風祭文庫・ヒーロー変身の館






「デジタルからの物体X」
(最終話:リアルvsデジタル)



原作・匿名希望(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-180





時は西暦20XX年、地球では怪獣や宇宙人の襲撃が多発していた。

それらの事態は国連軍では対処しきれないと判断した人類は

特殊科学戦隊TSFを結成し、迫り来る脅威に立ち向かっていた。


 
「また随分と派手にぶっ壊したな…」

「凄いことになりましたからね…。

 関係者が全員避難できたのなんか奇跡ですよ」

「まあ、暫くは新兵器開発研究所を拠点にするしかないか…」

「嫌だな、そんなの…」

「贅沢言うな。

 私だって嫌だ」

「何が嫌だって?」

「ってナリタ博士!

 何してたんですか!?」

「ちょっと本部の方にある物を送るように連絡しておいたんだ。

 きっと我々の勝利に役立つはずだ…」

「ある物って何ですか?」

「まだ言えん。

 実験が成功しなければ意味が無いからな…。

 しかし、試してみる価値はありそうだ…」

「…なんか初めてナリタ博士が頼もしく見えてきました」

「それはいいが、

 最初の方なんて言った?」

「いえ、なんでもありません」

「まあいい。

 それと私の戦友も一緒に来る」

「戦友?」

「そのうち解る。

 あいつが必要な展開になるとも限らないからな…」

「あいつって誰ですか?」

「今言った私の戦友だよ。

 遠い昔に縁を切ったはずのな…」

そう言ったナリタ博士の顔は珍しく真剣そのものだった…。
 
「大変です!」

「どうした?」

「世界各地に例のエネルギー反応を確認!

 TSF本部及び各地支部周辺で発生しるようです!」

「各地支部ということは…」

「この近辺でも発生しています!」

「恐れていた事が起きたか。

 長官、私が頼んだ物は後どれくらいで届きますか?」

「その内容にもよるが…、

 後2、3分といった所か」

「実験している暇は無さそうだな…。

 長官、13番格納庫を開けてください。

 あそこはダメージを受けてなかったはずです」

「何をする気なんだ?」

「実動部隊にも協力してもらう」

「だから何を?」

「デジタルワールドに殴りこんで奴らの拠点を直接たたく!」


 
TSF本部。

「おい、『飛竜』が動き出すらしいぞ…」

「何だって!

 本当か!?」

「ああ、さっき日本支部から連絡があった…」
 
「ちょっと待ってくださいよ!

 どうやってそこに行くんですか!?

 (戦闘自体はチシブキがいるからなんとかなると思うけど…)」

「そのためにわざわざ本部から取り寄せた物がある。

 武器も用意してある。

 届き次第作戦を決行する!」

「武器?

 ひょっとしてこの前チシブキが担いでいたですか?」

「何の話ですか?」

「チシブキは知らなくてもいい」

「その通り。

 あれは私が開発した新兵器『ビームバズーカ』だ。

 しかも徹夜で改良したため連射性能が数百倍になったはずだ」

「なんかバージョンアップしてませんか?」

「ただし、あまりにも凄まじい威力なので安全装置をかけてある」

「話し聞いてくださいよ」

「安全装置?」

「もしかして指紋認証システムですか?」

「うむ。

 引き金に指紋認証装置を組み込んでおいた。

 それにはチシブキ隊員の指紋を登録してある。

 したがってチシブキ隊員以外は引き金を引くことが出来ない」

「ちょっと待ってくださいよ!

 なんでチシブキなんですか!?」

「開発を始めた時唯一基地に残っていた実動部隊隊員だからだ!」

「そんな理由ですか…」

「新たに認証の対象を設定するなら丸1日かかるぞ」

「…そのままでいいです」

「ナリタ博士!

 届きましたよ!」

「そうか!」

「あの、何がですか?」

「行けば解るさ…」

 

13番格納庫。

「こ、これは…」

「ディメンションシップ…、

 そうか!

