風祭文庫・人形変身の館






「姉妹」



作・風祭玲

Vol.274





ガァァァァァ!!!

あたしを押し込めていたコンテナが大きく傾くと、

ザザザザザ!!

轟音とともにあたしは外の世界へと放り出されていった。

コロコロコロ…

押しつぶされ胴体から引きちぎられていたあたしの首は落ちた勢いで転がっていくと、

パシャン!!

茶色くよどんだ水たまりの中に飛び込んだ。

チャプンチャプン

ここは広大なゴミ処理場らしく、

その奥でユラユラと揺らめく夕日をながめながら、

「………綺麗な夕日…」

水に半分浸かりながらあたしの目は夕焼けの空をただ見据えていた。



「お姉ちゃんっ、早くぅ」

一足先に階段を上っていった沙樹が

その後を登ってくるあたしを急かすように声を掛けた。

「そんなこと言ったって(はぁ)

 …何でこんなにキツイのよっ、この階段は!!」

急勾配の階段に八つ当たりをするようにして

あたしが文句を言うと、

「ほらっ、コンサートが始まっちゃうよ!!」

時計を気にしながら沙樹はあたしを急かす、

「判っているわよ!!」

沙樹の態度にちょっとムッとしたあたしがそう怒鳴ると、

「山奈飛鳥さんですね」

と言う声が響くと同時にあたしの意識が消えていった。

「お姉ちゃん!!」

沙樹の叫び声が薄れていくあたしの耳に響く、



「うっ……え?」

どれくらい経っただろうか?

ハッ目を覚ましたあたしは真っ暗な部屋の中にいた。

「ココは何処?」

そう思いながら周囲を見ようとすると、

あたしは全裸のまま、何かに吊されていることに気がついた。

「え?、裸?

 それに何コレ?

 どういうこと?」

予想外のことにあたしは混乱していると、

「あぁ、目を覚ましてしまいましたか」

抑揚のない無機質的な声が響くと同時に

まるで闇に浮かび上がるようにして白衣姿の男性が姿を現した。

「だっだれ?」

驚きながらもあたしは男をよく見ると、

男が着ている白衣はすっかりよれ、

ボサボサの髪に、無精髭を生やした姿をしたいた。

「あっあたしに何をする気?」

反射的に男を変質者を判断したあたしは怯えながら尋ねると、

「私のアトリエにようこそ」

と男はあたしに深々と頭を下げた。

そして、

「ここは人形を作る工房です、

 わたしはここの人形職人ですよ、

 ほら、これらはあたしの作品です」

男はあたしにそう言った途端、

フワッ

部屋の明かりが灯されると、

コレまで暗くてよく見えなかった部屋の様子が徐々に見えてきた。

「これは…」

あたしの目に飛び込んできたのは

10畳間ほどある部屋の壁をビッシリと埋め尽くす人の姿だった。

「どうです?、私の自慢の一品です」

男はそう言いながらあたしの正面にある女性の前に立った。

「ほらっまるで生きているみたいでしょう」

虚ろな視線であたしを凝視している女性の頬を撫でながら男はそう言うと、

「ふふ…でも、これは人形なのですよ」

と説明をするなり、

グッ

と彼女の肩をわし掴みにするとそれを引っ張った。

すると、

ズボッ!!

っと女性の肩が外れると、男の手に白くて細い腕が握られていた。

「どうです?

 なかなかのモノでしょう」

そう言って男はあたし目の前にその腕を差し出したが、

しかし、あたしにはその腕から覗く白い骨に目がいくと、

「ほっ骨…?」

と口走った。

「あぁ、気づかれましたか、

 そう、骨だけではありませんよ、
 
 ほらこの通りちゃんと内臓もありますよ」

男はそう言いながら女性の下腹部を掴むと

グィッ

と引き上げた。

すると、

そこには生々しい色をした内臓が姿を現した。

「ひぃっ!!」

それを見たあたしは目を背け悲鳴を上げた。

「あはは…どうです?」

男は軽く笑いながらそう言うが、

あたしには人形の女の人がまるで生きているかのように見えた。

「どう、凄いでしょう?

