風祭文庫・ヒーロー変身の館






「鮮血のアーシラ」
(第1話:アーシラ見参!)

作・あむぁい

Vol.T-119





シンと静まりかえった帝都の夜更け…

「どりゃああああ!」

気合と共に’あたし’の両腕の筋肉が張り、胸がぷるんと震える。

ドガン!!

大きく音を響かせ必死の抵抗を続けるドアだったが、

無論、’あたし’のパワーに敵う訳も無く、

ドガン!

ドガン!

ドガン!

ギシッ!!

執拗な攻撃に少しずつその口を開けはじめた。

よおし、良い子ね。

これだけ取っ掛かりができたら十分っ!

硬く閉じた貝の口をこじ開けるかのように’あたし’は隙間に指を突っ込み、

ぐいとドアを引きちぎるようにして開けきった。

「来たぞ!!

 新撰組だ!!」

ぱぱぱん。

その途端、扉の向こうから’あたし’をなじる声と共に一斉に銃声が鳴り響き、

ピシッ

ピシッ

ピシッ

’あたし’の体に弾いたよな衝撃が走る。

あいたたた。

もう。

飛び道具は嫌い。

しかし、敵がいるのは良い事だ。

骨のある奴だとなお良いんだけど。

一歩、

また一歩と

銃撃を受けつつも’あたし’は前へと進む。

「なっ

 命中しているはずだ!!!」

「く、ひるむな!」

「撃て!」

「撃て!」

パンパン

パンパン

銃撃を受けてもひるまない’あたし’に驚きつつも、

なおも銃声が響き渡り、

弾は容赦なく’あたし’に襲い掛かってくる。

「あっ

 そうっ抵抗する気?

 ’あたし’がネオ新撰組の最強の隊士!

 鮮血のアーシラだと知ってて歯向かうって言うのなら、

 敬意を表してちゃんとお相手してあげるわ」

強化繊維の光る真紅のレオタード。

胸と秘所を覆う強化プラスチックの甲冑もこれまた真紅。

最強の隊士にしてダイナマイトバディな美女!

’あたし’は胸を張って、高らかに笑う。

無数の銃弾が撃ち込まれるが、勿論’あたし’は無傷だ。

…ちょっと痛いけど。

「さあ、行くよー!

 長州の下っ端さんっ

 覚悟はいいわね!!

 せーのっ!!」

手近な一団に攻撃の的をしぼると’あたし’は素早く動き、

そして、

殴る!

蹴る!

投げる!

踏み潰す!

弱い、弱い、弱いー!

あー、もう、

誰か’あたし’の相手になるような奴…居ないの!!

次々と倒れていく相手の手ごたえのなさに’あたし’は欲求不満になっていく。

と、そのとき、

「隙有り!(むにゅっ)」

「あん!」

男達の一人が’あたし’の後ろから思いっきり胸を掴んだ。

もそもそもそ。

まるで虫が這うように胸の上を動いていく感触を感じながら

’あたし’はゆっくりと首を回し、

「あら…」

相手とパッチリと目を合わせる。

「ひっ!」

恐怖に引きつった相手の目を見据えながら

にこっ。

’あたし’は笑みを浮かべると、

「うっ」

相手の目は一瞬ひるむ。

「失格!!

 退場!!」

ばきっ!!

’あたし’は腰を落とすとその反動で飛び上がり、

蹴り技を決めた。

「うぐっ」

顔面に蹴りを食らった男は崩れ落ちるように倒れ、

そしてそれを見下ろしながら、

「はぁ」

’あたし’は大きくため息をつく。

まあ、とりあえずその勇気は買うけどねー…

でも、’あたし’が求めていたのはそーゆーんじゃないのよ。

ぽりぽり。

白目を剥く相手を見ながら’あたし’は頭を掻いていると、

『アーシラ、

 そっちはもぅ制圧した?』

腰に下げているコミュータより相棒というか、

監視役というか、

上役というか

とにかくそんな役回りをしてくれているジーナスの声が響いた。

「ん?

 ジーナス?

 うん、一応片付けたところ…」

ジーナスの声に’あたし’はそう返事をすると、

ゆらり…

さっき’あたし’に倒されたはずの男が立ち上がり

クイッ

ずり落ちためがねを小指で上げながら、

「くくくく…

 さすがは新撰組。

 見事な攻撃だ。

 でも、この程度で勝ったと思うなよ、

 飛んで火に入る夏の虫とはお前のことを言うのだ!!」

と叫んだ。

そして、その直後、

バッ

男は大きく両手を広げると、

「ここに集う御霊よ、

 我の進む道を邪魔するものに、

 正義の鉄槌を下さん!!」

と訴えるように叫ぶ。



「はぁ、何言っているんだあいつ?」

男のパフォーマンスを見ながら’あたし’はそう思っていると、

「出でよっ

 わが下僕、萩の星!!

