風祭文庫・ヒーロー変身の館






「ウルトラウーマン・フロス」
(第12話:伝説の英雄)



原作・匿名希望(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-186





時は西暦20XX年、地球では怪獣や宇宙人の襲撃が多発していた。

それらの事態は国連軍では対処しきれないと判断した人類は

特殊科学戦隊TSFを結成し、迫り来る脅威に立ち向かっていた。
 
 

ある日、TSF実動部隊の元に一本の電話が入った。

「はい、こちらTSF…、

 へ?」

『此処の所毎日悪夢を見るんです…。

 病院に行っても原因がさっぱり解らなくて…』

「奥さん…、

 そういうのはMMRかSRTにでも持ち込んでください。

 うちは怪獣や宇宙人災害専門ですよ」

『はあ…、

 そうですか…』

しかし…、

その後数週間にわたり似たような現象が多数確認された…。
 
 

そのころ肝心の主人公・サイゴウは

有給休暇をもらって自宅で寛いでいた。

「ふわああ〜あ…、

 もうこんな時間か…」

(だるそうですね)

「どわ!

 急に話しかけるな!

 心臓に悪い!」

(いつもいつも驚かないでくださいよ…)

「驚くなって言う方が無理じゃ!

 まったく…、

 此処の所話しかけられないから油断してた…」

(いやあ、戦うと精神的に少し負担がかかるもので…)

「ようするに寝てたんだろ」

(…そうなりますね)

「まったく…。

 そういえばフロス」

(何ですか?)

「近所のオバさんが此処の所変な夢ばっかり見るって

 言ってたけど何か知らないか?」

(悪夢?)

「ああ、隣でも同じだったらしい」

(どんな夢?)

「何か別の存在に変化して

 変な事に巻き込まれるっていう…」

(…まさか)

「何か知ってるのか?」

(あいつの手口に似てますね…)

「あいつ?」

(バーク星人、

 生物の悪夢を食べて生活している宇宙人です。

 中には無理矢理悪夢を見せる性悪な連中もいます。

 今サイゴウさんが話した夢はそいつらの中の1人、

 ムクアって奴が得意としてるパターンです)

「なるほど…、

 そいつの仕業かもしれないわけか…。

 そういえば、

 悪夢を見る人は徐々に増えてるらしいな…」

(それは奴らの常用手段ですよ。

 まずはある一点から初めて徐々に範囲を拡大するんです)

「しかし、

 夢の中の話じゃどうにも出来ないな…。

 無理矢理悪夢を見せるっていうことは

 夢をある程度操作できるようだし…」

(変身さえできればなんとかなるんですけどね)

「何でだ?」

(さあ…、

 何故か本来の姿のウルトラ族は操作できないみたいなんです。

 どうも抗体があるみたいで…)

「ようするに俺と合体してる状態では操作されるということか?」

(はい)

「そうか…。

 ところで何でそんな事が解ってるんだ?」

(前にも地球で似たような事があったらしいんです。

 その時は最初に地球防衛に就いた伝説の英雄が戦ったそうです)

「伝説の英雄?

 そういえば…、

 数100年程前から度々ウルトラ戦士が出現したらしいな。

 大抵はいつのまにか出なくなったらしいがな…」

(任務が終わると色々と理由をつけて帰りますからね。

 中には地球にとどまっている人もいるらしいですけどね。

 この前の戦いの時も数人来たし…)

「なんでまた?」

(例えばウルトラ戦士の力を手に入れた地球人とかは

 宇宙に戻る必要は無いでしょ)

「なるほどな。

 で、最初に地球を守った戦士ってどんな奴なんだ?

 それと誰が変身するんだ?」

(何でそんな事を訊くんですか?)

「まあ先輩に当たるわけだし…、

 何か手がかりがあるかもしれないし…」

(なるほど。

 その人の名前はたしかウルトラマン・ウラヌスだったと思います。

 たしか変身する人は地球防衛軍の女性隊員だったはずです、

 名前は…、

 カミ…、

 …)

「忘れたな…」

(ええ…)

「しかし…、

 性別が違うな」

(私達だって同じでしょ?)

