風祭文庫・醜女の館






「ニューハーフの誇り」



原作・猫目ジロー(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-333





『何でこんなことになってしまったんだろう…』



暗堂梨恵菜は現在の状況を客観的に分析していた。

いま彼女はマンションの一室で手足を拘束された状態で監禁されていて、

そんな彼女をニューハーフと思われる人達が

冷ややかな目で見つめているのである。



「私のことをどうするつもり、

 どうせ動機は恨みでしょ…」

「あら、

 案外冷静なのね、

 自分のこと客観的に見れてるじゃない」

「私はアンタ達と違って聡明だからね!」

「言ってくれるじゃない!

 確かにアンタは大学や地方のミスコンの常連だものね。

 モデルの梨恵菜さん」

ニューハーフ達はハスキーな声で梨恵菜に反論する。

彼ら、ニューハーフ達の目は明らかに怒りの炎に彩られ、

梨恵菜のことを心底恨んでいるのが明らかだった。

それも無理からぬことだろう。

だって彼女はニューハーフの誇りを侮辱したのだから…



ことの始まりは今から半年前に遡る。

当時、梨恵菜は都内のミスコンに優勝したことで有頂天になってしまい。

出演していたテレビ番組でニューハーフの誇りを傷つけてしまったのだ。

梨恵菜は元々口が軽い性分で、

彼女の心ない言葉で今までも多くの人間を傷つけてきたが、

生まれつき容姿に恵まれている彼女には多くの取り巻きがおり、

女王様気取りの彼女には人の痛みが判らなかった。

だからあの時もあんな酷い暴言がはけたのだろう…



彼女は言った…

番組に共にゲストとして呼ばれていたニューハーフのミスコン受賞者に

自分の賞とオカマのコンテストの“価値”を同列に語らないでくれと。

しかし彼女のその心無い言葉は

全国のニューハーフや彼らを応援する多くの人々を激昂させ、

彼女のブログは瞬く間に炎上、

さらに大手掲示板に多数のスレッドが立てられてしまうと、

まとめサイトへ次々と転載されていく。

ネット内のこうした動きに国内マスメディアが改めて取り上げ、

TV・ラジオは元より、

各種週刊誌や漫画雑誌、コミック、更にはアニメ雑誌や、

各種業界新聞にまでこの問題を論じ始めたのであった。

こうなるともはや制御不能。

梨恵菜自宅には連日デモ隊が押し寄せると、警備の警官隊と衝突。

自宅前はゲバ棒と催涙弾が飛び交うと戦場と化したのであった。

こうした事態を収拾するため、

宮中にて御前会議が開催されることになったのだが、

その会議に出席するため参内した。

愛知選挙区選出の与党議員・吉良上野之介が松の廊下にて

岡山選挙区選出の野党議員・浅野内匠頭に切り付けられる刃傷事件が発生。

駆けつけた警察に逮捕された浅野議員の自供より、

吉良議員による政界・財界・角界・花柳界を巻き込んだ大規模な贈収賄事件が発覚、

これにより吉良議員への証人喚問を求める野党側と、

その要求をかわそうとする政府与党側とが対立し、

ニューハーフ侮辱問題は解決の糸口を見失ってしまったのである。



こうした事態は緊張している東アジア情勢に敏感な海外のメディアの注目を浴び、

ついには世界的な論争へと発展した結果、

世界各地で小規模な武力衝突が次々と発生、

この事態を重く見た国連・安全保障理事会が

梨恵菜に謝罪会見を開くよう緊急声明を発表するに至り

ようやく世界はこの問題の火消しへと動き始めたのである。

まさに、梨恵菜の一言が世界規模の騒動へとハッテンしてしまったのであった。

国連からの意向もあって梨恵菜は釈明会見を開いたが

時既に遅く彼女は全国のニューハーフの敵になっていたのである。

それから半年が過ぎ、

芸能界から干され憂さ晴らしに歌舞伎町でやけ酒を飲んでいた彼女は

帰りの夜道でニューハーフ達に睡眠薬を嗅がされ拉致され現在に至っている――



「でっ私にどうしろって言うの!?

 謝ればイイワケ?

 男の癖にねちねちした連中ね!」

「私達は“女性”よ…」

「はっ!オカマちゃんでしょ!?」

「やっぱり貴方の様な心根の腐った女にはコレを使うしかないわね…」

ニューハーフ達はそう言うと、

バックからおもむろに焼きごての様な不思議な道具を取り出し、

梨恵菜に見せつける。



「えっ!?

 何なのそれ、

 私の顔に火傷でも負わせる気なの!?

 やっぱり野蛮ね男って!!」

「うふふ、

 貴方も今日から

 その男に…ニューハーフになるのよ。

 この“女性失格印”を刻まれてね」

「うふっ

 仲良くしましょうね同胞としてね」

梨恵菜はニューハーフ達のただならぬ雰囲気に気押しされるが

次の瞬間、

彼女のミニスカートが捲られ女性器の近くに刻印が刻まれてしまった。



「熱っ!!