 この者をお前のハサミで切り裂いてしまえ」

さらにボルテージを上げた男は叫び声と共に、

カチリ!

握り締めていたスイッチを押した。

すると、

グシャオン!!

部屋を揺がせる大音響を響き渡らせ、

何かが稼動を始める。

「なに?」

その音に’あたし’は驚くのと同時に本能的に

ハッ

勢いよく飛び上がった。

刹那、

シャキン!!

ズシン!!

ついさっきまで’あたし’がいた場所に銀色に光る巨大なハサミが降り降ろされ、

無人の床を大きく切り裂く。

ゴガガガ!!

機械音を上げながらハサミが持ち上がっていくと、

グンッ!!

空中にピンク色の灯火…モノアイの光が不気味に浮かび上がった。

『アーシラ、気をつけて、

 それが長州が開発をしているて言う

 対新撰組決戦兵器・萩の星よ』

腰のコミュータからジーナスとは別の声が響く、

’あたし’のナビをしてくれている”誠太郎”だ。

「ふぅぅん、

 あっそっ

 あたしたちのためにこんなものを作ってくれているの?」

モノアイが放つ光を見上げながら’あたし’はそうつぶやくと、

「わはははは!!

 どうだ、驚いたか、

 我らがDr,高杉が精魂込めて作り上げた汎用人型決戦兵器、

 それがこの萩の星だ!

 よぉしっ

 萩の星、

 目の前にいる小癪な奴をそのハサミで切り裂いてしまえ!!」

と男の声が響く。

すると、

グンッ

モノアイの光が一際大きく輝き、

グワシャン!!

グワシャン!!

大音響をあげながら萩の星は’あたし’に向かって突進してきた。

「くるっ」

ズザッ

迫ってくる音に’あたし’は腕を構えるが、

しかし、闇の中より’あたし’の視界に現れたのは

とってつけたような無骨で隙間だらけの装甲、

装甲の内側から覗くケーブルと

機械音を上げる剥き出しの関節。

そして電源供給用と思われる有線ケーブル。

どれをとってもアニメなどで見る完成されたロボットというより、

ロボットコンテストなどで学生達がバイト代を出し合って作り上げた手作りロボットという趣だった。

「なっなんだこりゃぁ?」

有線ケーブルを引きづりながら移動する萩の星の姿に’あたし’は脱力をすると、

「はぁ…

 こんなポンコツが相手とは随分と舐められたものね」

威嚇するかのようにハサミを振りかざす萩の星を見上げながら呟いた。

「なにを!!

 Dr.高杉が作り上げた萩の星をポンコツ呼ばわりするとは許せん!」

’あたし’のその発言が気に障ったのか男はそう叫ぶと、

ガチャッ

ガチャッ

とコントローラを操作する。

「おいおい、

 お前が操作していたのかよ」

自立型だと思っていたロボットがコントロールによって動かされていたと言う事実に、

’あたし’はさらに力が抜けるが、

しかし、

ゴワァァァァァ!!

うなり声を上げながら萩の星は’あたし’に狙いを定めると、

ブンッ!!

両手に取り付けられているハサミを振り回しはじめた。

「はっ!!」

高速で迫ってくるハサミを’あたし’は軽く頭を下げてかわすと、

即座にハサミに取り付き、

そしてひねりはじめた。

みきみきみき…

瞬く間にハサミが悲鳴を上げると、

ぶんっ、もう一方のハサミが飛んでくる。

「うりゃぁぁぁ!!」

がしっ。

寸前のところで’あたし’は左手でそのハサミを受け止め、

「ふふん。

 その程度じゃあ…」

ずずっ。

「このあたしは…」

ぶわっ。

「倒せないわよっと」

と頭の中で叫びながら、

「うらぁぁぁぁぁ!!」

一本背負いの要領で思いっきり放り投げると、

ズズーン!

萩の星は宙で一回転し、頭より床に激突をした。

「あぁ!!

 萩の星っ!!」

操作していた男の悲鳴を聞きながら

やったかっ

’あたし’は萩の星が受けたダメージを確認しながら立ち上がる。

ところが、萩の星は頭から落ちたもののその動きを止めることなく

グァシャッ

ギァシャッ

なおも脚をばたつかせていた。

「あぁん、もっ

 うざいっ!!!」

ブチッ!!

