風祭文庫・醜女の館






「キャットファイト」



原作・ラックーン(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-089





皆さん、はじめまして、

私は皆川家の運転手を務めている加藤一郎と申します。

より正確に申し上げますと、

若奥様である由衣様の運転手でございます。

いや、さらに正確に申しますと、

「由衣様の運転手であった」

と申すべきでありましょう。

由衣様はそれは美しいご婦人でございました。

それもそのはず、

若旦那様に嫁ぐ前はグラビア・アイドルで、

その愛くるしい美貌とGカップの巨乳で世の男性を虜にしておりました。

しかし、惜しいかな、

世は貧乳ブームでTVなどに出演するほどの人気は獲得できなかったのでございます。

ブレイクを図っていた21歳の時、

IT業界をリードする皆川インターナショナルの若社長・大輔様とお知り合いになり、

めでたくゴールインされました。

結婚後3年間はお子様に恵まれませんでしたが、

1年前の昨年秋お嬢様をお産みになったばかり。

さて、私を取り巻く環境の説明はこの辺にして、

そろそろ本題に入って参りましょう。



その日、いつものように由衣様を

皆川インターが経営している総合運動センターにお連れ致しましたが、

軽装の奥様はお子様を一人産んだとは信じられない体型でございます。

いや、結婚前からのファンであった私としては

お腹の辺りの僅かな緩みが気になるものの、

それでも通常のご婦人方にはなかなか達成できないスタイルと申せましょう。

おっと言い忘れておりました。

私は、もともとタクシーの運転手をしておりましたが、

由衣様が結婚すると知り、

皆川邸に押しかけ無理やり運転手にしてもらったという経緯がございます。

由衣様は毎日このセンターのプールで1時間ほど軽く泳ぐのですが、

その日は旦那様もここで汗を流しておりました。

公然の愛人である秘書の若松愛子様と何やらいちゃいちゃするのが目的だったのでしょうか?

事件は起こるべくして起こったと言って良いかもしれません。

若奥様がプール脇の椅子に腰かけ足を伸ばしたところへ愛子様が通りかかり、

故意か偶然か足が引っかかったのでございます。

「愛子、どこに目を付けてるの? 

 痛いじゃないの!」

と、由衣様は挑発するようにこの愛人に言い放ちました。

「あら奥様、あなたがわざと足を出したのじゃなくて?」

愛子様も引き下がらず、現場は険悪なムードになっていきました。

「大輔さんもあなたみたい痩せた女のどこか良いのか神経を疑っちゃうわ」

「いいえ、さっき社長は体型の崩れた女は大嫌いだって、

 誰かさんのことをおっしゃってたわよ。

 それに由衣は冷たい女だって」

「何ですって!
 
 私が大人しく公然の関係を許していたら良い気になって。

 もう許せない!」

「それならボクシングで決着を付けるというのはどう?
 
 私が負けたら、愛人も秘書も辞めてあげるけど」

「OKよ。

 そんな痩せっぽちには負けるわけがないですもの」

そんな次第でプールから程離れたリングで決着を付けることになりました。

レフェリーは社長でございます。



カ〜ン

ビキニの由衣様がワンピース水着の愛子様に殴りかかっていきます。

愛子様はすばやく体をかわすと、

さっと右手で放ったストレート・パンチで由衣様の右目を捉えました。

愛子様は明らかにボクシングの練習を踏んでいるようで、

足が揃うことなく見事なフォームからクリア・パンチを見舞います。

対して若奥様は典型的な猫パンチで迫力がありません。

足も揃って実に不安定です。

何発か顔面に食らった由衣様の両目蓋は次第に腫れ上がり、

あの美しいお目目がつぶれて行きました。

遂に倒れてしまっても、

社長はカウントをまともず数えず、

無理に立ち上がらせます。

『そんなインチキな』と私が心の中で叫んだ次の瞬間、

グチャッ…

愛子様が放ったフックが奥様の鼻を捉えた瞬間に嫌な音がしました。

鼻血を激しく流す鼻は右側に大きく曲がり、

これまた大きく腫れ上がっています。

意識朦朧の由衣様は手をぶらんと下げ、為すがままでした。

ボキッ…

キャー!

