風祭文庫・ヒーロー変身の館






「第1話:木の下の杏(黒種篇)」



原作・@wolks(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-369





きゅっぷい。

これはとある時間軸でのお話と言うことにしといてくれ。

さて、とある年の第9の月、

沼ノ端市内をエンプレス・樹怨…あっいや未曽有の危機が襲っていた。

その時の沼ノ端市内にあったご神木…をDr・ナイトという悪人に乗っ取られ、

…ってあれ?

あの時暴れていたのは植物怪獣ビオ…ナントカだと思ったけど、

まぁいいや、ここの時間軸ではそうなんだろう。

それに、後に襲来する樹怨に比べれば…んで話を戻して、

そのご神木から撒かれる花粉や胞子などが大量に沼ノ端を襲っていた頃の話だ。



沼ノ端高校の関係者および近隣の住人は

誰が用意したかは知らないシェルターの中に避難していた。

いくらシェルターに避難しているとはいえ、

自分たちが住んでいる町や学校がどうなっているか、

そりゃぁ避難民達は気になっていただろう。

そんなこんなで未曽有の危機とやらも佳境と言うところに差し掛かり、

マッチョマンRXとマッチョマンレディPlusは仲良くご神木の中で戦っていた。

相変わらずご苦労なことだ。

で、マッチョマンたちの活躍でご神木から放たれる花粉や胞子の力が弱まりはじめ、

一時は花粉で視界が効かなかった街の様子も見えるようになってきた。

すると、避難民の中から現在の被害状況を確かめるべく外へ出ていった。

なぜ、こんな危険を冒してまでして外に出て行くのか、

僕には全く理解できないよ。



「あーあ、ついてないなあ。」

未曽有の攻撃を受けた沼ノ端の街の中を、

マッチョマンと同じくビキニパンツ1枚で歩く少年がいた。

少年の名前は木之下杏。

沼ノ端高校の水泳部に所属している、ごく普通の高校生だ。

なぜ彼が歩いて居るのか、

それは花粉の威力が弱まった頃を見計らって、

同じく避難していた友人たちの発案で、

外の様子を見に行く調査兵団を結成することになったからだ。

だが、肝心の兵団員が容易には決まらなかった。

そのため、全員参加の凄惨なじゃんけん大会の結果、

元々こういうものには弱い杏はストレート負けを喫してしまい。

第1号の兵団員に任命されると、

たった1人で出撃することになってしまった。

ではなぜ1人なのか。

それは、薬品によって性転換をした杏の肉体は生命的な危機を感じ取ると、

ビーストモードが発動し、

細胞組成を変更することで迫り来る危機からいち早く脱出出来るのである。


「…説明しよう。

ビーストモードとは本能的に細胞組成を変更することで、

杏は人としての姿を解き放ち

あるときは人魚モードで水の中を、

あるときはハーピーモードで空を舞い、

またあるときはケンタウロスモードで陸上をばく進し、

またあるときはミノタウロスモードで怪力を発揮して、

ピンチをチャンスへと変えるものである」

「海さん…

変なナレーションはやめてください、

私はそんな変身はしないので」

「これは失礼」

では話を戻して、

出撃の際にはどういう格好で行くか、

という、まぁどうでもいい話し合いにより、

どういうわけか水泳部員の制服である競パン1枚で出撃することになってしまったのである。



きゅっぷいっ、

とは言っても元は女の子の杏は用心深く

念のためということで避難所に持ってきていた衣類を

競パンの替えも含めて袋に詰めこむと、

真っ赤なスカーフを振って見送る友人たちに足蹴を喰らわせ、

花粉に汚染された街を浄化するコスモリバースシステムを受け取りに、