 これなら次元の壁を越えて異世界に行くことが出来る!

 それと同じ原理でデジタルワールドに行こうってわけですね!?」

「その通りだ」

「隊長!

 例のエネルギー反応から続々とデジモンが出現しています!

 この基地も危ないですよ!」

「そうか。

 とにかくディメンションシップに乗り込め!」

「行き先は計算してある。

 この座標に行けば間違いないはずだ…」

「解りました!」

「ナリタ博士…、

 いつもより頼りになりますね」

「何か言ったか!?」

「いえ!

 何でもありません!」


 
都内某所病院。

TSF日本支部の基地が壊滅したため、

治療センターに収容されていた人々は急遽ここに運ばれていた。

『臨時ニュースです…。

 世界各地に謎の巨大生物が出現…。

 各地にあるTSF支部を襲っている模様…』

待合室のTVには襲撃される各地のTSF基地が映っていた。

ニュースを見ていた人々の中には

デジモンにされていた子供達の見舞いに来たカツラもいた。

「…くそ!」

カツラはそのま病院を出て行った。

「現実世界は…、

 必ず守り抜く!」

そう言うとカツラはポケットから何かを取り出して空にかざした。

「クレス!」

 

「ディメンションシップ発進準備完了!」

「よし!

 発進だ!」

「了解!」

ディメンションシップは光を発して消えた。

「長官!

 デジモンが基地に到達しました!

 例の謎のウルトラ戦士と交戦中!

 ウルトラ戦士の方が若干押され気味です!」

「うむ…、

 ユキムラ君、

 出撃だ!」

「長官!

 博士!

 出撃って!?」

「これでも昔は実動部隊の前隊長と前副隊長だ!

 誰も行かないよりはましだろう」

「亀の甲より年の功、

 伊達にエースパイロットユキムラと言われてたわけじゃないわ」

「博士…」

「そういえばナリタ博士はどうしてる?」

「あっちで見たことも無い戦闘機いじくってます」

「そういうことか…。

 ナリタ博士も本気のようだな…」

「本気?」

「行くぞ」

「了解」

2人はタカマツの疑問に答えることなく

スカイファイターに乗り込んだ。

2機のスカイファイターは同時に離陸し飛び立っていった。
 
各地の支部でもスカイファイターは飛び立っていた。

現実世界と電脳世界の最後の戦いが今始まった…。
 
「フルカワ、後どれくらいでつくんだ?」

「もうすぐです」

「ナリタ博士に助けられるとは思わなかったな…」

「しかし、現実世界はどうなったんでしょうか?」

「解らん。

 基本的に向こうとの連絡はとれないからな…」

「そうですか」

「あ、あの〜」

「どうした?

 チシブキ」

「本当に僕が使うんですか?

 これ…」

「そうだ。

 いまさら変更は出来ん」

「そんなあ…」

「お前は誰だ!」

「どうした!?」

「侵入者です!」

「何だって!?」

「誰がよ!」

「ってお前は!」


 
「はい、こちらTSF日本支部…。

 あ、XX病院さんですか?

 …何ですって!?

 本当ですか!?

 …はい、解りました。

 注意しておきます…」

「マツガヤさん。

 どうしたんですか?」

「デジモンにされてた子供が1人病院を抜け出したそうよ。

 その子の名前はホシカワ・セイコ…」


 
「何でお前がここにいるんだよ!」

「デジタルワールドに殴りこむんでしょ。

 話は立ち聞きさせてもらったわ。

 あたしも一緒に行って
 
 あの仮面吸血鬼をぶっ飛ばしてやろうじゃない」

「か、仮面吸血鬼…?」

「どうします?」

「帰っている時間は無い…。

 このまま連れて行こう…」

「危険すぎませんか?」

「いや、多分大丈夫だ…」

「何でだよ、サイゴウ」

「何故かそんな気がする…」

 

クレスは敵のデジモン、

ウォーグレイモンに押されていた。

クレスの攻撃は全て避けられ、

ウォーグレイモンの攻撃は全て命中していた。

ウオーグレイモンの動きの素早さは凄まじい物だった。

(くそ!

