風祭文庫・ヒーロー変身の館






「デジタルからの物体X」
(第1話:電脳からの侵略)



原作・匿名希望(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-178





時は西暦2XXX年、地球では怪獣や宇宙人の襲撃が多発していた。

それらの事態は国連軍では対処しきれないと判断した人類は

特殊科学戦隊TSFを結成し、迫り来る脅威に立ち向かっていた。
 


「博士…」

「チシブキ隊員?

 こんな夜中にどうしたの?」

「眠れなくて…、

 眠り薬か何か有りませんか?」

「どうしたの?」

「この前のあれであの事件の事を思い出しちゃって…。

 博士も覚えているでしょ?

 黒い着ぐるみ事件…」

「ああ、あれね…。

 そういえばあの事件、

 まだ終わっていないかもしれないわよ」

「え!本当ですか!?」

「断定は出来ないけどね…。

 それにしても何で?」

「いや、この前出た怪獣が

 『ティエフマン』っていう特撮ヒーロー番組に出て来る

 イジョーズっていう怪獣にそっくりなんですよ。

 それで『ティエフマン』関連の事件を思い出しちゃって…」

「そうなの…。

 似てるといえばあの黒い着ぐるみ、

 かなり昔のゲームに出てきたモンスターによく似てるらしいの。

 『デジタルモンスター』っていうゲームの…」



都内某公園。

1人の制服警官がパトロールをしていた。

すると10代前半と思われる少年が1人よろめきながら近づいてきた。

「君は誰だ?

 君の親は?」

「…気…をつけ…。

 …侵略…が始ま…」

少年はいきなり倒れた。

「おい!

 どうしたんだ!君!

 侵略って何の事だ!?」

「ヴァ…ン…デモ…ン…」

そこまでいうと少年は気を失った。

その後少年はTSF治療センターに運ばれた。



TSF日本支部。

「その少年の容態は…?」

「未だ昏睡状態が続いています」

「その少年は何て言ったんだっけ?」

「良くは聞き取れませんでしたが、

 ヴァンデモンと言っていたそうです」

「ヴァンデモンか…」

「それが一体何を意味するのか。

 それが問題だな」

「少年が目を覚ましたら聞くか」

「その少年は酷く衰弱しています。

 暫くは治療センターで治療を受けることになりそうです」

「う〜む…、

 その侵略がどういう物なのか解らんが、

 念のために明日から警戒した方がよさそうだな…」

「了解…」

 

それから数日が過ぎた。
「隊長!」

「どうした!?」

「首都上空に異常なエネルギー反応を確認!

 ユキムラ博士の解析だと

 黒い着ぐるみ事件の時のエネルギーと一致したそうです!」

「何!?

 TSF出動!」

「了解!」

 

丁度その頃。

都心上空で発生したエネルギーは急速に拡大を続け、

そこから1つの巨大な影が地上に降り立っていた。

そして、TSF日本支部治療センターでは謎の少年の意識が戻っていた。
 
都心に降り立った巨大な影の正体は身長70mに達する巨大なロボットだった…。

『ななななな、なんじゃありゃーっ!!!』

『おおおおおお堕ちケツ…、いやオチ付け!

 ガがガがGAがガクラ!!!!!』

「隊長が落ち着いてくださいよ!!」

『大きいですね』

「いや、それは冷静すぎです」

『目測70m。

 +−30mって所ね』

「なんてアバウトな…。

 で、どうします?」

『さあ…』
 
丁度その頃、TSF日本支部では…。

「ここは…」

「TSF本部だ。

 私はTSFの長官のシラガミという。

 君に質問がある。

 君は誰だ?

 侵略とは何の事だ?」

「ぼくはオトナシ・ソウタ…。

 侵略というのは…」

 

『とにかくあたって砕けろ、よ』

「それしかないですね…」

『2台しかまともに戦えないんだから。

 私達がしっかりしないと』

「そういえばチシブキの方は大丈夫ですか?

 この前乗せたら曲芸飛行やらかして

 上層部から文句言われたばかりですよ」

『大丈夫。

 基地の護衛ってことにしておいたから』

「丸腰で?」

『念のために日本刀持たせたけど』

「役に立つんですか…?」



微妙である。

「まあチシブキのことだから、

 刀抜いたら性格が変わったりしてね」

『この前真剣での居あい抜き見せてもらったけど、

 性格は変わらなかったわよ』

「あ、そう…」

『チャンバラは強いらしいわ』

「…銃も結構強いでしょ」

『私もそう思う』

会話は果てしなく脱線して行った

もはや現実逃避の域に入っている。

『あ、通信が入ってる…』

「本当ですね」

『え〜つと…、

 あ、長官』

『何!長官!!』

「わ!隊長!

