風祭文庫・人形変身の館






「レオタードの秘密」



作・風祭玲

Vol.836





「はぁはぁはぁ

 はぁはぁはぁ」

カーテンが閉ざされた薄暗い一室に男の荒い息声が響き渡り、

部屋の中に伸びる黒い影が不気味に蠢く。

やがて

シュッシュッシュッ

荒い息声と共に響く何かを擦る音が次第に大きくなっていくと、

「うぅっ、

 あうっ

 いいぜぇ

 奈央ぉっ」

喘ぐような男の声が響き渡り、

その直後、

シュッ!

白い放物線が部屋の中に描かれた。



カシャッ!

カシャッ!

放課後の体育館にシャッター音が響き渡る。

「ねぇねぇ、

 奈央っ、

 また来ているよ、あいつ」

レオタードを身に纏い、

手具を手にしている新体操部員である中野美穂が怪訝そうな顔をしながら、

床の上で柔軟運動をしている五木奈央に話しかけた。

「え?

 いいんじゃない?

 だって、彼、

 写真部でしょう?」

180度近くまで大きく股を開き、

空を床につける奈央はそう返事をすると、

「そんなことを悠長なことを言ってぇ、

 アイツの目当ては奈央っ

 あんたなのよっ、

 幾ら3年生だからってちょっと横暴すぎない?

 奈央も奈央よ、

 そんな見せ付けるようにしなくても、

 少しは警戒をしたらどうなの?」

スパッツなどを重ね穿きせず、

インナーとレオタードのみで柔軟運動する奈央の様子に、

美穂は不機嫌そうにして警告をする。

だが、

「気にしないのが一番。

 第一、試合の時ってこの格好でするじゃない。

 そんなの意識していたらキリがないわよ」

汗を滴らせなから奈央は顔をあげ、

ニコリ

と微笑んで見せると、

「はぁ、

 さすがは女王の貫禄ね。

 あんな些細なことは気にしないか…」

それを見た美穂は諦めに似た返事をする。



五木奈央。

17歳の高校2年生。

身長は168cmとやや長身で、

競技の邪魔にならないほどのバスト、

絞り込まれたウェスト、

ふくよかなヒップ。

そしてスラリと伸びた脚。

まさに新体操のためにこの世に生まれて来たようなスタイルの持ち主で、

それを裏付けるようにあまたの大会での優勝経験を持ち、

周囲からは”女王”と言う称号を授かっているのだが、

無論、それは羨望と嫉妬が混ざったものである。

しかし、奈央自身はその様な周囲の気持ちなどまったく気にかけず、

何時もマイペースであった。

「どうしたらそんな鋼の心臓になれるのかな?

 あたしなんて、

 下心を持った男に見られていると思っただけで、

 背筋が寒くなるのに…」

相変わらず柔軟運動を続けている奈央に美穂はそう話しかけると、

「あれ?

 奈央っ、

 いま気がついたけど、

 またレオタード変えたの?」

と指摘した。

「え?

 うんっ、

 気分を変えようと思って」

美穂のその指摘に奈央はあっさりと答えると、

「だって、この間変えたばかりでしょう?

 よく次から次と買えるわねぇ

 あたしなんてこのレオタード1年以上着ているのに」

と美穂は呆れるが、

「うふっ、

 美穂もレオタード変えてみると良いよ」

美穂に向かって奈央言うと、

「そう簡単には変えられませんよ、

 第一高いじゃないっ」

と美穂は言い切った。

すると、

「じゃぁ、あたしのをあげるよ、

 すっかり増えちゃったから」

そんな美穂に向かって奈央は笑顔で言う。



バサッ!

「好きなのをあげるわ」

新体操部の部室の机に

色とりどりのレオタードを広げながら奈央はそう言う。

「ちょっと、

 奈央っ

 あなた、こんなに持ってきていたの?」

それを見た美穂は目を丸くして声を上げると、

「うふっ」

と奈央は笑う。

「まぁ、頂けるのなら…」

そんな奈央を横目に見ながら美穂は2・3点拾い上げると、

「うわぁぁ…

 これ可愛い…

 ねぇ、このデザインもなかなかね。

 うーん、これはどうしようかなぁ」

と気が進まない割には、

熱心に品定めを始めだした。

そして、特に気に入った2・3着を選ぶと、

「あたしはこれでいいわ」

と美穂は満足げに奈央に言う。

「あら、それだけで良いの?」

それを見た奈央はそういうと、

「ねぇ、そこのあなた達もどう?」

と外に居る新体操部員達に向かって声をかけた。

その途端、

「あたしたちも良いんですかぁ?」

の声と共にレオタード姿の部員達がなだれ込んでくると、

瞬く間に部室はバーゲン会場の様相と化し、

程なくして全てのレオタードが消えてしまったのであった。

「はぁ…

 凄いというか…」

その光景に美穂は呆れながら頭を掻くと、

改めて手に持つレオタードを見る。

すると、

「あれ?