 攻撃さえ、当たれば…)

倒せるという保証は何処にも存在しない。

その時2機のスカイファイターが飛んできて

クレスの援護を始めた。

が、状況は変わらなかった…。

(敵が速過ぎて

 スカイファイターの攻撃も当たらないのだから無理も無い…)
 
「これでよしっと!

 タカマツ、ちょっと行ってくるぞ」

「行くって何処へですか?」

「ウルトラ戦士の援護だよ…」

「は…?

 それはいくらなんでも無茶じゃ…。

 あ〜、行っちゃった…。

 大丈夫かな…、

 あんな見たことも無い機体で…」

「きっと大丈夫よ」

「何で?」

「ユキムラ博士から聞いた事があるの。

 昔、史上最年少でTSFの特選部隊に抜擢された超天才がいた。

 その凄まじい技術力と戦闘機操縦技術は他の追随を許さなかった。

 その高い操縦技術はすぐに機体性能までをも越えてしまった。

 そのためその男は持ち前の技術で機体を改造した。

 その男と機体はその技術と性能で無敗を誇ったため、

 『飛竜』という異名が出来た。

 その男が引退した後、
 
 機体を乗りこなせる者は1人としていなかったため機体は封印された」

「まさか…、

 その男っていうのは…」

「その男の名は…」

そこまで言うとマツガヤは

ナリタ博士を乗せた戦闘機が飛び立ったゲートを無言で見つめた。
 
「たい…、長官!

 来ましたよ!」

「ついに目覚めたか…。

 伝説の飛竜…、

 ナリタ・ユキスケ!」

 

「デジタルワールドに到着しました」

「本当に着くとは…」

「信じてなかったんですか。

 (気持ちはわかるけど)」

「で、どうするんだ?

 これから…」

「どうしよう?」

「隊長…」

「そりゃ無いでしょ…」

「ここから東に向かえばファクトリアルタウンがあるわ。

 其処がヴァンデモンの本拠地よ」

「詳しいな、あんた」

「伊達に数百年ここで暮らしてないわよ」

「そりゃ凄いな…」


 
『飛竜』はウォーグレイモンに素早く正確な攻撃を与えていた。

さらにその後にスカイファイターが続いて攻撃した。

クレスは…、

何の役にも立っていなかった。
 
「博士達、凄い…」

「流石は『飛竜』…」

「ナリタ博士だけ…?」

「ええまあ…、

 そういえば他の支部の方は?」

「かなり押されてるようですね。

 各支部が総力戦を挑んでるようですが…」

「僕達平研究員にはTSFの勝利を祈るしか出来ませんよ」

「まあね…、

 あら?」

「どうしました?」

「大気圏外から未確認物体が地球に接近してるわ…」

「ええ!

 このややこしい時に…」

「あ、未確認物体が全部地球に落下した…」

「はあ…」

「って、これって!」


 
各地に落ちた未確認物体から巨大な宇宙人が出現した。

さらに日本支部上空に謎の文字が浮かび上がった。

それを見たクレスは安心したように胸を撫で下ろした。

(やっと援軍が来たか…)

『遅くなったが助けに来たぞ!

 各地のデジモンは任せてもらおう。

 ギャラクシーポリス隊長、ウルトラマンライラス』

そして現実世界の反撃が始まった…。
 
「各地にウルトラ戦士が出現!」

「最高の味方ですね…」

「でも、何故フロスは来ないのかしら?」

「最近激しい戦いが続きましたからね…、

 体の具合が悪いんじゃないですか?」

「それもそうですね」

納得するなよ。
 
「ここか」

「ええ」

「随分と大きいな…」

「ここから先は二手に分かれよう。

 一方はガクラ、チシブキ、ホシカワ。

 もう一方は私、フルカワ、サイゴウだ」

「ちょっと待ってくださいよ!

