風祭文庫・ヒーロー変身の館






「ウルトラウーマン・フロス」
(第18話:青春の星)



原作・匿名希望(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-198





時は西暦20XX年、地球では怪獣や宇宙人の襲撃が多発していた。

それらの事態は国連軍では対処しきれないと判断した人類は

特殊科学戦隊TSFを結成し、迫り来る脅威に立ち向かっていた。
 
 
都内某所丘陵、

沈もうとする太陽の光がこの丘を赤く照らし出していた。

そしてその光の中に立つ4つの人影があった。

彼らは皆この近くの大学に出来て間もない宇宙科学研究会の部員である。

「部長…、

 寒くなってきたから帰りましょうよ…」

「何言ってんだ、

 今日は俺達宇宙科学研究会の始まりの日なんだぞ、

 つまりこれは俺達の記念すべき最初の天体観測なんだぞ!」

「でも望遠鏡持ってくるの忘れたのよね」

一瞬時が止まった。

「マツガヤ、

 それは言わない約束だぞ。

 それより、

 もうそろそろだぞ」

「何が?」

「あれだよ」

タカツが指差した先、

赤い色に染まった空に1つの光が瞬いていた。

「1番星…」

「そう、宇宙科学研究会の始まりの1番星だ」

「言ってて恥ずかしくない?」

「うるさい!」

「でも、

 いつか俺達があの星に行ける日が来るといいな…」

「随分と唐突ね…」

「まあまあ…」

「大丈夫!

 きっとそんな日が来るさ!」

「そうっすね!」

このセリフに男子は2人とも盛り上がっていたが、

女子2人は見事にひいていた。

それから20数年後…
 
 

「というわけで、

 我々が新型ロケット実験の警護をする事になった!

 心してかかるように!」

「ナリタ博士九州に行ってたんですか。

 道理で最近平和だと思った…」

「その代わりユキムラ博士も行っちまったけどな…

 ナリタ博士連れて行ってくれて良かったよ…」

「しかしユキムラ博士直々に派遣要請とは…、

 何かあったのかな?」

「僕TSF国際宇宙科学センターに行くのって初めてなんですよ。

 どんな所ですか?」

「さあ…、

 実動部隊隊員には縁の無い所だからな。

 隊長や副隊長も行った事は無いはずだぞ」

「色々な意味で凄いですね…」

「出発は明日だ。

 準備しとけよ」

 
 
TSF国際宇宙科学センター、

人類の宇宙進出の最先端を担う科学の砦である。

アメリカ・EU・ロシア・日本・オーストラリアの5ヵ国に支部を置くこの施設では、

日夜宇宙に関する様々な研究が進められている。

だがTSFの関連施設の中でもこの施設の影の薄さは特別であった。

「タカマツ君、

 何してるの?」

「あ、ユキムラ博士。

 ちょっとナリタ博士を探してるんですよ」

「ナリタ博士ならタカツさんと一緒の所を見たわよ」

「あ、そうですか。

 ところで、ユキムラ博士は何してるんですか?」

「マツガヤさんを探してるのよ。

 知らない?」

「あ、スズキ研究員と一緒の所を見ましたよ」

「ありがとう」

「こちらこそ」

 
  
「マツガヤ…、

 どう思う?」

「確かにあの日から何かおかしいわね。

 ナリタ博士とタカツさんが今調べてるけど…」

「何の話?」

「あ、ユキムラ博士、

 例の件でちょっと…

 博士こそ何か用ですか?」

「いや、実動部隊がここに派遣されるらしいから知らせに来たのよ」

「やっと来るんですか!

 よかった…」

「表向きの理由は実験の警護だけど…」

「じゃあ本当の理由を知ったら驚くでしょうね…」

「まあ、

 何も起きなければそれでいいんだけど…」

意味深な会話である。
 
 

翌日、実動部隊のメンバーが種子島に到着した。

「ここが種子島か…」

「のどかな島ですね」

「で、宇宙科学センターは何処だ?」

「あれ?

