風祭文庫・ヒーロー変身の館






「ウルトラウーマン・フロス」
(第21話:極秘カルテNo6)



原作・匿名希望(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-202





時は西暦20XX年、地球では怪獣や宇宙人の襲撃が多発していた。

それらの事態は国連軍では対処しきれないと判断した人類は

特殊科学戦隊TSFを結成し、迫り来る脅威に立ち向かっていた。
 
 

都内某所喫茶店、

ここで1組の男女が会話していた。

傍から見たら若いカップルがデートを楽しんでいるように見えるだろう。

しかしその表情は真剣そのものであった…。

「看護婦が5人続けて消えた、か…。

 確かに妙だな…」

「でしょ!

 しかも全員同じ部署に異動になってすぐなのよ!」

「確かに怪しいな…、

 それで俺にどうしろってんだ?」

「だからその原因を調べてほしいのよ!

 つい昨日1人行方不明になったのに

 今度は私がその部署に異動になったんだから!」

「…わかった。

 で、どこの病院の何科だって?」

「気快総合病院眼科」

怪事件の舞台が眼科…、

何故かしっくりいかない。

 
 
「この部署に配属されて数日後に失踪…、

 確かに妙だが特に不審な点は無しか…」

「先輩、何見てるんですか?」

「ああ、幼馴染の依頼でちょっと調査をしてんだ」

「そうなんですか。

 何の調査ですか」

「ああ…」

 
 
「へ〜…、

 確かに妙ですね…」

「だろ。

 でも特に不審な点は無いんだよな…」

「はあ…、

 あれ?」

「どうした?」

「いや、

 この日付、

 何か引っ掛かるんですよね…」

「何がだよ」

「前にインターネットで間違えて変なサイトに入った事があるんですが、

 そこで商品が売りに出されていた日の日付が

 全部この失踪した日の2日後なんですよ」

「そりゃ怪しいな…。

 失踪してから

 それで商品って何だ?

 まさか人間や臓器じゃあるまいな」

「いや…、

 それがよく解らないんですよ。

 僕が見た時は商品が全部売れた後だったらしくて、

 売りに出された日付と買い取られた日付と
 
 商品の名前しか載ってなかったんです…」

「なんて名前なんだ?」

「アルファベットが5・6文字くらいでしたよ。

 印象が薄かったんでどんな名前だったか覚えてませんけど…」

「そうか…、

 とりあえずそのサイトを調べてくれないか?」

「先輩がやらないんですか?」

「電源も入れられないのに出来るわけ無いだろうが」

「自慢出来る事じゃないですよ…」
 
 

薄暗い部屋のベッドの上に横たわっている1人の女性がいる。

一見普通の人間の女性のように見える。

今にも徐に起き出して朝の支度をしそうな雰囲気である。

だが普通の人間がこんな長時間瞬き一つせずに目を開けていられるだろうか?

そして人間はここまで無表情でいられるのだろうか…?

 
 
丁度その頃サイゴウは病院にいた。

「やっぱり聞き込みぐらいはしといた方がいいな…」

そしてサイゴウは眼科の看護婦や医者にそれとなく尋ねてまわった。

だが有力な情報は聞き出せなかった…。

「妙だな…。

 少しは噂になっててもいいんだが…」

その時サイゴウの通信機が鳴った。

『先輩!』

「何だチシブキか。

 どうした?」

『例のサイトを見つけました!』

「何だって!?

 本当か!?」

『はい!』

「で、何を売ってたんだ?」

『ロボットです』

「ロボット?」

『ええ、

 介護用ロボットを売ってたんですよ』

「そうか…。

 (ロボット…、

  メカ…、

  まさか!?)」

『どうしたんですか先輩?』

「いや、なんでもない…。

 そのサイトについてもう少し詳しく調べてくれ…。

 場合によっては隊長に連絡を…」

『は、はあ…』

「頼んだぞ」

そう言うとサイゴウは通信を切った。

「俺の考えが正しいとしたら…、

 おそらく消えた看護婦は…、

 そうだ!

 イトエ!」 

その後サイゴウはイトエの現在地を調べるため

再び聞き込みを始める事になった。
 
 

「オカダ、

 準備は出来たか?」

「一応終わりました。

 でも院長、

 随分と次の商品製作が早いですね。

 いつもは一週間ぐらい様子見るのに…」 

「まさか一気に2人も客が来るとは思わなかったんだよ」

「ま、いいですけどね。

 給料貰ってる身だし…。

 しかしこれじゃあ徹夜だな…」

 
 
サイゴウは眼科を訪れた。

「イトエが最後に訪れたのがよりにもよってこことは…。

 間に合えばいいんだが…」

眼科の診察室には誰もいなかった。

「妙だな…、

 誰か1人ぐらいは居てもいいのに…、

 ってどわあ!」

診察室に1歩入った途端突然足元の床が下がり始めた。

「な、何だ!?」

 
 
「ん?

 何の音だ?」

「大方昇降装置が誤作動でもしたんじゃないですか?