「それもそうだな。

 しかし、何でそんなに詳しいんだ?」

(あ、そのウラヌスが死んだ年が私の誕生日なんです)

「お前長生きしてるんだな…」

この光景を見た人が居たら、

都内の精神病院に患者が1人担ぎ込まれる事になったかもしれない…。

 
 
その夜、サイゴウの夢の中では…、

「ふふふ…、

 目覚めろ!」

「ってどわ!

 いきなりなんだ!?」

「悪夢の世界へようこそ…、

 俺はバーク星人ムクア…、

 ウルトラ戦士と融合している奴を片付けておこうと思ってね…」

「変な奴が出てきたな…」

「この世界で俺に殺された者は2度と目を覚まさない!

 したがってお前を殺せばフロスに邪魔されることも無い!」

「妙にテンション高いな…、

 フロス!」

「させるか!

 転生!」

次の瞬間サイゴウの体は光に包まれた。

光がはれたとき、

そこには、謎の男女が立っていた。

ちなみに女は寝ていた。

「な、何だこれは!」

「お前の前世の姿だ。

 私は生き物の前世の記憶を読みとって再現することが出来る」

「くそ!

 じゃあ、この女はフロスか?」

「そうだ」

「ふわああああ…、

 あれ、貴方誰ですか?」

「気づけよこの状況に!!!」

 
 
「で、どうするんだ?

 この状況じゃあ…」

「確かに…、

 まあ目が覚めればなんとか…」

「おい!

 俺を忘れてるだろ!」

「あ、そうだ」

「忘れてた…」

「忘れるな!

 行くぞ!

 転生!」

「どわ!」

「くっ!」

 
 
『前世その2、アルミタと火星人(マー○ア○ック版)』

「ぐわおおおお!!!!」

ビーーーーー!!!

「ぎゃあああ!!!!!

 転生!!」

 
 
『前世その3、ゴ○ラとア○ギ○ス』

ゴオオオオ!!!

ゴロゴロゴロゴロ…、

ドゴン!!!!

「ぐわあああ!!!!

 て、転生!!」
 
 
『前世その4、男女カップル』

「こ、今度はまともそうな…」

すると、

男(サイゴウ)と女(フロス)の側に

突如戦車と戦闘機(!?)が出現した。

「なんだ?」

男(サイゴウ)と女(フロス)はその戦車と戦闘機に乗り込んだ。

「へ?」

どうやら軍人だったらしい…。

「ちょっと待て…」

そしてムクアに砲撃を始めた。

「どわああああ!!!!

 何でお前らの前世は物騒な奴ばっかりなんだーっ!?」

「俺達が知るか!!!!」

当然である。

知っていたら別の意味で凄い。

「くそ!

 転生!」

 
 
『転生その5、女性』

「やっと今度は安全そうだな…」

「って私だけじゃないですか!

 サイゴウさんを何処にやったんですか!?」

「俺だって知らん!

 こんな事は初めてだ!」

「まったく…、

 あれ?

 これは…」

女性(フロス)は胸ポケットに何かが入っているのを見つけた。

「え〜っと…、

 カミヤ・ノゾミ…、

 地球防衛軍隊員…」

「それがどうした?

 武器持ってないと意味が無いだろ?」

「たしかに…」

「じゃあ行くぞ!」

ムクアはそう叫ぶと手から謎の光弾を連続発射した。

「くっ!」

フロス(ややこしいのでこれ以降はフロスに統一)は咄嗟にかわした。

「逃がすか!」

ムクアはフロスを追いかけていった。

なんかさっきの恨みも含まれているらしく、

ムクアの攻撃には凄まじい殺気が込められていた…。
 
 
フロスはムクアの攻撃から身を守るために物陰に隠れた。

(変身できればなんとかなるんだけど…、

 この姿じゃ変身は無理、

 大ピンチって奴か…)

その時フロスは自分の右手に

謎の指輪がはめられていることに気がついた。

(何かしら…、

 これ…、

 待てよ…、

 何かでこの指輪を見たような…、

 確かあれは…)

「あ〜〜〜!!!!」

突然フロスは叫び声をあげた。

「サイゴウさんがいない理由があれだとしたら…!

