風祭文庫・ヒーロー変身の館






「ウルトラウーマン・フロス」
(第11話:『飛竜』と呼ばれた男)



原作・匿名希望(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-185





時は西暦2XXX年、地球では怪獣や宇宙人の襲撃が多発していた。

それらの事態は国連軍では対処しきれないと判断した人類は

特殊科学戦隊TSFを結成し、迫り来る脅威に立ち向かっていた。


 
「スランプ?」

「そうなんです…。

 何かナリタ博士がスランプ気味で…」

「あの博士はスランプ気味の方が

 平和でいいんじゃないですか?」

「いえ、最近発明品のうっかりミスが目立つんです」

……………

「そりゃ大変だああああああ!!!!!!」
 
「諸君!

 緊急事態が発生した!

 スランプが原因で

 ナリタ博士のうっかりミスが増加しているとの報告があった!

 世界の平和を守る我々TSFとしては最悪の事態は避けたい!

 そこで何かいいアイディアは無いか!?」

「とりあえず、スランプの原因は何なんですか? 

 スランプ治療のためにはその元を取り除くのが一番ですよ」

「それが良く解らんらしい…」

「じゃあどうしようも無いじゃないですか」

「だから困ってるんだ!」

「あの、隊長…。

 とりあえずその原因を突き止めるのはどうでしょうか…」

「おお!

 それだ!」

「気づいてなかったんですか!?」

「その通りだ!」

威張って言うことではない。
 
「手分けして証言を集めろ!」

「了解!」



(証言その1、タカマツ・ヒデト

  担当者、チシブキ・モンザエモン)

「ミスが目立つ事以外は特に変わった事は無いですよ」

「そうですか…」



(証言その2、シラガミ・クロキチ

  担当者、ゴウダ・テツタロウ)

「いつもと変わった事は無かったな。

 とりあえず私は一昨日の実験失敗の後始末を

 指揮しなければならないので後でな…」

「あの爆発事故の処理まだだったんですか…」



(証言その3、ユキムラ・フユコとマツガヤ・ミツル

  担当者、フルカワ・トモミ)

「さあ…、

 別に何も気づかなかったけど…」

「私も特には…。

 1週間前からナリタ博士の発明品が起こした事故の解析で忙しかったし…」

「そ、そうですか…」



(証言その4、ヤブウチ・トクロウ

  担当者、サイゴウ・ツヨシ)

「わしが何か知るわけ無いだろ。

 そんな事より早く寝かせてくれ。

 1ヶ月前からあの発明馬鹿のせいで少しも寝てないんだぞ」

「すみません…」



(おまけ、ホシカワ・セイコ

 担当者?、ガクラ・アキラ)

「別に気にも留めなかったわよ。

 あんな自称天才発明家の変態の事なんか…」

「どうでもいいけど何故お前がここにいるんだ!?」


 
「全然手掛かりにならないですね…」

「それにしても、

 ホシカワの奴なんでここにいたんだ?

 入り口はロックしてあるはずだぞ…」

「あいつなら来るたびに扉ぶち破って入って来てんですよ。

 今はそんな事どうでもいいでしょ?」

「おいおい、

 あの扉は水爆の直撃を受けても余裕でお茶を飲むことができる

 とっても特殊な超合金で出来てるんだろ?

 ますます人間じゃねーな…」

「そうか…、

 道理で最近日本支部が赤字続きだと思った…」

「今はそれ所じゃない!」

「そうだった…。

 TSF存続の危機だったんだ…」

「いや、全世界の危機かもしれませんよ…」

「確かに、

 このままでは宇宙規模の大惨事が起きかねません…」

言いすぎである(ような気がしないでもない)。
 


「とりあえず、

 博士に発明の自信をつけさせればいいんじゃないですか?」

「自信のつけすぎは逆効果だぞ…。

 大体どうやって…」

「新発明の実験をなんとか成功させた所を

 ビデオに撮って見せてみたらどうでしょうか?

 此処の所失敗続きでしたし…」

「なるほどな…。

 だが、誰がやるんだ?」

「そりゃあ、言い出しっぺの副隊長が…」

「何でですか!

 隊長がやってくださいよ!

