風祭文庫・ヒーロー変身の館






「ウルトラウーマン・フロス」
(第7話:邪神の神殿)



原作・匿名希望(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-177





 
時は西暦2XXX年、地球では怪獣や宇宙人の襲撃が多発していた。

それらの事態は国連軍では対処しきれないと判断した人類は

特殊科学戦隊TSFを結成し、迫り来る脅威に立ち向かっていた。



その部族は1つの神を崇めていた。

しかしその神は邪悪な心を持ち部族を長年苦しめていた。

邪神を倒そうと部族の猛者が神殿に殴りこんだことも度々あったが、

帰ってくる者はいなかった…。
 
「モラン文化研究の第1人者である

 マサイ教授が行方不明になった事件を覚えているか?」

「あ、はい。

 確かどっかに実地調査に行ったっきり戻ってこないとか…」

「この衛星写真に映っているジャングル、

 マサイ教授はここで行方不明になった。

 その真相を探るのが今回の我々の仕事だ

 何しろ、この世界には謎が多い。

 このジャングルにどんな敵が待っているか解らないからな、

 謎の敵との戦いに慣れている我々に白羽の矢が立ったんだ」

「なるほど」

「しかし、

 こんなに樹が生い茂っていたらスカイファイターでの着陸は無理ですね。

 精々ジャングルの入り口辺りが限界では…」

「教授の目的地の位置はわかっている。

 入り口から徒歩で向かえばいい」

「と、徒歩!?

 この密林の中を!?」

「情けないな、チシブキ」
 


ジャングルの中。

「も、もうだめ…」

「ガクラ…、

 お前が1番情けないぞ」

「しかし、1日中歩きっぱなしですからね…。

 隊長、後どれくらいですか?」

「この地図だともうすぐだな」

「あの、1つ言ってもいいですか?」

「何だ?」

「地図、上下逆ですよ…」

「あ…、

 ということは…」

「迷いましたね…」

「いや、大丈夫だ!」

「何か秘策があるんですか?」

「私の第6感はよく当たるんだ!

 道はこっちだ!」

「遠まわしに迷ったって言ってません?」

「言ってない!」

「その自信は何処から…」

「おい!

 見ろっ

 村があったぞ!」

「何!?

 本当か!?

 私の第6感が当たったな」

「偶然じゃないですか?」


 
部族の村、長老の家。

「…つまり、

 教授は神の神殿に調査に行ったっきり戻ってこないってことですか。

 それにしても、

 長老って日本語がしゃべれるんですね」

「わしは新しい文化というのが好きでな、

 その男にニシン語とやらを教えてもらったんじゃ。

 ある程度ならしゃべることができる。

 ニシンの文化では特にマンコというのが」

ぶほっ!

TSFの隊員は飲み物を噴出した。

「その男が持ってきたものなんじゃが、

 甘くて中々おいしいかったぞ」

「それは…、

 マンコではなくアンコでは?

 それにニシンじゃなくて日本なんですけど…」

「おお、そうじゃった」

「(マサイ教授、

  言葉教えるならもっとしっかり覚えさせてください。

  アとマを間違えるこのじーさんもじーさんだけど…)」

「何かいいたそうだな」

「いえ、何でもありません」

「して、神の神殿とは一体!?」

「隊長、随分と唐突に話を変えますね」

「神の神殿とは、

 我等がチンコする…」

「信仰では…?」

「おお、そうじゃったな。

 我等が信仰する神の住まう神殿じゃ」

「まんまじゃん」

「まんまとは何じゃ?」

「別に気にしないでください」

「そしてその神が住まう神殿に許可無く貧乳した者は…」

「侵入でしょ…」

「あ、そうじゃったな」

「(このジジイ、
  わざとボケてんじゃないだろうな)」

 侵入した者には神罰が下されるという。

 この村の中を流れる川があったじゃろ。

 あの川の上流に神殿があるのじゃ」

「じゃあ、教授は…」

「うむ。

 神の怒りをかったのじゃろう。

 お前さん方も早くに帰ったほうが身のためじゃ」
 
「はあ」

「今日はもう遅い、

 ここに泊まっていきなされ」

「そうすか…」

 

その夜。

「おいチシブキ、どう思う?」

「何がですか?」

「さっきの長老の話だよ」

「何だっけ」

「お前な…。

 神の神殿のことだよ」

「ああ、あれですか」

「実は変な所があるんだ」

「変な所?」

「ああ、

 教授が残した資料によると、

 神殿に祭られている神というのは邪神のことなんだ」

「邪神?」

「邪な神と書いて邪神、

 つまり悪い神の事だ」

「そういうことだ」

「わっ!