 これならなんとかなるかも…。

 よし、一か八か!」

そう言うとフロスは右手を上に突き出した。

次の瞬間フロスの体は光に包まれた。

 
 
ムクアは叫び声のした所を目指した。

「よし!

 そこだ!」

しかし、ムクアの体は謎の光に跳ね飛ばされた。

「ぐわ!!

 何だ!?」

地面に降り立った光の中から出現したのは

伝説のウルトラ戦士…、

ウルトラマンウラヌスだった…。
 
 
ウラヌスは地面に落ちたムクアに飛び掛ると足を掴んで振り回し、

思いっきり投げ飛ばした。

地面に叩きつけられたムクアは

すぐに立ち上がるとエネルギー弾を連続発射するが、

だがウラヌスは腕でエネルギー弾を叩き落し、

逆にエネルギー弾を撃ち返す。

ムクアはギリギリでエネルギー弾を避けるものの

ウラヌスの飛蹴りを打ち込まれた。

よろめいているムクアにウラヌスは

必殺のコロニウム光線を撃ち込んだ。

「ぐわあああ!!!!

 くそ…、

 あいつらの前世がウルトラマンウラヌスだったとは…。

 しかたがない!

 戦略的一時撤退!!」

夢の中だったので死ぬことは無かったらしいが、

酷いダメージを受けたムクアは夢の世界から逃げることにした。

 
 
(サイゴウさん!!

 起きてください!!)

「…フロス?

 どうしたんだ?

 ムクアは倒したんだろ?」

(現実世界に出てきてるんですよ!

 早く変身してください!!)

「何!?」

サイゴウが窓から外を見ると、

そこには今夢の中から脱出したばかりのムクアがいた。

どうやら宇宙に逃げようとしているらしい。

「逃がすか!」

サイゴウは外に出ると両腕をクロスさせて叫んだ。

「フロス!!」

 
 
「くそ…、

 今に見てろよ…。

 この次は必ず…」

宇宙に逃げようとしたムクアは後ろから何かに蹴り飛ばされ、

そのまま墜落すると同時に地面に降り立ったのはフロスだった。

立ち上がったムクアはエネルギー弾をフロスに向けて発射する、

だが、フロスはエネルギー弾をすばやく避け、

そのままムクアの背後に回りこむとパンチを数発ぶち込み、

さらに回し蹴りを決めた。

地面に叩きつけられたムクアは

再びエネルギー弾をフロスの足元に向けて発射した。

フロスはそのエネルギー弾を避けるために素早く後ずさりをし、

その一瞬の隙を突いてムクアは再び宇宙に逃げようとした。

しかし、フロスはその背後からティエシウム光線を浴びせた。

そしてムクアは空中で大爆発を起こした…。

 
 
翌朝…、

「ふわあああ…」

(眠たそうですね…)

「夢の中でも現実世界でも激しい戦いしてりゃ眠たくもなるよ…。

 あれからほとんど寝てなかったし…」

(でも今日は出勤じゃないですか?)

「そうなんだよな…。

 暢気にねてられるフロスが羨ましいよ…」

(ははは…)

 
 
貴方がもしも奇妙な悪夢を数日の間続けて見たとしたら…、

それは悪夢を狙って地球に来た…、

バーク星人の仕業かもしれません…。



おわり



出演
隊長 ゴウダ・テツタロウ
副隊長 フルカワ・トモミ
隊員 ガクラ・アキラ
隊員 サイゴウ・ツヨシ
新入隊員 チシブキ・モンザエモン



この作品は匿名希望さんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。