 奈央のレオタードにはメーカータグが無いんだ」

と手にしているレオタードがどこで作られたのか、

それを記すタグがどこにも無いことに気付いた。



「さて…と」

皆が練習に戻った後、

一人部室に残った奈央は気合を入れなおし、

そして、

ガチャッ!

ロッカーの中から別のレオタードを取り出した。

それは先ほど配ったレオタードを比較すると、

ややくたびれ、

そして汚れかかっていて、

スーッ!

奈央はそのレオタードから立ち上る臭いを嗅ぐと、

「ふふっ」

っと笑みを浮かべる。



カシャッ!

カシャッ!

新体操に汗を流す乙女達の姿を

郷田武は相変わらずカメラに収めていた。

「はぁ…

 いいなぁ…」

写真部部長の肩書きを印籠のごとく利用して、

武は新体操部を手始めに女子選手が活躍するあらゆる部活の撮影をし、

そして、一人部室でその写真をオカズにしていたのであった。

そんな武がカメラを構えなおしたとき、

「郷田先輩っ」

と彼の名前を呼ぶ声が響いた。

「え?」

その声に武はカメラを構えたまま振り返ってしまうと、

ニョキッ!

いきなりファインダーいっぱいに肌色が占拠し、

「うわっ」

それを見て慌てて目を離すと、

「先輩っ、

 撮影、お疲れ様です」

生脚を見せながら奈央は武の前に立つ。

「うっ、

 いっいやぁ!」

ジャージもスパッツも身に着けず、

レオタード一枚のみの姿で自分の前に立つ奈央の姿に、

武はドギマギしながら返事をすると、

「はいっ、

 先輩にもお裾分け」

と奈央は一枚のレオタードを差し出した。

「え?」

唐突な奈央の申し出に武はキョトンとすると、

「先輩って、

 あたしの写真を一杯撮っているんでしょう。

 だから、あたしの匂いがいっぱい詰まったのをあ・げ・る。

 このレオタード、

 あたしの汗をいっぱい吸っているから」

と奈央は言い、

武の手の中に薄汚れたレオタードを押し込み、

「じゃぁ」

そういい残して練習へと戻って行く。

そして、

「こっこれを僕に?

 まっマジ?」

股間をビンビンに硬くしながら武はそう呟くと、

レオタードを握り締めながら

脱兎の如く立ち去っていった。



「はぁはぁ

 はぁはぁ

 はぁはぁ

 スーッ!

 ハーッ!

 うっ

(ビュッ!)」

あれから数時間が過ぎ、

窓の外はすっかり夜の帳が下りていた。

だが、武はその様なことは構わずに、

オナニーに狂っていた。

オカズはもちろん奈央から譲り受けたあのレオタードであり、

レオタードから立ち上る奈央の臭いであった。

同棲同士では悪臭にしか感じられないものが

相手が異性となると芳醇な香りへと変身する。

この摩訶不思議な現象を目の当たりにした武の心の中は、

まさにパニック状態であり、

それから逃れようとして、

武はレオタードの臭いのなかに安らぎを求めた。

だが、それも長くは続かなかった。

心の奥底に湧き上がって来た欲求の赴くまま、

武は制服を脱ぐと、

下着も取り去っていく、

そして、全てを脱ぎ去った後、

武は徐にレオタードに脚を通すと、

キュッ!

キュキュ!

それを引き上げ、

自分の身体にぴっちりと貼り付けた。



「あぁ…

 これが五木さんの感覚ぅ」

レオタード姿になった武は

股間を大きく膨らませながら恍惚とした表情で、

その感触を堪能していると、

キュゥゥゥゥ…

次第にレオタードが締め付け始め、

それにあわせて、

メリメリメリ…
 
ムリムリムリ…

あろうことか武の身体が急速に変化し始めた。

「え?

 え?

 ええ?」

身体の異変に武はすぐに気付くが

だが、何がおきているのか理解するのに時間がかかり、

その間にも、

平べったい胸にバストが膨らみ、

寸胴なウエストは括れ、

細いヒップは張り出して行くと、

さらに、脛毛が覆っていた足から毛が全て抜け落ちていった。

そして、

大きくテントを張っていた股間から膨らみが急速に萎んでいくと、

クチュッ…

その跡には一本の縦筋が膨らみと共に刻まれてしまった。

「うっうそぉ!

 おっ女にぃ?」

プックリと硬くなった乳首が影を作るバストを持ち上げながら、

武は呆然としていると、

チャッ!

突然、部室のドアが開いた。

「え?」

その音に武は振り返ると、

「うふっ」

なんと、あの奈央が笑みを浮かべながら立っていて、

そして、

有無をいわずに写真部室に入ってきた。

「あっ、

 いっ五木…」

奈央を見ながら武は声を上げるが、

その声は少女を思わせるトーンの高いものであり、

さらに、

キュッ!