 あんた誰!?」

「俺は長老の息子だ」

「あ、あんたも日本語を?」

「ああ、

 お前らが『門人の孤島かなわぬ灸を呼ぶ』と言う奴だ」

「あの、それってもしかして

 『門前の小僧習わぬ経を読む』ですか?」

「あ、そういえばそうだな」

「(あの親にしてこの子ありだな)」

「何の話だ?サイゴウ」

「どわっ!

 ガクラ!

 脅かすなよ!」

「悪い悪い。

 ところで、

 誰だ?こいつ」

「林を聞いてくれ」

「話だろ」

「そうとも言うな」

「そうとしか言わん」

「漫才やってる場合じゃないでしょ。

 邪神ってどういうことなんですか?」

「俺達の部族は邪悪な神に支配されているんだ。

 しかし、その神が邪神だということに俺以外の誰も気がついてはいない。

 何とかならないか?」

「うーむ、

 それは大変だな」

「た、隊長!

 いつのまに!?」

「いきなり起きても警戒されるかもしれないからな、

 さっきから寝たふりしてたんだぞ。

 とにかく、我々がその神とやらを何とかしてみましょう」

「た、隊長…、

 はい!行きましょう!」

「その意気だ!ガクラ!」

「勝手に盛り上がるなよ」

「あれ、副隊長は?」

「フルカワなら寝かせておけ。

 あいつの寝起きは無茶苦茶怖いからな」

「防弾チョッキ忘れたし」

「ま、お前が銃を持ったときのようなもんだ」

「最後の何ですか?」

「気にするな。

 明朝出発するぞ」

「了解」

 

次の日。

「じゃあ、気をつけて帰りなされよ」

「はあ、じゃあそうします」

「あの…、

 帰るんですか?」

「そうでも言わんと止められるのがオチだ」

「何の話ですじゃ?」

「気にしないでください。

 この後の予定ですから」
 
「で、本当にこっちであってるんですか?」

「昨日川の上流って言ってただろ。

 川をたどっていけばあるわけだ」

「あ、そうか」

「チシブキ、天然もいい加減にしろよ」

「おい、ついたぞ」

「近!」

「見ろ、

 あれが神殿のようだぞ」

「ちょっと待て!

 こっちにも道があるぞ!」

「本当か!?

 これからの基点になるかもな」

 

道の先

「…おい、何だこりゃ」

「何でしょう?」

TSFのメンバーは目の前の光景に我が目を疑った。

「獣人?」

そこには2足歩行の動物達が簡単な集落を作っていた。

「ジャングルの神秘か…」

「それで片付けるな」

獣人の中の1匹が近づいてきた。

「あの、TSFの方ですか?」

「うわ!しゃべった!」

「何故TSFを知ってるんだ?」

「いや、その…。

 話せば長くなりますが…」


 
「…つまり、

 邪神は近づいた人間を獣人に変えてここに住まわせているわけか?」

「はい」

「しかし、邪神は何をする気なんだ?」

「世界征服です。

 我々はそのための兵士でもあるんです」

「で、あんたがマサイ教授と言うわけか」

「はい」

「いい年して兎獣人はきついですね」

「それを言わんでください…」

「まあいい。

 何か邪神に弱点のような物はあるのか?」

「ここにある石版に書いてあるんですが…、

 資料が無くて解読が出来ないんです」

「資料ならガクラが持ってますよ」

「持たされてんですよ!」

「おお!

 これで解読が出来ます!」

「我々はすぐに神殿に突入します。

 教授は解読を進めてください」

「解りました。

 解読が完了したらすぐに向かいます」

「よし、すぐに神殿に突入だ!」

 

神殿。

「ここが神殿か」

「何が出るか、

 神のみぞ知るという所か」

「そりゃそうでしょ。

 ボスは邪神なんですから」

「それにしても、

 何だろう?あれは」

サイゴウは神殿の屋根の上についていた巨大な宝石を指差した。

「ただの装飾だろ」

「これからの計画はこうだ。

 1人が囮となって神殿に突入する。

 敵が現れた時に全員で総攻撃を仕掛ける。

 いいな」

「誰が囮になるんですか?」

「チシブキ、こいつを持ってろ」

「た、隊長…、

 まさか…」

「うりゃああああああ!」

チシブキは神殿に飛び込んでいった。

数秒後、

チシブキは神殿から放り出された。

「何が起こったんだ?」

(ふふふふふふ)

「だ、誰だ!」

(我は神…。

 我が神殿に殴りこむとはいい度胸だ…。

 その褒美として、

 獣人にするのはやめて我が直々にあの世に送ってやろう…)

すると神殿が光を放ち、

奥から巨人の像が徐に出てきた。

(我を恐れぬ愚か者に鉄槌を!)