なおも抵抗を続ける萩の星を制圧すべく

’あたし’はロボットから伸びるケーブルを思いっきり引きちぎる。

その途端、

カシャーーーン

萩の星は動きを止め、その場に崩れるようにして蹲ってしまった。

「はんっ

 ケーブルを切ってしまえばただのガラクタね」

沈黙をする萩の星を見下げながら’あたし’は勝ち誇ったように言うが、

けど、コントローラを握る男の口元は笑みを相変わらずたたえていた。

「なに?

 負け惜しみ?」

男のその口元に’あたし’は驚くと、

ゴガガガガガガ!!!

電源を切られ、活動を止めていたはずの萩の星が再起動をし、

再び立ちはだかった。

「うそっ!」

グンッ!!

さっきよりも煌煌と周囲を照らし出すモノアイの光に’あたし’は驚き、

あわてて間合いをとる。

「はーはははは!!

 さぁ、萩の星よ、

 充電期間は終わりだ。

 気の済むまま思いっきり暴れるがよい」

「なにぃ!

 充電をしていたのぉ?」

コントローラを放り投げて高らかに声を上げる男の言葉に’あたし’はあっけに取られるが、

しかし、驚いている時間は’あたし’には無かった。

ギャォォォン!!

さっきまでとは別物と思えるくらいに萩の星はすばやく動くと、

ズドドドドドド!!!

マシンガンのごとくあたしに向けてハサミで突く。

「うわぁぁぁ!!」

ヒュンヒュン

唸りを上げて向かってくるハサミの攻撃に’あたし’は防戦一方となり、

次第に追いつめられて行った。

「うわはははは、

 どうだ、手も足も出まい。

 さぁおとなしくブツ切りになってしまえ!!」

「くっそぉ!!」

壁を背にして’あたし’は萩の星の攻撃点を探るが、

しかし決戦兵器と言うだけに萩の星には死角が無かった。

そのとき、

ヒュンッ!!

萩の星の背後に青白い影が走るや否や、

ドゴォォン!!

という大音響と共に萩の星の胴体が一瞬浮き上がり、

そして、尻餅をつくかのように転倒した。

「もぅ、なにをやっているの?

 時間オーバーよ」

転倒した萩の星の背後より、

青を基調としたフランス人形をエロくしたようなコスを身に纏った、

’あたし’の相棒である蒼白のジーナスが立っていた。

「ジーナス!!」

「予定より10分オーバーよ

 さっさと片付けなさい。

 アーシラ」

「そんなこといったって

 こいつ、手ごわいよ」

冷たい視線で’あたし’を見るジーナスに反論をすると、

「ふんっ」

ジーナスは横転している萩の星を横目で見るなり、

「手を貸しなさい、

 アーシラ」

と’あたし’に命じた。

「え?」

『はら、さっさとするっ

 フューラー様のご褒美が欲しくないのか?』

ジーナスの言葉に’あたし’はきょとんとしていると、

ジーナスのナビを務めるコミュータである忠次郎があたしを急かした。

「あっはいっ」

忠次郎の指示にあたしはジーナスの右手を握り締めると、

バッ!!

ジーナスは左手を空に掲げ、

「あっ」

あたしもそれにあわせて右手を空に掲げた。

そして、

「日本に巣食う魑魅魍魎たちよっ」

とジーナスが声を張り上げると、

シャッ!!

ビシャン!!

どこから出てきたのか空に掲げたジーナスの腕に青白い雷光が突き刺し、

「誠忠の志をもって退治する」

追って叫んだ’あたし’の腕に鮮血を思わせる雷光が突き刺した。

そして、二人で息を合わせ、

ゴガガガガ…

体を震わせながら起き上がる萩の星を見据えると、

「天誅!!!」

の掛け声と共に掲げた腕を萩の星目かげて突き出した。

すると、

ズドォォォン!!

’あたし’とジーナスの腕から赤と青の閃光が渦巻きながら飛び出し、

起き上がった萩の星の胸に描かれている一に三ツ星マークに突き刺さった。

ウゴワァァァァ!!

「くっ」

「いけぇぇぇぇ」

閃光に押されながらもなおも襲い掛かろうとする萩の星に

止めを刺すために’あたし’はさらに力を込めると、

モゲェェェェェェ!!!

パリパリパリ!!

萩の星よりショートによる放電が始まり、

ついに、

カッ!!

ドォォォン!!!

