風祭文庫・ヒーロー変身の館






「デジタルからの物体X」
(第2話:TSF壊滅)



原作・匿名希望(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-179





時は西暦2XXX年、地球では怪獣や宇宙人の襲撃が多発していた。

それらの事態は国連軍では対処しきれないと判断した人類は

特殊科学戦隊TSFを結成し、迫り来る脅威に立ち向かっていた。
 
フロス及びクレスはヴァンデモンからの尖兵セントガルゴモンを退けた。

しかし、ヴァンデモンは新たな刺客を差し向けた。

そして、2体の刺客がTSF日本支部を攻撃するのは時間の問題であった。
 


都内某所喫茶店。

「で?何でフリーライターやってるんだ?

 前に来た時はTSFの新入隊員じゃ無かったか?」

「記憶操作は面倒なうえに金がかかりますから

 TSFの隊員以外の職業にすることになったんです。

 それである程度無関係な人と話をしてもおかしくない

 フリーライターを選んだんですしたんです」

「…なるほど。

 何処も不況というわけか…」

「まあ、半分は先輩のおかげなんですけどね…」

「なんのこっちゃ」

「細かいことは気にしないでください」

「とにかくかなり危険な状況というわけだ。

 じゃあ、俺は基地に戻るから」

「あ、ちょっと、僕も一緒に…」

「何でだよ」

「何か嫌な予感がして…」

 

TSF日本支部。

「誰だお前?」

「サイゴウ先輩の後輩でフリーライターのカツラと申します。

 このたびサイゴウ先輩の許可を頂きまして

 インタビューをすることになりました。

 よろしくお願いします!」

「かなり強引でしたけどね…。

 (しかし、嘘つくの上手いな…)」

「まあ、インタビューくらいならいいだろう。

 とりあえずは長官に会ったらどうだ?」

「あ、はい…」

「ガクラ連れてってやれ。

 ここの警備システムは必要以上に厳重だからな、

 慣れてないと危険だ…」

「了解」

「そういえば隊長…、

 チシブキはどうしたんですか?」

「ああ…、将門の首塚の所…」

「何でまた…」

「今博士が開発している新兵器の実験だと…」

「可哀想に…」

「無事を祈ろう…」

えらい言われようである。

「そういえばサイゴウ…」

「何ですか?」

「ユキムラ博士が呼んでたぞ」

「は?」

「で、何を聞きたいんだね?」

「え〜っと…。

 (まずは無難に)

 まず実動部隊の評価はどうですか?」

「ふむ…、まずまずかな。

 ただ1人やばい奴がいるのでね…」

「やばい奴?」

「チシブキ君だよ」

「え、でも真面目そうな人でしたけど…」

「解離性アイデンティティ障害者だからね…」

「あの」

「何だね?」

「トイレ行ってきていいですか?

 (それに本部にも報告しとかなきゃ…)」

「ここを出て…」

「博士、前から気になってたんですが…、

 何を作ってるんですか?」

「まあ、出来てからのお楽しみだよ…」

「博士、用ってなんですか?」

「貴方この前の戦いの時途中で戦線離脱してたわね。

 その時地上で何か変なことは無かった?」

「さあ、良く覚えてません…」

「あの戦いの後、

 あの周辺のデジタル回線に異常が相次いで見つかったの…。

 何か見てるかもしれないと思ったんだけど…」

「コンピューター生命体のデジモンが実体化した際の影響ですかね…」

「その可能性もあるわね」

「博士、大変です!!」

「マツガヤさん?

 どうしたの?」

「基地内のプログラムに異常発生!

 システムが完全にダウンしました!」

「何だって!?」

「来たようね…」

「来たって何がですか!?」

「おそらくは…、

 デジモン…」

「あの…、

 早く脱出しないとエレベーターシステムが完全に停止しちゃいますよ…」

「あ!

 そうだった!」

「あのね…」
 
「長官!

 もうちょっと早く走ってくださいよ!」

「ガクラ隊員が早すぎるんだよ!!」

2人ともトイレに行った民間人(実は違うのだが)をすっかり忘れていた。
 
「博士!

 サイゴウ隊員!

 急いでください!

 エレベーターシステム停止まで後12分34秒なんですよ!」

「何で秒まで解ってるんですか!」

「細かいことは気にしないで!」

「気にしますよ!」

サイゴウ達は漫才をしているうちに目的地についていた。

「停止まであと1分23秒!」

「他の皆はもう脱出したみたいですね」

「さ!早くエレベーターに!」

「あっ!!!!」

「博士?

 どうしましたか?」

「このエレベーター壊れてて一度に2人しか乗れないんだった…」

「そんな大事な事もっと早く教えてくださいよ!!」

「忘れてたんだから仕方が無いでしょ!!!」

「あ〜、もう!

 博士とマツガヤさんが先に行ってください!

 僕は後でなんとかします!」

「何をどうするんですか!?」

「気にしないでください!!」

「じゃぁ、お先に」

「博士!

 この状況かなり危ないですよ!