 一番偉いんですから!」

「私は不死身のチシブキが適任だと思うが…」

「いや…、

 サイゴウ先輩、

 先輩に御譲りします…」

「おい!

 俺よりもガクラの方が鍛えられてるぞ!」

「鍛えられたくて鍛えられたんじゃない!

 あの凶暴女のせいで…」

「生命保険はつくんですか?」

議論は翌朝まで続いた。



議論の結果、

まだ実験が行われていない発明品が5個あるため、

交代で1人ずつやるということで落ち着いた。
 
しかし事件はすでに始まっていた。

都内某所にある動物園で子供が次々と消えた。

園内の従業員はそんな子供達はいなかったと証言したが…。

(なお、消えた子供達の中には基地から帰った後

 そのまま遊びに来ていたホシカワも含まれているらしい…)
 


(発明品その1、ネオテリブルシューター)

「連射能力、

 威力、
 
 自動照準…、

 全てにおいて強化された最強の新兵器だ!(…と思う)」

「じゃあ、これはチシブキだな」

「何でですか!?」

「何も言わずこれを握れ!」

「は、はい!

 …おっしゃあああああ!!!!」

チシブキは的に向かって狙いを定め引き金を引いた!

チュドーーーーン!!

「…」

「…」

「…」

「…」

引き金を引いた途端にネオテリブルシューターが爆発し、

チシブキはそのまま治療センターに運ばれた。

「…発明品その1失敗」

「了解」

 

(発明品その2、ランドファイターハーフ)

「ランドファイターの運動能力を

 そのままバイクに持ってきた地上戦の新兵器だ!(…そうだ)」

「これはバイクに乗るのが得意な副隊長が良いんじゃないでしょうか?」

「そういえば得意って言ってましたよね。

 たしかなんかのグループのリーダーやってたとか…」

「はいはい!

 え〜っと、これがアクセルで…」

フルカワはランドファイターハーフに乗り込みエンジンを入れた。

ブオオオオーーーン!ドゴン!!

「…」

「…」

「…」

ランドファイターハーフは突然猛スピードで走り出して壁に激突し、

フルカワはそのまま治療センターに運ばれた。

「…発明品その2失敗」

「了解」

 

(発明品その3、コンパクトスカイファイター)

「1人乗りの超小型戦闘機だ!

 スピードと旋廻能力はスカイファイターを確実に上回る!(…と思う)

 これはスカイファイターの操縦暦が長い私が乗ろう」

「気をつけてくださいよ」

「なあに、何年スカイファイターを操縦してると思ってるんだ?」

そういうと隊長はコンパクトスカイファイターに乗り込むと離陸した。

ヒューーーー、ドスン!!

「…」

「…」

コンパクトスカイファイターは離陸した直後に失速し、

隊長は治療センターに運ばれた。

「…発明品その3失敗」

「駄目だこりゃ…」

 

「さて、発明品その4は…」

「あーもう!

 さっきから連絡してるのになにやってるだ!?」

「どわ!長官!?どうしたんですか!?」

「さっきから連絡に全然でないから直接乗り込んだんだ!

 一体何やってたんだお前ら!」

「何って…、

 ナリタ博士スランプ脱出作戦を…」

「とっとと出動せんか!

 子供が行方不明になってるんだぞ!」

「は、はいーーーー!!!!」

サイゴウとガクラは大慌てで出動した。

きっちり発明品その4とその5は持って行ったが…。

 

「で、何を調べたらいいんだ?」

「さあ…、

 『この動物園で子供が失踪したから調べろ!』なんて、

 何をどう調べたらいいのか解らんよ…」

「そういえば、

 発明品その4って確か宇宙人探知機だったよな…。

 この事件が宇宙人の仕業なら何か反応があるんじゃないのか?」

「おいおい…、

 まあ、それしかないか…。

 (フロスに反応するかもしれんが…)」

「え〜っと…、

 メインスイッチは…」

「気をつけろ、爆発するかもしれないぞ」

「解ってる」

解るなよ。

「こ、これは…」

「どうした!?」

「周囲の人間全部に反応している!」

「あ、人間も宇宙人だから…」

見事なまでの欠陥品だった。

「じゃあ、発明品その5は!?」

「え〜っとこのカプセルだな…」


「薬か?」

「何か袋に書いてあるぞ…、

 何!