 痛い痛いなによこれ!?」

梨恵菜は手足の拘束を解かれ、

刻印を見ながらパニックになった。

そう彼女の女性器の近くには

既に刻印が刻み込まれ艶かしい紫の光を放ち始めていたのだ。



「はぁはぁ

 あがっぐがぁ…」

刻印の光が梨恵菜の体を包みこむと、

彼女の体に変化が始まった。

既に彼女の美脚は筋肉で一回り太くなり、

始め生まれつき男性ホルモンが少なく、

体毛の薄い彼女の足や腕には見たこともない濃い毛が生えていく。



「うふふ、

 だいぶ男らしくなってきたじゃない」

「そうそう脛毛の処理って

 大変なのよね。

 アタシ剛毛だから特にね…」

「あら、

 これからは梨恵菜ちゃんの方が

 剛毛になりそうじゃない」

ニューハーフ達は好き勝手話していたが、

その間も梨恵菜の体の変化は止まらず、

骨格の成長のため体中からギシギシとなり続けていた。

そしてその変化に耐えきれなくなった彼女のワンピースは遂に

ビリッ

布の裂ける様な音を上げながら破け始めた。

彼女の身長や体格は男性化しており、

肩幅が拡がり魅惑的なヒップラインはのっぺりし始め、

ヘソや骨盤の変化でセクシーなショーツは緩み始めていた。


「うふふ、

 高そうなワンピースなのに破けちゃったわね」

「体格に合ってないものね、

 何か女装してる男丸出しじゃん」

「でも男性化しても華奢だし、

 私達が磨けば綺麗なニューハーフになるんじゃない」

「くっ…えっ!?

 嘘でしょちょっとイヤァー」

変化した体を触っていた梨恵菜は胸元に手を置きながら再びパニックを起こす。

そう、とうとう乳房が縮み始めたのだ。

彼女のDカップの形の良い胸は既にAカップ近くまで縮み、

いつもは敏感な乳首の感覚は次第に鈍くなっていく。

そして、完全に男性化してしまうと、

彼女の指先が幾ら乳首を触っても

女性の時の様な敏感な性的感覚は得ることはなかった。



「あらあら、

 綺麗なおっぱいがぺったんこになっちゃって、

 可哀想に」

「うふふ、

 心配しなくてもニューハーフになって、

 女性ホルモンや手術をすればまた膨らむわよ」

「でも女性の時より感じないかもね、

 作り物じゃね…」

「うっぐすっ…

 許さない私の体をこんなに変えて…」

「何言ってるのまだ変化の途中じゃない」

「まだまだ男性化するわわよ」

その言葉通り、

梨恵菜の変化は更に進んでいく。

綺麗に整えたメイクは男性化の影響で皮脂が増えたことにより崩れ始め、

また綺麗な髪は男性化の影響で艶がなくなって硬くなると、

口元にも髭が生え始めていた。



「あはっ

 ねぇ梨恵菜ちゃん。

 顎や口元に髭が生え始めてるよ」

「しょうがないでしょ。

 男性になるんだから。

 私達も永久脱毛するまで毎日髭剃ってたじゃない」

「うふふ、

 これから髭そりが日課になるから。

 その綺麗な肌が荒れるわよ梨恵菜ちゃん」

「でもさその肌もキメ細やかさがなくなって

 男性化してるじゃない。

 よく見ると髪の艶も無くなってるし」

「まっ今までと違って化粧のノリが悪くて苦労するでしょうね。

 私達みたいに…髭そり後も隠すから化粧も濃くなるしね」

「くっアンタ達こっ…えっ!

 はっ!

