風祭文庫・ヒーロー変身の館






「ウルトラウーマン・フロス」
(第16話:怪獣旅客機)



原作・匿名希望(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-194





時は西暦20XX年、地球では怪獣や宇宙人の襲撃が多発していた。

それらの事態は国連軍では対処しきれないと判断した人類は

特殊科学戦隊TSFを結成し、

迫り来る脅威に立ち向かっていたのだが…
 
 

富士山上空、

ここでML航空の旅客機778便が消えた。

一体何が起きたのか…、

TSFの調査も行き詰まり事件は謎に包まれたまま迷宮入りした。

だがその1ヶ月後…、

この事件は再び人々の記憶に蘇ることとなる…
 
 

富士山の麓に立っているTSF日本支部訓練所、

此処では明日の英雄を夢見る若者達が厳しい特訓に耐え抜いていた。

今日此処に1人の女性が尋ねてきた。

彼女の名はハシダ・ミカコ、

日本支部基地のオペレーターだ。

彼女は1人の訓練生に話しかけた。

彼、ハシダ・タカヤスは彼女の弟なのである。

「タカヤス、元気にしてた?」

「あ、姉さん、

 どういった風の吹き回しで?」

「成績が随分と危ないって聞いたからね、

 心配だったから有給使って様子見に来たのよ」

「ははは、

 うまくやってるよ。

 心配無用!」

「そう…、

 それなら良かったわ…」
 
「隊長、

 富士山上空で異常なエネルギー反応が確認されました」

「そうか、

 とりあえずサイゴウ達を行かせとけ」

「了解」

「今回はハシダ不在だからな、

 怪獣が出てきた場合苦戦するかもしれないぞ」

「ハシダって誰ですか?」

「お前な…、

 そりゃあ………………、

 誰だっけ?」

「隊長…、

 そりゃないでしょ」

「まあ思い出せないんだからたいした奴じゃないだろ」

「それもそうですね」

あんまりである。

 
 
トレーニングルームに3人の男が入ってきた。

サイゴウとガクラとチシブキである(随分と早いなおい!)。

2人を見たハシダは少し驚いたような声をあげた。

「あれ?

 どうしたんですか3人共?」

「はあ…?

 え〜〜っと…、

 誰でしたっけ?」

「こらチシブキ!

 いくらなんでもハシバさんに失礼だろうが!」

「馬鹿、

 ハルタだろ?」

「いや、キシダじゃなかったか?」

「ハンダだったかも…」

「ハシダです!」

「ああそうでしたっけ」

「まったく…、

 いい加減覚えといてくださいよ」

「いやあ、

 覚える必要性が皆無なもので…」

「馬鹿野郎!

 本当の事言ったらイシダさんが気を悪くするだろ!!」

この後トレーニングルームは血に染まったという。
 


「で、

 どうしたの?」

「はあ…、

 (怒らせたら怖い人だ…)」

「(チシブキやホシカワといい勝負だな…)

 いや、

 この周辺に異常なエネルギー反応が確認されたんで念のため…」

「なるほど。

 じゃ、

 頑張ってね」

「ちょっと待ってくださいよ!

 じゃって何ですかじゃって!」

「だって私有給休暇中だし」

「(ガクラ病院送りにしといてよく言うよ)」

その時野外訓練場の方で爆発音が聞こえた。

「何だ?」

「戦闘訓練でもしてんじゃないですか?」

「今の時間は室内トレーニングのはずだけど…」

「え?」

「じゃあ…」

「今のは…?」

「行ってみるしか無さそうだな…」

「あ、はい!」

 
 
野外訓練場、

「…」

「先輩、

 あれは…?」

そこには鳥のような足が生えたジャンボジェットが降り立っていた。

どうも着地した時にスカイファイターの訓練機を踏み潰したらしい。

「ジャンボジェット機」

「何で足が生えてるんですか?」

「なんだろう?」

その時ジェット機に変化が現れ始めた。

表面が全体的に柔らかい感じになった。

機首の部分がくびれていき、

まるで生き物の首のようになった。

機体後部も細長くなっていき尾のような形状になった。

窓は自然に消えていった。

機体が先端から上下に少し割れて牙と舌が覗いた。

コックピットの窓ガラスは2つを除いて消え、

残った窓ガラスは丸い眼のような形になり、

光が灯った。

「か…」

「怪獣になった…」

「チシブキ!

 他の皆を避難させろ!

 俺は基地に連絡する!」

「了解!」

 
 
「隊長、

 サイゴウ隊員からの通信です!

 TSF日本支部研究所に怪獣が出現したそうです!」

「何だと!

 ホシカワ!

 スカイファイターで出撃だ!」

「了解!」

 
 
「というわけで野外訓練所が怪獣に現れたんです!

 避難に落ち着いて速やかしてださい!」

「お前が落ち着け!」



「連絡終了…、

 よし!」

連絡を終えたサイゴウは腕をクロスして叫んだ。

「フロス!」

次の瞬間からサイゴウの体は光に包まれながら少しずつ女性化していった。

女性化が終わった所には赤と銀のツートンカラーが浮かび上がった。

胸が盛り上がって固まりプロテクターになった。

顔は髪の毛ごと固まり無機質な物に変わった。

そしてフロスとなったサイゴウの体は少しずつ巨大化していった…

 
 
チシブキ達は全員がランドファイターに乗り込んで脱出を試みた。

しかし…、

「何だこりゃ…」

「見えない壁があるぞ…」

訓練所の周囲にはバリアーが張られていた

「仕方が無い、

 引き返そう」

「それが良さそうっすね…」

「ええ…、

 あれ?

