風祭文庫・ヒーロー変身の館






「ウルトラウーマン・フロス」
(第23話:黄昏の女神(後編))



原作・匿名希望(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-231





時は西暦20XX年、地球では怪獣や宇宙人の襲撃が多発していた。

それらの事態は国連軍では対処しきれないと判断した人類は

特殊科学戦隊TSFを結成し、迫り来る脅威に立ち向かっていた。



丁度その頃、ディメンションシップ内部。

「スカイファイターが無い!?

 どういう事ですか博士!?」

「格納する時に何処かにぶつけたみたいなのよ…。

 今大急ぎで修理してるけど…。

 後1時間はかかるわね」

「それじゃあ間に合わないですよ!!

 向こうの軍団は目測でも明らかに万単位でこっちの戦力は特選部隊と合わせても精々11ですよ!!」

「でも、それだったら1機ぐらい増えても不利な事に変わりないんじゃない?」

「無いよりはましですよ!

 このまま指銜えて見てろって言うんですか!?」

「まあまあ…。

 (思いっきり頭に血が上ってるわね…。

  サイゴウ隊員の事がよっぽど応えたのかしら…)」

「安心しろ」

「ってナリタ博士!?

 いきなりどうしたんですか?」

「ついて来てくれ。

 戦闘機なら用意してある」

「え…、戦闘機って…。

 まさかこの前作って失敗したって言うあれですか…?」

「いいから早く来い」

「…解りました。

 この際何でもいいです」

「ああ」

ガクラはナリタ博士と共に操縦室を出て行った。

「先輩、大丈夫かな…」

「まあ死にはしないでしょ」

「あの〜、博士にチシブキ隊員…」

「あ、マツガヤさん」

「どうしたの?」

「ホシカワさん見ませんでした?

 さっき目を離した隙にどっかに行っちゃって…」

「え…」



『ん?

 ようやく来たか?』

丁度その時西の方角から光る巨大な物体が飛んできた。

ナインとクレスだった。

『違うのか…。

 それにしてもあの赤い奴、まだ生きていたのか…。

 しぶとい奴だ…。

 まあいい。

 準備運動ぐらいにはなるだろう…』



ディメンションシップ休憩室では大量の怪我人達がモニターにかじりついていた。

そこでは外での戦いの様子が映っていた。

「クレス…。

 無事だったのか…」

『それにあれはナインさん…。

 希望は繋がりそうですね…』

「そうなのか?」

『何しろあの人はギャラクシーポリスの隊員達の間では既に伝説となった人ですからね。

 もう引退したとはいえ

 この前のデジモンやニャケンダーとの戦いの時もそれを感じさせない戦いっぷりだったし…、

 何しろ特別捜査官史上初のギャラクシーポリス長官賞を達成した人ですから、

 現役時代の数々の逸話は未だに私達ギャラクシーポリス捜査官の間で語り継がれているんですよ。

 例えば…

 …(以下延々とナインの過去話のため省略)…

 …この他にも引退するまでの間に出来た伝説はまだまだ有って、

 その総数は天文学的数字と言われているんです!』

「…お前キャラ変わって無いか?」

「何独り言言ってるんですか?」

「あ、いや…」

「あんまり無理すると実働部隊復帰が難しくなりますよ」

「はあ…。

 すみません看護婦さん…」

『(でも…、最悪の展開の事も考えた方が良さそうね…)』



ナインとクレスはスウツに対峙していた。

『フロスはどうした…?

 逃げたか…?

 それとも力尽きたか…?』

『うるさい!』

『クレスさん、答える必要はありません。

 我々がやるべき事はただ1つ、負傷した彼女達の代わりに奴を倒す事です』

『なるほどな…。

 フロスは今治療中というわけか…

 しかし、味方のためにわざわざやられに来るとはな…。

 T24星雲人の団結力を見直さなければいけないな…』

『な、どういう意味だ!?』

『そのままの意味だ…。

 いくら2人がかりでも私を倒す事はできない…』

『なめるなよ!