 あぁぁぁぁ!!」

反論を突然止め大声で泣き叫び始める梨恵菜だが、

その声は女性の時の様な甘くて可愛い声ではなく、

男の声を裏返した様なハスキーな声だった。

梨恵菜はそれでもいつもの可愛い声を出そうとしたが、

その声は喉仏に封じられいくらやっても

オカマの様な声しか出なくなっていた。



「うふっ

 無駄よ。

 一度出来た喉仏は取れないし、

 これからはその声が貴方の新しい声よ」

「うふふ、

 思ったよりいい声じゃない。

 可愛いニューハーフのハスキーボイスみたいでさ」

「女声を出す発声法もあるけど、

 アレ喉に負担かかるから練習が大変なのよ」

梨恵菜はニューハーフ達の言葉を聞きながら気が遠くなっていた。

だがそんな彼女に最後の変化が無情にも襲い掛かる。



「ぐがぁあっはぁっ…

 あぁぁぁぁぁぁぁー!!」

突然、梨恵菜の女性器の膣と陰核に焼け裂かれる様な痛みが走ると

彼女はベッドの上で転げ回る。

最後の変化に伴うその痛みは凄まじく

梨恵菜は額に脂汗をびっしょり流しながら失神してしまった。



「うふふ。

 梨恵菜ちゃん気絶しちゃったみたいね。

 でもベッドの上の汗凄く男臭いわ」

「体臭も男性しちゃったのね」

「ねっ、それよりこの娘のショーツ脱がして

 最後の変化を皆で観察しない?」

「うふふ面白そうね」

ニューハーフ達はそういうと、

梨恵菜のショーツを脱がせ彼女の膣と陰核の変化を観察し始める。



「うわっ凄い。

 愛液でびっしょりじゃないこのショーツ」

「最後の変化には性的な快感も伴うのかもね」

ニューハーフ達は分析しつつも梨恵菜の女性器を観察し始めた。

既に彼女の膣は体との別れを惜しむかの様に

最後の愛液を涙の様に溢れさせながら癒着して消えていくと、

また陰核も紫の煙を上げながら肥大し

やがて陰嚢の出現と共に陰茎に変わり果て、

ダラリと力なく垂れ下がると、

梨恵菜の男性化は終わった。



「結構立派な陰茎になったわね」

「女性器がなくなっちゃったから、

 これからはアナルを使って男性とするのねこの娘も…」

「今までみたいにモテなくてビックリするでしょうね…」

「ねぇ、

 折角だから梨恵菜ちゃんの陰茎精通させてみない」

「いいわねそれ、

 今日からこの娘も私達の仲間になるんだから記念になるしね」

「うっ

 はうっ

 あっ…あん」

ニューハーフ達に陰茎を愛撫され、

女性の様な口調でよがり声を上げる梨恵菜だが、

彼は既に男性でその声はニューハーフの様な裏返った声だった。

そして今の彼の性別の象徴は愛撫が気持ちいいのか膨らみ続け、

先走りの涙を溢れさせていた。

そして遂に…



「あぁ

 はっ

 あぁぁぁ!!」

梨恵菜はハスキーな裏返った声を上げつつ、

精通を迎えると、

彼の精液は愛撫していたニューハーフの顔や体に勢いよくかかっていく。

その一方で気持ち良かったのか恍惚の表情で眠り続ける梨恵菜であった。



「うふふ、

 いっぱい出たわね。

 しかも臭いはとっても青くさくて男性そのもの」

「うふっ、

 これから私達はお仲間よ。

 仲良くしましょうね。

 梨恵菜ちゃん…」

あれから一年が過ぎた。

新しい日々は慣れないことの連続だった。

私の陰茎に刻まれた刻印は周りの人間の記憶や戸籍も書き換えていて

私は出世時から男性という扱いになってい。

また実家の両親や姉は世界が変わったかの様に冷たく、

あんなに優しかった父親は人が変わったように厳しくなると、

姉の結婚式で私を紹介出来ないから

アパートを借りて独立しろと遠回しに言われた。


アパートを探すのは大変で初めは優しかった大家さんや不動産会社の人も

私がニューハーフだと分かると掌を返した様に冷たくなり

21年間男性に冷たくされたことのない私はそのギャップに驚きを隠せなかった。

最終的に私を男性化させたニューハーフ達に頼みこんで

物件はなんとか見つかったけど、

でも、そんな自分が惨めだった。

女性の時は皆優しくしてくれたのに、

今の私には力を貸してくれるのは彼らしかいないという現実が重くのし掛かった。

でも刻印の魔力で自殺も出来ない私は彼らにすがってでも生きるしか道はないのだ。



「はぁ…

 今日もメイクのノリが悪いなぁ…」

私は鏡に向かって溜め息を吐く。

だがその声はかつての様な可愛い声ではなく

ニューハーフの様な裏返ったハスキーボイスになっていた。

そして今の私を象徴するような揺れ動く喉仏。

この体はまさに戸惑いの連続だった。

化粧一つするにも髭剃り後を隠さなければならないので、

コンシーラーやベースメイクは自然と濃くなるし、

また鋭くなった目付きを誤魔化すためアイラインも濃くなっていった。

さらに私の艶のある綺麗な髪は男性化の影響で体質が変わって硬くなり

女性ホルモンを打ち始めても元の髪質には戻りませんでした。

そして、私を一番苦しめているのが生理現象だった。

ドラッグストアでナプキンを見るたびに昔を思い出し

もう自分には二度と縁の無いものだという現実が私の心を抉ります。

さらに男性になり性欲が強くなった影響で

自慰行為の回数は増えていたが

やる度に昔の彼氏の匂いを思い出し切なくなった。

えkどニューハーフになりモテなくなった私は欲求不満になっていて

それをやらなければ町や電車でイケメンを見る度、

陰茎が反応する有り様だった。

そんな私を嘲笑うかの様に陰茎に刻まれた刻印は自慰する度に

艶かしく怪しい輝きを放っていた。



おわり



この作品は猫目ジローさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。