 で、コレの作り方って知りたくないですか?

 いいでしょう、

 お見せいたしますよ、特別に…」

男は笑みを浮かべながらあたしにそう言うと、

カチャカチャカチャ

と言う音共にあたしの前に人が吊されたハンガーが据え置かれた。

「沙樹っ!!」

吊された人の姿を見たあたしは目を丸くして驚いた。

紛れもない、あたしの目の前で全裸で吊されているのは妹の沙樹だった。

「沙樹っ

 沙樹っ!!」

あたしは何度も呼びかけたが、

しかし沙樹はまるで深く眠っているかのように目を覚まさなかった。

「なんて事をっ

 沙樹をスグに離しなさい!!

 じゃないと警察に訴えるわよ」

仕方なく、あたしは男を見据えるとそう叫んだが、

「はっはっはっ

 無理無理!!

 警察は来ませんよ、

 何しろ、私の得意様の一つなんですから」

男はそう告げると、

「えぇっと、

 依頼ナンバー”N−528”さん、

 あぁ…交通事故でプロレスラーだった旦那さんと

 中学生だった娘さんを亡くした未亡人のようですね…

 ほぅ、街で妹さんを見かけて…

 余りにも死んだ娘に似ていたので傍に置きたいと、

 そのついでに寂しい夜の慰めにも使いたいと、

 はぁ…これは旦那さんも逞しい方だ…」

男は用紙をめくりながらそう独り言を言う、

「さっ沙樹に何をするの?」

男の言動にあたしは怯えながら尋ねると、

「何って、これからこのお嬢さん…

 そうあなたの妹さんを人形にするのですよ
 
 まぁそれと同時にお客様のご要望に合わせて改造もしますが」

とあたしに告げた。

「え?、人形に…」

その時あたしは沙樹の後ろに隠れてしまっている女性の人形の方を見据えた。

「そうですよ、

 さっき見たあの人形は元は人間だったのです。

 それをわたしが人形にしてあげたのですよ」

と男はあたしに言った。

「そんな…」

その言葉を聞いてあたしは愕然とした。

「さてと、では見ててください」

と男はあたしに言うなり、

沙樹の首に2本のチューブが着いている赤い首輪を巻き付けた。

「この首輪には血管に届く針が仕込んであって、

 血管から出た血液はこのチューブを伝ってこの機械に入っていきます、

 そして、この機械の中で腐敗しないように処理された血液と共に、

 わたしが開発した薬品が体の中に入っていきます。

 この薬品に触れるとタンパク質は柔軟性を失わずに固定化され、

 更に幾度も切断されても再附合すると言う素晴らしい性質も持つんですよ」

と説明をするが、

「…………」

しかし、あたしはその恐ろしさに言葉を失っていた。

「では、始めましょうか」

男は沙樹に準備が終わるのを確認すると、

パチン

と機械のスイッチを入れた。

ウィィィン!!

っとモーター音が響き渡ると、

スゥ…

沙樹の首輪に繋がっている管に血液の赤い帯が走っていくと、

モーター音を響かせている機械の中へと流れ込んでいく、

そして、しばらくして別の管を赤い帯が沙樹の方へ向かって走っていった。

「………」

言葉を失ったあたしはただその様子を眺めているだけだった。

しばらくして、

「うっうぅ…」

苦しくなったのか沙樹がうめき声を上げ始めた。

それを見たあたしは、

ハッとすると、

「沙樹っ!沙樹っ!!」

と声を掛けたがしかし相変わらず沙樹は目覚めない。

すると、

「ウグッ!!」

突如沙樹が目をまん丸に剥くように見開くと、

ゴボゴボゴボ!!

