風祭文庫・人形変身の館






「口封じ」



作・風祭玲

Vol.853





ピッ!

パシャッ!

初夏の空に水しぶきの音が響き渡ると、

ザバッ

ザバッ

ザバッ

競泳パンツ姿の男子達が一斉に泳ぎ始める。

二クラス合同、男子のみの水泳の授業。

蒸し暑くなり始めた午後の授業にとって、

この授業ほど至福のときはない。

そして、体調などの理由でこの授業を欠席しなくてはならない者にとっては

ある意味、拷問に近いものであった。

だがここに一人、

そんな彼らの姿をホッとした表情で見ている者の姿があった。

青葉俊輔。

男子水泳部に所属し、

水泳の授業となれば先頭を切っていた者が、

体調不良を理由にこうして見学をしているのである。

ピッ!

バシャッ!

ホイッスルの音が鳴り響くごとに水しぶきがあがり、

と同時に塩素の香りを含んだ水の匂いが漂ってくる。

余裕のあるシャツにジャージのズボン姿で俊輔は見学をしていると、

「ようっ、

 青葉っ」

と声をかけてくる者がいた。

柴田明。

俊輔とは違うクラスであったが、

陸上部の副主将を務めるホープであり、

彼が出す記録はしばしばこの地区の大会記録を塗り替える実力者でもある。

だが、自惚れやすい面もあり、

それが祟って主将に推挙はされず、

副主将の立場に甘んじることになっていた。

「柴田君?」

プールの水を滴らせながら、

自分の前に立つ明を俊輔は鬱陶しそうに見上げると、

「水泳部員が見学とは、

 随分と偉そうじゃないか」

と因縁をつけ始めた。

「別に?

 先生には届出を出しているから、

 関係はないだろう?」

プィと横を向きながら、

明に向かって言うと、

「なんだよ、

 俺に文句があるのか?」

と絡んでくる。

「だから、別に関係はないだろう?」

そんな明に俊輔は語気を強めると、

「けっ、

 んだよぉ、

 女みたいな声を上げやがって、

 男なら堂々とシャツを脱げよ」

と明は言い、

俊輔が着ているシャツを剥ぎ取ろうとした。

すると、

「やめろよっ!」

その様子を見ていた他の者たちが止めに入ると、

「んだとぉ、

 てめーっ!、

 俺を誰だと思っているんだ!」

と明は声を上げて抵抗をするが。

「柴田っ、

 いい加減にしろ!」

成り行きを見ていた体育教師が怒鳴り声を上げると、

「ちっ!」

明は舌打ちをしながら俊輔から離れていったのであった。



そんな明の後姿を見ながら、

俊輔はホッとしながらも、

そっと、シャツの上から自分の胸を押さえる。
 
すると、

フニッ…

という柔らかい乳房の感触と共に、

スルッ

シャツが何かと触れ軽く滑る。

「!!」

その感触に俊輔は思わず顔を赤くすると、

「…女の子なんだ」

と小さく呟く。



キーンコーン!

更衣室の中にチャイムの音が鳴り響くと、

「急げ」

競泳パンツから制服に着替えをしていた者たちは

大慌てで済ませると次々と飛び出していく。

そして、皆の姿が消えた頃を見計らって、

俊輔は更衣室に入ると、

着ていたシャツを脱いだ。

すると、

キラッ☆

シャツの中から出てきたのは、

白アシと呼ばれる女子用の競泳水着が姿を見せ、

さらにジャージのズボンを脱ぐと、

その白アシが乳房があり、

そして股間に縦溝が刻まれている俊輔の身体を

包み込んでいる様子が見て取れる。

「香織さん…なんでこんなことを」

白アシが覆う自分の身体を見ながら俊輔はふと呟くと、

『いいこと?

 水泳の授業は見学よ、

 でも、ちゃんと白アシは着て参加するのよ、

 あくまでも水泳部員なんだからね』

と俊輔にそう指示をする水上香織の姿が浮かび上がる。

そして、周囲を気にしながらその白アシを脱ごうとしたとき、

「へぇぇ…

 青葉俊輔はニューハーフだったとは知らなかったな」

と明の声が響き渡った。

「!!」

その声に俊輔は慌てて振り返ると、

「へぇぇ」

制服に着替えた明が俊輔の後ろに立っていて、

感心しながら白アシ姿の俊輔の頭の天辺から、

足元へと視線を何度も動かし、

「女になるために

 チンポも切っちまったんかよ」

とにやけながら言う。

「やっやめろ」

その声にむかって俊輔は怒鳴るが、

グニッ!