 何で俺がチシブキやこいつと同じグループなんですか!?」

「何で其処まで嫌がるんですか?」

「そうそう。

 私は道案内も出来るし、

 襲い掛かってくるデジモンを

 あんたの代わりに往生させてもいいし…」

「(さり気無く物騒な発言があったな…)

 …ひょっとしてきつい役を押し付けようとしてません?」

「気のせいだ!」

「おい、チシブキ。

 ビームバスーカ忘れてぞるぞ」

「あ、すみません。

 えっと、使い方は…、

 …しゃらくせーーーーーーー!!!!!!!!

 ヴァンデモン!

 とっとと出てこいやーー!!!

 俺様が直々に成敗したるわーーーー!!!!!」

「あたしも行くよ!!!!!!

 まってろよ仮面吸血鬼!!!!!!!」

「じゃあ、ガクラ隊員。

 チシブキとこいつの面倒見てくれ」

「やっぱりきつい役押し付けてるでしょ」

 

「ミサイル発射!」

猛スピードで飛ぶ『飛竜』は

ウォーグレイモンに素早く近づくと至近距離からミサイルをぶっ放した。

流石のウォーグレイモンもこれは避けることが出来ずに後ろに倒れこんだ。

ちなみにクレスはほとんどいないも同然だった
 
「うおりゃあああああああ!!!!!!!」

ドゴオオン!!!!!

「逝けーーーーーーーっ!!!!!!!」

ドカバキボコ!!!!

「トドメじゃああああああ!!!!!!!」

バコォオオン!!!!

「昇天せいやーーーーっ!!!!!!!」

ズゴドガメキ!!!!

「くたばれえええええええ!!!!!!!」

バアアアン!!!!!

「死ねーーーーーーーっ!!!!!!!」

グチャグシャ!!!!

「もう嫌じゃあああああ!!!!!!!!!!!」

最後のガクラの叫びが一番大きかったという…
 
「ガクラに悪いことしたかな…」

「細かいことは気にするな。

 目の前の敵が優先だ!」

「そうでした、ってうわ!」

ドゴッ!!

「よそ見しないで!

 ガクラ隊員なら大丈夫!

 史上最強のボディガードがいるんだから!」

「同時に史上最強の御荷物でもあるんだよな…、

 敵味方の区別がつかないし…」

「いざとなったらぶん殴って気絶させれば大丈夫だろ!

 今はこちらの事を心配しろ!」

えらい扱われようである。

ちなみにセイコは忘れられていた。
 
「右だ!」

『ユキムラ君!

 ミサイルを撃ち込むからどけ!』

『了解!』

ちなみにクレスはもう別の場所に行っていた。
 
「はあはあはあ…」

「情けないわね。

 それでも男?」

「休憩無しであんなに大暴れできるあんたらの方が異常なんだよ…」

「そんなに暴れたかな?」

「デジモン数万体再起不能にしておいてよく言うよ…。

 そういえば、チシブキは?」

「とっくに行っちゃったわよ」

「あ〜、くそ!」


 
「ウルトラ戦士行っちゃいましたよ」

『まあ、あまり役に立ってなかったからな…』

『そういうことだ

 そんなくだらない事より目の前の敵をなんとかしろ!』

えらい言われようである。
 
「随分と警備が薄い道ですね」

「う〜む、罠かもしれんな」

「何でですか!?」

「あ、僕が偵察に行ってきましょうか?」

「気をつけて…」

少しは止めろよ。
 
「…こいつら全部チシブキが倒したのか?