沙樹の身体から不気味な音が響き始めた。

「やっやめて!!」

それを見たあたしは思わず声を上げたが、

しかし、液体は沙樹の体内へと注入され続けていく、

「ぐっぐわぁぁぁぁ」

苦痛に耐えきれなくなったのか沙樹は大声を上げると、

ボコッ

ボコボコボコッ!!

モリモリモリ!!

沙樹の身体が内側から叩かれるように盛り上がり始めた。

「いっ!!」

あたしは不気味に盛り上がっていく沙樹の姿に肝を潰した。

そして、あたしのその様子を見ていた男は

「この薬品には超小型のナノマシーンも仕込んであって、

 前もって情報を与えておけば人形になる者を

 希望のスタイルにすることが出来るんですよ、

 このお客様は、

 顔は娘さん、でも身体はプロレスラーの旦那さんという希望なのでね」

と説明をする。

「そんな…」

あたしは筋肉を鍛えあげた男の人のような姿になってしまった沙樹をジッと見つめていた。

そうしている間にも沙樹の変化は進み、

ついには、

ムクッ

ジュリュゥゥゥゥ!!

沙樹の股間に赤黒いオチンチンが逞しく伸びていった。

「さっ沙樹ぃ!!」

それを見たあたしは声を上げたが

しかし、沙樹はその顔に似つかわしくない逞しい肉体と、

股間に勢いよく起立するオチンチンをむき出しにしたまま、

虚ろに空を見つめているだけだった。

やがて、

ピィィィィ…

機械のアラームが鳴り響くと

キュゥゥゥン

機械から漏れていたモーター音は途絶え、

そして、部屋は再び静けさを取り戻した。

「どうです、

 彼女はホラッ完璧な人形になってしまいましたよ」

男はあたしにそう告げる。

「そんな、

 酷いっ、

 鬼っ!悪魔っ!!

 沙樹を元に戻してよ!!」

あたしは思いつくまま悪言雑言を男に浴びせたが、

しかし、男はあたしの言葉を快感に感じたのか、

恍惚とした表情であたしを見つめると、

「いぃですねぇ…その言葉…

 さぁ、次はあなたの番ですよ」

と見下ろしながらそう告げた。

「やっやめて!!」

あたしは身体を捻りながら悲鳴を上げたが、

「えぇっと、

 あなたの依頼主はまだ高校生…おや同級生ですね」

男は用紙を眺めながらそう言うと

沙樹から外した首輪をあたしの首に巻き付けた。

そして、

ぐっと締め上げたとき、

ブスッ!!

首輪に仕込んであった2本の針があたしの喉を突き刺した。

クッ!!

刺すような痛みにあたしは思わず首を横に向けた。

「さぁ、飛鳥さん…

 大事にされてくださいね」

男はあたしの耳にそう囁くと、

パチン!!

っと機械のスイッチを入れた。

ウォォォォォン!!

機械のモーター音が再び響き渡ると、

ズズズズズ

あたしの首から血液を抜き取っていく、

そして、処理をされた悪魔の液体があたしの身体の中に入り込んできた。

「あっあっあっ

 かっ身体が…」

あたしは見る見る冷たくなていく身体に動揺する。

さらに急速に息苦しさを感じてくると、

ハァハァ

っと荒く息を何度もしたが

しかし、息苦しさは一向に収まらなかった。

それどころか、息をすることも次第にままならなくなっていった。

心臓の鼓動も徐々に弱々しくなっていく、

「うぅ…うぅ…」

それでもあたしは目を剥きながら必死の形相で息をしていると、

突然、

ムリムリムリ!!