 超高性能小型爆弾!?

 『このカプセルの中身を外気に触れさせると
 
  ダイナマイト数十万本分の威力の大爆発を起こす』!!」

「おいおい!

 随分と物騒な物作ってるな…。

 ま、いつもの事だけど…」

「それはそれで問題だけどな…。

 とりあえず行くか…」

彼らはとりあえず動物園の中を歩き回り、

手がかりを探すことになった。

「随分と動物が少ないな」

「この前出来たばかりでまだ入荷出来てないらしい」

「ふ〜ん、そうか…。

 って…、あれ何?」

「あれ?」

彼らが狐の檻の前を通りがかった時、

そこでは信じられないことが起きていた。

1匹の狐が柵を左右に無理矢理広げてその隙間から脱走した…。

 

「…今の見たか?」

「見た」

「何あれ?」

「狐」

「狐ってあんな芸当できるのか?」

「多分無理」

「じゃあ今のは?」

「なんだろう?」

「…とりあえず追うぞ!」

「解った!」

とりあえず2人は逃げた狐を追うことになった。

その後ろから狐の飼育係もついていった…。

 

狐は信じられないほどの速度で走っていた。

その後ろを飼育係が追い上げていった。

すでにサイゴウとガクラはリタイヤしていた。

「はあ、はあ、はあ…。

 もう駄目…」

「なんかこういうの初めてじゃない気がするな…。

 しかし、あの飼育係よくついていけるな…」

「それよりも今のうちに発明品その5を

 安全な所に持っていったほうが良くないか?」

「そうだな…」

そう言うとガクラは発明品その5を探し始めた。

「え〜っと…、

 これはその4の方だな…」

その時ガクラ達の目の前をまだ走っている狐と飼育係が通り過ぎた。

「って何!?」

「どうした!?」

「宇宙人探知機の反応を見てみろ!

 あの飼育係なんの反応も無いぞ!」

「本当だ…、

 ってちょっと待て!

 どういうことだ?

 それ…」

「地球人も地球星人という宇宙人なんだから反応するはず…、

 なのになんの反応も無い…、

 ということは…」

「とにかく追うぞ!

 あの飼育係絶対に怪しい!」

「解った!」

そう言うとガクラは丁度走ってきた飼育係に体当たりを決行した。

飼育係はその勢いで思いっきり転んだ。

 

「おいおい…、

 無茶すんなよ…」

「そんな事より見ろよ」

飼育係は倒れこんだままである。

そして、皮膚の一部が破れ中から銀色に光る物体が覗いていた…。

「ロボットだと!?」

「ああ、どうやらこの動物園何かありそうだ…」

「でもどうするんだ?

 なんの手がかりも無いぞ…」

「手がかりなら有るぞ。

 さっきの狐だよ!」

「なるほど、そうか!

 で…、どうやってその狐を探すんだ?」

「…どうしよう?」

「俺に訊くなよ」

その時彼らの目の前を例の狐が通り過ぎた。

「…今の見たか?」

「見た」

「何故同じ道を走ってるんだ?」

「道に迷ったんじゃないのか?」

「…とにかく追うぞ!」

「おっしゃ!」

 

狐は園内を13回程走り回った挙句園長室にたどり着いた。

途中動物園の従業員を数人薙ぎ倒していたが気にしていないようだ(おい!)。

ちなみに従業員は全てロボットだった。

園長室にたどり着いた狐は扉に体当たりをし続けた。

「此処が園長室か…」

「こいつ園長に会いたがってるみたいだぞ…」

「まあ、俺達も園長に用があるわけだしな…。

 (それにしてもこの狐…、

  誰かに似てるような気が…)」

人間だったら相当な危険人物だろう…。

「誰ですか?

 さっきから騒々しいですね…」

「TSFです。

 貴方が園長ですか?」

「はい、私が園長のミヤゾノ・チョウスケですが…」

「さっきからこの狐が貴方に会いたいらしくてね…」

そんな微笑ましい雰囲気とは絶対違う。

「わざわざ檻を破ってまで此処に着たんですよ」

「そ、そうですか…」

「ところで、こちらではロボットの飼育係を雇ってるんですか?」

「い、いや!