 ほとんど1歩ごとに数十体は倒してるぞ…」

「強いわね〜、

 今度喧嘩売ってみようかな」

「やめとけ…。

 チシブキはお前より強い(かもしれない)」

「喧嘩ってのは相手が強ければ強い程燃える物なの!」

「喧嘩論語ってないで早く行くぞ!」


 
「特に罠は無さそうだな…」

サイゴウはやけに警備が手薄な道を慎重に歩いていた。

実は警備のデジモンは1匹残らず

暴走するチシブキを止めるのに回されていたのだが…。

「…何じゃこりゃ?」

サイゴウはやたらと大きい扉を見つけた。

「随分とでかい扉だな…、

 何の扉だ?

 鍵はかかっていないみたいだな…」

サイゴウはその扉を開けてみた。

「こ、これは…」

そこにはかなり頑丈な作りの巨大なドーム状の空間が広がっていた。

「もしかして…、

 これがソウタ君が言っていた…」

「バトルアリーナだ…」

「誰だ!」

声がした方向には1人のいかにも怪しい格好の男が立っていた。

「私はヴァンデモン…。

 ファクトリアルタウンの警備を全滅させたのは褒めてやろう…」

「いや、それやったの多分チシブキ達だと思います…」

「お前もその仲間の1人だろうが…」

「そうか…、

 お前があの子が言っていた仮面吸血鬼か!?」

「出来れば名前で呼んでほしいが…、

 今はそれは関係ない…。

 お前には私の尖兵を3体も倒されている…。

 計画の障害になりそうな者はここでつぶす!」

「よし、

 フロス!」

その瞬間サイゴウの体を光が包んだ。
 
「サイゴウ隊員遅いな…」

「何かあったんでしょうか?」

「行って見よう」

偵察の意味あったのか?

「…これは何だ?」

「随分と大きい扉ですね…」

「中はどうだ?」

「鍵がかかってるみたいですね…。

 あら?」

「どうした?」

「何か聞こえませんか?」

「へ?」

『うおおおおおおおおお!!!!!』

「あ、本当だ…」

「この声って…、

 もしかして…」

「ああ、もしかしなくともあいつだ…」

「敵は何処じゃああああああああああ!!!!!!」

「来た…」

「どうします?」

「とりあえず殴っとけ」

「了解」

ズバゴ!

ボグッ!
 
「はあ…、

 はあ…、

 やっと追いついた…」

「本当にだらしないわね。

 それでも本当に地球を守ってるの?」

「異様な体力を持つ化け物凶暴女に言われたくない…」

「何だってえええええ!!!!」

メリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリメリ!!

「あがが…、

 誰か、助け……」

「何やってんだお前ら」

現在の状況、

意識不明者約2名。
 
フロスはエネルギー弾をヴァンデモンに撃ちこんだ。

しかしヴァンデモンは黒い蝙蝠を出してエネルギー弾を防いだ。

蝙蝠はエネルギー弾を撃破するとそのままフロスに向かった。

フロスは咄嗟に避けると再びエネルギー弾を発射した。

ヴァンデモンは避けきれずにエネルギー弾が直撃した。

「ふむ、流石に強いな…、

 サクヤモンを倒しただけの事はある」

自滅だった。

「そろそろ本気を出すか…」

随分と本気を出すのが早いですな…。

ナレーションが呑気な突込みをしている間に、

ヴァンデモンの体は光を発しながら大きくなり

シルエットも変化していった。

ついにヴァンデモンの体は天井に達した…。
 
「今の音は何だ!?」

「何かが崩れたようです!」

「そんな事は解ってるんだよ!

 私が聞いてるのは何が何で崩れたという事だ!」

「解りませんよ!」

「そうか…」

「サイゴウ隊員は大丈夫でしょうか…」

「多分大丈夫だ!」

「隊長!

 多分って何ですか!?

 多分って!」

「多分とは大抵、大方、おそらくという意味を持つ…」

「言葉の意味聞いてるんじゃ無いんですよ!

 サイゴウ隊員が大丈夫だって言う根拠を言ってくださいよ!」

「私の第六感がそう言っている!」

「そんなのあてになりませんよ!」

「そんなのとはどういう意味だ!」

「…大丈夫なの?