 隊長が案内してくれんじゃなかったんですか?」

「馬鹿いうな。

 私はフルカワが知っていると思って…」

「調べて来なかったんだ…」

「あの…、

 ちょっといいですか?」

「何だチシブキ」

「宇宙科学センターってあれじゃないですか?」

チシブキが指差した方向には特大の近未来的な施設が聳え立っていた。

「あ…」

 
 
「うっひゃあ…、

 近くで見ると無茶苦茶でかいな…」

「TSF日本支部基地とほぼ同じ規模ですからね。

 カモフラージュされて無い分大きく感じるんですよ」

「ところで所長は何処だ?」

そのときそこに1人の研究員が通りかかった。

「丁度いい、

 聞いてみましょうよ」

「それしかないか…」

「あの…、

 誰ですか?

 あんたら…」

「あ、TSF日本支部実動部隊の者です。

 実験の警護の為に来ました…」

「あ、そうでしたか」

「それで…、

 所長は…」

「ああ、

 所長なら最上階の所長室にいると思いますよ」

「あ、そうですか。

 行くぞ皆」

「はい!」

それから数時間後…

「ここは…、

 一体何処じゃあーーーーー!!」

「完璧に迷いましたね…

 (それにしても…、

  さっきの研究員どこかで見たような…)

 
 
「初めまして。

 宇宙科学センター所長のヤナギサワです」

「は、はあ…

 (これまた前に会った事があるような…」

「皆さんの部屋は7階です。

 私は作業があるので…」

ヤナギサワは去って行った。

「ちょ、ちょっと…」

「また道に迷いそうだな…」

 
 
「なあ…、

 様子がおかしくないか?」

「何がですか?」

「所長だよ。

 普通初めて来た相手には部屋までの道の説明ぐらいするだろ?」

「それもそうですね…」

「前に来たことがあると思ったんじゃないか?」

「いや、

 この研究所は10年前に立て直されている。

 あの所長は就任して20年、

 この中の誰一人新しい研究所に来てないのは知っているはずだ」

「そういえば…」

「その通りです」

「ってマツガヤさん!?

 いきなり何ですか!?」

「実動部隊の皆に来てもらったのもその辺りに理由があるんですよ。

 実は2、3日前からこの研究所の様子がおかしいんです」

「様子がおかしい?」

「はい。

 はっきりとは言えないんですが…」
 
 

その夜…、

「なあサイゴウ、

 どう思う?」

「何がだ?」

「さっきの話だよ」

「研究所の様子がおかしいって奴か?」

「ああ。

 一部の関係者の言動に感情が感じられないとか、

 ロケットの部品が減ってるとか、

 夜中に足音がするとか、

 ナリタ博士の小便が近いとか」

「全部気のせいで片付けられるけどな…

 それと最後のは関係皆無だぞ」

「兎に角気をつけたほうがいいな!」

「で、何が言いたい?」

「それは…、

 その…」
 

 
そして、

「お前な…、

 1人で便所に行けないってそれでも大人か?」

「うるさい!」

「ったく、

 毎週毎週怪獣や宇宙人と戦ってるのにお化けが怖いのかよ」

「お化けが怖いんじゃない!

 実は…」

「実は?」

「前に病院に入院した時夜中に便所に行ったら…」

「行ったら?」

「寝惚けて男子便所に入ってきたホシカワに直面して…」

「…」

「勘違いしたホシカワにボコボコにされた」

「それで入院が長引いてたのか」

「それで入院が長引いてたんだ」

「それで夜中に1人で便所に行けないのか」

「それで夜中に1人で便所に行けないんだ」

「お前な…、

 ここは九州鹿児島県種子島だぞ。

 ホシカワがいるわけないだろ」

「それでいるのがホシカワなんだ」

「考えすぎだって、

 いくらなんでも海を越えて来る訳ないだろ?」

「…それもそうか。

 考えすぎだったな。

 まさかこんな所にホシカワが居るわけないか…」

「便所に着いたぞ」

「ああ、じゃあ…」

ガクラは便所に入った。

少しして叫び声が聞こえた。

「どわああああああああああああ!!!!!!

 居たあああああああああ!!!!!!!!」

「きゃあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!

 何考えてんだてめえええええええええ!!!!!!!!!!」

「それはこっちのセリフじゃああああああああ!!!!!!!!!