 そういうことは無いですよ…」

「実はその後数人の従業員がこの狐に薙ぎ倒されましてね…、

 全員の傷跡から機械が覗いているんですよ」

それを聞いた園長は明らかに動揺していた。

「(顔に出るタイプみたいだな…)

 とにかく!

 貴方は一体何者なんですか!?」

「くそ!

 ばれちゃしょうがない!」

園長がそう叫んだ途端園長室の床が突然下がり始めた。

「な、何が起こった!」

「私はノモケ星人!

 この星を侵略するために地球人を誘拐して

 この星の動物に変身させ戦力を削る計画だったのだ!」

そもそも戦力になるような人間は滅多に動物園に来ないだろう…、

馬鹿である。

「計画を知られたからには仕方が無い!」

ばらしたのはこいつである。

「生きて帰すわけにはいかない!

 死んでもらう!」

その時園長室の動きが止まった。

「何だ!?」

「此処は我々の宇宙船の入り口だ。

 此処に着たからにはもう逃げられないぞ!」

そういうと園長は異形の怪物に変身した。

園長室はいつのまにか近未来的な設備が多数出現し、

宇宙船のコックピットに変貌していた…。

 

ノモケ星人は目から怪光線を発射して

ガクラとサイゴウと狐を追い詰めていた。

周囲の機械は相当頑丈らしく

怪光線を受けてもびくともしなかった。

「どわ!」

「くそ!

 このままじゃ…」

「二手に分かれよう!

 固まっていたらやられる!」

「解った!」

ガクラは狐を抱えるとサイゴウとは別の方向に走り出した。

「さてと…、行くぞ!」

そう言いながらサイゴウはテリブルシューターを構えると

ノモケ星人に向けて乱射した。

「その程度か…。

 それくらいじゃ効かんな…。

 今度はこちらの番だ!」

ノモケ星人が怪光線を発射しようとした時彼の背後で爆発音が響いた。

「何!?」

「後ろが隙だらけだ!」

いつの間にか背後に回りこんでいたガクラである(随分早いな…)。

ノモケ星人はまた光線を発射した。

サイゴウが撃った時にはもう遅く、

光線はガクラへと向かっていった。

「わっ!」

ガクラは咄嗟に避けた。

その時ガクラは何かのレバーを倒していた。

「何だ?

 このレバー…」

「そ!それは…」

「へ?」

そして宇宙船が揺れ始めた。

「宇宙船の起動レバーだ!」

「おい!!」

 

動物園は激しく揺れていた。

そして園長室のある小屋の周辺が盛り上がったかと思うと爆発し、

地下から巨大な円盤が出現した。

何故爆発したのかは不明である。

宇宙船の内部では3人+1匹が倒れていた。

「な、何が起きたんだ…?」

「起動レバーを倒したんで宇宙船が浮上したんだ…」

「何じゃそりゃ…?」

「ゆるさんぞ…、

 お前ら!」

ノモケ星人は怪光線を四方八方に乱射した。

「どわ!」

「でえ!」

ガクラとサイゴウは紙一重で避けた。

はずれた怪光線の一部は何かの機械を直撃し、

その機械は爆発した。

「し、しまった!」

重要な機械だったらしい。

そもそもそんな所で怪光線を乱射するとは…、

凄い馬鹿である。

その途端狐は光に包まれ一瞬にして人間になった。

「お、お前は…」

「ホシカワ!?

 何してんだ!?

 こんな所で!」

「狐なんかにされたお返しに一発噛み付いてやろうと思って

 わざわざ脱走してここに来たのよ!」

「じゃあ…、

 あの怪物狐は…」

「誰が怪物だ!」

「う、うわあああ!!!」

「う〜む…、

 とことん狐に縁がある奴だな…。

 これで九尾狐が憑いたら完璧だな…」

サイゴウは明らかに場違いな事をつぶやいていた…。

 

「例の動物園に謎の物体出現!

 どうやら宇宙船のようです!」

「本当か、マツガヤ!?