今度は口元に強烈なストレートが飛び込びました。

その瞬間由衣様の輝く白い前歯が3本抜け落ち、

痛みに耐えかねた由衣様は悲鳴を上げた後昏睡状態に入りました。

股間からは水分が滴り落ちていました。失禁していたのです。

「何、この女、

 お小水洩らしているわよ。

 きったないわねぇ〜」

と言いながらリングから降りてバッグから幾つかの品物を取り出しリングに戻ると、

何やらクリームを腫れ上がった目蓋や鼻や口の周りに塗り始めました。

愛子様にも意外に優しいところがあるんだと感激していましたら、

全くの見当違いでございました。

後日伺ったところによりますと、

それは皮膚用ボンドとでも表現できる珍しい薬剤なのだそうです。

一部の整形病院で使われている優れものらしく、

人間の皮膚を固め長い間保持することが出来る旨を話されました。

つまり、若奥様の腫れ上がった目蓋や曲がり膨れた鼻はそのまま保持され、

効用が解ける頃にはその形に落ち着いてしまうということらしいのです。

由衣様のあの神々しい美貌はもう見られないのでしょうか。

結論から申しますと、そういうことだったのです。

周囲には野次馬が集まっておりました。

二人のキャットファイトに興奮した若者達があちらこちらで殴り合いを始める始末。

最終的には警察も動員されたのでした。



一方、正体なく横たわる若奥様に向って仕事を続ける愛子様。

社長はにやにや黙って見続けるだけでした。

愛子様のおっしゃっていた悪口は大体のところ事実だったのでしょう。

ジージージージー

今度は…何と電動バリカンです。

奥様の光り輝く黒髪にまるで麦でも刈るようにバリカンが走り、

その中心部は何と申しましょうか、逆モヒカン状態になってしまいました。

ジージージージー

何回か繰り返すうちに1時間前まで背中まであった長い髪はすっかり姿を消し、

まるで高校野球の選手のようです。

それまで髪に隠れていた大きな耳が飛び出し、みっともないほど。

しかし、愛子様の嗜虐心は留まるところを知らず、

なんと眉毛までそり落としてしまったのです。

そして今度は別のクリーム…

そうあのパッケージは間違いなく雑誌などで強力脱毛剤として通信販売されているものでした。

愛子様はそのクリームを奥様の頭皮と眉のあった部分に丁寧に塗りこみ始めました。

「これであんたは永久にハゲ女よ。

 ざまがいいわ」

奥様に向かって勝ち誇ったよなセリフを言いながら、

愛子様が去ると残された奥様…いえ由衣様は

髪と眉を失いまるで宇宙人みたいに不気味な容姿になり果てました。

その上、腫れ上がったまぶたは目の大半を隠し、

鼻は2倍ほどに膨れ大きく右に曲がり不恰好。

そしてたった3本とは言え

顔の命である前歯を失ったその顔は何とも間が抜けています。

嗚呼、憐れな由衣様。

しかしそう感じていたのも束の間、

私の股間は知らない間に大きくなっていたのです。

自分でも知らない性癖でした。



それから私は若奥様を病院ではなく、自宅へと連れ帰りました。

社長即ち若旦那様が治療費は出さないと宣言し、

「家へ連れ帰れ」と命令されたからでございます。

何故でしょうか。

実はこの事件の前日、奥様がお産みになったお子様は旦那様の子ではなく、

センター勤務の水泳インストラクターの子種だったことが判明しており、

以前から由衣様の我儘な態度に業を煮やしていた若旦那が

秘書の愛子様と示し合わせ、画策したらしいのです。

この度の法律の改正により、

不倫の子を産んだ若奥様は即座に同意なく離縁されてしまいました。

しかも、数十名の若者が重軽傷を負った事件の第一責任者として

これも先日施行されたばかりの騒乱誘発罪の第一号摘発者となってしまい、

100万円の罰金か半年の懲役刑という判決が下されたのです。

預貯金も殆どなく社長のバックアップもない由衣様は半年の懲役刑に甘んじることになりました。

その間に社長は愛子様を後妻に娶り、

今、私は愛子様の運転手なのでございます。

半年の刑期を終えた由衣様、

いえ、新しい奥様のご命令で「メスブタ」或いは「ブヒ」と呼ばなければならないのですが、

メスブタを以前暮らしていた屋敷に連れて来ることになりました。

刑務所の外で待つ間私は以前の美しい由衣様、

いえ、ブヒ(新しい若奥様の命名で豚のイメージと由衣を重ねた新しい名前なのだそうです)が

現れる錯覚を抱いておりました。

しかし、実際に現れたのは、何と形容したらよろしいのでしょうか、

さしずめ「潰れた空き缶」とでも言うべき、

とても女性とは思えない人間に過ぎませんでした。

ブヒは数多い皆川家の使用人の中でも最下層のメイドとして雇われ、

こうして主客転倒の形で屋敷に戻ったわけです。

それはそうでしょう、「潰れた空き缶」では元のグラビア・アイドルに戻れるわけもなく、

一般の会社に入っても不気味がられるだけで仕事もなく、

それに甘んじるほかなかったのです。

娘の父親であるインストラクターはどこかへ逐電し、行方が杳として知れず、

養育費用が必要だったということもありますね。

社長夫妻は給料は出さないが三度の食事と娘の養育費は十分に出すと約束されました。

ブヒは短いスカート以外は典型的なフレンチ・スタイルのメイド衣装で

今日も所在なさげに掃除をしております。