 何でお前が此処に居るんだあああああああ!!!!!!」

「問答無用!!!!!!!!!!!」

 
 
研究所の前の道路を救急車が走り去った。

「それで、何でホシカワがここに居るんだ?」

「高校の修学旅行で来たんだけど、

 夜中にトイレに起きて…」

「寝惚けて間違えて入ったのか?」

「はい」

「寝惚けすぎだろ…」

「何か言った?」

「いや、なんでもない。

 それにしても…、

 やっぱりおかしいな」

「何がだサイゴウ?」

「あ、隊長…

 あれだけの騒ぎが起きたのに他の人たちが起きなかったのは不自然って事ですよ」

「そういえばそうだな」

「ひょっとして今気づいたんですか?」

「ああ」

「(大丈夫か?

  このオヤジ…)」

「兎も角調べてみる必要がありそうですね」

「そうだな」

「ところで副隊長は起こしますか?」

「寝かせとけ。

 ガクラの二の舞は嫌だ」

「そうですか…」

「面白そうね!

 あたしも手伝うわ!」

「(おいおい…)」

「(話がややこしくなりそうだな…)」
 

 
「じゃあチシブキとホシカワはナリタ博士達と一緒に居住区を見てくれ。

 私達は研究棟の方を見てくる」

「なんか面倒な事押し付けてませんか?」

「気のせいだ。

 じゃあ行ってくれ」

「は、はあ…」

 
 

「あいつらは…」

「おいサイゴウ」

「何ですか?」

「何だ?

 あいつら…

「そういえば隊長は等身大状態を見た事がなかったんですよね」

研究棟のロケット倉庫には異形の怪物達が歩き回っていた。

サイゴウ、ゴウダ、ユキムラ、マツガヤ、タカツは

気づかれないように入り口から覗き込んだ。

「あいつらはルドー星人です。

 ルドーランド事件の時の時の黒幕ですよ」

「そういえばあれの相似拡大バージョンを見たような気もするな…」

「でしょ」

「だが何故そいつらがここにいるんだ?」

「さあ…、

 ただ奴等の能力を考えると…」

「どうした?」

「我々も居住区に戻った方が…」

「よくわからんが居住区でチシブキ達と合流した方がいいってわけか」

「しかし、気づかれたら面倒です…

 そっと行きましょう」

「そうだな」

その時居住区の方から物凄い音が響いた。

「な、なんだ?」

「チシブキかホシカワか…」

「ホシカワが1倍、

 チシブキが2倍、

 フルカワが150倍といった所か…」

「副隊長大穴ですか…」

その時突然ゴウダの目の前にルドー星人の顔が現れた。

「…」

「…」

気まずい沈黙が流れた。

そして…、

「どわあああ!!!」

「#$%&!!!」

思いっきり気づかれた。

「くそ!」

ゴウダはとりあえず目の前のルドー星人をテリブルシューターで撃った。

「なんか知らんがサイゴウは居住区に急げ!

 ユキムラ博士はマツガヤ達と一緒に避難してください!!」

「了解!!」

「隊長は!?」

「ここは私だけで食い止める!」

ゴウダは100%純粋に雑じり気無しの勢いだけで叫んだ。

「大丈夫ですか?」

「大丈夫!

 これでもスカイファイター暦は実動部隊の中で一番長いんだ!」

「全然大丈夫じゃないですよ!」

 
 
サイゴウは居住区まで走っていた。

なんだか良く解らないうちに走っていたのである。

「良く考えるとホシカワ達がいるから大丈夫じゃないのか?」

だが別の意味で危ない。

その時サイゴウの前に突如見慣れた顔が現れた。

「どわああ!!!

 カカカカカ…、カツラ!?」

「探しましたよ先輩!

 大変です!

 ルドー星人が再び地球征服に乗り出したそうです!」

「今更遅いわああああ!!!」

「兎に角先行部隊だけでも数百体を数える大軍勢です!

 さらに先程数万体のルドー星人を乗せた
 
 多数の宇宙戦艦が地球に向かったそうです!」

「何!?」
 
 

倉庫の方では、

「おらおらおら!!!!