明は無理やり俊輔の乳房に手を触れると、

思いっきり掴み上げ、

「あぁっ!」

その感触に俊輔が声を上げてしまうと、

「なんだ?

 このオッパイはよぉ、

 シリコンでも埋めたか?

 このオカマが」

と屈辱的な言葉を浴びさせた。

そして、縦溝が走る股間に手を触れながら、

「なぁ、

 いまここで犯してやろうか?

 お前の人工マンコをさっ」

と鼻息荒く言い聞かせる。

「くっ!

 誰がっ」

ニヤニヤと笑う明を俊輔は睨みつけると、

「いいんだぜ、

 この場で俺を張り倒しても、

 でも、お前の秘密を俺がクラスのみんなに向かって言ったら

 どうなるのかなぁ?

 くくっ、

 性転換をしたオカマなんて即刻、退学かもよ」

と自信たっぷりに言うと、

「今日の放課後、

 ここでなっ

 楽しませてもらうぜ」

そう言い残して去っていった。

「どっどうしよう

 みんなに知られたら…」

一人残された俊輔はクラスメイト達に自分の秘密をバラされたときの光景を想像しながら困惑するが、

「そうだ、

 香織さんに相談しなくっちゃ」

と香織のことを思い出すと、

急いで制服に着替えた。



「そうですか、

 柴田君があなたの秘密を知ってしまいましたか」

明のことを相談に来た俊輔に香織はそうつぶやくと、

「あの…どうしましょうか」

と俊輔は困惑した表情で香織を見る。

すると、

「少し考えさせてください」

香織はそう返事をすると、

「次の授業は何も無かったかのように出てくださいね」

と笑顔で俊輔に告げた。

こうして俊輔にとって、

いつ明によって秘密を暴露されるのかと

ヒヤヒヤしながらの授業は進み、

そして何事も無かったかのように放課後を迎えた。



「え?

 更衣室には行くな…

 ですか?」

部室で香織からの指示を聞いた俊輔は驚きながら聞き返すと、

「えぇ、

 この問題はわたしと潤、そして瑞穂で対応します。

 あなたは終わるまでこの場で待機。

 いいですね」

と香織は念を押し、

そして、水泳部のジャージ姿の潤と瑞穂をつれて出て行った。

「ちっ、

 青葉の奴、

 居ないじゃないかよ」

無人の更衣室の中で明は苦虫を噛み潰した表情をすると、

「あのカマやろーっ、

 どうなるか、めにものを見せてくれるっ」

そう怒鳴りながら、

ガンッ!

とロッカーを蹴り上げた。

すると、

ガチャッ!

更衣室のドアが開き、

ジャージ姿の人物が入ってきた。

「なんだよっ、

 遅いじゃねぇか

 罰として…」

その人物に向かって明はそう言いかけた所で、

「ちっ!

 んだよぉ!

 オカマじゃないのかよ」

と口惜しそうに呟く。

「え?」

明のその言葉に人物は聞き返すと、

「そうか、

 お前、有馬じゃないか、

 なんだ、そのジャージは?

 剣道部から水泳部に鞍替えしたのか、

 まぁいいか、

 いいこと教えてやろう、

 お前のところに青葉俊輔って居るだろう?