市役所までの片道16万8000歩、

往復33万6000歩の旅路についたのであった。

「誰も、そんなものを取りに行くとは言っていません」

ところが出発直前、

沼ノ端高校の保健医から、二種類の種のようなものをいくつか受け取っていた。

一つは闇のように黒く、

もう一つは光のように白かったものであった。

彼女の話では、

自分の身が危険にさらされたときに役に立つものだという。

だが、それがご神木の種であるということは杏は聞いていなかった。

そう、聞かされては居なかったんだ。

なぜなら、報告をする義務が明記されてないからだ。

つまりは、この件について、

誰も責任を取る必要はない。



避難所を旅立ち、

街のパトロールを始めた杏だが、

街の中は花粉と胞子により汚されていた。

とはいっても、

花粉と胞子自体にはそう建物を破壊する力はない。

だが、建物の上に苔のように覆っている花粉や胞子には正直危険を感じずにはいられない。

直接に人体を傷つけることはなくとも、アレルギーの原因となるものが多数ある。

「このままじゃ学校も…」

杏は沼ノ端高校のあった位置に動こうとした。

そして200メートルほど歩いたところで、

杏の体は異変を生じさせていた。

「う…なんか…」

杏の体の中には微量ながらも花粉や胞子が蓄積されていった。

花粉や胞子は微量では何ともないが、

それが蓄積されると一気に有毒になる。

杏子はめまいやふらつきに襲われ、

さらには吐き気も襲った。

すると杏はとんでもないものを見てしまった…

「なんなんだあいつら…!」

杏が見たもの、

それは、Dr・ナイトの攻撃により

廃墟寸前となった沼ノ端を襲う火事場泥棒のような集団だ。

しかもそいつらは普通の人間たちとはどこか違っている。

さらに、杏は衝撃的なものをみた。

「ひゃっはーっ!」

奇声を発し頭をモヒカンに刈り上げた集団は

杏よりも前に避難所を出発していた咲子を襲っていたのだ。

咲子はか弱い女性であるのに容赦なくその集団は襲いかかる。

そして、咲子の体にも花粉や胞子のせいで苦しそうに喘いでいる。

「咲子…助けなきゃ…」

そう思うと杏は持ってきた袋の中から

スイミングキャップとゴーグルを取り出した。

そして、二つの黒いスイミングキャップを一つは頭髪に、

もう一つは顔面を覆い隠すようにかぶり、

その上からゴーグルを被りそしてサンオイルを塗ったくる。

これはかつて杏が川でおぼれていた子供を助けた時の格好だ。

だが、杏子の体にはすでに十分な量の花粉や胞子が蓄積され、

動くことすらままならなくなっていた。

「そうだ…柵良先生にもらったものがあった!」

そういうと黒い種を取出し、口に入れた。

すると…

杏子の体は一回りかふたまわり大きくなり、

腹筋や胸筋もさらに多くはっきりとしてきた。

さらに、パンツの中のふくらみは音を立てて大きくなると、

そして、体に塗ったオイルはさらに光を増している。

『競パンマン参上!

 どっちが上で、

 どっちが下か貴様達には判るまいっ』

モヒカン集団の前に立ちはだかった競パンマンはそう向上を述べると、

『むんっ!

 ぷりずむぱわーめいくあっぷっ』

の声とともに

メコッ!

体中の筋肉を盛り上げると、

体にたまっていた花粉や胞子をすべて代謝を開始する。

すると、

カッ!

『月光蝶ぉぉぉぉ!!!!』

の声とともに一瞬、彼の体が光り輝くと、

シュッポーッ!!!!!

花粉や胞子は莫大な熱エネルギーへと置換され、

『ぬぉぉぉぉぉぉわぁぁぁぁぁ!!!!!

 あたたたたたたたたたたたた!!!!!