 実動部隊隊長なめんじゃねー!!!」

ほとんどヤケクソになった隊長が

ほとんどのルドー星人を殲滅していた。

「はあはあはあ…、

 これで粗方片付いたか…?」

ゴウダはとりあえず目に映る

最後のルドー星人をテリブルシューターで撃つと呟いた。

「よし…、

 早く博士達と合流しないと…」

だいぶ落ち着いてきたらしい。

「博士達が襲われたら日本が米寿で

 TSF宇宙ロケット失敗バンザイ残念になってしまう!?」

前言撤回!

まだだいぶ混乱しているようだ!

 
 
そして居住区、

今辿り着いたサイゴウが見た物は…、

「真夜中ぐらい静かにしてろ!!

 睡眠妨害だぞゴミ野郎!!

 このまま貴様に永遠の眠りをプレゼントしてやろうか!?」

「#$%&’!!!」

地獄だった。

「大穴が来たよ…」

「あ、サイゴウさん!」

「ホシカワ…、

 何があったんだ?」

「そこにいた変な怪物を血祭りにあげてたら突然、

 すぐ横のドアが吹き飛んで
 
 中から般若みたいな形相のフルカワさんが出てきて…」

さり気無く物騒な発言が含まれていたがそれは置いておく。

「副隊長の寝起きは最悪だからな…、

 特に寝てる途中で無理矢理起こされると次の瞬間そこは地獄絵図…」

「あんたらの仲間にまともな人材はいないの?」

ホシカワに言われたら御終いである。

「それで他の皆は?」

「何か本物の研究員を探すとか…」

「やっぱり…」

「何がやっぱりなの?」

「ルドー星人は地球人の姿を真似る事が出来る。

 本物の地球人を人形に変えて入れ替わる事だってな…」

「ふ〜ん。

 よし、あたしもそろそろ行くか」

「何しにだよ」

「ルドー星人を殺る」

「ホシカワらしいな…」

 
 
「ナリタ博士、

 そんな欠陥品で何が出来るんですか?」

「ミゾロギ君、

 君は知らないと思うがこの宇宙人探知機の欠陥というのは…」

「生命体なら何にでも反応してしまう事ですよね」

「タカマツの言うとおりだ。

 つまりこれは生命体探知機でもあるわけだ」

「なるほど…

 それにしてもチシブキ隊員大丈夫ですかね?

 さっきの騒ぎでルドー星人の奴ら相当警戒してるみたいですよ」

「ビームバズーカ持たせといたから大丈夫だろ?

 暴走状態のチシブキは核でも死なん」

「人間じゃないですね…」

「この前調べてみたら何処かの宇宙人の遺伝子が少し混ざってたぞ」

「本当に純粋な地球人じゃ無かったとは…」

 
 
「ナリタ博士は何処に行ったんだ?」

サイゴウは手がかりも無さそうだからナリタ博士を探し始めた。

何故かルドー星人は見当たらない。

目に映るのは大量の紫色の粘着質の液体と

ルドー星人の物と思われる肉片だけである。

「それにしても何が起こったん…」

サイゴウが呟きかけたその時、

向こうからその理由が走ってきた。

「オラオラオラオラーーーーー!!!!!

 敵は何処じゃあ!!!!!!」

すぐ脇をビームバズーカを肩に担いだチシブキが

通り過ぎた直後サイゴウは呟いた。

「…なるほどな」

背後では耳を劈く爆発音と断末魔の悲鳴が轟いていた。
 
 

ゴウダは物陰に隠れていたユキムラ達と合流した。

「大丈夫ですか博士!?」

「大丈夫よ。

 それより隊長は?」

「大丈夫です!」

「そう、よかった…」

「しかし、

 奴ら何を企んでんだ?」

「前のときと同じ地球征服だろ?」

「ん?

 タカツさん、

 何故あんたが前回の時のルドー星人の目的を知ってるんですか?

 確かこれまでの敵の目的は防衛課内の極秘情報になってるんじゃ…」

「あ…」

「タカツさん…、

 貴方まさか…」

「くそ!」

突然タカツはゴウダに体当たりを食らわせると

テリブルシューターを奪い取り構えた。

「どうやらばれちまったみたいだな…」

「貴方、本物のタカツさんじゃないわね!」

「その通り、俺はルドー星人先行部隊のリーダーだ」

 
 
「博士!

 この倉庫の中から生命体反応があります!」

「そうか!