搭載されているリチウム充電池が破裂すると、

’あたし’を散々苦しめてきた萩の星は木っ端微塵に砕け散ってしまった。

「おのれっ

 ネオ新撰組めっ

 この借りは必ず返すからな」

萩の星が倒されたことに男はそう吐き捨てると、

バンッ!!

スタタタ…

背後の隠し扉を開け逃げ出して行った。

「あっ待て!!」

逃げ出した男を’あたし’は捕まえようと飛び出すが、

「待て」

即座にジーナスは’あたし’の肩を掴んで阻止すると、

「ふんっ

 厚生労働省・桂事務次官…

 逃げ足だけは速いか」

と呟いた。

「もぅ、捕まえられたのに」

ジーナスの横であたしは膨れっ面をしていると、

「何をしているの、アーシラ。

 その前にすることがあるんでしょう?」

とジーナスはあたしに言う。

「え?

 あっそうだった。

 んーと」

萩の星の残骸と共に沈黙した部屋の中を’あたし’は見回すと、

獲物になりそうな一人の男の姿が目に入った。

そう、さっき’あたし’の胸を触った男だ。

「まっ、

 ほかに大したのいないし。

 あいつにするか」

ターゲットを定めたあたしは、

スッ…

一枚のカードを腰のポシェットより取り出すと、

カシャッ!!

コミュータのリーダに軽く通し、

「メインガード・オープン」

と叫ぶ。

すると、その声と共に’あたし’の秘所のガードが外れると、

光沢の在るレオタードがハート型に繰りぬかれているのが分かる。

んー、胸も開けといた方がやりやすいかな。

「サブガード・オープン」

締め付けられていたブラが外され、胸が開放される。

「ふう。

 えーっと、見て貰った方がやりやすいかなあ」

さっきの胸さわり男の前に’あたし’はぺたんと座り、オナニーを始める。

勿論、おかずは我が局長・フューラー様。

「あはん、フューラー様ぁん。

 あたしは今日も頑張ってまぁす。

 帰ったら、帰ったら、フューラー様のアレで。

 あたしを。

 あたしを。

 いやん、恥ずかしい!」

派手にオナニーをしていると、前の胸さわり男が目を覚ます。

ああん。

見られてる!

恥ずかしい!

ん。

はっ。

「な、お前…、

 何…、」

’あたし’の痴態に男は目を白黒させるが

しかし、彼の足は変な形に曲がって動けない。

「待っててね。

 もう、少し。

 だから…」

お汁が十分でてきて、’あたし’の秘所は緩んでくる。

うんっ

もう、少し。

なんだけどな。

あはん。

あ、届いた。

’あたし’の体の奥深くに存在している”それ”を確認すると、

’あたし’の指は黒くて平べったい物体を胎内から取り出した。

形状は柿の種のよう。

大きさは3cmぐらい。

表面には繊毛がびっしり付いてうごめいている。

そして、透明なドロリとした液体に包まれている。

んー、

彼、気づいてるから。

口から…かな。

’あたし’は愛しそうにそれを口に含む。

驚く彼ににっこり微笑むと、

彼はひきつった笑いを浮かべる。

’あたし’は彼を抱き寄せると。

いきなり熱い口付け。

「うう…」

ぬるん。

はいっ。

一丁あがり。

「ああああああっ」

体内での変化が始まったのか男は苦しみ始める。

「Tシードを飲んでしまったからには、

 あなたは一生あ・た・し達の奴隷よ。

 あたし達の命令一つで変身して任務を遂行するの。

 あなたにはスパイをやってもらうわ。

 せいぜい長生きして頂戴。
 
 あっそうそう、

 万が一任務に失敗したら切腹だからね」

哀れな男に残酷な宣告をすると’あたし’は立ち上がり、

最後の破壊を行う事にする。

そう、年金の…長州の象徴であるこのグリンピア237号を完全に崩壊させるのだ。



「さぁて、盛大にはじめますか」

「はぁい」

ジーナスと共に拳を鳴らしながら

「せえのお。

 やっ!」

ズガン!!

あたし達の渾身の蹴りで柱は吹き飛び、

そして、崩壊が始まった。

「アーシラ様、わたしはどうしたら!?」

変身した女が聞く。

さっきまでの男とは思えない金髪美女だ。

「取り合えず、一緒に脱出ね。

 適当にやられたふりして、

 スパイ活動を開始しなさい。

 特に桂事務次官の動きは逐一報告するのよ」

’あたし’とジーナスは脱出後、

負傷者たちと新たなしもべを残し、犯行現場を後にした。

あー。

局長…じゃなかったフューラー様に褒めてもらえるかなぁ。



「よくやった。

 アーシラ。

 さすがはネオ新撰組最強の隊士だ」

大きく掲げられた葵の紋所の下に立つフューラー様よりのお言葉に’あたし’の胸は高まる。

「これで、日本の…いえ長州の財源は約500億円悪化しました」

その声と共に’あたし’とジーナスの腰についていたコミューターが飛び出すと

ポンッ!

