風祭文庫・ヒーロー変身の館






「ウルトラウーマン・フロス」
(第1話:光の女神)



原作・匿名希望(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-168





時は西暦20XX年、地球では怪獣や宇宙人の襲撃が多発していた。

それらの事態に国連の外部機関たる地球防衛軍では対処しきれないと判断した人類は

専任の特殊科学戦隊TSFを結成し、迫り来る脅威に立ち向かっていた。



さて、ここは極東・日本国N県伊田村。

この地が出身地である作家も認めるほどの秘境にそびえる山を打ち砕き、

地底から出現した怪獣アルミタが大暴れをしていた。

「隊長!

 ミサイルが効きません」

「くそ、地上からの攻撃に切り替えろ!」

「隊長、ミサイルでも駄目だったんだから

 地上からテリブルシューター撃っても効果あるわけないでしょう」

「馬鹿野郎!!

 誰が手持ちの銃で攻撃しろっつった!!!
 
 メーサー殺獣光線砲戦車の準備だ!」

「了解!

 2号機、
 
 3号機、直ちに着陸してメーサー殺獣光線砲の準備だ!」

………

「隊長!

 スカイファイター2号機および3号機から報告です!」

「どうした!?」

「樹が生い茂っているので着陸不可能だそうです!」

「くそ、ならば3方から同時攻撃だ!」

「何故ですか!?

 隊長!」

「3方向から攻撃すればどれか一つぐらいは弱点に当たるだろう」

「……了解……」

ゴウダ隊長の判断に従い、

スカイファイターは3機同時に右に旋回をする。

「大馬鹿野郎!!!

 同じ方向に曲がってどうすんだ!!!!
 
 我々はこのまま、
 
 フルカワは右後方、
 
 サイゴウは正面から攻撃だ!」

「了解!!!」

3機のスカイファイターはやっと3方向に散って攻撃を仕掛け始めた。

「隊長」

「ガクラ、何だ?」

「今気がついたのですが、

 我々の機、

 さっきミサイル全部ぶっ放したんじゃ……」

「あ、そうだっけ?

 仕方がない、脱出してこのままぶつけろ!」

「…………はぁ?」

「復唱は?」

「はっはい、

 りょ、了解………………」

一方ここは新入隊員サイゴウが乗る3号機。

「あれ、そういえば1号機すでにミサイル全部ぶっ放したんじゃ…」

それに今頃気がついたサイゴウが風防ガラス越しに1号機の方を見ると、

案の定ミサイルがなかったらしく

1号機はまったく減速せずまっすぐにアルミタめがけて突っ込んでいた。

すでにゴウダ隊長とガクラ隊員は脱出していたらしい。

「……大丈夫か?

 この組織…」

サイゴウはなんか場違いな事を考えていたが

すぐに考え直して正面の怪獣めがけてミサイルをぶっ放した。

だが、

「げっ、効いてない…」

アルミタは2号機と3号機のミサイルを撃ち込まれても平然したまま

そのまま地面の中に帰っていった。

「くそ、次に出てきた時は絶対に……

 ってわーーーっ!!!!!」

アルミタが地面に潜ったために目標を失ったってしまった1号機が

一直線に3号機に迫ってきていた。

「くそ、間に合わない…」

ドッゴーーーーーーーン!!

3号機は大爆発を起こしそのまま墜落していった。

炎に包まれたサイゴウの意識は次第に薄れてった。

その時空から光の玉が飛んできて炎上する3号機を包み込んだ。

(起きてください、勇敢なる戦士よ……。)

「君は、誰?」

(私はT24星雲から来たギャラクシーポリスのフロス・タガー惑星刑事です。)

「ギャラクシーポリス?

 惑星刑事?

 ってなに?…」

(細かいことは気にしないでください。

 私は太陽系と地球の安全を守るために来ました。)

「安全を守るため?」

(はい、

 しかし大気汚染の進んでいるここにとどまっていることができません。
 
 肉体には負担はありませんが精神的に負担が大きいのです)

「で、それで俺に何をしろってんだ」

(お互いの性別に違いがるので無理にとは言いませんが

 私と合体してください。
 
 別の人に体を動かすのを委ねれば3分間だけなら活動できます)

「合体すると具体的にどうなるんだ?」

(特に日常生活に支障はないはずです。

 変身している間、一時的に性転換する程度なので)

「そうか、なら合体してもいい。

 このままあの組織(TSF)にばかり任せてられないからな、

 お前の力に期待するぜ」

(まあ、意識の上では戦うのは貴方なんですが、

 確かに戦うのは私の体ですからね。
 
 ではこれを)

「これは?」

(フロスフラッシャーという腕輪です。

 両手にはめる物でいざ変身という時はこれをクロスして
 
 「フロス」
 
 と叫んでください。)

「なるほど」

(さらにこれを使えば私と会話することも出来ます。

 では、また後で。)
 
ちょうどそのころ、TSF日本支部では。

「くそ、あの怪獣め。

 サイゴウの仇は必ずとる!」

「了解です隊長!

