風祭文庫・異性変身の館






「超ムキムキマッチョマン」
(第5話:二重のトラップ)



原作・@wolks(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-244





季節の移ろいは早く、

その学校では長い夏休みがあっという間に終わり、

2学期が始まると、

まだ暑さの残る教室の中で女子生徒は夏休みの出来事について楽しそうに話していた。

「ねえ、夏休みにテレビ局の1日特別展示ショーに行ったんだ。

 そしたら、満員電車早抜け大会に出ちゃっったの」

「へえ?

 で、どうだったの?」

「それがね…

 ボディービルダー50人の間を潜り抜けるとかいうもので、

 すごい筋肉がピクピク動いてて、

 チョー気持ち悪かったんだ」

「へえ、そうなんだ」

女子生徒の話にクラス全員が笑っている中、

友紀だけは

(悪かったわね…その中にあたしもいたわよ…)

と密かに怒りを込み上げていたのであった。

「でも、それに比べると

 うちの男子って本当にスレンダーでカッコいい子多いよね」

「カッコいいだけじゃなくって、ほら…あの子…。

 女の子みたいにチョーかわいいのも…」

そう言いながらその女子生徒は窓際に立っている女の子のような顔をした小柄な男子生徒のほうを見る。

「ああ…ケンちゃんね。

 あれが男の子なんて、もったいないわ」

彼の名は健斗というが、

見た目のかわいらしさから女子生徒からはケンちゃんと呼ばれており、

女子達の人気者もあった。

「ホント…女の子の服とか着させてあげたい…」

女子生徒たちの雑談は始業まで続いていた。



女子高生・町田友紀には二つの顔がある。

一つは、普通に女子高生としての姿。

もう一つは依頼があると変身して超ムキムキマッチョマンになり、

悪者を華麗にやっつけるとかそうでもないとか…

町田友紀のメールに仕事の依頼が入ったのはその約1週間後のことである。

「拝啓

 町田友紀様

 厳しい残暑が続いている中いかがお過ごしでしょうか?

 早速悪いのですが、

 あなたには再び超ムキムキマッチョマンとして

 今度は番組改編期の特別番組への出演をお願いします。

 今回は報酬もいつもより多くなっております。

 しかし、今回は別のキャラクターと一緒に出演となりますので

 負けないようにがんばってください某大道具係より」

(別のキャラクター…何なんだろう?

 まあ、いいわ)

文面を見ながら友紀はそう呟くとスグにOKの返事を出した。

かくして特別番組の収録当日…

当然の如く収録スタジオの中には司会者とアシスタントがおり、

スタッフから収録の開始を告げるキューが出た途端。

「やってまいりました!

 『特番、いろんな問題とけるかな?』

 の時間でございます」

とカメラに向かって声を張り上げ、

「さて、この番組では、

 有名人数人に古今東西の難問から小学生でもわかる簡単な問題までをランダムで出題する。

 というルールです。

 問題は全部で20問、

 11問正解すれば賞金とご褒美、

 10問以下なら罰ゲームでございます」

という説明をする。

そのとき、超ムキムキマッチョマンはなぜか檻の中にいた。

(まあ、罰ゲームだし

 これはこれでいつものことよね…でも…)

超ムキムキマッチョマンが気になっていたもの。

それは番組で競演するキャラクターであった。

キャラクターは

「グラマーな金髪美女」

と呼ばれ、

ブロンドの美しい髪と白い肌、

Gカップはあろうかという豊満なバスト、

魅力的に見えるヒップ、

引き締まった体に美形の顔…

さらにその体を覆っているのは黒いビキニの水着だけ…

超ムキムキマッチョマンとは正反対の存在だ。

この番組ではミッション成功のご褒美として、

賞金とともに与えられることになるのは言うまでもない。

そして、そのグラマーな金髪美女は階段を上った台座の上にいる。

(それにしても…

 明らかに対抗してるじゃない!

 でも、まあ、いいわ…)

超ムキムキマッチョマンはひそかに虐めがいのある悪者がこっちに来てくれることを祈っていた。

まもなくクイズの最初の挑戦者が呼ばれた。

最初の挑戦者は小さな町工場を経営している初老の男性だった。

なんでも、今回の賞金の使い道は経営難の町工場の再起のため、

何人の従業員の思いを背負っての挑戦だという。

(この人はいい人そうね…こっちにこないことを祈るわ…)

「ハイ…20問中11問正解!

 おめでとうございます」

司会者の声が響いた超ムキムキマッチョマンの思い通り、

何とかクイズの正解数は基準値を達成しており、

男性は無事賞金を獲得することが出来た。

二人目の挑戦者はいかにもチャラチャラした男で、

なんでも取った賞金で豪遊したいのだとかいう。

(こいつ、虫が好かないわね…)

ひそかに超ムキムキマッチョマンのパンツにはテントが作られていた。

案の定、基準値より点数は下がっていた。

「正解数は8問…残念ですが、罰ゲームです」

司会者の声が鳴り響くと、

男はSP風の男に連行され、

超ムキムキマッチョマンのいる檻へと運ばれる。

そして男が檻に入れられるのと同時に

超ムキムキマッチョマンは嫌がる男を愛おしそうに後から羽交い絞めしてしまうと、

悲鳴を上げる男にあらん限りのお仕置きという名の愛情を尽くしたのであった。

(…まったく、ふだんからチャラチャラしてるからよ)

こうしてその後も10問以下の正解数の者には

全員超ムキムキマッチョマンにより何らかのおしおきが与えられるのであった。

「さて、本日最後の挑戦者、

 人気お笑い芸人、入山哲夫さんです!」

そういうといかにもだらしのない顔をした一人の男が入ってきた。

(…こいつ…たしかしょっちゅう女の子にもセクハラはするし…

 後輩の仕事は勝手に奪うし…ADとかから散々聞かされたわ)

超ムキムキマッチョマンは怒りをむき出しにしていた。

(…こいつ…どうしてくれようかしら…

 ああ、早くこっちに来ないかなあ)

超ムキムキマッチョマンの思惑とは裏腹に、

入山はあらゆる難問を見事に解いていく…

そして、

「おめでとうございます!