 ユキムラ博士から通信だ…」

『チシブキ君?

 訓練所の周囲100mにはバリアーが張られている…』

「いや、

 もう遅いですよ」

『あ、そう…

 それとその怪獣の正体が判明したわ』

「本当ですか?」

『奇怪生命体ワイエス、

 何か別の物体と融合して怪獣化する生命体よ…』

「別の物体?」

『ええ…、

 どうやらあれは778号便と融合しているようね…』

「778号便って何ですか?」

『あのね…、

 とにかく早く乗員乗客を救出しないと!

 計算では制限時間は3分間!

 それを越えたら乗客もワイエスに同化されてしまうわよ!』

「…何だってええ!!!!!」

『本来は1ヶ月間は大丈夫なんだけど…、

 融合されてすでに1ヵ月が経過してるからね…』

「なるほど…、

 解りました」

 
 
フロスはワイエスの懐に飛び込むと羽を掴んで投げ飛ばした。

そして、そのまま馬乗りになると

チョップにパンチの連続攻撃を食らわせ、

さらに首を掴んで持ち上げて地面に叩きつける。

その勢いのまま後ろに下がると

必殺技・ティエシウム光線の発射準備を始めた。

だが、今発射しようとした時チシブキの叫び声が響いた。

「攻撃をやめてくれ!

 そいつの体内には多数の人間が閉じ込められているんだ!」

それを聞いたフロスは光線発射を中止し、

ワイエスに飛び掛ると地面に押さえつけた。

 
 
「フロスがワイエスの動きを止めてくれた、

 今のうちに突入して救助するんだ!」

「誰が!?」

「僕達しかいないだろ!

 他に誰がいるんだ!」

「そうか…、

 行くぞ皆!」

「おっしゃ!」

「やったるぞ!」

「どうやって入るんですか!?」

「なんとかなる!」

「そんな無茶苦茶な…」

 
 
フロスのカラータイマーが鳴り出した。

あれから時間は刻々と過ぎている。

その時チシブキを先頭にした集団がワイエスに走り寄って来た。

「よし、テリブルシューター発射!」

「おっしゃ!」

「行くぞ!!」

「食らえ!!!」

前に飛び出てきた3人のテリブルシューター同時発射で

ワイエスの扉は破壊された。

「よし、ここから入れるぞ!」

「行くぞ!!」

「また随分と無茶苦茶な…」

「それでも実動部隊現役隊員ですか!?」

「そうだけど…」

何はともあれ全員無事にワイエスの体内に突入できた。

「早く救出しにくぞ!」

「ああ!」

「ほら、先輩も武器持って…」

「え、

 ええ…」

「っておい!

 それだけはやめろ!」

「おっしゃあああ!!!!!!!!!」

「へ?」

「ワイエスなんざ、

 俺様が直々にあの世に送ってやるわああああ!!!!!」

「な、何だ!?」

「チシブキさんは銃を持たせると暴走するんだ!」

「早く言え!」

「だってチシブキさんがいた時まだ訓練生だった人は知ってるんだから」

「俺が入ったのはその後だ!」

「死にさらせええ!!!!」

最悪の展開だった。

ちなみにこのドタバタの間にほとんどの乗員乗客達は無事に救助された。

 
 
「ほら!

 この人で最後です!」

「おし、

 脱出するぞ!」

最後の1人を救助した後訓練生達も脱出した。

「なんとか間に合ったな…」

「でも何か忘れてるような…」

その時ワイエスの体内から咆哮が轟いた。

「敵は何処じゃあああああああ!!!!!!!」

「あ…」

「チシブキさん忘れてたああああ!!!!!!!」

フロスはその叫びを気にせず(おい!)ティエシウム光線を発射した。

ティエシウム光線を撃ち込まれたワイエスは爆発四散した。

 
 
数日後、

TSF日本支部治療センター、

778号便に乗っていた人々は治療センターに運ばれた。

幸い後遺症のような物は発見されなかった。

そしてチシブキは…、

「ガクラ先輩!

 御見舞いですよ!」

「ああ…」

「何黙ってるんですか?」

「(お前の生命力に驚いてるんだよ!)

 それにしても良く死ななかったよな…、

 お前怪獣の爆発に巻き込まれたんだろ?」

「そうでしたっけ?」

この瞬間実動部隊隊員たちはつくづく思い知らされた。

『暴走中のチシブキは不死身である!』

 
 
おわり



出演
隊長 ゴウダ・テツタロウ
副隊長 フルカワ・トモミ
隊員 ガクラ・アキラ
隊員 サイゴウ・ツヨシ
新入隊員 チシブキ・モンザエモン
博士 ユキムラ・フユコ
オペレーター ハシダ・ミカコ
訓練生 ハシダ・タカヤス
他訓練生多数



この作品は匿名希望さんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。