 たまにあるんですよね〜、

 捜査しても居ないのに上下する時が…」

「そうか…、

 修理しなくちゃならんな…」 

「そんじゃ改造作業準備の続きを…」

 
 
「痛てて…、

 何が起きたんだ?」

サイゴウが起きた時、

そこは眼科診察室ではなくシンプルな金属製の廊下だった。

「やっぱり何かあるなこの病院…。

 とりあえずこの辺を調べてみるか…」

 
 
「隊長!

 ちょっと報告したい事があります!」

「何だチシブキ、

 言ってみろ」

「実はサイゴウ先輩に頼まれてたホームページの調査なんですが…」

 
 
丁度その頃サイゴウは岐路にぶち当たっていた。

「さてと…、

 左と右どっちに行こう…。

 …とりあえず右から行くか」

サイゴウは適当に選んだ道を歩き出した。

 
 
「じゃあそろそろ作業室での作業に移ります…、

 あれ?

 院長、何か作業室の監視カメラに変な影が映ってますよ」

「何?

 まさか此処がばれたんじゃないだろうな?」

「さあ…」

その時モニターから声が響いた。

『大丈夫かイトエ!』

 
 
「大丈夫かイトエ!」

サイゴウは作業台に駆け寄るとイトエを起こした。

「おい!

 しっかりしろ!」

だがイトエは薬か何かで眠らせてあるらしく目を覚まさなかった。

「くそ…!

 とりあえず外に…」

『待て!!』

「誰だ!?」

『それはこっちのセリフだ!

 誰だお前は!』

「俺はTSFの者だ。

 お前こそ誰だ!」

『怪しい奴に簡単に名前を言うかボケ!』

「怪しいのはどっちだよ!」

『まあいい』

「仕切り直したか…」

『そこには警備ロボットを配備してある。

 警備ロボット【メガガンカー】発進!!』

「駄洒落かよ…」

すると突然壁が開いてごついロボットが現れた。

「とりあえずイトエを安全な場所に…」

サイゴウはイトエを抱えて走り出した。

『逃がすか!』

サイゴウの行く手にゆっくりと防火扉が下りていった…。
 
 

「くそ!

 こうなったら…」

サイゴウはテリブルシューターを構えるとメガガンカーを撃った。

しかし狙いは外れて天井近くに当たった。

「やっぱり左手じゃ狙いがつけにくいな…。

 ん?」

外れたテリブルシューターは

天井近くにあった監視カメラを直撃していた…。
 
 

「な、何が起きたんだ!?」

「監視カメラを間違って撃ったみたいです!」

「くっ…、

 まあメガガンカーがあるから大丈夫だろう」

 
 
作業室ではメガガンカーとフロスが対決していた。

人の目が無いから変身したらしい。

だがイトエを巻き込まないように慎重に戦っているため押され気味だった。

とりあえずフロスはメガガンカーを突き放すとイトエに向けてフロスボールを撃ち込んだ。

イトエの周りにバリアが張られたのを見届けたフロスは

早速近くにあったロボットアームを引きちぎるとメガガンカー目掛けて投げつけた。

更に作業台、

コンピューター、

他のロボットアーム等手当たりしだいメガガンカー目掛けてぶちこんだ。

その上エネルギー弾を勢いよく撃ち込んだ。

巻き起こる爆発の中からメガガンカーが立ち上がった瞬間

フロスは飛蹴りをぶちこんだ。

そして倒れたメガガンカーの顔部分に

さっき引きちぎったロボットアームの残りを突き刺した。

さらに機能停止したメガガンカーを防火扉に投げつけて

ティエシム光線を撃ち込んだ。

最初の方でやられていた仕返しらしい。

ちなみにイトエはフロスボールの中だったので怪我は無かった。

 
 
「今の爆発は何だ?」

「見て来ま…」

オカダが見た先にはTSF実動部隊メンバーが立ちふさがっていた。

「何処に行く気だ?」

「ん?

 なんだこりゃ?」

ガクラはオカダが立ち上がった拍子に

ポケットから落ちた折りたたまれた紙を拾った。

「あ!

 それは…」

「『極秘カルテNo6、ITOE。

  仕様…、

  設計図…、

  パーソナルデータ…』

 成る程な…、

 こいつは人間ロボット改造事件のいい証拠になりそうだ」
 
 
事件は瞬く間に解決した。

今までロボットに改造されていた看護婦達は至急回収され

TSFの科学力である程度元の生活が出来るようになった。

ちなみにメガガンカーはサイゴウが

テリブルシューターで倒した事になっていた。

「それにしても先輩、

 どうして介護用ロボットと事件の関連性に気づいたんですか?」

「細かい事は気にするな。

 (まさかロボット→メカ→めか→眼科に行き着いたとはとても言えん…)
 


おわり



出演
隊長 ゴウダ・テツタロウ
副隊長 フルカワ・トモミ
隊員 ガクラ・アキラ
隊員 サイゴウ・ツヨシ
新入隊員 チシブキ・モンザエモン
看護婦 イワヤマ・イトエ
院長 トクヤマ・ヨシノリ
医者 オカダ・イクゾウ



この作品は匿名希望さんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。