 絶対にあの怪獣をぶっ殺してやりましょう!」

「うむ、その意気だ!

 ガクラ!」

そもそも、3号機を撃墜したのはこいつらの乗っていた1号機である。

「隊長!!」

「どうした!?

 フルカワ!」

「サイゴウ隊員が奇跡的に生きていました!」

「何だと!そうか、今何処にいるんだ?」

「伊田村の民家で手当てを受けています」

「隊長!」

「どうした、ガクラ!?」

「伊田村に再びアルミタが出現しました!

 現在、山を降りて民家に向かっています!」

「なんだと!?

 TSF出動!」

「了解!」

一方ここは伊田村。

住民達は再び現れたアルミタから逃げ惑っていた。

「くそ、TSFはまだこないのか。

 しかたない、俺が行ってやる!」

サイゴウは火傷を負った足を引きずりながら

近くの林の中に入り腕をクロスさせて叫んだ。

「フロス!!」

その瞬間サイゴウの体は光に包まれていった。

少しずつ体が女性の物へと変化していくのをサイゴウは感じ取った。

さらに、すでに女性の物へと変化している部分は

赤と銀の二色が浮かび上がっていき

胸にはプロテクターとカラータイマーが出現した。

顔が完全に無機質な物に変化し終わると

サイゴウの体は少しずつ巨大化していく。

やがて身長40mに達した時そこに立っていたのは

サイゴウではなく正義の女性宇宙人ウルトラウーマンフロスであった。
 
「隊長、ガクラ隊員!」

「どうした?

 フルカワ副隊長」

「あそこを見てください!」

「ん、…何だ?

 あれは」

「解りません。

 今までに見たこともない宇宙人のようです」

「敵か?」

「解りません」

「様子を見てみましょう、隊長」

「それもそうだな」
 
フロスは少し戸惑ったような動きを見せたが

すぐに開き直ったかのようにアルミタの背後にまわると

アルミタの尻尾を掴んで民家から引き離した。

しかし、フロスはアルミタのパワーに少し押され気味であった。

「味方のようですね」

「しかし、ずいぶん動きがぎこちないな。

 まるで自分の体に慣れてないみたいだ。
 
 一応援護しとこう」

「了解!」

「了解!」

スカイファイター2号機が援護としてぶっ放したミサイルは、

すべてフロスに直撃した。

「うわー!

 あの宇宙人攻撃してきたぞ!」

「やはり敵なのか!?」

「単にミサイル撃ち込まれたから

 怒ってるだけじゃないですか?」

「何、そうなのか?」

「よし、今度は絶対アルミタに撃ち込んでやる」

こいつらの頭の中に謝罪という単語はないのか?
 
一方こちらはフロス。

さっき背中にミサイル全部直撃したおかげでかなりのダメージを受けていた。

そのうえ、お返しにエネルギー弾を2号機に向かってぶっ放したら

さらにエネルギーが低下した。

さらに、今現在フロスはアルミタにのしかかられていた。

ピコン、ピコン、ピコン………

すでにフロスの体力は限界に近づいていた。

チュドーン!

「よっしゃ、今度は命中したぞ!」

2号機のミサイルがアルミタに直撃したので

アルミタはその衝撃で横に吹き飛ばされた。

その隙に立ち上がったフロスはアルミタに駆け寄ると逆にのしかかり

パンチにチョップの雨霰、

思いっきり憂さ晴らしをした後、

フロスはジャンプして

気絶したアルミタから離れると腕を胸の前でクロスさせた。

その両肘から手首離すように回転させていき

腕の形が]の形になった時、

]の形の必殺光線「ティエシウム光線」が発射された。

ティエシウム光線を撃ち込まれたアルミタは

大爆発を起こして跡形もなく吹き飛んだ。

フロスはその直後に空へ飛んでいき、

やがて見えなくなった。

「なんだったんだ、あの宇宙人は」

「まるで女神のようでしたね」

「ああ、確かにな」

やな女神である。

それはともかく2号機の中でTSFの隊員達がそんな会話をしている時

フルカワが地上に立ち手を振っている人影を見つけた。

「あっ、隊長!

 サイゴウ隊員です!」

「何、そうか、無事だったか」
 
その後サイゴウは宇宙人の正体や

これまでの経緯等をTSFの隊員達に説明した。

もちろん、フロス=サイゴウということは秘密にしてあったが……

余談だがこの後、

伊田村では爆発した怪獣の処理でえらい騒ぎになっていたという。



おわり



出演

隊長  ゴウダ・テツタロウ
副隊長 フルカワ・トモミ
隊員  ガクラ・アキラ
隊員  サイゴウ・ツヨシ



この作品は匿名希望さんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。