 突入するぞ!」

「はい!」
 

 
「この研究所を乗っ取って地球侵略の基点にする計画だったのだが…、

 ばれたからには仕方がない。

 我々の間ではあの程度の騒ぎは

 いつもの事なのだったので油断したが…」

「どういう仲間よ!?」

「既に母星には連絡が行っている」

「無視!?」

「今、ワープ空間を何千という宇宙戦艦が地球に向けて進んでいる。

 地球はもはや我々の物とあんるのだ!」

「ならさっさとやればいいだろ」

「我々の上層部は慎重派でな、

 侵略する時でも準備は怠らないのだよ」

「だが部下は間抜けみたいね」

「何だと?」

「隙だらけなんだよ !」

ゴウダはルドー星人がマツガヤに気をとられている隙に

体当たりをぶちかました。

「ぐあ!」

ルドー星人はその勢いでぶっとばされて壁に激突した。

さらにゴウダはその衝撃で地面に落ちたテリブルシューターを

素早く拾うとルドー星人を撃ち抜いた。

「ふう…、

 危なかった…」

だがルドー星人の顔には勝利の笑みが浮かんでいた。

「残念だったな…

 切り札はまだ残ってるんだよ…」

ルドー星人は懐から何かを取り出すとそれについているスイッチを押した。

そして次の瞬間事切れた。

「切り札…、

 だと?」

その時ロケット倉庫の方から爆発音のような物が響いた。
 
 

「ナリタ博士!

 無事でしたか!?」

「サイゴウか。

 私は無事だ。

 人形にされた研究員達もな」

「何とか安全な所までこれを運ばないと…」

「それは俺がやっておきます。

 博士達は隊長達と合流して…」

その時外で爆発音が響いた。

「何だ!?」

サイゴウ達はすぐに側の窓から外を見た。

 
 
爆発した倉庫の中から出てきたのは巨大ロボット「アポロサターン」であった。

どうやら宇宙ロケットが変形したらしい。

「な、何だありゃ!」

「ロボットでしょ」

「わかっとるわ!」

「ミゾロギ…、

 お前少し黙ってろ」

「は、はあ…」

「であそろそろ行くか」

「じゃあこの人形の山は俺が安全な所に運んどきます」

「頼んだぞサイゴウ。

 じゃあタカマツ、

 行くぞ」

「はい!」

「ところでナリタ博士、

 何するつもりですか?」

「ルドー星人の奴らを昇天させに行くんだよ」

「だからどうやって?」

「ここに来る時使った『飛竜』がある」

「あれ本部の倉庫に封印されたはずじゃあ…」

「時間が惜しいから日本支部に運んどいたんだ。

 最近敵がよく出るからな。

 いざという時すぐに乗れないと意味がない」

「な、なるほど…

 (意外と考えてるんだな…)」

「でもわざわざ乗ってこなくても…」

「その方が早いからな」

「(前言撤回!)」

 
 
「博士、

 とりあえず避難しててください。

 此処は私が行きます」

「大丈夫?」

「大丈夫です。

 スカイファイターがあれば恐い者無しですよ!」

「そう…」

「では行って来ます!」

ゴウダはスカイファイターの所まで走っていった。

「何か不思議ね…」

「何がですか?」

「私、ゴウダ隊長が実動部隊に入った時からずっと彼を見てたのよ…

 でもね…」

ユキムラは走り去るゴウダを見送りながらつぶやいた。

「初めてよ。

 彼が頼もしく思えるのって…」

「それって普段は頼もしく思えなかいって事ですか?」

あんまりである(だが作者も否定できない、というかしない)。
 
 

サイゴウは人形が山盛りに乗せられたリヤカーを引いていた。

ナリタ博士曰く倉庫に人形と一緒にあったリヤカーを持ってきたらしい。

何故TSF国際宇宙科学センターの倉庫に

リヤカーがあるのか疑問が残るが今はそれどころではない。

「ふう、此処まで来れば安全だろ…」

サイゴウは研究所から少し離れた所にリヤカーを止めた。

「さてと…、

 ん?