 いくら一回やられたからって今度は油断はしない!

 絶対にお前を倒す!』

『カラータイマー点滅させながら言っても説得力が無いですよ…』



一方その頃、ナリタ博士とガクラは…、

「これだ」

「これって…、冗談ですよね?」

「私が冗談を言うように見えるか?」

「見えますよ!

 無茶言わないでください!!

 『飛竜』じゃないですか!!

 乗れるわけ無いでしょうが!!」

「お前なら操縦できる」

「無理に決まってます!!

 特選部隊一の飛行機乗りだって無理だったんですよ!!

 俺に出来るわけ無いでしょうが!!」

「お前にはコガネイやゴウダを凌ぐほどの隠れた才能がある。

 お前になら『飛竜』を受け継がせられる」

「そんな曖昧な理由で無茶させないでくださいよ!!

 隠れてない才能で選んでください!!」

「大丈夫だ。

 私を信じろ」

「…本当に大丈夫なんですか?」

「ああ。

 抜かりは無い。

 『飛竜』のボディは核爆弾でも破壊できない超特殊合金で出来ている。

 更に緊急時のパラシュート付き緊急脱出装置や負傷時の治療設備や生命維持装置も備えてある。

 撃墜されても安心だ」

「そこ信じてどうすんですか!?」



カラータイマーの音(クレスの)が鳴り響く中クレスとナインはスウツに対峙していた。

最初に動いたのはナインだった。

(モビル星人の体は大部分が金属質の硬い組織に覆われていて殆どの攻撃が通じない…。

 動いている時に組織に覆われていない部分を狙い撃ちするのは至難の技…。

 確実に当てるには相手が動いていない時を狙うしかない!)

心の中で丁寧に解説しながら

ナインはナイン・スーパーフラッシュを勢いよくスウツ目掛けて撃ち出した。

だが次の瞬間ロボットの一体が光線の前に突然飛び出してきた。

『な…』

『無駄だ…。

 ロボット軍団には私を身を挺してでも守るというプログラムを施してあるからな…。

 飛び道具は届かんよ…』

何故か親切な事にスウツ自身が解説してくれた。

『くっ…』

『だったら接近戦で!』

そう叫びながらクレスが飛び出した。

『あ、ちょっと!!』

ナインも後に続いた。

クレスはロボットを蹴散らしつつスウツの直前でジャンプし

空中で一回転するとそのまま飛蹴りをぶちかました。

(しまった!

 キックの衝撃で倒れさせて動きを封じる作戦か!)

何故か妙に冷静な解説を交えながらスウツは後ろに倒れこんだ

スウツがすぐに体勢を立て直した時、そこには地面に頭を思いっきり打ち付けてカラータイマーを鳴らしながらナインに介抱されているクレスの姿があった。

『大丈夫ですか!?

 しっかりしてください!!』

(考えすぎだったか…)

その時ディメンションシップから1機の戦闘機が飛び出した。

戦闘機は凄まじい速度で真っ直ぐスウツに突っ込んで行った。

『何だ!?』

スウツが戦闘機を避けた、

すると戦闘機はそのまま後方の岩山を直撃し、崩れる岩の下敷きになった。

『なんだったんだ…?』



「博士…、

 思いっきり岩山に突っ込んじゃったんですけど…」

「まあ大丈夫だろ。

 ちょっと通信を繋げ」

「あ、はい…」



「ホシカワさん見つかった!?」

「いえ、こっちにも居ません!!」

「本当、何処に行っちゃったのかしら…?」

「今ちょっと4番通路がやばい事になってますし…。

 大丈夫かな…」

「え、何があったんですか?」

「いや、いつのまにか壁に大穴が開いてたんですよ。

 人員に余裕が無くてほったらかしになってんですけど…。

 幸い敵の攻撃目標がナインに集中してるみたいですから特に支障は無いし…」

「それって幸いって言っていいのかしら」

「でもちょっと変な点があるんですよね…」

「無視?