 ガクラとサイゴウは大丈夫か…?」

「どうやら宇宙船の内部にいるようです…」

「何でまた…」

「解りません…」

「兎に角、救援を…」

「あの、兎に角ってありましたっけ?」

「はぁ?」

「いや、いまそう聞こえたので…」

「……しかし、他の実動部隊は3人共治療センターに運ばれてるし…、

 誰が行くんだ?」

「(あれ?スルーですか?

  まぁいいや)

 で、長官や博士は?」

「私達が操縦できるタイプのスカイファイターは今整備中なんだ…。

 残ってるのはあれしか…」

「じゃあ、1人しかいないじゃないですか…」

「ああ…」

 

「早く脱出しないと!

 ノモケ星人がホシカワにぶん殴られて気絶しているうちに!」

「はいはい…、

 兎も角この扉を開けないと…」

「え〜っと…、

 扉を開けるにはどうしたら…」

「簡単じゃない」

「は?」

「うおりゃあああああ!!!!!」

ホシカワは叫びながらパンチで扉を破壊した。

「む、無茶苦茶するな…。

 もしかしていつもこうやってTSFに侵入してたのか?」

「ええ」

「末恐ろしい奴…」

「なんか言った?」

「いや、言ってません」

「ふうん」

ホシカワはすぐに走り出した。

そして、サイゴウもさっきから口からエクトプラズムが出している

ガクラを背負って走り出した…
 
「で、私が出撃することになったというわけか…」

「ええ」

「今は次の発明の準備で忙しいんだが…」

「いや、そこを何とか!

 (いっそこのまま発明を諦めて…)」

「まあ、いいか。

 しかし、あれはどうするんだ?」

「あ、デジモンの時以来日本支部に置いたままになってます。

 基地の復興のゴタゴタで忘れられてたらしくて…」

「なるほどな…」

 

サイゴウ達の行く手にはたくさんのロボットが立ちふさがった。

どうやらこの宇宙船の警備ロボットらしい。

もっとも、大抵登場する8秒後にはホシカワにスクラップにされているが…。

「で、どうやって脱出すんの?」

「どこかに出入り口があるはずだ!

 そこから脱出するしか…」

「でもこの宇宙船空飛んでるんじゃないの?」

「あ…」

「…あんた馬鹿?」

ホシカワに言われたら終りである。

「しかし、他に方法が…」

サイゴウがそう言った時突如右前方の壁を何かが突き破った。

ホシカワは思いっきりそれにまきこまれたが命に別状は無いようだ。

「何だ!?」

そこに現れたのはなんと『飛竜』だった。

「ナ、ナリタ博士…」

「早く乗れ!」

「何してるんですか?」

「お前らを助けに来たんだよ!

 酒屋の集金に見えるか!?」

「もうちょっと手段は選んでくださいね。

 まきこまれたのがホシカワじゃなかったら死んでますよ…」

「大丈夫だ!

 お前らが持って行った宇宙人探知機には発信機がついているんだ!」

「意味が解らないですよ!」

「いいから早く乗れ!」

 

「せ、狭いですね…」

「仕方が無いだろう!

 元々1人乗りなんだから!

 荷物置きが空いていただけマシと思え!」

「んな無茶苦茶な…」

「兎に角降りるぞ。

 これじゃ戦えん」

サイゴウ達は地面に降ろされた。

そして『飛竜』は宇宙船に向かって行った…。

 

「ガクラ、動物園の客を避難させてくれ!

 ホシカワはガクラに側にいてくれ!」

「おい!

 何で俺がホシカワと一緒なんだよ!?

 だいたい、お前はどうすんだよ!?」

「宇宙船があった所に行って見る。

 何か手がかりが有るかもしれない」

「おいおい…、

 まあ、いいか…(←おい!!)。

 何か見つけたら連絡しろ!」

「気をつけろよ」

「ああ…、

 あれ?」

「どうした?」

「発明品その5が無い…。

 何処かで落としたか?」

「何!?」

「ついでに探してきてくれないか?」

「解った!