 いきなり話に参加しないでくださいよ!」

『五月蝿い!!

 話が聞こえないじゃない!!!』

『例の少年の意識が戻った。

 どうやら相当危険な計画が進行しているらしい!』

「危険な計画?」

『そうだ!

 何でもヴァンデモンという奴がこの世界の侵略を企てているらしい!

 今回の敵やこの前の黒い着ぐるみはそいつの尖兵らしいんだ!』

『何ですって!』

『そいつらはそのままでは現実世界に存在することが出来ないらしい。

 そのためにこの前は人間の体をコピーしていた、

 だが今現れたセントガルゴモンという奴は違う。

 人間の子供を変化させたうえで洗脳した怪物なんだ』

『…そいつらは子供をなんだと思ってるんだーーーーっ!!!!!!』

「た、隊長落ち着いて…」

『元に戻す方法はあるんですか?』

『洗脳を解いたら戻るらしい。

 ヴァンデモンのはかなり用心深いらしくてな、

 正気に戻った子供が人間の味方をしても大丈夫なように、

 洗脳が解けると人間に戻る仕組みになっているらしい。

 実際例の少年は洗脳が解けた途端に人間に戻ったそうだ』

「…行きましょう!隊長!」

『無論そのつもりだ!!

 身長70mがなんだ!!!!!』

『まだ引きずってたんですか…』
 
気持ちも新たにスカイファイター4機は巨大な敵に立ち向かっていった。

『ミサイル発射!

 衝撃を与えれば洗脳も解けるはずだ!』

「了解!」

『解りました!』

スカイファイターは3機ともミサイルを発射した。

そして隊長が撃った物をのぞいて全部命中した。

しかし、変化は無かった。

その上お返しとばかりに向こうからもミサイルが発射された。

『かわせ!』

しかし、ミサイルは誘導式だったらしくスカイファイターを追いかけてきた。

「くそ!」

『なんとか避けろ!』

「出来ればやってます!」

『情けないな、よく見てろ!』

隊長の乗ったスカイファイターは急旋回すると誘導ミサイルを避けた。

そして、目標を見失ったミサイルは

まっすぐサイゴウの乗るスカイファイターに突っ込んでいった。

「しまった!」

「脱出!」

サイゴウはとっさに脱出した。

「危ない所だった…。

 こうなったら…」

サイゴウは空中で腕をクロスさせた。

「フロス!」

その瞬間サイゴウの体は眩い光に包まれた。
 
丁度その頃、某所。

「ヴァンデモン様…、

 あいつで本当にいいんですか?」

「心配することは無いぞ、デビモン」

「いや、私はいいんですが…、

 例の娘がえらい苛つきようで…。

 さっき大暴れしてましたよ。

 どうやらもっと動きたいらしくて…」

「…十分運動しているような気がするが…。

 それからお前」

「あ、はい!」

「止血ぐらいはしておけ。

 さっきから滝のように流れてるぞ…」

「あ、すみま…」

バタッ!

「っておい!!」

 

フロスは登場してすぐセントガルゴモンに飛蹴りをくらわせた。

さらに思いっきり力を込めたパンチを打ち込んだ。

しかしあまり効き目は無かった。

「随分と硬いぞあいつ」

『フロスのパンチが効かないとは…』

『まあ、見た目はロボットだから…』

撃墜された仲間の話題が皆無とはいい度胸である。
 
一方、TSF本部。

「あ、チシブキさん」

「(げっ!)

 タ、タカマツさん…。

 どうしたんですか一体…」

「博士が実働部隊の奴を1人連れて来いって…」

「お断りします」

「そ、そんな!