 それと変な点って何?」

「その壁、内側から壊されてたらしくて…」

「…何か今凄く嫌な予感がしてきたんだけど」

「だ、大丈夫ですよ!

 い、いくらホシカワさんでも…、流石にそれは…」



『…あ、博士!

 どうすんですかこの状況!』

「右から15個目、下から7列目のボタンを押してみろ」

『あ…、はい…。

 ってどわあああああ!!!!!』

バシュ!

突然『飛竜』が凄まじい速度で岩を蹴散らしながら発進した。

「リミッターの解除スイッチだ。

 それを押すと普段の100倍の速度がでる。

 操縦は少々難しくなるがな」

『それを先に言ってくださいよーーーー!!!!』



『最早お前等に勝機はない…。

 さあ…、どうする?』

『くっ…』

無数のロボット軍団の邪魔のせいで満足に戦えないナインはスウツの猛攻の前に大ピンチを迎えていた。

『フロス!

 早く出て来い!

 このままこいつを見殺しにする気か!?

 出てこなければこのまま攻撃を続ける…』

どごおおおおん!!!

『ぐわ!!』

突然宇宙船がスウツ目掛けて墜落してきた。

『な、何が起こったの!?』

『くそ!

 誰だ!?

 まさかフロス!?

 いや違う!

 フロスの気配はしない!

 じゃあいったい誰が!?』

『(何だかよく解らないけどチャンスだわ!)』

スウツが周囲に気をとられている隙にナインはナイン・スーパーフラッシュを放とうとした。

しかし、次の瞬間ナインは前のめりに倒れそうになった。

『くっ、ダメージを受けすぎた…』

『ほう、どうやら幸いにもロボット軍団はもう必要無さそうだな…。

 フロスが出てこないのならこのまま…』

ずがががが!!!

『ぐわ!!!』

特選部隊隊員達が乗るスカイソルジャーの射撃が見事スウツに命中した。

『きゃ!!!』

「うわあああ!!!!!」

ナインは猛スピードで突っ込んで来る『飛竜』をギリギリで避けた。

『ぎゃ!!!』

ゴウダ達が乗るスカイファイターの射撃は見事クレスに命中した。

「何やってんですか隊長!!」

「だったら撃たせるなよ!!」

「今回は大丈夫って言ったの隊長ですよ!!」

「それにしても流石は特選部隊だな。

 百発百中だ」

「話を逸らしましたね…。

 でもまあ、今回は彼らがいるから安心…」

『ゴウダ隊長、言っておきたい事がある』

「ってカサマツ隊長!?

 何ですか急に!」

『スカイソルジャーの燃料が切れそうだ。

 すまないが我々は地上からの攻撃に移らせてもらう。

 後は任せた』

「…最悪のタイミングですね」



一方女子トイレの2人は…、

「何だ…?

 外が静かになったな…」

「何があったんでしょうか…?」

「わからな…」

ドゴオオオン!!

「うわ!!」

「危ない、課長!!」

突然個室のドアが吹き飛ばされた。

咄嗟にトリツはテリブルシューターを構えながら叫んだ。

「誰だ!!」

だがそこに居たのは…、

「お、女の子!?

 何でこんな所に…」

「それはこっちの台詞よ!!!」

ゴガッ!!

「ぐあっ!!」

「あんたらこそ!!」

バキッ!!

「がはっ!!」

「ドサクサに紛れて!!」

ゲシッ!!

「はうっ!!」

「女子トイレなんかで!!」

ドゴッ!!

「ぎえっ!!」

「2人して!!」

ガスッ!!

「おごっ!!」

「何やってんのよ!!」

ズンッ!!