 早く脱出しましょう!」

「そうですよ!」

「慌てるな。

 この研究室のデジタル回線はすでに遮断してある。

 非常電源も後1年はもつ。

 ここにいた方が安全だ」

「そりゃそうですが…」

「それに、こいつがもうすぐ完成するしな…」

「ははは…」

「さてと…、

 博士達が行ったことだし…」

サイゴウは腕をクロスさせようとした時、

謎のエネルギーが突如出現した。

「な、何だ!?」

さらに謎のエネルギーから何かが凄い速度で飛び出してきた。

サイゴウはそれを間一髪でよけた。

「デジモンか!?」

飛び出した物は壁に激突した。

立ち上がったそれは黄色い色をした巫女の姿をしていた…。
 
「おかしい…、

 誰もいないなんて…。

 何が起きたんだ…?」

トイレの中でギャラクシーポリス本部と連絡をとっていたカツラは、

ほぼ全ての機能を停止した基地の中を歩いていた。

気づかない方がおかしいと思う。

カツラは背後から突然声をかけられた。

「あの、すみません」

カツラがその声がした方向を見ると、

紫色の衣装を着た巫女が立っていた。

凄い怪しい格好なのだがカツラは気がついていなかった。

(多分地球では良くある格好なんだろう…)

カツラが読んだ資料には地球の事がどう書かれているのか知りたい物である。

「この辺で私と色違いの巫女をみませんでしたか?」

「いや、見てませんよ。

 何色ですか?」

「黄色です。

 途中ではぐれちゃって…」

「誰だお前は!」

「あたしはサクヤモン!

 昨日セントガルゴモンを倒した奴をとっとと出せ!」

「仲間の敵討ちか!?」

「いや違う!」

「じゃあ何故そいつを探す!」

「ここの所ずっとじっとしてたんで苛々してんだ!

 それで誰かぶっとばしてストレス解消しようと思ってな!

 どうせぶっとばすなら強い奴の方がいいだろ!」

「くそ!

 よ〜し…」

そしてサイゴウは腕を胸の前でクロスさせた。

「フロス!」

 

「いや〜見なかったですね。

 見かけたら連絡します。

 名前は何ていうんですか?」

「名前ですか?

 それは…」

そういうと巫女は突然カツラに殴りかかった。

「どわ!

 いきなり何ですか!?」

「私はクズハモン。

 現実世界を攻撃しに来たデジモンです」

「何だって!

 じゃあ黄色い奴とはぐれたっていうのは!?」

「あ、それは本当。

 実はここに来る途中勝手に何処かに行っちゃって。

 そいつ、いつも勝手に行動してるんです」

「そんなんで現実世界を攻撃しに来たのか?」

「そう」

「…現実世界をなめるなーーーーっ!!!」

カツラは叫ぶとポケットから

謎のスティックを取り出して胸の前にかざした。

「クレス!」

フロスは登場するとすぐサクヤモンに

至近距離からパンチを打ち込んだ。

さらにキック、

チョップ、

背負い投げ、

かかと落とし、

正拳突き、

張り手…、

とにかく思いついた技全てを打ち込んだ。

「その程度なの?」

サクヤモンはあまりダメージを

「こんどはこっちの番!」

そう言うとサクヤモンはフロスにパンチを打ち込んだ。

その勢いでフロスは壁を幾つかぶち抜いて

4番格納庫にまで飛ばされた。

「やりすぎたかな…」

しかしフロスにダメージはあまり見られなかった。

「随分とうたれづよいわね…」

(そりゃ、

 いつもTSF隊長の下手なミサイルを打ち込まれれば
 
 撃たれ強くもなるわな)
 
クレスはクズハモンの攻撃を必死で防御していた。

クズハモンに隙はまったく無かった。

(強いな…、

 ってどわ!

 あ、危ない所だった…)

「そりゃ、いつもサクヤモンとコンビを組まされれば強くもなりますよ」

(どういう相方なんだよ…)

「そりゃあ…、

 喧嘩っ早くて乱暴者で…」

(隙あり!)

クレスはクズハモンが話し始めた隙にエネルギー弾を撃ちこんだ。

しかし、クズハモンはそのエネルギー弾を避けた。

(何だって!?)

「正義の味方にしては姑息な手段ですね」

(うるさい!

 基地を襲った奴に言われたくない!)

「プログラムを壊すのは計画には入っていなかったんだけどね…、

 サクヤモンが勝手に…」

(チームワーク最悪だな…)
 
フロスとサクヤモンの死闘は続いていた。

戦場になっている4番格納庫はすでにメチャクチャだった。

壁はひびだらけで所々穴が開いていた。

数台置いてあったスカイファイターは見る影も無かった。

互いに攻撃で吹っ飛ばされるたびに何かにぶつかるのだから当然である。

やはりこいつらは狭い所で戦うべきではない。

「なかなかやるわね…

 こうなったら最後の手段!

