風祭文庫・ヒーロー変身の館






「超ムキムキマッチョマン」
(第1話:謎のアルバイト)



原作・@wolks(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-236





ある昼下がり、

一人の少女がトボトボと道を歩いていた。

「はあ、今日も昼ごはん抜きか。

 ここんとこ生活苦しいし…」

お腹の辺りに手を置き、

そうぼやいてみせる少女の名前は町田友紀。

高校に進学するとともに念願の一人暮らしを始めたのだが、

しかし、一人暮らしをはじめた途端。

親の監視という歯止めがなくなってしまったためか、

友紀は気に入った衣料品を買い捲り、

さらに誰にはばかることなく通話にネットにと

進学祝で買ってもらった携帯電話を使いまくったために貯金がつきかけ、

そのために生活面に関してはだいぶ切り詰めなければならず、

今日も腹の虫をなかせているのだった。

「やばいなぁ…

 なんとかして生活費を工面しないと

 でも、この近くでバイトするわけにもいかないし…」

そう、彼女の高校では今時珍しくアルバイトが禁止されているのだ。

しかし、いくら学校で禁止されているとはいえ、

アルバイトでもしない限り彼女は飢えてしまう。

なんとか身分がばれずに出来るアルバイトはないのか?

そんな日々を過ごしたある日、

友紀はネットの巨大掲示板に一つの書き込みがあるのを見つけた。

「チャンスは確実に手に入ります。

 ちょっと仕事をしているだけでかなりの額を設けることが出来ます。

 年齢、性別はまったく問いません。

 アルバイトできないとか言っている貴方?

 この仕事をしていることは基本的にばれないようにしています。

 え?

 仕事…

 まあ、ちょっと立ってたり、たまに物を運んでもらうぐらい。

 詳しく知りたい方はここにメール送って。

 すぐに変身しますから」

いかにも誤字脱字だらけで、

一見するといたずら書き込みのようにとられるだろう。

「なんかインチキくさいけど…

 でも、かなりの額稼げるのはおいしいわよね…」
 
書き込みを見つめる彼女の腹の虫がさらに大きくなっていることに気がつくと、

「このまま行ったら…

 もぅ背に腹はかえられないわ」

そう決心をすると彼女は自分がアルバイトを希望していること、

自分の名前、年齢、住所などを打ち込み、

書き込みに示された場所にメールを送信したのであった。

「これでフィッシング詐欺とかだったら…でも…」

そういう不安をかき消すかのように1時間もしないうちに返答メールが来た。

「町田様 アルバイトの件 了解しました。 

 早速明日 午後4時に最寄の駅前でお待ちください 」

「なんだ、別に詐欺じゃなかったじゃない。」

友紀は安心した表情を浮かべるが、

だが次の行を読んだ途端、彼女は息を飲んだ。

「しかし、アルバイトを行う前に、男性用のパンツが必要です。」

「え…これがいるの?

 あたしの部屋にこんなのないし、

 買いに行くにもお金ないし…どうしよう…」

友紀は困惑した表情で文面を眺めるが、

しかし、いまの友紀にはメールの条件はとても高いハードルとなっていたのであった。



翌日、

メールのことは置いといて、

いつも通りに登校していた友紀は廊下であるものを見つけた。

「これって…なんでこんなもの落とす奴がいるのかしら?」

それはこの学校の水泳部の男子生徒が使用している青い競泳パンツだった。

「誰が落としたんだろう?」

落ちている競泳パンツを恐々と覗き込みながら、

友紀は周囲に人影が無いことを確認すると、

そっと手を伸ばし、

競泳パンツを指先で摘んでみせる。

「名前は…うーん、書いてないわ。

 濡れてないわね。

 まだ使われてないのかしら」

つまみ上げた競泳パンツを眺めながら友紀は持ち主につながる情報を探すが、

だが、何処を見てもそのようなものは無く、

それと同時に友紀の脳裏にある考えが浮かんだ。

「そうだ…これ代わりにつかっちゃお」

彼女は改めて自分の周りに誰もいないことを確かめると、

それを競泳パンツを制服のポケットに仕舞いこむと、

足早に立ち去っていく。 



そして午後4時、彼女はメールに指定されていた最寄り駅の待ち合わせ場所に着くと、

そこには1台のトラックが駅前に止まっていて。

友紀が待ち合わせ場所に到着するのと同時に、

トラックの中より大道具係りのような作業服姿の男が降りてくるなり、

「町田さんですね。

 例のものは持ってきましたか?」

と話しかけてきた。

「はい、でも・・・これ何に使うんですか?」

「それではトラックの倉庫の中に入ってください。

 説明は中に書いてあります」

と男は告げ、

友紀をトラックの荷台へと招き入れる。

「え…トラックの中?…」

それを聞いた彼女は少し不審に思ったが、

しかし自分が申し込んだということもあってか、

男に言われるまま乗り込んでしまうと、

中はまるで楽屋のようになっており、

鏡やハンガー、さらにはテーブルなども用意されていたのであった。

「なにこれ?」

荷台の中で友紀はキョトンとしながらも、

テーブルに置かれているあるメモ書きを手に取り読んでみると、

『まず、着ている服を全部脱いでください。

 そして、持ってきたパンツをはいて下さい』

と書いてあった。

「え?

