風祭文庫・ヒーロー変身の館






「怪傑!グランズマン」
(第3話:大放出)


原作・temprere(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-301





「どうしたらいいの…

 なんであたしがあんな姿に…」

加奈子は今日も一人で悩んでいた。

路地裏に現れるという謎のイチモツ男・グランズマン…

悪達からグランズマンと呼ばれるこの怪人は奇妙な井出立ちとは裏腹に

路地裏の事件を見事に解決をしてきたのである。

(でも…まさか、グランズマンが自分だったなんて…)

そんなこと…とても信じられない。

多感な年頃の加奈子にとってこの事実は衝撃的であり、

決して認めることは出来ないのである。

そして、その日以来彼女は路地裏を避けるようになった。

グランズマンが出現しなくなった路地裏に久方ぶりの安寧が訪れるが、

同時に悪が静かにはびこり始めていたのであった。



プワン

ガガン、ガガン…

ガガン、ガガン…

高架線を走り抜ける列車の音が響く路地裏、

グランズマンが消えてから約一月が経過していた。

「えぇっ…

 通行止めぇぇぇ!!!!」

表通りに加奈子の声が響き渡ると、

『道路工事につき、

 この先通行止め』

と言う工事を告知する看板が彼女の前にそびえ立っていた。

「そんなぁ…

 ここが通れないと…」

愕然としながら加奈子は看板を見上げているが、

しかし、いつまでもそうしているわけにはいかない。

「仕方がない…

 路地裏に行くしかないのか」

迂回路として表示されている路地裏を加奈子は恨めしげに眺めると、

ギュッ

拳を強く握りしめ、

路地裏へと足を進める。

だが、そんな加奈子を待ちかまえるかのように

そこにはさらなる試練が待ち構えていたのであった。



「バウウウウウウウウウウウ・・・・」

加奈子が路地裏を進み始めてからわずか5分後。

大声でうなり声を上げる大型犬が姿を見せたのである。

縦に割ったかのような黒毛と緑毛のツートンカラーの大型犬は

首輪もなく加奈子に向かって牙を剥く。

どうやら悪い飼い主が路地裏に捨てたものと思える。

「ばうばうばうっ

 ばうばうばうっ

 あっばうあうあうあうぅ!

 ばうばうばう」

まるで人の言葉を話そうとしているようにも聞こえる声を上げて、

大型犬は加奈子に向かってこことぞばかりに吠えたてまくる。

(どうすればいいの…

 こわい…)

一向に吠え止まない大型犬の姿に加奈子は少しちびりそうにもなっていた…

しかし、

「ばうばうばうっ

 ばうばうばうっ

 ばうばうばう!!」

まるで加奈子を心を見透かすように大型犬は吠え続け、

(やめて、

 やめて、

 やめてぇぇぇぇ!!)

吠えたてられる加奈子の心に恐怖の感情が高まっていくと、

(いやぁぁぁぁぁ!!)

ついに加奈子の意識はとんでしまったのであった。

と同時に、

グチュッ!

ズボッ!

ニュルンッ!

ビクビクビク!!!

モリモリモリ!!!

ムキッ!

加奈子の肉体が変形をし始め、

華奢な加奈子のシルエットから

あの怪人男・グランズマンのシルエットへと変わったのであった。

ビクンッ!

路地裏に姿を見せたグランズマンが大型犬の前で逞しく硬く聳えてみせると、

「バウバウバウ!!!」

ここぞとばかりに大型犬は上から下から食らいつくが…

しかし、

ニュルンッ

亀頭を突き出して見せるグランズマンにはそれはただの刺激でしかなかった。

「バウバウッ!」

埒があかないことに業を煮やした大型犬が大声を上げて、

さらに強く深く噛み付いてみせると…

ブシュッ!

グランズマンの上から下から大量の水が吹き出してしまった。

そして、吹き出した水があたりを潤すと、

ボロボロボロ

大量の恥垢や汚れが剥がれ落ち野犬の目や口を覆っていく。

無理もあるまい、

ひと月近く”剥いて”いないのである。

故にグランズマンのカリ首周りにはたっぷりと恥垢が溜まっているのであった。

この予想外に

「キャイン!

 キャイン!

 キャイン!」

路地裏に悲鳴が響き渡り、

目鼻口が塞がれた大型犬がのた打ち回る。

すると、一人の男が路地裏に現れるや、

「あぁっ!

 ペニーッ!

 おいっ、てめーっ!

 うちの犬になにをしやがんでい!」

どうやら大型犬はただの捨て犬ではなく、

この男が犬の飼い主らしい。

「おいっ、

 黙ってないで何とか言えよ」

グランズマンの姿に臆することなく、

男は背中に描かれた模様を見せつけながら怒鳴り声を上げるが、

ビクビクビク!

ビクビク…

ビクンッ!

グランズマンは激しくカリ首を上下に動かし、

体の硬さをさらに硬くしていくと、

ついに臨界点に達したのであった。

すると、

ブシュッ!

シュッシュッシュッ!

ここぞとばかりにグランズマンは大量の白い液を放出させたのである。

「ぐわぁぁぁぁ!!!

 くっせーっ!!!」

「キャイーンッ!」

吹き出した白い液を頭から被った男はひとたまりもなく、

鼻と口を塞ぎながら飼い犬と共にその場に倒れこんでしまい動かなくなってしまった。

こうして、路地裏で起こった事件は解決したのだが、

しかし、これが一人の少女の心をさらに苦しめることとなったのである。