 食らえ!凶器攻撃!」

サクヤモンはそう言うと杖を構えて

フロスに飛び掛り野球のフルスイングの要領で

思いっきりぶん殴った。

(最後の手段が凶器攻撃かい…)

殴られたフロスは水平に吹っ飛ばされ

壁を10枚程ぶち抜いて飛んでいった。

「これは効いたでしょ!」

流石のフロスもこの攻撃は効いたらしい。

「勝った…。

 さて、もう1体を探して…」

次の瞬間凄まじい轟音が響いた。

やっとの事で立ち上がったフロスが見たのは、

天井が崩れ落ちた4番格納庫であった…。
 
(何だったんだ?

 今の音は…)

「余所見をしてる場合なんですか?」

クレスが音に気を取られていた隙に

クズハモンは杖で思いっきり殴った。

(ぐわっ!)

クレスは防御しそこねて脳天に一撃をくらい倒れた。

「これで終りですね…」

そう言ってクズハモンが杖を振り上げた時、

突然爆発がクレスの目の前で起こった。

クズハモンは爆発の勢いで倒れ、

少しずつ人間の少女の姿に戻っていった。

(な、何が起きたんだ…?)

その時、大きな叫び声が聞こえた。

「うおりゃああああ!!!

 敵は何処じゃあああああ!!!!!」

(この声は!?)

クレスが声のした方を向いた時、

そこには、先っちょが光る太い金属製の謎の物体を肩に担ぎ、

奇声を発する男が走って来た。

怖い光景だった…。
 
フロスは元4番格納庫だった所を調べてみた。

どうやらさっきから派手に壁をぶっ壊していた為に

壁が崩れ落ちたらしい。

サクヤモンはすでに人間に戻った状態になると

失神して崩れたコンクリート片の下敷きになっていた。

フロスはすぐに少女を掘り起こしたが

命に別状が無いようなのでそこら辺に寝かせた状態で立ち去った。
 
(あの人は確か…、

 チシブキ隊員?)

チシブキは肩に担いだ謎の物体から謎のビームを乱射していた。

どうやらクズハモンに直撃したのはこのビームだったらしい。

「おらおらおらーーーーっ!!!

 とっとと出てきやがれーーーーーっ!!!

 この俺様が往生させたるわーーーーっ!!!」

何か物騒な叫びである。

こんなんで出て来るのは相当の馬鹿だろう。

まあ、すでにクズハモンは謎のビームの直撃を受けて

倒れているから出ようにも出られないんだが…。

しかしチシブキは倒れている少女には気がついて無いようだ。

クレスは危険を感じて瓦礫の陰に隠れた。

「しゃらくせーーーーっ!!!!

 隠れても無駄じゃーーーー!!!!!」

そういうとチシブキはビームを辺り一面に乱射し始めた。

クレスはなんとか全てのビームを避けた。

「見つけたぞーーっ!!!

 逃げても無駄じゃあーーーーーー!!!」

(違う!!!)

「うおおおおおーーーーっ!!!

 くたばれーーーーーっ!!!!」

(駄目だこりゃ…、

 先輩も凄いのと仕事してるな…。

 ってどわ!!!!)

ビームはクレスを直撃した。

(くそ、ひとまず逃げよう)

クレスは逃げ出した。

「逃がすかーーーーーっ!!!!!」

チシブキはその後を追った。
 
「ふむ。

 威力はまずまずだな…」

「(あれで!?)

 あ、博士」

「なんだ?」

「あそこに女の子が倒れてますよ。

 今回、デジモンにされていた子でしょうか?」

「そうだろうな。

 よし、すぐ研究室に運ぼう」

「治療しなきゃなりませんしね」

「いや違う。

 ビームバズーカにはまだ改良の余地があるからな。

 そのためにはデジモンの事をもっと解析しなければならないのだよ」

「そうですか…。

 (可哀想に…)」

 
この後チシブキは壁に上半身をめり込ませた状態で

気絶している所を発見された。

何故そういう状態になったかは定かでは無いが、

何故か首筋に回し蹴りを食らったような跡が残っていた。

尚、TSF日本支部はこの戦いで壊滅的なダメージを受けたという。
 
「あの2体を倒すとはなかなかやるな」

「クズハモンはともかくサクヤモンは我々の中では最強でしたからね」

「そのわりにはうれしそうだなお前。

 ところで、次の作戦の準備はどうなっている?」

「大丈夫です。

 あいつに倒されたデジモンは
 
 さっき全回復及び最終進化が完了しました」

「そうか。

 では奴らを送り込む準備が出来たらすぐにでも開始しろ!」

「はっ!」



つづく



出演
隊長 ゴウダ・テツタロウ
副隊長 フルカワ・トモミ
隊員 ガクラ・アキラ
隊員 サイゴウ・ツヨシ
新入隊員 チシブキ・モンザエモン
長官 シラガミ・クロキチ
博士 ユキムラ・フユコ
研究員 マツガヤ・ミツル
TSF新兵器開発部門担当者 ナリタ・ユキスケ
助手 タカマツ・ヒデト
フリーライター カツラ・タケシ
少女 ウスイ・シズカ
少女 ホシカワ・セイコ



この作品は匿名希望さんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。