風祭文庫・ヒーロー変身の館






「ウルトラウーマン・フロス」
(第13話:すれちがう思い)



原作・匿名希望(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-187





時は西暦20XX年、地球では怪獣や宇宙人の襲撃が多発していた。

それらの事態は国連軍では対処しきれないと判断した人類は

特殊科学戦隊TSFを結成し、迫り来る脅威に立ち向かっていた。
 
 
『お前の行き先が決まった』

ギャラクシーポリス本庁舎に人事発令の声が響く。

『太陽系第3番惑星地球だ。

 記憶操作はすでに行っておいた。

 詳しい内容は到着後に伝える』

『解りました!』

『頑張れよ!

 ウルトラマン・クレス!』

仲間達に送られて、

クレスは意気揚々と飛び立っていった。
 
 

「おい、新入隊員が入るらしいぞ」

「へー、どんな奴だ?

 チシブキみたいなのはごめんだけどな…」

「俺も…」

「何を話してるんですか?」

「あ、チシブキ!

 いや、新入隊員が入ると言うんでな…」

「何か慌ててごまかしてませんか?」

「そんなことはないって!」

「でも、どんな人ですかね」

「さあな」

「おい!

 新入隊員が来たぞ!」

「あ!

 隊長」

「こちらが新入隊員のカツラだ」

「新入隊員のカツラ・タケシといいます!

 よろしくお願いします!」

「わりとまともな名前だな」

「まあ、チシブキ・モンザエモンに比べたら…」

「どういう意味ですか?」

「あ、気にするな」

「カツラはサイゴウとコンビを組むことになった。

 色々と教えてやれ」

「了解!」
 

 
「これがランドファイターだ」

「へえ、これが…」

「結構色々な装備があって地上戦の要だ」

「なるほど」

「あっちのはスカイファイターだ。

 バブル時に数百台は製造されたんだが、

 今では数年に一台できればいい方の中古機なんだよな、

 その分安いけど…」

「あの、バブルって何ですか?」

「お前数年前に起きたグランドクロスバブルを知らないのか?」

「資料に載ってなくて…」

「資料?

 何だそりゃ…」

「いや、何でも無いです」

「ふうん、そうか。

 とりあえず俺はちょっと用事があるからな、

 そこら辺の奴に適当に訊いてくれ」

「用事?

 何処にですか?」

「便器」

「あ、なるほど…」

 
 
トイレ。

「ふう、出た出た」

(彼、何か怪しいわね)

「…ついでに花子さんまで出たのか?」

(フロスですよ!)

「フロス!?

 お前しゃべれたのか!?」

(前に言ったでしょ!

 フロスフラッシャーで短い間なら会話が出来るって!)

「そうだっけ?

 まあ、いい。

 怪しいって、誰が?」

(カツラ隊員よ。

 資料って普通は言わないでしょ。

 それに彼から宇宙人反応が出てるの)

「じゃあ、カツラは宇宙人なのか?」

(おそらく。

 でも目的がわからないのよ)

「目的か…」

 

 一方、カツラは…。

「それにしても、

 あのサイゴウって人何か怪しいよな…、

 半分くらい宇宙人反応が出てる…。

 宇宙人と地球人の融合か。

 TSFの隊員と融合して何をする気なんだ?」

彼、カツラ・タケシの正体はギャラクシーポリスが送り込んだ若き戦士、

ウルトラマンクレスなのだ。

彼は記憶操作によって「カツラ・タケシ」という1人の地球人として

この地球に来たのである。

フロスと違う種族の彼はある程度大気汚染に耐性を持っているため、

単独でも、3分ほどなら巨大化状態で活動できるのである。
 

 
「え〜っと、次に見るのは…。

 げ!新兵器開発研究所だ!」

「何故そんなに嫌がるんですか?」

「…訊かない方がいい」

「あ、そうですか…、

 じゃあ訊きません…」

「これで終りだな」

「あれ、通信だ。

 隊長からか…」

『XX地区に謎の宇宙人が出現した!

 すぐに現場に急行してくれ!』

「了解!

 カツラ、

 ランドファイターに乗れ!」

「あ、はい!」

 
 
XX地区。

「これでも食らえ!」

「ぐああああ!」

ドッカーン!

サイゴウ達が駆けつけた時にはもう倒されていた。

「あ、もう倒されてる」

「遅かったな、サイゴウ。

 何してたんだ?」

「いや、道に迷って…」

「なるほど。

 それよりもこいつ、

 妙な事口走ってたんだ」

「妙な事?」

「『俺には仲間が後2人いる』ってな」

「仲間?」

「なんでも、

 姿を自由に変えられる奴と、

 別の生命体と融合できる奴がいるらしい」

「そりゃ結構危険では…」

「だからTSF隊員達で探してるんだ。

 お前らも早く探せ!」

「りょ、了解」

 

XX地区西。

サイゴウと宇宙人が戦っていた。

「くそ、テリブルシューター発射!」

「ぐわ!」

ドッカーン!

「ふう、何とか倒したな。

 しかし、

 よりによってゴキブリに融合してるとは…。

 いくらなんでも早すぎるぞ…。

 後は姿を自由に変えられる奴か…、

 まさか!?」

 

XX地区東。

カツラと謎の宇宙人が戦っていた。

「テリブルシューター発射!」

「ぎゃあ!」

ドッカーン!