 あたぁぁぁぁぁっ!!!』

音速を遙かに超えるスピードで拳を繰り出すと、

火事場泥棒集団を瞬時に叩きのめした。

そして、去り際。

『すべての秘穴を突いた。

 お前達の血筋は向こう300世代分の寿命を使い果たし滅亡した』

そう言い残すと、

『ひでぶっ!!!』

の声を残して火事場泥棒集団は壊滅したのである。



すべてが終わると競パンマンは咲子の前に来る。

だが、咲子は泥棒の攻撃と花粉や胞子の影響ですでに虫の息だった。

『咲子…』

競パンマンは咲子の前を見た。

どうして咲子を救えなかったのか…

もう少し早く来ていれば…そう思っていた。

しかし、

『そうだ、咲子もこの姿になれば…』

そういうと咲子の前に自分と同じ競パンを用意しオイルをかけた。

さらに、予備の白いスイミングキャッぷで咲子の頭部をすべて覆い、

ゴーグルをかけ、咲子の口に黒い種をほおりこんだ。

すると…

咲子の体はみるみる大きくなり、

服はたちまちはだけて来た。

そして、胸筋や腹筋が張り出し、

手足にも筋肉がつく。

さらに、咲子の股間からかなり大きな肉の棒がそびえたつと、

色白の肌が赤銅色の日焼けのような色になってくる。

無意識のうちに競パンが股間に張り付き、

オイルがその体に塗られていった。

そして…

『競パンジャー!』

咲子改め競パンジャーが誕生したのである。

まったく迷惑な話だ。

『…杏!

 これはいったい…』

競パンジャーは競パンマンに質問した。

『悪いけど、

 咲子にはボクと同じようにヒーローになってもらった』

そうすると競パンジャーと競パンマンは目の前のビルの窓に映った姿を見た。

スイミングキャップにゴーグルをつけ、

競パン1枚をもっこりさせたムキムキマッチョな男が二人並んでいたのである。

『きゃあああああああ』

競パンジャーは思わず叫んでしまった。

すると、

ぶわぉんっ

「ひゃっはーーっ!」

バギー車に乗ってまた新たなモヒカンの火事場泥棒集団が現れた。

『懲りないヤツだ』

『まったくだ』

『さあ、こいっ!』

『さあ、こいっ!』

競パンマンが火事場泥棒を挑発すると、

競パンジャーもつられて挑発する。

『競パンキーック!』

『競パーンチ!』

二人のパンチやキックが飛び出す。

そうすることで火事場泥棒は次々と退散していく。

そして、

「呼ばれ飛び出て

 じゃじゃじゃじゃーーーーーん!」

の声とともにいかにもと言う風体の男が姿を見せると、

『お前が泥棒の親玉か!』

と競パンマンが叫ぶ。

「いかにも」

『ならば』

『私たちは戦う』

そういうと親玉を二人で取り囲み、

二人がかりで攻撃はじめた。

まぁ、僕が言うにも何だけど、

この親玉、四天王ってほどでも無いね。



『貴様もぅ死んでいる』

『ですっ』

『ぐぎゃああああああああ、

 ひでぶっ!!!』

総攻撃を受けた親玉は断末魔を上げて倒れ、

その数時間後…

『ボクらはまだこの姿でいたほうがいいみたいだ』

『そうね。』

競パンマンと競パンジャーは沼ノ端市内のプールがある場所にいた。

元の姿に戻るとすぐに花粉や胞子の餌食になる。

プールの水質もかなり汚染されたものになっているだろう。

『ごめんね、

 咲子…こんな体にしちゃって』

『…いいのよ、

 それに、

 これで女の子から男の子になった杏の気持ちも

 少しわかる気がしたの。』

競パンジャーは競パンマンに話をした。

『でも、これで同じ性別同士だし、

 もっと近づいてもいいよね』

競パンジャーは競パンマンにすり寄ってきた

『…咲子、いや競パンジャー…』

お互いの顔…

といってもスイミングキャップとゴーグルというありさまだが…

『うっ…なんかここが大きく。

 これが、勃起ってやつ…』

咲子は顔を赤らめた。

『みせっこしようか…』

その言葉の後

お互い40センチはあるであろう巨大なペニスを見せ合った。

『…なんかさわってると気持ちがいい…』

『なんか白いのが出てきた…

 これが射精ってやつ!?』

『これを知っちゃったらもう男の子の仲間入りだよ、もう』

競パンマンと競パンジャーはお互いの顔を見合う。

『気晴らしに泳ぎたくなってきた!』

そういうと二人はプールに飛び込んでしまった。

きゅっぷいっ

やれやれだよ。

何でこうなるのか

君たちの価値観は全くもって理解が出来ないよ。



つづく