お尻がムズ痒くなっていくと、

ググググ…

っとその穴が広がり始めた。

「あぁ…お尻の穴が…あそこが…あぁ開いていく!!」

前の秘所の穴も広がっていく感触にあたしは困惑しいると、

口もまるで何かを銜えるかのような形に開いていった。

「あぁ…見ないで…」

自分のはした無い姿を想像してあたしは恥ずかしさで一体だった。

すると、

「あぁ、そんなに無理をしなくてもいいんですよ…

 人形は息をする必要はないのですから」

男はあたしにそういうとあたしの鼻と口を手でそっと塞いでしまった。

「むぐぅぅぅぅ」

たちまちあたしは窒息状態になった。

そして、心臓の鼓動が聞かれなくなったとき、

フッ

息苦しさはまるでウソのように消えてしまった。

『あたし…死んだの?』

すっかり動かなくなった身体にあたしは呆然とすると、

「うん、完璧です。

 しかし、クラスメイトをダッチワイフにしたいとはねぇ…」

男はそう呟きながら、

人形の様に動かなくなったあたしに近寄り、

右肩をわし掴みにすると、

グィッ

っと腕を強く引っ張った。

ミシミシミシ…

やがて、関節の辺りから音が漏れ始めると、

ズボッ

と言う音共に男の手にあたしの腕が身体から離れていく

そう、あたしの腕があの人形の女性のように外れてしまったのだ、

痛もなく出血もない…

薬品処理をされたあたしの血液は血管のなかでジェルの様に固まっていた。

「よしよし」

男は関節の様子を確かめるとつづいて左腕を外した。

そして、さらに右足・左足と外され、

あたしの目の前に手足の4つパーツが並べられると、

ガサガサ…

男は大きめの段ボールが用意すると、

ビニールに包まれた手足が次々とその中に仕舞っていく、

最後にあたしの胴体がビニールに包まれ箱の中に仕舞うと

発砲充填剤が箱の中に注ぎ込まれた。

視界が徐々に闇の中へと閉ざされていく、

男はあたしの意識が残っていることに気づいているのだろうか?

「宅配便でーす」

程なくして威勢のいい男性の声と共にあたしを梱包した箱は運び出された。

どれくらい時間が経ったかは判らない、

「ありがとうございます」

と言う声が聞こえてきた。

どうやら、目的の所にあたしは届けられたらしい。

『そう言えば、

 あたしをこんな姿にするように依頼したのは

 クラスメイトとあの男が言っていたっけ、

 誰?』

あたしはクラスの男子の思い出そうとしたが、

ドンと箱が床に置かれると、

バッ!!

っとふたが開けられた。

ガサガサガサ!!