マイクロ・ミニスカートからは時々チラッと赤いものが覗きます。

派手なパンティーとお思いになるでしょうが、

実はパンティーではなくて赤い六尺ふんどしなのです。

「メスブタに着せるパンティーはない」

と、愛子様のきついご命令で赤か白の褌以外の下着の着用は許されていません。

愛子様は憎きメスブタを容赦なく責め立てます。

「私って女相撲を見るのが大好きなの。

 このメスブタを女力士に変えられないかしら、加藤?」

ある晩私に直接問いかけました。

否、実際には命令なのでした。

いつの間にかブヒの世話係のような存在になっていた私は、

翌日から、ブヒの食事の量を漸次増やして行く手はずを整えました。

暫くは鼻をつまむことで「そんなに食べられない」と

表情で訴えるブヒの口を無理やり開かせ食事を詰め込む日々。

45kgからスタートした体重は1ヵ月後には60キロ、2ヵ月後には80キロと右上がりに増え、

今では120キロの巨漢です。

元々豊かだった乳房はへちまのように垂れ下がり、

腹の上に載り大きくハの字を書いています。

だぶついた二重顎に、細腕は足をつけたのではないかと思えるたくましさに変貌しました。

そして象のような巨大なお尻。

人間の体も変われば変わるものと言うか、何ともはや…。

そして、ご飯も一食にどんぶり5杯を平らげるほどになりました。

いつかは元の体型に戻りたいと思いながらも、

拡張した胃が要求するのでしょう、複雑で悲しそうな表情で平らげるのです。

それを見ると私の不肖の息子が興奮して固くなるのには困るやら嬉しいやらでして…。

夜になるとブヒは褌から本格的な相撲廻しへと着替えます。

ウェストが140cmとなった現在では相撲廻しが素晴らしく似合います。

ただ残念なことに相撲を取る相手がなかなかいないのです。

体重50キロの私がたまに相手をしますが、勝負になりません。

愛子奥様は

「娘が大きくなったら相手をさせるつもりよ。

 それには物心付く前にブス整形した上で肥満児にしないと…」

などと恐ろしいことをおっしゃっておりましたが、恐らくいつか実行するでしょう。

最近では女相撲ビデオの出演者をバイト的に呼び寄せて1ヶ月に数回相撲を取らせています。

……

チュパチュパ…

あっ、申し遅れました。

この文章を書いている間ずっとグラビア時代の自身を複写した特殊ゴム製マスクを被ったブヒに

私の肉棒をしゃぶらせておるのです。

美醜ギャップを愛する私ですが、セックスの場合美しい方が一応興奮できますから、はい。

美しい顔の下に醜い肉体というのも大変面白いですよ。

これにはもう一つの楽しみが付随して、これが実に楽しい。

まず、フィニッシュした瞬間にマスクを外させます。

ブヒの目の前には額に入れたグラビア写真と並べて鏡が置かれておりまして、

マスクを脱いだ瞬間「潰れた空き缶」が目に入るだけではなく、

美しい時代とのギャップにギョッとする趣向。

ブヒが落ち込む様が私の性癖を刺激するのです。

自慢ではないですが、私自身のアイデアで、愛子様にも誉められました。

「こらっ、メスブタ、もっと気持ちよくせんか!」

時々書く手を休めてはブヒの鼻の穴に指を突っ込んで要求します。

鼻の穴と言えば、私の最近の夢はブヒの鼻の穴でセックスをすること。

先日奥様が彼女にこんなことをおっしゃったのを聞いてからその夢は膨らむ一方です。

「メスブタ、一箇所だけ整形してやるとしたら、どこが良い?」

「曲がった鼻をまっすぐにしていただければ幸いでございます…」

消え入るような声で答えるブヒを尻目に、愛子様は私に小声で打ち明けました。

「鼻をまっすぐにしたいと言うから、いっそのこと鼻をそいでしまおうと思うの。

厳密に言えば鼻をうんと低くして豚のように穴が上を向いた格好にするだけだけど…


良いアイデアでしょう? メスブタだけに丁度良いわ」

どこまでも残酷な愛子様でした。

しかし、その瞬間、

私の赤ん坊並みの粗チンをもってすれば鼻の穴でセックスが可能になるかもしれない、

との不遜な考えが頭をもたげたのです。



キ〜ンコ〜ンカ〜ンコーン

おや、もう10時ですか…

そろそろ眠る時間がやってきたようです。

奥様のセンターへの送迎などに加え、

メスブタの相手もなかなか大変で、早く寝ないと体が持ちません。

そう言えば、今日施設からの帰りで愛子様がこんなことを笑いながらおっしゃっておりましたっけ。

「メスブタ由衣の力士化もマンネリ気味になってきたから、

 来週から別のことも始めてみようと思うの。

 何か分る、加藤?」

「いえ、私の足りない頭ではとても想像がつきません。

 申し訳ございません」

「男性ホルモンの連続注入よ。

 高額だけど私の小遣いでも何とかなる額だから、やってみようなんてね。

 髭が生えたり、声変わりがしたり、面白そうじゃない?

 場合によってナニが生えたらどこかの相撲部屋にでも売り飛ばしたりして。

 あははははは」

この稀代のサディスティンはまた恐ろしいことを考え付いたようです。

しかし、髭が生えオカマ声を出すブヒも面白いかもしれません。

それでは、おやす・み・なさ…い…ZZZZ



おわり



この作品はラックーンさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。