 …やっぱりこれ着るのぉ…」

すぐにこの場から立ち去りたかったが、

だが、乗り込んでしまった以上、

後戻りは出来ない。

彼女はいやいやながら服を脱ぎ、

洗濯してある競泳パンツを履きながら次の行に目を移す。

『着替え終わりましたら、

 ここに用意しておりますサプリを飲めば準備は完了です』

とあり、

テーブルの上には、2〜3粒ほどの錠剤がおいてあった。

「この錠剤を飲めばいいのね…

 う…苦い…」

その錠剤はまるで毒物を思わせるような苦さだったが、

彼女は用意してあったポットの水を大量に出して何とか飲み込んでみせる。

「ふう…ってえ…?

 な、なにこれ…体が…あっ…ああああああっ」

錠剤を飲んでしばらくすると彼女の体が突然熱くなりだすと、

まるでサウナの中にいるかのごとく体中から汗が噴出し、

心臓の鼓動も何倍もの速度に高鳴っていく、

そして、それらに併せるようにして

友紀は自分の体が何倍にも膨れていく”気”がしたのだが、

しかしそれはただの”気”などではなく、

実際に友紀の体が変化していくサインであった。

人並みにはあった彼女の胸の膨らみは潰れていくように平らとなり、

ムッチリと膨らんでいたお尻の周りも引き締まって行く、

変化はそればかりでなく、

徐々に彼女の背が高くなるのに併せて友紀の腕や脚の筋肉が隆起し、

お腹にははっきりとした溝が作られ、

平らになっていた胸に胸板が盛り上がると、

穿いていた競泳パンツに小さな膨らみが出現し、

それがゆっくりと突きあがってくると、

競泳パンツを猛々しく盛り上げる。

そして友紀の肌の色が黒く染まってくると、
長かった髪の毛もほとんど抜け落ちて行く。

「あれ?」

ようやく体の変化が終わったのか、

激しく鼓動を打ち付けていた胸が収まり、

友紀は大きく深呼吸をしながら鏡を見るが、

その直後、彼女は大きな声で叫んだのであった。


そう、鏡に映っていたのは身長190cmはあり、

股間を膨らませたスキンヘッドの黒人マッチョだったからである。

「なにこれぇ!」

信じられないような表情をしながら友紀は鏡を見ていると、

「はい、仕事の場所に着きましたよ」

と外から男の声が響き渡った。

「ちょっと、これはどういうことなの?

 なんで、あたしがこんな体に…」

その声を聞きつけて顔を出した友紀は思いっきり抗議をすると、

「薬はちゃんと効いているようですね。

 よかった…

 ここはあなたのご存知のトアル・ボウ・TVのスタジオでして、

 貴方の仕事はそこのショーに出ていただくことです。

 1時間ほど舞台の上でポージングしていただければいいわけでして…」

大道具係りはこのように説明する。

「じゃあ、なんではじめからこういう人を連れてこなかったの?」

それを聞いた友紀は反論をするが、

「このショーの目的は過去に放送されていたバラエティに関する展示でして、

 そのバラエティでは『超ムキムキマッチョマン』という

 キャラクターが登場するのですが…

 しかし、経費節減のため展示しようにも人形を作るわけにも行かず、

 かといってはじめからこのような体系の方も

 今となってはほとんど見つからない状態でして…

 そこで思いついたのが誰でもいいから連れてきて、

 薬で一時的にそのような体にするということで…

 一応、やってくれそうな人をささやかに募集してみたら、

 あなたが応募してきたということでして…

 とにかく、これが終わればお約束のギャラの方を出しますので、

 それに免じてください」

高額のギャラの一言に友紀は反論を引っ込める。

そして大道具係につれられて、

『本日の特別展示 

 90年代の人気バラエティの登場人物 超ムキムキマッチョマン 

 PM6:00より』

と書かれた舞台の近くにまでつれてこられたのであった。

「ここが貴方に仕事をしていただく舞台です。

 今から閉会時間までポージングをしてください。

 別に人形の展示ではないので、

 その場を動かなければポーズを変えてみても結構です。

 じゃあ、がんばってください町田さん、

 いや超ムキムキマッチョマンさん」

と大道具係は友紀に告げその場を離れた。



舞台の展示室…

超ムキムキマッチョマンが展示されてからどのぐらいの時間がたったのだろうか?