 あれは…」

サイゴウが空を見上げるとそこには大量の宇宙戦艦が飛んでいた。

目測でも1000隻を軽く超えている。

「あれがカツラの言っていた宇宙戦艦か…

 急がないと…」

サイゴウは腕を胸の前でクロスさせて叫んだ。

「フロス!」

次の瞬間サイゴウの体は眩い光に包まれた。

 
 
一方カツラも…、

「思ったより凄い状況だな…

 僕も先輩の援護をしないと…」

カツラはポケットからクレススティックを取り出すと

夜空に向けて掲げた。

「クレス!」
 
 

ユキムラ達はタカマツ達と合流した。

「タカマツ君!

 ナリタ博士は!?」

「さっき『飛竜』で出撃しました」

「そう…

 念のために伝えておいて、

 ルドー星人の宇宙戦艦が地球を攻撃しようとしてるって…」

「あ、もしかしてあれですか?」

「もしかして今気がついた?」

「はい」

「威張るなよ」

「そういうミゾロギだって気がついてなかっただろ!」

 
 
『…という事なんで博士、

 よろしく頼みます』

「わかった。

 ちょうどフロス達も参戦した事だからな。

 私はあいつらの殲滅を優先する」

『わかりました。

 隊長が援護します』

「いらん。

 かえって邪魔だ」

『凄い自信ですね」

「いたらこちらに不利なんだよ!」

『でももうそちらに向かってますよ』

「くそ…

 もう駄目か…

 だが勝負を捨てるわけにはいかん!

 味方にゴウダいるぐらいのハンデはくれてやる!!」

酷い言われようである。

(しかもあの『将門の首塚』の異名を持つナリタ博士が半ばヤケクソ状態)
 
 

一部の戦艦は既に地上に降り立っていた。

乗っていたルドー星人は下りた後研究所の中に突入していた。

どうやら故潜入班の誰かが援軍を頼んだらしい。

冥福を祈る。

 
 
アポロサターンVSフロス&クレス、

総勢数1000隻に上る宇宙戦艦VS『飛竜』&ゴウダのスカイファイター、

ルドー星人地上部隊VSホシカワ&暴走チシブキ&寝起きで機嫌最悪のフルカワ。

こうしてTSF(+最強凶暴極道女)とルドー星人の総力戦が開始された。

 
 
研究所内部、

襲い掛かるルドー星人に対し、

「おらおらおらおらおらおら!!!!!!!」

手当たりしだいキックやパンチをぶち込んでいる少女と、

「あの世へ逝けやーーーーー!!!!!!」

巨大な破壊光線を四方八方に乱射する男と、

「死ぬか!?

 おら!!」

難癖をつけながらプロレス技をかけている女が暴れまわっていた。

怖い光景だった。

 
 
フロスはアポロサターンの側に駆け寄りながら飛蹴りをぶちかました。

その勢いでアポロサターンは後ろに倒れこんだが

すぐに立ち上がろうとした。

だが、フロスとクレスはその隙にアポサターンを思いっきり蹴り飛ばし、

その上何度もアポロサターンを踏みつけた。

やっとの思いで立ち上がったアポロサターンに対し、

フロスとクレスは挟み込むように凄い勢いでラリアットを同時にぶち込み、

クレスは少し間合いを取るとアポロサターンの腕を掴んで一本背負いをかますと、

フロスはそこに空手チョップを叩き込んだ。

和洋折衷だった。
 
 

『ナリタ博士、

 とりあえず私はフロスの援護をします』

「いや、お前は行くな。

 あの大群の方を撃て」

『何故ですか?』

「あれだけ大量にいればいくらお前でも当たるだろ」

『そりゃそうですね』

納得するなよ。
 
 

フロスはアポロサターンに向かってティエシウム光線を発射しようとした。

だが突然背中に衝撃を受けて前に倒れた。

 
 
「お前な…」

『いや…、

 あんまり宇宙戦艦がいるのでそれの後ろでフロスが戦ってるとは思わなくて…』

「それ以前に煙吹いてる宇宙戦艦に避けられるお前の腕の方が凄いぞ。

 おまけによくあんな隙間の間にミサイルを撃ち込めたな」

『はあ…』

「そうだ、後で訓練場に来い。

 このまえ作った新型機のテストパイロットをやってくれくれないか?」

『いやいやいや!

 私にはもったいないですよ!!