 20問中19問正解…本日の最高の正解数です。

 今夜のトップ賞の賞金です。

 まずはこれをお受け取りください」

司会者のその声に入山は不気味な笑みを浮かべていた。

「そして、あそこにいるグラマー金髪美人さんに祝福を受けてください!」

そういうと入山はグラマー金髪美人が控えている部屋へと階段を上っていった。

(何で…あいつが…絶対!

 おかしいわよ!)

超ムキムキマッチョマンはさらに怒りをあらわにした。

収録が終わって数十分が経過した後、

超ムキムキマッチョマンが部屋で元の姿に戻るのを待っていると

そこに水着姿のグラマー金髪美女が現れるなり

「ねえ…私…あなたのすごい体…

 とっても気に入ったの…ベッド行きましょうよ…」

彼女は艶かしい声でそう告げたのであった。

「え…オレで…いいのか…」

(ちょっと…あたしは…女よ…)

思いがけない美女の言葉に超ムキムキマッチョマンはやや乗り気でない返事をした。

しかし、

「いいえ…我慢できないわ…」

グラマー金髪美女は無理やり控え室のベッドへ彼を押し倒してしまうと、

「ああん…ああん…」

「うおおおおおおお…」

(な…何この女の体…

 膣の感触といい凄く気持ちいいじゃない…

 ああん…こっちも…イキそう…)

二人は何度もお互いの体位を入れ替えながら

自分の身につけているものの脇より

それぞれの男性器と女性器をはみ出させながら絡み合っていた。

相手の体が気持ちよかったのであろうか

超ムキムキマッチョマンは自分の姿が元に戻るのも忘れているようであった。

シュウウ…

その音と共にグラマー金髪美女の上に乗っていた男は、

いつの間にか背は小さくなり、

体の色も白くなっていくと、

胸の膨らみも現れ、

挿入していたペニスの感触さえもなくなっていた。

(あれ…元に戻っちゃった…って、え?)

友紀は驚いていた。

自分の姿がいつの間にか戻っていたこと、

自分の下にいたはずの美女が、

華奢な体つきで女の子のような顔つきはしているものの平らな胸でやや腹筋は飛び出し、

そして黒いビキニの脇からペニスが飛び出している少年がいたからだ。

「あんた…ケンちゃん!」

そこにいたのは紛れも無く友紀の同級生の健斗だった。

「誰かと思ったら…ユキちゃんだったんだ。

 だって、

 一緒に出てる超ムキムキマッチョマンがうちの高校の競パンはいてたからそれに、

 顔もよく見るとどこかで見たことあるなって思って…気になっちゃって…」

健斗は恥ずかしそうにこういった。

「だからって…なんでここまで…でも、

 どうしてケンちゃんがこの仕事しているの?」

「実は、ボクが高校に入ったとたん、

 父さんが入院しちゃって…

 それで学費、生活費、入院の費用をなんとか稼ごうと思ってたんだ…」

「そうだったの…あなたも苦労しているのね」

友紀飲めは少し涙ぐんでいた。

健斗と友紀はお互いがなぜ変身してこの仕事をしていたのか、

また変身してどんな仕事をしてきたのか話していた。

「…でも、あの入山の奴だけは許せないわね…!」

と、収録に出てきた入山のことを思い出す。

「…安心しなよ。

 あいつが前々から悪いことばっかりやってたのは、

 僕もそうだし、プロデューサーだって知ってたんだ。

それに、あいつはクイズ番組でもカンニングをしていることは有名な話だしね」

「あんたはそれで、何も感じなかったの?」

友紀はさらに付け加えた

「…だから、君のほかに僕も入山をやっつけるのに呼ばれたのさ。

 あいつはカンニングして合格する、なら僕があいつを懲らしめればよい。

 ご褒美に見せかけて実はあいつを女王様のごとく苛めてやったのさ。

 そしたら、今回のカンニングの件も、今までの悪事の件も全部吐いたんだ。

 まったく…プロデューサーもやるよな!」

「そうなんだ…」

話を聞いて友紀の怒りは少し収まっていた。

「ねえ、ケンちゃん…

 あなた、変身したときのあたしほどじゃないけど結構いいもの持ってるじゃない」

友紀は健斗のペニスが大きくなっていたことに気がついた

「そういうユキちゃんだって…」

その後、二人は元の姿のまましばらくお互いを絡めあっていたという。

その翌日、学校では女子生徒たちが別の話をしていた。

「…なんかあの二人、実は付き合ってたのよね…」

「う〜ん、先を越されちゃったわ」

「でも、友紀もやるわねえ」

そこには廊下で楽しそうに話しながら並んで歩いている友紀と健斗の姿があった。



おわり



この作品はに@wolksさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。