ボサボサの髪もいつの間にかひっ詰め頭となっていたのであった。

「うん、

 郷田さん、

 そんなところで何をしているの?

 新体操部員が勝手に体育館を離れてはいけないでしょう?」

と奈央は武に告げる。

「え?

 いやっ

 ぼっぼ…あっあたしは…その」

その言葉に武は女の言葉で返事をしてしまうと、

慌てて口を閉じるが、

スッ!

その背後に奈央が回って立つと、

武の首元に手を交差させ、

「あなたは新体操部員よ」

と優しく話しかける。

そして、

その手を滑らせながら、

キュッ!

武の乳首を軽く抓った。

「あんっ」

その途端、艶かしい声が武の口から零れ落ちると、

クラッ

まるでもたれ掛かるように奈央に寄りかかってしまい。

「うふっ、

 とても言い声よ」

そう囁くとそっと抱きしめる。



「あぁーん

 あぁーん」

月の明かりが差し込む部室に女の喘ぐ声が響き渡り、

クチュッ

クチュクチュ

淫らな音が微かにこだまする。

「ねぇ、

 どうかな、先輩?

 レオタードってとってもエッチでしょう」

レオタードを横にずらした股間に指を入れながら、

鋭い視線で奈央が尋ねると、

「んんーっ

 んんーっ」

口も真一文字に結び武は頭を横に振る。

だが、

「嘘おっしゃいっ」

その姿を見た奈央がそう呟くと、

キュッ!

妖しく輝くレオタードを押し上げている武の乳首を抓り上げた。

「あんっ!」

その途端、まるで電撃を撃たれたかのように、

武は身を反らしてしまうと、

「くすっ、

 身体は正直者よ、先輩。

 先輩はすっかり女の子になっているのよ」

そう囁き、

奈央は改めて武を抱きしめ唇にキスをする。

その姿は昼間皆に見せているマイペースな奈央ではなく、

飢えている妖美なクモを思わせ、

そして武はそのクモが張った巣にい絡め取られている一匹の虫であった。

花柄をあしらった青紫を身に纏った

美しきハンターが武を絡め取り、

その体液を吸い取っていく、

妖美なクモに絡め取られてしまった望美に残された道は、

このまま全てを吸い尽くされてしまうか、

それとも自分もクモとなって相手から体液を奪うかである。

「いや、いや、いや

 止めてください。

 あたしは…

 こんなことは…」

自分に絡みつくクモの糸一本一本引きちぎるようにして、

武は抵抗をするが、

いつの間にか自分の股間に顔をうずめた奈央が、

チュルルル…

武の秘所より愛液を吸い出し始めると、

「あぁぁぁぁぁ!!」

武は身体を硬直させる。

「うふっ

 とっても美味しいわぁ

 女の子にされた男の子が流す愛液、

 これこそがあたしの力の源、

 さぁ、もっと頂戴。

 もっと流して、

 そうすればあたしは女王でいられるのよ」

自分の秘所に指を入れながら奈央はそう告げると

ピチャピチャ

ピチャピチャ

レオタードを妖しく輝かせながら、

奈央は武は絡み合い

絶頂への高みを駆け上っていく。

そして、

「あぁぁぁん」

「いくぅぅぅ」

二人同時にその頂へと上ったとき、

シュワッ!!

シュワシュワシュワ…

武の身体から白い湯気が吹き上がり始めると、

「あぁ…

 いいわぁ

 力が漲ってくるぅ」

その湯気を一身に浴びて、

奈央は身体の奥から力が沸いてくるのを実感する。

そして武は、

シュゥゥゥゥゥゥ…

全身から湯気を吹き上げながら、

徐々に萎んでいくと、

次第にその身体は繊維と化し、

さらにその繊維が絡み合っていくと、

光沢を放つ布へと変化してゆく。

そして、湯気が止まったとき、

そこには薄汚れたレオタードの中に押し込まれるように、

もぅ一枚のレオタードが入っていたのであった。

パサッ

艶やかな肌を見せながら奈央がレオタードの中より、

武が変身したレオタードを取り上げると、

「ふぅーん、

 なかなかいいデザインじゃない。

 うん、気に入ったわ。

 明日の大会はこれを着よう」

と呟いていた。



そして、翌日。

タンッ!

リズムと共に輝く明かりの中に一つのボールが放り上げられると、

クルリッ!

色鮮やかなレオタードに身を包んだ奈央が力いっぱい跳ね上がる。

「はぁ…

 よくあんなに動くわねぇ」

それを間近で見ながら美穂は感心をしていると、

「あっ、

 また新しいレオタードを買ったんだ…

 本当にどこで手に入れるんだろう」

と奈央が着ているレオタードを見て怪訝そうな表情をしていた。



「うふっ、

 先輩っ、

 とても着心地が良いですよ。

 先輩、あたしにこうされることを望んだんでしょう?

 さぁ、あたしと一緒に演技をしましょう」



おわり