「げばっ!!」

ホシカワの6段攻撃がトリツに綺麗に決まった。

トリツは一瞬宙を舞うと地面に思いっきり叩きつけられた。

しかし、次の瞬間にはよろめきながらも立ち上がった。

流石は特選部隊である。

「え〜っと…、君は?」

フジタが弱腰ながらも落ち着いた表情で訊ねた。

「あたし?

 あたしの名前はホシカワ・セイコ、高校生やってるわ。

 あんたは?」

「私はフジタ、ここの課長をやっている者だ。

 何で君が此処にいるんだ?」

「あの円盤からの脱出に失敗してちょっと服が破けちゃったのよ。

 それで代わりの服を探すついでに寄ったのよ」

「(今不穏な言葉を聞いたような…)」

「それにしてもあんたらみたいな変体が課長なんて世も末ね…」

「違う!

 ロボット軍団から身を隠していたんだ!」

「…あんな雑魚から?」

「(それは君だけだろ…)」

「数が多いからな。

 我々だけでは倒しきれない」

「そうかしら?

 どっかの物陰におびき寄せてタイマンはったら簡単じゃない」

「(だからそれは君だけだろ…)」

「それに足場として使えて便利だし」

「(足場…?)」



「飛竜思いっきり暴走してますよ…」

「何だその蛇行操縦は?

 もっと上手くできるだろ?」

『無茶苦茶言わないでくださいよー!!!』



「くそ!

 もう見てられない!」

サイゴウは叫びながら立ち上がった。

が、次の瞬間前のめりに倒れそうになった。

「何してんですか!?

 絶対安静だって言ったでしょ!!」

「ハクラさん、大丈夫です。

 ちょっと野暮用があるだけですから…」

『何ですかその言い訳?

 いくらんでもそんな嘘が通じる訳は…』

「まったく…、早く済ませて来てくださいよ…」

「ありがとう」

『そんな嘘が通じた…』



「くそ!

 何て頑丈な敵なんだ!

 ちっともダメージが無い!」

「何か地上からの攻撃はちゃんと効いてるんですけど…」



サイゴウは廊下を突き進んでいた。

『どうする気なんですか?』

「もう一度変身するだけだ。

 他に方法は無い」

『でも…、場合によっては命に関わるって…』

「このまま放っといても結局は同じ事だ。

 それなら出来る限り突き進む、それだけだよ。

 お前は分離して1人で戦おうと考えてるんだろ?」

『…え?

 何でそれを…』

「まあ何となくだけどな。

 お前がこの星で1人で戦うのは無謀すぎるんだろ?

 人の事は言えないだろが」

『…解りました。

 一緒に行きましょう…。

 でもどうやって外に行くんですか?』

「メインゲートを強引に開けるしかないだろうな。

 ここからなら4番通路が近道だ」



「隊長」

「何だ!?

 今が正念場なんだぞ!

 早く用件を言え!」

「もう少しで燃料きれそうです」

「それを早く言え!」

「いや…、さっきから言ってたんですけど…」

「やむをえん!

 緊急着陸だ!」



「どうなってんだ…?

 これ…?」

『さあ…』

4番通路の壁には特大の大穴が開いていた。

「まあゲートを開ける手間が省けたからいいけど…。

 じゃあいくぞ!」

『はい!』

サイゴウは大穴から飛び降りながら両腕をクロスさせて叫んだ。

「フロス!!!」



空中でサイゴウの体は少しずつ女性化していった。

胸は少し膨らみ、腰は少しくびれ出し、尻も少し大きくなり始めた。

完全に女性化した直後、更に体が無機質な感じへと変化し始めた。

顔は無表情になり、股間の穴は消滅し、胸にはプロテクターが出現した。

着地したとき、そこにはサイゴウでは無くウルトラ戦士、フロスがいた。

フロスは立ち上がると同時に少しずつ大きくなり始めた。

やがて身長40mの巨人となった…。

(なんかいつもとパターンが違うな)

『体の変化を全部同時に制御するのって結構体力使うんですよ。

 個別にやった方が時間はかかるけど体力を消耗しなくて済むんです』

(個別って…)



