風祭文庫・ヒーロー変身の館






「超ムキムキマッチョマン」
(第10話:寄生者の末路)



原作・@wolks(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-273





皆さんは、NEETという言葉をご存知だろう。

Not Education.Employee,Training

まさに無職の人間を指す言葉なのだが…

――――――――――――さて、話は変わり、

とある動画サイトでは何点か話題にされている動画があった。

そしてこのところある特定の動画ばかりがランキングにあがるようになってしまっていたのである。

「NEET相沢の○○を斬る」

これはNEETの相沢という男がその動画で愚痴を言ったり、

へんな発言を繰り返したり、

はなから自慰を始めたりと…

なんとも非創造的な行為をしているというものであった。

そのころ…

(あたし達、こんなところでも活躍しちゃってるのね)

友紀はその動画サイトを見ていた。

それは青と黒のビキニパンツを穿いた黒人マッチョ2人ががっつき会っているというものだった。

実はある深夜番組で変身した友紀と美香が取っ組み合いをしたものだったのだが…

それが「黒人ガチムチレスリング」というタイトルで一部のマニアに受け、

音楽系MADとして作成されたりしているうちに

いつの間にか動画サイトでも人気となっていたのだった。

しかし…

(またこいつか、みんなうんざりしてるのに…)

このところ目に留まるNEET相沢の小もない動画には本当に飽き飽きするばかりであった。

友紀にNEET相沢の始末の依頼が入るのはそれから約1週間後のことである。

「これが…NEET相沢の経歴?」

「ええ…私がちょこっと調べてみたところ、

 実はこの男はNEETであることををいいことに動画サイトに顔を出しています。

 それどころかこの名を使っていろいろな雑誌記事に投稿したり

 はては駅構内に勝手に看板を張ったりして。

 やりたい放題ですよ…」

「それだけ?」

「いえいえ、

 それどころか勝手に芸能プロダクションにも入ってたりして…」

「でも給料はしっかりともらってる…

 これってNEETじゃないわね。

 これでNEETを語ってるなんて…」

「この男、このままいくと癌と呼ばれる存在になりえます…

 その前になんとかしないと」

「わかってるわよ。

 この方法がうまくいくかはわからないけど」

友紀とプロデューサーはそのような話をしていた。



その日の夜、友紀は巨大掲示板の動画サイト関連のスレッドに書き込みをしていた

「○月×日 21時よりOFF会でもしませんか?

 会場は東京都の…」

(これで、よしっと…ついでにあそこにも…)

その翌日、友紀は電気街に出かけると一人の男のところに向かっていく、

「えぇ?

 生放送を動画サイトに流す方法…ですかぁ」

「そう、どうしても必要なのよ」

そう言いながら友紀は1万円札数枚をちらつかて見せる。

「何を企んでいるのか知りませんけど、

 まぁいいでしょう。

 この方法なら出来ますが通報されても知りませんよ…」

「その辺は大丈夫よ、

 ちゃんと上から許可を取ってあるから、

 うん、ありがとう」

そして、友紀はさらに別の男とチャットをしていた。

その男は動画サイトでも活躍している人気のクリエイターであった。

「え…俺が主催者に…まじですか?」

「俺、急用につきオフ会に出られない。

 詳しい内容はお前に任せるが、○月×日 21時より

 場所は練馬駅前の居酒屋でということは主にだ」

「わかった。やってみよう。」

(これで、よしっと…)

友紀はパソコンの画面を見ながらそう思った。



○月×日の夜、

UプロデューサーとNEET相沢は車で移動していた。

NEET相沢はいかにもキモオタというような感じだった。

車の中でNEET相沢を起用した番組の作成の話をするためだ

「…ええ、NEETという言葉について、

 番組としてもあなたに方ってほしいと思いまして…」

「え…NEET?