 アイツなぁ、

 カマなんだよ、

 ニューハーフなんだよっ、

 信じられなかったらアイツを脱がしてやればいいよ、

 いつの間にか女の身体になりやがって、

 しかも、女用の水着まで着込んでいるんだぜ、

 変態を通り越しているよまったく」

と俊輔の秘密をペラペラと喋り捲る。

すると、

「それってこういうことですか?」

話を聞いていた潤はそう尋ねながら、

着ていたジャージを脱ぎ捨てると、

白アシが覆う身体をさらけ出した。

「うっ、

 なんだよっ、

 お前っ

 男じゃなかったのかよっ」

プックリと2つの膨らみが胸まで覆う水着を持ち上げ、

ウェストは括れ、

張り出したヒップには縦に開く溝が刻まれている。

そんな潤の肉体を見ながら明は悲鳴を上げると、

続いて少女が入ってきた。

「ひっ、

 なんだ、

 今度は女か…

 なぁ見てみろよ、

 こいつ、女になっているんだぜ

 おかしいだろう」

潤を指差して明は声を上げると、

スルッ

更衣室に入ってきた田沢瑞穂は無言で、

ジャージを脱ぎ去った。

そして、

肉棒で大きく膨らんでいる競泳パンツを見せつけると、

「ひっ、

 おっお前ら、

 おかしいぞ、

 気が狂っている。

 寄るなっ

 寄るなよっ」

と半ばパニックになりながら叫んだ。

すると、

「ふふっ

 どうかしら、

 あたしの作品は…」

その声と共に香織が入ってくると、

「ひぃぃぃ!!!」

明は頭を抱えその場に座り込んでしまった。

「あら、失礼ね、

 あたしはまっとうな女の子なのに…」

そんな明を見下ろしながら香織は文句を言うと、

「香織さま、

 いかがいたします?」

と瑞穂が尋ねた。

「そうねぇ…

 いまはショックで錯乱しているけど、

 こいつ、おしゃべりで有名だし、

 性格曲がっているし、

 あちらこちらでベラベラしゃべられたら困るから、

 二度と口が利けないモノにしてしまいましょう」

と香織はさばさばした口調で話す。

そして、

「さぁて、お立会い」

の言葉と共に一着の女子用白アシを手に取ると、

「これをこいつに着させてから、

 イカしてあげて、

 面白いのが見られるわよぉ」

と言いながら潤に白アシを手渡した。

「はっはいっ」

その言葉に従い、

潤は明に近づくと、

「うわぁぁぁ!

 来るなぁ!」

明は悲鳴を上げて抵抗をし始める。

すると、見かねた瑞穂が明の腕を捻り上げ、

「さぁ」

と声を上げた。

「離せっ!

 この化け物めっ、

 俺を離しやがれ!」

あらん限りの力を振り絞って明は暴れ始めるが、

ムキッ!

股間のみならず肉体も男性化している瑞穂を振り解くことは出来ず、

潤の手によって制服を脱がされると、

手渡された白アシを着せられていった。

そして、

ピチッ!

陸上で鍛えた明の身体を白アシが覆うと、

「うふっ、

 オチンチンがビンビンよ」

明の白アシ姿に上気してしまった潤が

その股間をそっと撫でながら軽くキスをする。

「やめろぉ!」

その行為に明は足を閉じて抵抗をするが、

「可愛いぜ」

明を拘束している瑞穂もその首筋にキスをした。

ピチャッ

ピチャッ

「やめっ

 …やめろぉ」

二人の”男”と”女”に股間と首筋を吸われながらも、

明は抵抗を続けるが、

だが、

ジワッ

白アシが覆う股間に黒い染みが広がってくると、

徐々に抵抗する力が消え、

「あっ

 あっ

 あぁぁっ」

喘ぐ声を響き渡らせ始めた。

そして、その声が二人の心に火をつけると、

グリッ!

瑞穂はいきり立つ股間を明のお尻に押し付け、

また、潤は

チュパチュパ

とその染みを舐め取り始めた。

「あふんっ

 あふんっ

 いっ

 いい…

 あぁ出る

 出る

 出る」

二人の絶え間ない攻めに明は限界点に達し始め、

そして、最後の一線を越えたとき、

「あぁぁぁぁぁ!!!!」

明の悲鳴と共に、

シュワァァァァァ!!!

その身体から激しく湯気が吹き上がった。

「きゃっ」

「うわっ」

突然のことに潤と瑞穂は慌てて離れると、

シュゥゥゥゥ

シュゥゥゥゥ

湯気を吹き上げながら明はその場に倒れ、

そして、身体を縮めていくと、

着ていた白アシの中へとすっぽり収まっていく。

程なくして湯気が収まり

明が居たところには、

プッと膨れた白アシが一着落ちているだけであった。

「え?

 柴田君は?」

消えてしまった明の姿を探して潤が声を上げると、

「彼はこれになったわ」

と言いながら香織は白アシを拾い上げ、

そして、その中に手を入れると、

スルリ…

ともぅ一つの白アシを取り出して見せる。

「え?

 白アシに…なってしまったんですか?」

それを見た瑞穂が目を丸くして驚くと、

「ふふっ、

 でも、死んではいないわ」

と香織は呟く。

「死んでないって…

 じゃぁ生きているのですか?

 その白アシは…」

それを聞いた潤が聞き返すと、

「生きても居ない…

 けど、生きている…

 まぁ、モノに置換された。

 と言う事かしら、

 口封じには持てこいね」

そう香織は言いながらニヤリと笑う。



ザバッ

ザバッ

ザバッ

女子水泳部の特別練習が始まり、

ピチッ!

真新しい白アシすがたの俊輔がプールの中を泳いでいく、

「ねぇ、

 どうかしら、

 新しい白アシは」

プールサイドから競泳パンツ姿の香織が尋ねると、

「はいっ、

 とっても着易くて、

 泳ぎやすいです」

と俊輔は笑顔で返事をした。

その白アシが明のなれの果てであることも知らずに…



おわり