ピコーン…、ピコーン…。

カラータイマーの音が鳴り響く中4人の巨人は立っていた。

辺りはいつのまにか夕闇が迫っていた。

『先輩…』

『フロスさん…』

『待たせたわね…』

『やっと来たか…。

 手間をかけさせるな…』

(それにしても日が落ちるのが早いな)

『日本とアメリカじゃ時差がありますからね』

(いや、時差は関係ないだろ)

『何独り言言ってるんだ…。

 行くぞ…!』

スウツがフロスに飛び掛った。

(同じ奴に2回も負けるか!)

サイゴウはそう叫んだ。

しかし誰にも聞こえなかった。

フロスはスウツの拳を受け止めるとそのまま投げ飛ばした。

しかしスウツはすぐに着地し、フロスに跳び蹴りを打ち込んだ。

『くっ…』

『ふ…、これで終わりだ…!』

『動きが鈍ってる…』

『彼女も、もう限界なんですよ…』



ディメンションシップ、操縦室。

「博士…」

「しかたがないな…、秘密兵器を出すか…」

「え?

 秘密兵器というと…、TSF砲ですか?」

「そうだ」

「でもあれはまだ実験してないですよ」

「細かい事は気にするな。

 他に方法があるか?」

「はあ…」

「このために『飛竜』をガクラに押し付けたんだ。

 今、あれを使えるのは私だけだからな」

「ところでガクラさんは?」

「死ぬ事はないだろ」



ドゴ!

スウツのパンチを受けてフロスは後ろに倒れこんだ。

『手間をかけたな…。

 だが、これで終わり…、ぐわっ!!』

スウツの背中を光線が直撃した。

ガクラが苦し紛れに乱射した『飛竜』の光線砲の一発が見事に命中したのである。

なお、外れた光線の行方は気にしてはいけない(おい!?)。

『く…、何が…?』

『今です!!』

『はい!』

次の瞬間ナインとクレスがスウツを蹴り飛ばした。

『ナインさん!』

(クレス!)

『フロスさん…、サイゴウさん。

 貴方達だけでは無理です…。

 私達も一緒に行きますよ』

『でも…、ダメージが…』

『ダメージを受けているのは先輩達も同じですよ』

『私達の使命は皆同じ…この星を守る事なんです。

 貴方達だけで戦わなければいけない理由はありませんよ』

TSFは忘れられていた。



「セキュリティアクセス…。

 パスワード解除…。

 発射準備完了。

 タカマツ!

 TSF砲を展開しろ!」

「は、はい!」

すると、ディメンションシップの正面の装甲が開いて中から巨大な光線砲が伸びた。



『瀕死の奴らが3人集まったところで何も変わらない…』

『そういうお前だってボロボロだろ』

『時間がありません。

 私達の光線を一点に集中させれば…』

『わかりました…』

(チャンスは1度だけ…。

 全エネルギーを注ぎ込まなければ…)

『何をごちゃごちゃ言っている…。

 行くぞ…!』



「発射!!」

「はい!!」



どかああああん!!!

『ぐおっ!!!』

TSF砲の光線がスウツの背中を直撃した。

その反動でふっとんだディメンションシップはTSF本部を直撃した。

『今です!』

フロス、クレス、ナインの3人はすぐに必殺光線のポーズをとると一気に発射した。

光線は見事にスウツの体の一点を直撃した。

『ぐあああっ!!!』

『くっ…』

『ぐが…』

『はあああ…』

『まさか…』

『き、きつい…。

 でも…』

『そ…、ん…』

(負けるわけには…、いかない!!!!!)

『な…』

ズガアアアアアアアアアアン!!!!