発泡剤が除けられ、あたしの視界に光が入ってくる。

「へぇぇ…凄げぇ…」

聞き覚えのある声があたしの上から降ってきた。

『誰だ、この声は』

そう思っていると、

あたしの身体がわし掴みにされ引き上げられていく、

『おっお前は!!』

箱から出ると同時に目の前に迫った男の顔を見てあたしは出ない声を上げた。

笹木伸一郎…

クラスの中でいつもフィギアなんとかとか言う雑誌を眺めているヤツだった。

「うわぁぁ、

 ホント、山奈さんそっくりだ…」

伸一郎は感心しながらあたしの身体をなめ回すように眺めた。

そして箱からあたしの手足を取り出すと、

ズポ

ズポ

っとはめ込んでいく、

『こらぁ、笹木っ、

 あたしになんてコトしてくれたのよ!!』

あたしはそう怒鳴りたかったが、

しかし、人形となってしまったあたしの身体は指一本動かすことができなかった。

「うへへ…

 ホンモノの山奈さんは行方不明になっちゃったけど、

 でも、僕にはこの山奈さんがいるからいいや」

『あたし…行方不明になっているんだ…』

伸一郎の言葉にあたしは自分が行方不明になっていることを知った。

「そうだ…」

ふと何かを思いついた伸一郎が

ベッドの下から何かを箱を取り出すと、

あたしの前に広げた。

『あっそれは…』

伸一郎があたしの前に広げたのは、

以前、クラブの更衣室から無くなってしまったあたしの制服だった。

『あたしの制服!!…

 笹木…お前が盗んだのか』

あたしは衝撃的な事実に驚いた。

しかし、伸一郎は驚くあたしに気がつくことなくその制服をあたしに着せていく、

『うぇ、何コレ?』

着せられた制服のスカートや胸元に白い粘液の跡が無数に着いているのに気づくと、

「ふへへ…山奈さんが僕の精液で汚れた制服を着ている」

伸一郎はそう呟くと膨らませた股間のチャックを開き、

中から飛び出した男のオチンチンを扱き始めた。

『イヤ、見せないでよ、そんな汚らわしいモノ!!』

あたしはそう叫んだが、

しかし、伸一郎は固く勃起したオチンチンをあたしの顔につけながら、

「さぁ、山奈さん、

 好きなだけ舐めてもいいんだよ」

と鼻息を荒くあたしに告げた。

『だっ誰が、そんなモノを』

あたしは動かない目で訴えたが、

しかし、伸一郎は陰湿そうな笑みを浮かべると、

あたしの開いた口にペニスを押し込んだ。

「おっ、すげぇ…

 動くよ、この口のなか!!」

『むぐぅぅぅ…

 いや!いや!!いや!!!』

グィグィ

伸一郎のペニスを押し込まれたあたしの口は

あたしの意志とは反対にゼンマイ仕掛けのオモチャのように動き始めた。

「うぉぉぉぉ」

『いやぁぁぁ』

突如伸一郎はあたしの頭を掴むと、

グッグッグッ

っと腰を動かし始め、

ついには口の中に精液を放出してしまった。

「くはぁ…

 すげぇ…

 さすがは100万円もしたものだけはあるな」

フラフラになりながら伸一郎は精液を垂れ流すあたしの口を

ティッシュで拭き取りながら感想を言う。

『うわぁぁん!!』

あたしは泣き叫んだが、

けどあたしの顔は表情一つ変えることなく、

じっと伸一郎を見据えていた。


そしてそれからというもの、

毎夜毎夜、伸一郎はあたしを犯し続けた。

口はもちろん、お尻の穴も散々犯されたが、

しかし、不思議とあたしの秘所には手をつけなかった。

そんなある日、

伸一郎がベッドの下からあたしを引きずり出すなり、

「ふふふふ…山奈さん、

 今日はなん日か知っているかい?
 
 そう、今日は僕の誕生日なのさ、
 
 だから、今日はコレまで取っていた山奈さんの処女を頂くからね」

と囁いた。

『いや…それだけは』

あたしは頭の中で抵抗したが、

けど、伸一郎はあたしをベッドの上に置くと、

グイッ

と両足を大きく広げた。

『見ないで!!』

「うわぁぁ、綺麗なピンク色だ」

伸一郎はあたしの秘所を指で広げながらそう言うと、

グンッ

大きく膨張したオチンチンをあたしの前に取りだした。

そして、

「じゃぁ頂くね」

と言いながらオチンチンをあたしの秘所に押し込もうとしたとき、

バン!!

突如、部屋のドアが開くと、

「伸一郎さん、これはどういうことですか?」

と言う怒鳴り声と共に中年の女性が部屋に入ってきた。

「…まっママ!!」

顔を真っ青にして伸一郎が振り返った。

「さっき、お父様から連絡があって、

 伸一郎さん、

 あなた、お父様口座から100万円を引き出したそうですね」

と怒鳴り始めた。

「いやっ違うんだよママ」

伸一郎は慌てふためきながら言い訳をしようとしているとすると、

「なっなっなんですかっそれは!!」

伸一郎の母親はあたしを見つけるなり、

顔を真っ赤にして怒鳴った。

「伸一郎さん、

 あなたはお父様の後を次いで立派なお役人になるのですよ、

 それが、こんな汚らわしい…」

母親はあたしを一瞥するなり、

まるで汚物を見るような手振りをすると、

「まさえさぁん!!」

っと廊下に向かって声を張り上げた。

すると、

「はいっ何でございましょうか奥様」

と言う声と共にメイド姿をした女性が姿を現すと、

「この汚らわしいの、サッサと捨てて頂戴」

とあたしを指さして指示をした。

「え?」

まさえさんと呼ばれた女性はあたしを見るなり一歩引くと、

スグに、

バッ!!

