、

由美が変身させられたレオタードに脚を通した。

ピチッ!

「うわぁぁ、

 ぴったりです」

由美が変身したものであることなど露知らずに

佐織は試合用のレオタードに覆われた自分の体を直美に見せ喜んでいると。

「うんうん、

 丁度ぴったりだわね」

佐織の姿を見ながら直美は幾度も頷き、

「じゃぁ、軽く舞ってみない?」

と提案をした。

「はいっ!」

その言葉に佐織は早速リボンを手に取ると、

シュルンッ!

と練習場の中を舞い踊り始める。

そして、佐織が激しく動着始めると、

ジワッ

彼女の体から汗が流れ出し、

その汗をレオタードが吸い取り始めた。

『あぁ…

 身体が湿ってくる…

 はぁ、気持ち良いわ…

 とっても…』

由美はレオタードと化した全身で佐織の汗を取り込み、

『美味しいわ、

 もっと、もっと汗をかいて頂戴』

そう囁きながら、

クニッ

クニックニッ

っと佐織を刺激し始めた。

その途端、

「ひゃっ!」

練習場に佐織の悲鳴が響き渡り、

ダンッ!

佐織は手具を放り出してしまうとその場に蹲ってしまった。

「どうしたんです?」

そんな佐織を見ながら直美は声をあげて尋ねると、

「いっいま、誰かがあたしの身体を」

と訴えながら佐織は人のいない空間を指差すが、

『あぁ、止まらないで、

 もっと汗をかいて…』

レオタードとなってしまった由美はそう囁くと、

クニクニ

クニクニ

っと身体を動かし佐織の乳首や股間を刺激し始める。

「ひゃぁっ、

 まっまた、

 誰かが!」

自分の敏感なところを何者かが刺激してくることに佐織は悲鳴を上げると、

「安形さん、

 いくら汗が欲しいからって無理に刺激してはダメでしょう」

と直美は呆れ半分に話しかけてきた。

「え?

 きっキャプテンが?

 どっどこに…」

直美の声を聞いて佐織は周囲を見渡すと、

「ふふっ、

 安形キャプテンはいまあなたが着ているレオタードになっているのよ」

佐織に向かって直美は種明かしをしてみせる。

「えぇ?

 このレオタードが安形キャプテン?

 そんな…

 嘘でしょう?」

直美の話を信じられない佐織は自分が着ているレオタードを改めて見ると、

『…そうよ、

 あたしよ…』

とレオタードから由美の声がこれ響いてきた。

「うそっ!」

レオタードから聞こえてきた声に沙織は驚くと、

ギュギュッ

ギュギュギュッ!

レオタードは佐織の身体を締め付け始め、

『信じてくれる?

 あたし、レオタードになっているの、

 レオタードになって西田さんに手ほどきをしてあげようとしたんだけど、

 でも、身体がとっても乾いてしまって、

 お願い、

 汗を、あなたの汗をもっと吸わせて、

 それがないとあたし只のレオタードになってしまうの』

と懇願しながら、

まるで絞り取るように

ギュム

ギュム

ギュム

と蠢き始めた。

「ひゃぁぁ!!

 あぁぁん、

 レオタードがぁ、

 あぁん食い込んでくるぅっ!」

艶かしく繊維を光らせてレオタードは蠢き、

佐織の股間にグイグイと食い込んでくる。

「あはんっ、

 だめっ

 感じちゃう、

 あぁ…

 乳首をそんなに抓らないで」

噴出すようにして汗を流し、

さらに股間をも湿られて佐織は快感に溺れていくと、

『あぁ…

 お股から出てくるエッチなお汁がこんなに美味しいだなんて』

と由美もまた佐織が流す愛液の味に目覚め、

『もっと、

 もっと、頂戴、

 あたしをビチョビチョに濡らしてぇ』

そう囁きながら、

グボッ!

佐織の股間を覆う部分を凹ませ、

彼女の体内へとレオタードと化した体の一部を挿入していく。

「あはっ、

 あぁぁん、

 入ってくる、

 レオタードが入ってくる。

 あぁん、

 突かないで、

 そんなに粗く突かないで」

事実上レオタードに犯されている佐織は仰向けに倒れ、

身体をよじりながら必死に懇願するが、

しかし、由美もまた動きを止めることは無かった。

「あはんっ

 あはんっ

 あぁぁっ、

 いっイクぅぅぅ!!!」

こうして佐織と由美のスキンシップはいつまでも続き、

ついに夜を明かしてしまうと、

「あらあら、

 あれから一晩中やっていたの…」

翌朝、練習場を覗きに着た直美の前にはぐったりと倒れたままの佐織と、

その佐織の身体を覆うレオタードが艶やかに朝日を反射していたのであった。



シュルンッ!

シュリュシュルシュル…

流れる音楽に乗って佐織は華麗に舞い、

そして、キメるところはしっかりと決めていく、

新体操の大会。

由美の代わりに出場した佐織は唖然とする光子達の前でしっかりと舞い踊り、

確実に得点を積み重ねていた。

「一体、どういうこと?

 あのドジ娘が!」

悔しそうに地団太を踏みながら光子は怒鳴ると、

演舞を終えた佐織が戻ってきた。

「とっても良かったわよ、今の演舞」

戻ってきた佐織に由美はそう話しかけると、

「ありがとうございます」

大粒の汗を掻きながら佐織は返事をし、

そして、

「あの、キャプテン。

 あたし、ちゃんと出来ました。

 みんなキャプテンのおかげです。

 それで、こんなに汗を掻いちゃったんですけど…

 気持ちよくしてはくださらないんですか」

とレオタードに向かってささやきかける。

すると、

『ダメ、いまは人の目があるからダメよ』

そんな佐織に向かってレオタードは返事をする。

「判りました」

その返事に佐織は元気よく返事をすると、

「一人で何をしゃべっているの?」

と怪訝そうに尋ねる光子をよそに、

「すみません。

 ちょっとトイレに行ってきます」

の声を残して佐織は駆け足でその場を離れたのであった。



「先輩、

 トイレの中でたっぷりと吸ってくださいね」



おわり