風祭文庫・ヒーロー変身の館






「超ムキムキマッチョマン」
(第11話:風船の中で)



原作・@wolks(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-351





大きな風船が多数浮かぶメルヘンチックな楽屋…

その楽屋は風船を膨らまして曲芸を行う

「風船三郎」

の楽屋であり、

その日も彼の公演が行われるはずだった。

しかし、皆が期待していた彼の公演は

突然中止となってしまったのだ。

中止の理由はファンに向けては公表されなかったが、

しかし、風船三郎こと風見隼人は何者かに殺害されたのだ。



「これは…事件だ」

メガネを光らせ、

富士山と波飛沫をバックにたU編成部長の脳は冴える。

そして、眠りの小五郎を筆頭に

今古東西の名だたる名探偵がかき集められると、

一方警察も負けじと、

七曲署、西部署、湾岸署等による合同捜査本部が立ち上げられ、

この事件の捜査に当たったのである。

しかし、それらの英知を持ってしても、

犯人の巧妙な隠蔽工作を暴くことが出来ず、

わずか1日で迷宮入りになってしまったのだ。

時効成立まであと14年と364日。

急げヤマトよイスカンダルへ、

地球は君の帰りを、

君の帰りを待っているぅ…

「ってシナリオはどうかね」

「U部長、

 時効は既に撤廃されていますので、

 残念ながらボツです」

「あっそう」

「U部長、

 例の二人が見えられました」

「ん、いま行く」



「いやいや、

 ありがとうございました。

 急遽出演ということなのに…」

空いた公演の代役として登場した青と水色のビキニパンツ1枚の黒人筋肉男…

超ムキムキマッチョマンとヌバの勇者・ンゴリだった。

二人はU部長から謝礼を受けていた。

「いいのよ…

 こっちだってちょっとは出番がほしいと思ってたんだから」

マッチョマンは言うと、

「でも、なんで風船さん、

 殺されたのかしら?」

ンゴリは疑問形でたずねた。

「実は…少しきな臭い話なのですが、

 風船三郎こと風見隼人は

 あるものをあの楽屋にて作っていたようです」

「あるものって?」

「彼が亡くなってしまった為に、

 それは判りません」

「そうなんですか」

「しかし、

 風見さんの楽屋を別の人間がこっそり使用していたのは判明しています。

 なぞの取引のために…」

「なぞの取引?…

 まさか麻薬とか…?」

そう言いながら二人はU部長に詰め寄る。

すると、

「いえ…

 この間のインチキ霊媒師のお香と少し関係があるみたいです」

U部長は付け加える。

「この間のあいつと?

 なんか関係あるわね。

 美香、今日は特に何もないわね…?」

「ええ…友紀さんがいいというなら、

 あたしは付き合ってもいいけど」

「じゃあ、決まりね」

二人は張り込みをして楽屋での真実に近づくつもりだ。

その夜、二人の男が楽屋で取引をしていた

「フフフ…

 この術を使えば、

 俺たちの商売も上がるな…」

「出世をするために、

 弱い女をヨリシロにして少数の部族に売る。

 双方に有利な…」

どうやら二人は怪しげな取引をしているらしい。

「ここの楽屋のやつが、

 この取引を見ちまった…」

「どうこうするかはともかくとして、

 口をふさいでおいて正解だったな…」

どうやら風船三郎を殺したのは二人の男らしい。

「そこまでだ!」

風船の中から二人の黒人男が飛び出した。

風船三郎は風船を使った軽業師。

風船三郎のネタノートは実は楽屋に残されており、

当然筋肉男二人を風船に隠す方法も

ノートを探れば応用できるものだった

「貴様ら、

 いつから見ていた…」

「なんだどうやら図体だけはでかそうだな…

 ならばこれでどうだ」

余裕をかましながら男はロシア製銃器を取り出すと、

二人に向かって引き金を引いた。

カカカカカカカカ!!

乾いた音が楽屋にこだまする。

しかし…

マッチョマンとンゴリは風船をうまく操り弾丸を防ぐと、

「これを膨らまそう」

「はいっ」

マッチョマンとンゴリは超人的な肺活量を使い、

次々と風船を大きく膨らませてゆくと、

「なんだこれは」

「助けてくれぇ」

増え続ける風船に二人は部屋の隅に追いやられ、

呼吸すら苦しくなったとき、

ババババババ…

上空から1機のヘリが舞い降りてくる。

「助かった!」

「あははは、

 お前らの負けだ!」

勝ち誇ったように二人はヘリコプターに飛び乗ると、

「あばよ!」

「これでも喰らえ!」

の声と共に、

眼下のマッチョマンたちに向けて、

ロケット砲を放ったのだ。



迫ってくるロケット弾。

万事休す!

誰もがそう思ったとき、

PAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAANNNNNNNNNNN!!!!!

大きな音とともに1つの風船が破裂してしまうと、

次々と他の風船が破裂し始める。

そして、それによって生まれた衝撃波がホーキンズ輻射により、

無数のマイクロブラックホールを連続発生させると、

すると、

ミアミアミアミアミア…

無数に発生したマイクロブラックホールによって

加速された粒子エネルギーが楽屋のなかで収斂していく。

そして、楽屋内のエネルギー密度が120%と過充填されたとき、

シュパァァァァ!

ドォォォン!

風船波動爆縮放射。

そう風船三郎が夢にまで見た風船波動の爆縮と放射が起き、

それによって発生した次元断層をも切り裂く銀河ジェットが

ヘリコプターを直撃したのであった。

風船波動砲の完成である。



翌朝…

友紀は学校を休んでいた。

「ああ…いつになったら声が戻るのかしら」

風船を膨らませる際に

ヘリウムガスを存分に吸ってしまった友紀は声をからしていた。

一方、

「U部長

 どうもありがとうございます。

 おかげでこちらの手間が省けました…

 それにしても、

 悪徳な取引をするばかりか人をあやめるとは…」

鍵屋と呼ばれる青年がU部長にそう話すと、

「ではコレにサインをお願いします」

とU部長の秘書は昨日の男二人を

鍵屋に引き渡していたのであった。



おわり



この作品はに@wolksさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。