広げたシーツであたしの身体を包み、

引きずるようにしてあたしを部屋の外に運んでいった。

「…なにをするんだよう」

部屋の中から伸一郎の泣くような声があたしの耳に入ってくる。

『あはは、いい気味…』

その場はあたしはそう思っていたけど、

しかし、

スグにあたしはビニール袋のようなモノの中にシーツごと押し込められると、

どこかに運ばれていった。



どれくらい経っただろうか、

カァカァ!!

カラスの鳴き声が聞こえてくると、

やがてオルゴールの音と共に、

一台のトラックらしき車両が傍で停車した。

『この音…ゴミの収集車?

 え?、あたし…ゴミなの?』

予想外のことに驚くと、

「ようし、ココで終わりだ!!」

「サッサと片付けてしまおう!!」

と言う男性の声とともに、

ガチャガチャと

あたしの周囲が片付けられ始めた。

そしてついにあたしを包んでいるゴミ袋に手が掛けられると、

「なんだ?、

 これは?

 ったくぅ、

 変なモノを捨てやがって」

と言う作業員の声と共にあたしが入っている袋が切り裂かれた。

ゴトッ

シーツまで着られてしまったために

あたしの身体は表に飛び出してしまった。

「うわっ!!」

あたしを見て形相を変えた作業員が見える。

「どうした?」

「ひっ人が!!」

「なんだって?」

二人の作業員がゴミ袋から飛び出したあたしをシゲシゲと眺めた。

『おじさんっ、助けて、あたしゴミじゃないのよ!!』

あたしは動かない口でそう訴えたが、

「なんでぇ、脅かしやがって…

 コレあれだよ、

 ほらっダッチワイフとか言う人形だよ」

と右側の作業員があたしを指さしながらそう言うと、

「なんだよ、おれはてっきり死体かと思ったぞ」

それを聞いた左側の作業員は胸をなで下ろしながらそう言った。

『違うっ、あたしは人形じゃないっ、人間よ、

 変な薬で人形にされちゃっているのよ』

と幾度も訴えたが、

しかし、

「よっ」

作業員達はあたしを抱きかかえると、

そのままゴミ収集車のダストポケットへと放り込んでしまった。

『違うっあたしはゴミじゃない!!

 人間の女の子よ!!』

なおもあたしはそう訴え続けたが、

ぐぉぉぉん!!

と言うエンジンの音共に圧縮扉が見る見る下がって来た。

『やっやめてぇ!!』

しかし、あたしの悲鳴を押しつぶすように、

バキバキバキ!!

圧縮扉はあたしの身体を無惨に押しつぶすと、

そのまま真っ暗なコンテナの奥へと押し込んでいった。



グォォォォン

水たまりに半分浸かったあたしの傍に別の収集車が停車すると、

ザザザザザ…

コンテナの中から一斉にゴミをまき散らし始めた。

そして、

トンっコロコロコロ!!

っと何かがあたしの方に転がり落ちてくると、

バチャン!!

っと水たまりに落ちると、あたしと向かい合った。

『さっ沙樹?』

『お姉ちゃん?』

落ちてきたのは紛れもない妹の首だった。

どうやら沙樹もあたしと同じように捨てられたらしい、

グオォォォン

埋め立てのブルトーザー見る見る迫ってきた。

『沙樹っいつまでも一緒よ』

『うん』

あたしたちはそう呟きながら静かに土の中に埋められていった。

いつか掘り起こされるその日まで…



おわり