 くれぐれも踏むなよ!」

「ああ」

 

丁度その頃、宇宙船の内部では…、

「くそ〜、このままでは済まさんぞ…。

 ノモケキング発進!!」

ノモケ星人は謎のレバーを倒した。

「それにしても、さっきから宇宙船のバランスが悪いような…」

壁がぶち破られた事に気づかないとは…、

正真正銘の馬鹿である。

 

「特に変わった所は無しか…。

 宇宙船はナリタ博士に任せればいいとして…、

 フロスに変身する必要は…」

その時地面が開いてそこから巨大なロボット

『ノモケキング』が出現した。

「…あるな」

サイゴウは手をクロスさせて叫んだ。

「フロス!」

 

フロスは巨大化する勢いでノモケキングに

強烈なアッパーパンチを打ち込んだ。

その上、思いっきり力を込めた体当たりをぶちかまし、

ついでにハイキックを打ち込んで完全に叩きのめした。

しかし、ノモケキングは立ち上がると、

フロスに抱きつくと力いっぱい締め上げる。

フロスはそれを強引に突き放すと

腕を掴んで一本背負いをかけるが、

しかし、あまりの重さにフロスは倒れこんでしまった。

ノモケキングは横に転がりながら立ち上がると

まだ倒れたままのフロスにキックを数回打ち込む、

その攻撃を凌ぎ、やっとの思いでフロスは立ち上がると、

すぐにノモケキングから離れ、

ティエシウム光線を撃とうとした。

しかし、その前ふりの最中に

フロスに向かってミサイルを撃ち込まれると、

後ろへと倒れ込み、

さらに立ち上がるまでの間に2、3発撃ち込まる。

危うし、フロス!!

攻撃後、やっとの思いでフロスはふらつきながらも立ち上がると、

前振りなしにティエシウム光線を発射した。

しかし、ノモケキングには効いていなかった…
 
「ティエシウム光線が効かない!?」

「随分と頑丈な奴ね…。

 等身大だったらよろこんで喧嘩申し込むんだけど…」

「(おいおい…)

 そんな事聞いてねーよ…」

 

一方、宇宙船は『飛竜』と激しい空中戦を繰り広げていた。

「くそ!

 こんな辺境惑星の戦闘機がこれほどまで手強いとは…」

ノモケ星人がそうつぶやいた時、

1台のロボットが操縦室に入ってきた。

他の乗組員が全部ロボットとは…、

仲間と縁の無いタイプのようだ。

『マスター、

 Tブロック、
 
 Sブロック、
 
 Fブロックがハカイされました。

 フッキュウのメドはたちません』

「解った」

『ホウコクシュウリョウ』

ロボットがそう言って立ち去ろうとした。

その足を下ろした先には袋に詰まったカプセル状の物体が転がっていた…。

 

チュドガーーーン!!!!!

ノモケ星人の宇宙船から突如爆発が起きると、

炎をあげながら動きを止めたノモケキングへと向かって行く、

そして、その直後、

カカッ!!!!

閃光と共に巨大なキノコ雲がわき上がっていったのであった。

「な、何だ!?」

『私にも解らん。

 一体何が起きたのか…』

「わ!

 博士!

 通信通じてたなら早く言ってくださいよ!」

「そういう問題?」

当事者が2人もいることは誰も気がつかなかった…。
 
その数日後何故かナリタ博士のスランプは解消された。

理由は不明である。



後日談

「博士、何か荷物が届いてますよ」

「そうか!

 やっと届いたか!」

「何ですか?

 その荷物」

「私の姉が漬けたタクアンだ。

 朝はどうもこれが無いと落ち着かなくてな…」

「そうなんですか」

「ああ。

 半年前の実験失敗の時に駄目にしてしまったんだ。

 漬けるのに半年近くかかるし…」

「大変ですね…。

 (半年前?

  何か引っ掛かるな…)」

 

くどいようだが、未だスランプの原因は不明である…



おわり



出演
隊長 ゴウダ・テツタロウ
副隊長 フルカワ・トモミ
隊員 ガクラ・アキラ
隊員 サイゴウ・ツヨシ
新入隊員 チシブキ・モンザエモン
長官 シラガミ・クロキチ
博士 ユキムラ・フユコ
研究員 マツガヤ・ミツル
医者 ヤブウチ・トクロウ
TSF新兵器開発部門担当者 ナリタ・ユキスケ
助手 タカマツ・ヒデト
女子高生 ホシカワ・セイコ
園長 ミヤゾノ・チョウスケ



この作品は匿名希望さんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。