 ぶっちゃけ、自分の存在をわかってもらいたいんですよ。

 自分を色んなところにさらけ出してそんでいつかは自分がこの国の王になるみたいな…

 もちろん、汗水流して働いたところでまったくもって無駄ですから…」

NEET相沢は声高に笑っていたが、

(なんだこいつは…真面目に頑張ってる人を…なんてことを…)

Uプロデシューサーは相沢の態度に内心ムカつていたのである。

だが、この男を起用した番組作りは全て嘘で、

全てはこの男をある場所へ移動させるためだ。

「…ここですか?」

「ええ、場所が無いと思ったので…」

(打ち合わせ場所にしては安っぽいな…)

相沢は密かに感じていた。

案の定、打ち合わせ開場には誰もいなかった。

「誰もいないんですか?」

「ええ、二人だけで打ち合わせをしようと思いまして…」

二人は会場で料理を食べていた。

NEET相沢の社会や労働を完全になめ切ったような発言が立ち並ぶが…

宴もたけなわとなったところで、

いきなり隣の部屋のふすまが開き、

そこに…男二人が現れた。

「うがが…」

「こ、こいつらは…」

その男二人は、青と黒のビキニパンツ1枚の黒人マッチョ…

超ムキムキマッチョマンとヌバの勇者・ンゴリであった。

「いえ、実は貴方もご存知でしたか?

 動画サイトで人気の貴方と、

 同じく動画サイトで人気の黒人ガチムチブラザーズの方とも競演が必要か名と思いまして」

「なぜこいつらは…」

超ムキムキマッチョマンは相沢の腕をいきなりつかむと、

二人がいた隣の部屋へと押し込んだ。

相沢の目の前には生で黒人ガチムチレスリングが開かれていた。

「うわああああ…すごいぜ…この生で見る迫力…」

相沢はその光景に目が奪われていたが、

次の瞬間、ンゴリは相沢をつかんで部屋の中央に寄せるといきなりつかみ始めた。

これにはさらに超ムキムキマッチョマンも俺の獲物だといわんばかりに相沢の服をつかんでいた

「うわあああ…なぁんだ、これは…」

抵抗もむなしく、

二人の黒人男は相沢に対してさまざまな攻撃を仕掛け、

攻撃が終わった思ったら当たらないように

二人で取っ組み合いをするということを繰り返していた。

実はこの中継は生放送で動画サイトに流されていた…

そして、時刻はもうすぐ夜9時になろうとしていたのである。

「オフ会の会場はここです…」

という発言とともに何人もの客が現れる。

普通のサラリーマン風の男から、

ゲームやアニメのコスプレイヤーまでさまざまだ。

「ちょ…これは…」

客達は息を飲んだ。

「ガチムチ兄貴が、

 NEET相沢を…」

「さっきまで動画サイトで流れていたのはこれか!

 これは加勢するしかねえ…」

オフ会の参加者達はNEET相沢に対してさまざまなことをした。

まさにフルボッコといってもよいだろう

(この状況は流せないわね…

 9時前に切れるようにはしておいたけど…)

超ムキムキマッチョマンは胸をなでおろした。

オフ会の参加者はノートパソコンや近くのネットカフェ、

さらには携帯の動画サイトからも確認していたのだ。

「…あれ?

 これ、NEET相沢の鞄じゃね?」

「やめろ…さわるな…」

それを見たNEET相沢は移動しようとするが、

超ムキムキマッチョマンとンゴリに抑えられ、

身動き取れない状態だった、

「うわあああああああああああ、

 なんだこれは?」

そこにはNEET相沢の知られていない悪事の証拠と思われるものが次々と飛び出し、

「ゆるせねーっ

 こいつを警察に突き出すんだ!」

黒人ガチムチ兄弟とオフ会の参加者はこの男を最寄の警察に突き出したのである。



「兄貴…どうもありがとう…」

オフ会の参加者は超ムキムキマッチョマンに感謝の言葉を述べると、

「ああ…また動画で会おうな…」

参加者達と黒人男二人は暑い握手を交わしたり、

またサインを行ったり、

気合を入れたり…

兄弟が去った後もオフ会は二次会、三次会と盛り上がったらしい…

数日後、NEET相沢の全ての悪事が露呈し、

もうNEET相沢は動画サイトからは永久追放となり、

(今日も楽しそうなどうがでいっぱいね)

友紀は安心しながら動画サイトを開いていたのであった。



おわり



この作品はに@wolksさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。