 こいつら…」

ホシカワに言われるようではおしまいである…。
 
フロスは巨大化したヴァンデモン改め

ヴェノムヴァンデモンのサイズに合わせて巨大化した。

2人ともその際に自分の頭の上の天井を突き破ったが気にしていないようだ。

ヴェノムヴァンデモンが発射したエネルギー弾を

フロスはバク転しながら避けようとした。

エネルギー弾は真っ直ぐ飛んで行くので

真後ろに逃げても意味が無かった…。

フロスは見事に直撃してぶっ倒れた。

しかし、すぐに立ち上がるとお返しとばかりに

ヴェノムヴァンデモンにエネルギー弾の2連発を浴びせた。

ヴェノムヴァンデモンはすぐにエネルギー弾を撃ち返した。

2つのエネルギー弾は衝突して爆発を起こし、

その爆風で2人とも後ろに倒れこんだ。

ファクトリアルタウンはすでにズタボロだった…。
 
「隊長!

 大丈夫ですか!」

「な、なんとかな…」

「いきなりでかいデジモンとフロスが出てくるとは思いませんでしたね…。

 しかも大暴れするし…」

「こらあ!

 そこのでかいツートンカラー女!

 ヴァンデモンをしばき倒すのはあたしだからね!

 邪魔しないでよ!」

「…どうします?」

「どっかに縛っとけ…」

「殺されますよ…」

「そんなことより、

 チシブキとガクラはどうした?」

「さっきのドサクサでどっかに行っちゃいました…」

「まあ、あいつらなら大丈夫だろ」

あんまりである。

現在の状況、

意識及び行方不明者約2名。
 
「…あれ?

 此処は、何処…?

 俺は、ガクラ…。

 今、目の前をでかい川が流れていたような…」

明らかにやばい物を見てきたガクラが起きて見た物は…、

廃墟寸前の巨大工場…、

やたら大きい異形の巨人…、

そいつに立ち向かいながら

やたら激しいアクションでせっせと工場の廃墟化を進めるフロス…。

「…何、この状況」

ちなみにチシブキの意識はまだ闇の中だった…。
 
「フロス苦戦してますよ。

 どうしましょうか?」

「くそ…、

 フルカワ!

 行くぞ!」

「了解!

 …って何処に行くんですか!?」

 
フロスは肉弾戦に持ち込んだが

ヴェノムヴァンデモンにフロスの攻撃は全く通じなかった。

フロスは反対に投げ飛ばされてしまった。

ついにカラータイマーが鳴り出した。

まさしくゴウダのミサイル誤爆など

比較にならないほどの絶体絶命のピンチである。

「そろそろ終りだな…」

ヴェノムヴァンデモンはトドメをさすために

ゆっくりとフロスに近づいていた。

その時、小さな爆発音が響いた。

「此処で負けたらTSF実動部隊として末代までの恥だ!!!

 撃て!!!!!!!!」

「了解!!!」

ゴウダとフルカワの射撃が

ヴェノムヴァンデモンに直撃したのである。

「効くか、そんな物…」

「何!」

「テリブルシューターが効かない!?」

「今の私の体はただの殻に過ぎない。

 本体はこの殻の中にあるのだ。

 本体を攻撃しない限り私は倒せない。

 だが、この殻を破壊することは出来ない。

 つまり、私を倒すことはお前らには不可能だ」

自分の弱点を簡単に話すなよ。

「そんな…」

「くそ…」

 

「くっそ〜、
 頼りのチシブキは気絶してるし…、

 どうすれば…」

そんな物頼りにする時点で終りのような気がする。

「ビームバズーカはチシブキの指紋認証が必要だし…。

 待てよ…、そうだ!」

ガクラはある可能性を見つけ、

チシブキとビームバズーカを抱え挙げた…。

「今はナリタ博士の技術力に賭けるしかない…」

 
突然ヴェノムヴァンデモンの殻の一部が爆発した。

「何!?」

爆発があった所の殻は砕けて

本体であるガス状の生命体が見えていた。

そしてガクラの声が響いた。

「今だ!!