 (本音、絶対嫌だ!!!)』

「安心しろ。

 初心者用の訓練機だからな。

 安全装置の塊だ。

 お前でも乗れる」

さり気無く酷い事を言っている。

 
 
アポロサターンはフロスが倒れている間に駆け寄ると

フロスを蹴飛ばそうとした。

だがその前にクレスが背後から飛蹴りをぶち込んだ。

その勢いでアポロサターンはフロスの上に倒れた。

(しまった!)

 
 
『博士、フロスが仲間の攻撃のとばっちり受けました。

 随分と間抜けな奴が味方ですね』

「その言葉そっくりそのままお前に言ってもいいか?

 それに後一体だけなんだから余所見するなよ」

『いつのまにそんなに倒したんですか?』

「お前が余所見してる間だよ」

早業にも程があるぞ。

 
 
フロスは倒れたアポロサターンを跳ね飛ばして起き上がると

クレスにエネルギー弾を撃ち込んだ。

そしてフロスは改めてアポロサターンにティエシウム光線を撃ち込んだ。

やたらと迫力があって非常に怖かった。

どうやら相当頭にきたらしい…
 
 

そして夜が明けた。

フロスとクレスは既に去っていた。

ルドー星人が全滅したため研究員達は元の姿に戻っていた。

そして朝焼けの前に数人の人影が立っていた。

「清々しい朝だなスズキ…」

「そうですねタカツさん」

タカツとスズキは背後にそびえている血生臭い研究所を

思いっきり無視した会話をしていた。

ちなみに彼ら以外の人影の正体は

ナリタ、タカマツ、ユキムラ、マツガヤ、ミゾロギの5人である。

(ゴウダ、サイゴウ、ホシカワの3人はチシブキを止めている真っ最中で、

 フルカワは暴れまわるだけ暴れた後再び夢の中へ…)

「しっかし

 ルドー星人のせいで研究が大分遅れちまったようだな…」

『サイゴウ!

 そっち行ったぞ!!』

「そうですね…」

『どわあああ!!

 来るなーーー!!!』

「まあこれから遅れを取り戻せばいいさ。

 時間はたっぷりあるんだ」

『まかせて!!

 くらえ!!!』

「でも…」

バゴ!!!!!

「諦めるなよ。

 諦めないで挑戦して初めて目標に辿り着けるんだ」

『ぐえ!!!!!』

「タカツ君…、

 暫く見ない間に変人化が進んでるわね…」

「いや、彼らしいといえば彼らしいですけど…」

「それより研究所から聞こえてくる叫び声は無視ですか…?」

「ありゃ完璧に自分達の世界に入ってるな…」

「放っといた方がいいんじゃ…」

「スズキ、マツガヤ、ユキムラ、覚えてるか?

 あの日の1番星を…」

「覚えてますよ。

 あの日以来ずっと…」

「ああ…

 あの星にはいつの日か必ず辿り着くと誓ったんだ。

 こんな事ぐらいで挫けててどうする」

「そうですね!

 諦めちゃいけませんよね!」

「ああ!!!」

2人は非常に盛り上がっていたが、

背後の5人は見事にひいていた…

『おい!

 救急車を早く!!』

『やりすぎだホシカワ!!!』
 

 
「ところでお前誰だっけ?」

「副主任…、

 そりゃ無いですよ…

 ミゾロギです。

 いい加減覚えてください」

「そうだったそうだった…、

 あれ?

 お前いつからいたんだ?」

「最初からいましたよ」

 
 
おわり

 
 
出演
隊長 ゴウダ・テツタロウ
副隊長 フルカワ・トモミ
隊員 ガクラ・アキラ
隊員 サイゴウ・ツヨシ
新入隊員 チシブキ・モンザエモン
長官 シラガミ・クロキチ
博士 ユキムラ・フユコ
研究員 マツガヤ・ミツル
新兵器開発部門担当者 ナリタ・ユキスケ
助手 タカマツ・ヒデト
TSF国際宇宙科学センター主任研究員 ヤナギサワ・リクオ
TSF国際宇宙科学センター研究員 ミゾロギ・ユウサク
TSF国際宇宙科学センター研究主任 タカツ・センイチ
TSF国際宇宙科学センター研究副主任 スズキ・タツロウ
フリーライター カツラ・タケシ



この作品は匿名希望さんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。