「何か出てきた!!」

「わかっとるわ!」

「しゃらくせー!」

チシブキはもう戻ってきた。 

ある意味不死身だ。

「くそ、サイゴウは裏へ回れ!

 フルカワは正面から!

 ガクラは右へ回り込め!」



そういうとゴウダ隊長は左に回りこんだ。

そして全員が言われたとおりの場所に着いた。
 
サイゴウは裏に回りこむとすぐに腕をクロスした。

「フロス!」

 

「あれは!」

「フロス!」

「何故ここに!」

三方向から驚きの声が上がった。

でも…、

「まあいいか」

「どこにでもでるし」

「いくぞ邪神!」

3人ともあまり気にしていなかった。

フロスは邪神に近づくといきなり押し倒してパンチにキックの雨霰を浴びせた。

「いきなり!」

3人は同じ感想だった。

しかし、

邪神にダメージはほとんど見られず、

フロスに思いっきり巴投げを決めた。

ジャングルの邪神が何故巴投げを知っていたのかは永遠の謎である。

フロスはすぐに立ち上がるとすぐに邪神に走りよって飛蹴りを打ち込んだ。

さらに邪神がよろめいた所にTSF隊員達の総攻撃が炸裂し、

おまけにフロスのエネルギー弾が撃ち込まれた。

それでも邪神にダメージは見られなかった。

「つ、強すぎる…」

「どうすれば…」

「くそ…」

「うおりゃああああああ!」

 

フルカワが邪神の強さに驚いていた時、

後ろから兎獣人が駆けつけてきた。

「だ、大丈夫ですか!?」

「大丈夫だったら困ってませんよ。

 邪神には攻撃が全然効かないんです」

「当たり前ですよ。

 石版を解読した結果、

 あれは邪神の実態ではないんです。

 巨大な石像を邪神が動かしているにすぎないんです」

「そんな!

 じゃあどうしたら…」

「邪神の本体を破壊すればいいんです」

「邪神の本体って!?」

「それは…」

その時爆発音が轟いた。
 
邪神にはエネルギー弾でもダメージを与えられなかった。

所々ひびが入っただけで動きに支障は無いようだ。

フロスは最後の賭けとして、

ティエシウム光線を邪神に放った。

光線は邪神の体を貫いたが、

邪神はお構いなしにフロスへと近づいてきた。

しかし、突然動きが鈍ったかと思うと動きを止めた。

その背後では後ろに突き抜けた光線が、

神殿の屋根についていた巨大な宝石を貫いていた。

そして邪神が砂となッて崩れ落ちるのと宝石が爆発するのはほぼ同時だった。

それを驚いたように見届けたフロスは空へ飛んでいった。

 

「な、何が起こったんですか!?」

「あの宝石が邪神の本体だったんですよ。

 宝石が破壊されたことによって像も崩れ落ちたと言うわけです」

「じゃあ、まさかフロスはこのことを予想して!?」

ただの偶然だった。

「あれ、教授。

 元に戻ってますよ」

「あ、本当だ。

 多分邪神を倒したから…」

「良かったですね、教授」

 

「よし、全員そろったか?」

「チシブキがいませんよ」

「チシブキ?

 何処いったんだ?あいつ」

「隊長が暴走させたんですよ」

その時集落の方から悲鳴と銃声が聞こえた。

「な、何だ!?」

「敵か!?」

駆けつけたTSFが見たものは、

「しゃらくせー!

 邪神は何処だー!!」

「…」

「…」

「…」

「…」

「…」

見事に全員が硬直した。



おわり



出演
隊長 ゴウダ・テツタロウ
副隊長 フルカワ・トモミ
隊員 ガクラ・アキラ
隊員 サイゴウ・ツヨシ
新入隊員 チシブキ・モンザエモン
大学教授 マサイ・ツトム
長老
長老の息子



この作品は匿名希望さんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。