 本体を撃て!!」

ガクラは気絶したチシブキの指を

ビームバズーカの指紋認証装置に押し当てて安全装置を解除し、

チシブキの指を操作して引き金を引いたのである。

こうしてガクラにビームバズーカが撃てたのだ。

ちなみにチシブキはその直後に目を覚まし、

いきなり暴走を始めてガクラはえらい目に会うがそれはまた別の話。

(おい!?)
 
フロスはすぐに腕を胸の前で組みエネルギーをため始めた。

そして徐々に肘から手を離すように動かしXの形に組んだ。

その瞬間フロスの腕からXの形をした破壊光線

ティエシウム光線が発射された。

(この光線は日常生活ででないように

 1度エネルギーをためなければならないので、

 発射するのに時間がかかり威力の割りに使い勝手は悪いらしい…)

光線はヴェノムヴァンデモンの本体を直撃し、

大爆発を起こした。

現実世界侵略を企む吸血鬼、

ヴァンデモンの最後であった…。
 
「世界各地のデジモンに異変発生!

 光を発しながら人間に戻り始めています!」

「マツガヤさん、

 どういう事なんですかね…」

「多分、

 実動部隊が勝ったんじゃないかしら…。

 ヴァンデモンが倒れたので
 
 洗脳が解けて人間に戻ったって所ですね…」

「終わったんですか…?」

「終わったんです…」


 
「デジタル(電脳世界)の覇者が

リアル(現実世界)にまで手を出して破滅する、か…。

 子供を利用する最低の侵略者らしい末路だな…」

「そうですね…

 ところで他の隊員達は…」

その時、

「お〜い!」

という声が聞こえてきた。

「来たみたいですね」

「ああ」

「隊長、俺達放っといて逃げるなんて酷いじゃないですか」

正論である。

「ははは、気にするなガクラ。

 お前のおかげで勝てたんだからな」

「あ、そうだ。

 サイゴウ隊員とチシブキ隊員は?

 それからビームバズーカは?」

「ああ、もうすぐ来ますよ。

 あの後チシブキが暴れだしたんで
 
 そばの鉄パイプで脳天ぶん殴っといたんです。

 それから目を覚まさなくて
 
 偶然近くにいたサイゴウに運んでもらったんですよ。

 ビームバズーカは俺が持ってます。

 チシブキと一緒に運んで暴走されたらかないませんからね」

「そりゃそーだ」

 

その後彼らはディメンションシップに乗って現実世界に帰還した。

それを迎えた長官の言葉、

「よくやった!」

はシンプルながら彼らへの最高の賛辞だった。

ウルトラ戦士達はクレスを含めて帰った後だったが、

その空にはフロスに向けたメッセージが残っていた。

『フロス隊員へ。

 今回の活躍は見事だった。

 これからもこの星を数々の脅威が襲うだろう。

 君にならこの星をまかせられそうだ。

 ギャラクシーポリス隊長、ウルトラマンライラス』


 
後日談。

「そういえば博士?」

「何ですか?」

「何でナリタ博士って特選部隊辞めちゃったんですか?」

「司令室を自分の発明品置き場にして追い出されたのよ」

「…」



おわり



出演
隊長 ゴウダ・テツタロウ
副隊長 フルカワ・トモミ
隊員 ガクラ・アキラ
隊員 サイゴウ・ツヨシ
新入隊員 チシブキ・モンザエモン
長官 シラガミ・クロキチ
博士 ユキムラ・フユコ
TSF新兵器開発部門担当者 ナリタ・ユキスケ
助手 タカマツ・ヒデト
少女 ホシカワ・セイコ
ウルトラマンクレス カツラ・タケシ
他ウルトラ戦士大勢



この作品は匿名希望さんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。