会場には小学生から大人までさまざまな人物が来ていた。

(閉会までって…この場所から動けないと結構きついわ。

 それに、おなかもすいてきちゃったし…)

超ムキムキマッチョマンとはいえ生身の人間であり、

そう思うことは当たり前のことである。

しかし、展示されているものが

こんな風に考えていることは会場に来ている人たちは知る由もなかった。

(うわぁぁみんな…

 あたしを見ている…)

ポージングをしながら友紀は自分を指差し、

そして何かを囁きあう来場者達を見ているうちに、

なにか言いようも無い快感を感じるようになっていく、

そして、その快感が股間に伝わっていくうちに、

股間が硬くなり大きさを増しはじめだしたのであった。

(あっ、

 やだ、なんだか…

 急に硬くなって…

 だっ駄目っ

 みんなが見ているからぁ)

それに気づいた友紀は周囲の視線を気にしつつ、

膨らみを増していく股間から自分の注意を逸らそうとする。

そしてその甲斐あって、股間が元の大きさに戻っていくと、

(はぁ…)

友紀は一息を付いたのであった。

こうして時間が過ぎて行き、

やがて閉会時間が迫った頃、

一組の親子連れが友紀の前に現れたのであった。

小学生ぐらいの男の子2人と、その母親。

3人はしばしの間友紀を見つめたのち、

「さっ行くわよ」

の声を残して母親は立ち去っていくが、

しかし2人の男の子はその場に残り、

徐に手を伸ばすと友紀の体を触り始める。

「へえ…マッチョマンの体触ってみると結構ゴツゴツしてるんだ」

「腕とかつまんでみたけど、結構堅いぜ」 

(ちょっと…さっきっから何触ってるのよ!

 払いのけたいけど…うっ…くすぐったい…)

「すごいなあ、わきの下くすぐってもあんまり動かないよ」

「マッチョマンってすごいなあ」

無邪気な男の子二人の容赦ないおさわり攻撃に友紀は絶え続けるが、

とそのとき、

「あれ、でもここ結構やわらかいぜ」

「あ、本当だ」

の声と共に男の子二人は友紀の股間を青いパンツ越しに触り始めた。

(きゃあああ…どこ触ってるのよ…

 …あっでっでも…気持ちいいわ…)

二人の刺激がジワジワと効いてきたのか、

友紀の表情に少し変化が現れ、

「ん、さわってるとさっきまでやわらかかったのが硬くなってきたぞ」

「本当だ。しかもなんか大きくなってきたし。」

(…あああああん…)

友紀の表情はさらに変化していたが、

子供たちはそんなことなどお構いなしに触り続け、

そして、さわり心地のよさを覚えたのか未だ二人は股間をさすり続けると、

「あれ、何かぬれてきたぞ…?」

と一人が声をあげ、

「あっ、本当だ」

ともぅ一人が声を上げる。

だが、

(ああん、もういきそう…)

友紀は今にもイキそうな表情となり、

ポージングも大きく崩れかけてきた。

すると、ひとりの女性の声が聞こえた

「ちょっとー、

 太郎ちゃんに次郎ちゃぁん。

 もう閉館の時間よ。

 さっさと来なさい」

と立ち去っていった母親の声が響き渡ると、

「ハーイ、ママ…」

二人は返事しながら友紀の股間を凄い勢いで擦ってみせる。

そして男の子達と母親が帰ると同時に、

「ああ、ああん、ああ…」

と友紀は股間から白濁した粘液を吐き出しながら倒れ込んでしまたのであった。



それからしばらくたった後の楽屋。

楽屋の中には競泳パンツをはいた女の子の姿があった。

「…元に…戻ってる…」

白い肌の胸の膨らみを見つめながら友紀は小さくつぶやき、

テーブルの上を見るとそこには大量のお札が入っている封筒があった。

「気がついたようですね」

その声と共に大道具係りの男が入ってくると、

「…あの…あたし…」

友紀は顔を赤らめながらあわててタオルを羽織って見せる。

「いやあ、町田さん。

 閉会時間になって迎えにきたら、

 会場で仰向けに倒れちゃってて、

 それでここまで運んできたんですよ。

 言い忘れましたけど、

 元に戻るには一定時間が経過するか、

 それを打ち消す薬が必要です」

と大道具係はそう説明する。
 
彼の声を聞きながら友紀はショーの最中にあったことを思い出すと、

まずいところを見られたように思ったが、

しかし次の瞬間、

友紀の腹の虫の音が最大限に響き渡ったのであった。

「こんなに大きいおなかの虫なんて、

 町田さんいままで全然ご飯とか食べてないでしょう?

 いけませんよ、

 いくらお金がないからって食べるものを食べないと…

 だからショーの途中で倒れるんですよ。

 今回はギャラを多くしましたので、

 ちゃんとご飯食べてください。

 さて、本日はお疲れ様でした。

 また、この手の仕事やりたくなったらいつでもご連絡ください」

大道具係りはそういうと、

友紀を送るために車を走らせる。

その一方で、

「ああ疲れた…でも…気持ちよかったなあ…」

と友紀はそうつぶやきながら、

超ムキムキマッチョマンの股間を触る男の子達を思い出しながら、

ギャラの入った封筒を手に取ったのであった。



おわり



この作品はに@wolksさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。