 後生ですから一緒に来てくださいよ!」

「大体何の用なんですか?」

「今度の新兵器につける安全装置の実験だそうです。

 何でも指紋認証装置だとか…」

「それならいいですけど…」

「ところでその刀は何ですか?」

「あ、これは副隊長が持ってろって言ってたんです」

 

肉弾戦が不利と感じたフロスはすぐに間合いをとり、

エネルギー弾を続けて撃ち込んだ。

しかし、それも効果は全く無かった。

するとセントガルゴモンの体から

無数のミサイルが発射されフロスに迫ってきた。

とっさにフロスは避けるがやはり誘導ミサイルだった。
 
TSF新兵器研究室

「指紋認証完了っと。

 もういいぞ」

「よ、良かった…。

 やっと終わった…」

「で、このデータを記憶させて…」

「それにしても、

 指紋認証だけで何故体に電気ショックを流されなきゃならないんですか…?」

「それは秘密だ」

「…じゃあ、そういうことで…」

 

ついにフロスは追い詰められてしまう。

その背後からは無数のミサイルが迫っていた。

まさに最大のピンチである。

「くそ、フロスを援護する!

 敵のミサイルを撃ち落すぞ!

『隊長は撃たないでくださいね。

 フロスに当たりそうです』

「馬鹿にするな!

 今回こそミサイルに当てる!」

そしてミサイルを発射した。

今回は確かにミサイルにあたった。

明らかにフロスにあたりそうも無いミサイルの集団の中の1つに…。

この爆発でミサイルの軌道が変わり、

まっすぐフロスに突っ込んでいった…。

『…隊長?』

「ちゃんとミサイルにはあたっただろ!」

ちなみにミサイルはフロスを直撃する寸前だった。

その時、空から光る玉が降って来てフロスの前に墜落して爆発した。

「な、何だ!?」

爆風が治まったとき、そこにはウルトラマンクレスが立っていた。

何か酷くダメージを受けている。

よほどきつい道のりだったのだろう。

(ってててて…。

 着地失敗…)

…単に着地を失敗しただけのようだ。

ミサイルはクレスのバリアーで防がれたらしい。

(先輩!助けに来ましたよ!)
 
セントガルゴモンの前で身構えた2人は

そのまま突進すると飛蹴りを同時に食らわせた。

流石のセントガルゴモンも2人同時だと少しよろめいた。

さらに2人同時に渾身のパンチを打ち込んだ。

セントガルゴモンはすぐに2人を引き離すと思いっきり突き飛ばした。

すぐに体勢を立て直した2人に向けて

セントガルゴモンは肩から巨大なミサイルを発射した。

迫る巨大ミサイルに向けて2人は必殺光線を発射したものの、

光線はミサイルに直撃し、大爆発を起こした。

その爆風でフロス、クレス、セントガルゴモンはバランスを崩して後ろに倒れた。

すぐに2人は立ち上がるとセントガルゴモンに飛蹴りを打ち込んだ。

するとセントガルゴモンの動きが止まり体が光を放って小さくなっていった。

気絶した少年をTSFが保護するのを見届けたフロスとクレスは

そのまま空へと飛んで行く… 

「…で、何でお前が地球に来たんだ?」

「いやあ、僕しか暇なのがいなかったんですよ」

「いや、そういう意味じゃなくて…」

「フロス先輩から連絡は入っていたんです。

 『妙な計画が進行しているみたいだ』って…」

「…そうか。

 で、フロスだけじゃ心配だからお前も来たわけだ…」

「そういうことですね」

「はあ…」

「何で落ち込むんですか!?」

「いや、自分の先輩の事を知らずに地球に来る馬鹿をよこされてもな…」

「どういう意味ですか!?」

夕日が沈む公園の中で2人の男が話していた。

彼らの正体が宇宙人と合体している人間と

正真正銘の宇宙人だと気づく者はいなかった…。
 
「セントガルゴモンが倒されたか…」

「今度こそあの娘の出番ですか?」

「ああ…。

 だが念のためだ。

 もう1体一緒に行かせろ。

 あいつだけでは何をするかわからん」

「は、はい!」



つづく



出演
隊長 ゴウダ・テツタロウ
副隊長 フルカワ・トモミ
隊員 ガクラ・アキラ
隊員 サイゴウ・ツヨシ
新入隊員 チシブキ・モンザエモン
長官 シラガミ・クロキチ
博士 ユキムラ・フユコ
TSF新兵器開発部門担当者 ナリタ・ユキスケ
助手 タカマツ・ヒデト
フリーライター カツラ・タケシ
少年 オトナシ・ソウタ
少年 オトナシ・キョウタ
警官 サクラダ・ショウジ



この作品は匿名希望さんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。