「はぁはぁ…」

「終わったのか…?」

「みたいですね…」

3人は既に人間体に戻っていた

「じゃあ僕は帰ります…。

 ライラスさんに報告しなきゃならないし…」

「大丈夫なのか?」

「ええ、帰るくらいの体力は…」

「暫く戦うのは無理でしょう…。

 ゆっくり静養してください…」

「そうだな…。

 …フロス、お前も一旦帰れ」

(え!?)

「お前も限界を超えて戦っていた…。

 ひとまず自分の星に帰ってゆっくり静養した方がいい…」

(でも…、地球の守りは…)

「大丈夫。

 TSF特選部隊が居る。

 まぁなんとかなるさ」

日本支部は無視された。

「私もいますしね」

「じゃあな。

 元気になったらまた来いよ!」

(…はい!)

するとサイゴウの体から光が溢れ始め、人の形に固まっていった。

「じゃあ、フロスフラッシャーも一応返しておくな」

『あっ待ってください。

 1個はサイゴウさんが持っててください』

「何でだ?」

「友情の印ですよね、先輩」

『はい。

 次にこの星に来た時、また共に戦えるように…』

「…わかった。

 そうしよう」

『それでは…』

「行きますか」

そしてカツラは変身し、フロスは巨大化した。

黄昏の光が差し込む中、2人は空へと飛び立った。

それはまるで女神のようだったという…

もっとも本部は大惨事となっていたためそれを見た者は少なかったというが、

「…」

「…また、会えますよ」

「そうですね…」

煙と瓦礫の山となっているTSF本部とディメンションシップを背に2人はそう語り合っていた。

なお、奇跡的にも死者は出なかった(らしい)

しかし、重傷者が殆どだったため、TSFは機能不全に陥ってしまい、

その結果…



シュワッ!

わずか1週間後には休暇を切り上げたフロスが元気に地球の大地に立っていたのであった。

(良いのかフロス?)

『えぇ、一週間休みを取ったので十分休養はとれましたわ』

こうして再び戻ってきたフロスによって地球の平和は保たれることになり、

宇宙の平和は安寧のうちに保たれたかのように見えた。

だが…

漆黒の宇宙に浮かび上がる銀河。

全てを生み出す眩い光と、

全て飲み込もうとする暗黒の闇が渦巻く島宇宙の奥で、

『おぉぉぉぉ…』

何かを待ちわびる声が漏れ響き渡っていた。

そして、その声がいっそう高鳴ったとき、

『いよいよでございますな』

一人の男性がもみ手をしながら話しかける。

『おぉぉ…

 ついに…

 ついに…余が銀河を支配するときが来たのだな。

 抜かりは無いな』

男に向かって声は己の願望を伝えると、

『はい…わたくしめが準備をすべて整えております、ルイン閣下』

と男は恭しく申し上げ、

『ルイン閣下。

 銀河は閣下の支配を望んでおられます。

 どうか御下知を…』

深く頭を下げ男は恭しくそう進言すると、

『おぉぉぉぉ…

 いまこそ革命のとき、

 いざ参らん!!!』

一際高く声が響き渡る。

と、同時に

ズズズズズ…

光り輝く銀河に黒い影が覆い始めたのであった。



おわり



出演
隊長 ゴウダ・テツタロウ
副隊長 フルカワ・トモミ
隊員 ガクラ・アキラ
隊員 サイゴウ・ツヨシ
新入隊員 チシブキ・モンザエモン
オペレーター ハシダ・ミカコ
長官 シラガミ・クロキチ
博士 ユキムラ・フユコ
研究員 マツガヤ・ミツル
TSF新兵器開発部門担当者 ナリタ・ユキスケ
助手 タカマツ・ヒデト
医者 ヤブウチ・トクロウ
看護婦 ハクラ・レイナ
本部課長 フジタ・トキオ
本部特選部隊隊長 カサマツ・レイヤ
本部特選部隊隊員 トリツ・カイト
フリーライター カツラ・タケシ
少女 ホシカワ・セイコ
主婦 フジタ・ユキコ



この作品は匿名希望さんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。