「ふう、強敵だった。

 しかし、

 まさかゴキブリに変身してくるとは…、

 小さすぎてわからないよ…。

 後は他の生物と融合できる奴か…、

 まさか!?」

 
 
XX地区中央。

サイゴウとカツラが出会った途端、

カツラがいきなりサイゴウに銃を向けた。

「な、何だ!?」

「お前の正体はわかっている!

 早く正体を現せ!

 (最後の1体はおそらく、

  サイゴウ隊員と融合してるんだ)」

「何!?

 (やはり、

  最後の1体はカツラだったのか!)」

お互いに見事なまでの誤解だった。

「しかたがない、

 フロス!」

次の瞬間サイゴウの体は光に包まれた。

サイゴウの体は少しずつ女性化していった。

女性化が終わった所には赤と銀のツートンカラーが浮かび上がった。

胸にプロテクターができ、

銀色になった髪の毛は固まり、

顔は無機質な物に変わった。

そしてサイゴウ…、

いや、フロスの体は少しずつ巨大化していった…。
 

 
「正体を現したか、

 それでは僕も、

 クレス!」

カツラはポケットから何か棒状の物体を取り出すと、

空にかざして叫んだ。

次の瞬間、光の中からウルトラマンクレスが現れた。

身長40mのウルトラ戦士同士の戦いが始まった。

しかし、戦いの理由は完全な誤解である。

 

 
『隊長!』

「どうした!フルカワ」

『フロスが何かと戦っています。

 実力は五分五分のようです』

「よし、解った!

 スカイファイターの所に行ってくれ!

 私もすぐ行く!」

 

フロスとクレスの戦闘能力は五分五分であった。

一進一退の攻防が続いていた。

その時スカイファイター5号が現れた。

「よし、ミサイル発射!

 目標フロスと戦う謎の宇宙人!」

ミサイルはお約束どおりフロスを直撃した。

フロスはお返しにエネルギー弾を撃ち込んだ。

(TSFに攻撃を受けたうえに、

 TSFを攻撃した。

 やはり敵だ!)

いつものことだった。

 
 
五分五分の攻防が続く中、

ついにお互いの必殺光線を撃ち合った。

フロスのティエシウム光線と、

クレスのエムシウム光線の威力はほぼ互角だった

(何だって!)

お互いに驚いたようなそぶりを見せた時、

お互いのカラータイマーが鳴った。

(仕方が無い、

 ひとまず退却しないと!)

2人とも空を飛んで退却した。

 

「くそ、強いなあいつ」

サイゴウは町のはずれを歩いていた。

「しかし、何故逃げたんだ?」

自分と同じ理由である。

その時、

カツラが突然現れた。

「何!」

サイゴウがテリブルシューターを構えようとした時、

カツラは突然土下座をした。

「な、何だ?」

「すみません!

 勘違いしていました!」

「はあ?」

 
 
カツラによると、

今の戦いをギャラクシーポリスに送った所、

思いっきり勘違いだということが判明したので、

わざわざ謝りに来たらしい。

「つまり、お前はフロスの同僚なんだな?」

「はあ、

 これでもまだまだ見習い隊員ですけど…」

「(見習いであの強さ!?)」

「僕がギャラクシーポリスに入ったのが、

 フロスさんが地球に行った後だったので、

 敵と勘違いして戦いを挑んでしまいました。

 本当にすみません!」

「はあ…、

 謝る必要は無いぞ。

 (勘違いはお互い様だし)」

「あ、ありがとうございます!

 僕はもう帰らないと…」

「帰るだって!

 何故!?」

「いや、とりあえず帰れと言われまして…、

 さようなら」

「…またな!」

「はい!」

こうしてカツラは帰っていった。

関係者には記憶操作が施されたため、

カツラは最初からいなかったことになっていた。

 
 
「ん?

 何だありゃ」

サイゴウは空に浮かぶ妙な文字を発見した。

(あれはウルトラ文字です)

「うわ!

 驚いた…、

 慣れないときついな…」 

(まあ、まだ2回目ですから)

「しかし、

 そういえばこの前もあんなのあったよな。

 で、何て書いてあるんだ?」

(私への連絡です。

 貴方は知らなくてもいい内容です)

「おいおい。

 まあ、秘密ならしかたがないか」

そのウルトラ文字の意味は次の通りだった。

『ギャラクシーポリス新入隊員試験へのご協力感謝する。

 今の戦いの結果クレスは合格となった。

 この前も言ったがこの試験のことは極秘であるため、

 例え自分と合体している人間にもこの事は秘密である。

 しかし、君の演技は真に迫っていたな。

 君とクレスとの戦いまで状況を誘導するのには十分な演技であった。

 わざわざ人造生物を3体も送り込むほどではなかったな。

 これからも健闘を祈る。

 ギャラクシーポリス隊長、ウルトラマンライラス』

 

おわり



出演
隊長 ゴウダ・テツタロウ
副隊長 フルカワ・トモミ
隊員 ガクラ・アキラ
隊員 サイゴウ・ツヨシ
新入隊員 チシブキ・モンザエモン
新入隊員? カツラ・タケシ



この作品は匿名希望さんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。