ポンッ!

2つ小さな破裂音と共に3つの輪をイメージした赤色と青色のネズミ2匹が姿を見せる。

誠太郎と忠次郎だ。

もともとは黄色い電気ネズミと青い走り屋ネズミとの不倫から生まれたそうだけど、

亜米利加への留学中にあのような姿に進化したとか…

ネズミの世界はまったく持って良くわからん。

でも、こいつらボキャ貧の上にしゃべりだすとセリフ長いんだ。

まったくもぅ…

「今から130年前、

 当時日本を支配していた幕府を倒し、

 長州は薩摩と共にこの国の支配者となりました。

 しかし長州が日本にもたらしたものとはいったいなんでしょうか、

 西欧諸国と張り合い、

 日清・日露の戦争を起こし、

 あまつさえ満州をめぐって亜米利加との大戦…

 しかも、敗戦後も懲りなく経済戦争を仕掛ける始末。

 その長州の暴走をとめるべく我々会津は幾度も戦い、

 そして、敗北してきました。

 敗北の原因は何かっ

 我々は先輩諸氏が積み重ねてきたデータを分析した結果、

 ある事実を発見したのです。

 それは…

 大多数の国民が長州への信頼の源となっているのが年金制度!

 国民年金、

 厚生年金、

 共済年金、

 議員年金、

 国民年金基金など、

 非常にシンプルで分かりやすい年金を長州は国民全てに完備しているのです。

 国民たちは将来の不安なぞなにもなく、

 ただ10歳から70歳まで保険料を納めれば老後は安泰と言う訳です。

 国と国民の信頼関係…、

 これを崩さねば我らの革命はなりません。

 しかし、逆に言えば、年金さえ崩壊させてしまえば、

 国民は長州を見限り、

 日本は正しい道を歩むことができるのです」

あー、そうですか?

誠・忠2匹の言葉に’あたし’は頭をぽりぽり掻くが、

「その通りだ」

その話を聞いていたフューラー様は重々しく頷く。

ああん。

フューラー様っ。

「今回破壊したグリンピアこそ、

 長州が誇る年金の磐石の態勢の象徴なのです。

 知っていますか?

 グリンピアは財源が余って余ってしょうがないから、

 長州が国民への還元の為に作られたのです。

 なんという運用力!

 なんと言う傲慢!

 厚生労働省、いえ長州恐るべしです。

 おまけに警備兵や警備ロボまで配備されていました」

と2匹が声をそろえると、

カッ

’あたし’とジーナスは共に一歩前に出て、

「しかし、長州など敵ではありません!

 この鮮血のアーシラ・蒼白のジーナスにお任せ下さい!」

とあたし達も声をそろえて宣言をする。

「うむ」

あたし達のその言葉にフューラー様は満足そうにうなづくと、

「アーシラ、

 今回の働きは見事であった。

 褒美を取らす」

と’あたし’に告げた。

やった。

ジロリと睨みつけるジーナスをよそに’あたし’はフューラー様のそばによるなり、

玉座に控えるフューラー様のおちんちんを取り出すと、

ちゅっ!

軽くキスをする。

そして、

「それでは、ご奉仕させて頂きます」

と言いながら’あたし’は恭しくそれを手に取り口に含み、

愛情をこめてゆっくり舌で転がす。

ああん。

フューラー様。

はぐはぐ。

ちゅばちゅば…、

あら。

もう準備OKですね。

’あたし’は座ったままのフューラー様にまたがると、

自分で胸を揉みながら上下に激しくゆらす。

んっ。

はっ。

んっ。

はっ。

あん。

あははん。

フューラー様は優しい瞳で’あたし’を見つめる。

ああん、フューラー様のものが’あたし’の中で!

’あたし’は胸をさらに激しくもみしだく。

あん。

あはん。

も、もう少しで。

あっ。

ジンと衝撃が走る。

当たっている。

’あたし’の子宮の奥深く。

変心回路にあたっている。

ああ、もう少し。

あああん。

カチッ。

!!!!!!!!!!

イッた。

ああ、まただ。

僕はフューラー様の上で腰を振ってイってしまった。

僕はぐったりとフューラー様にもたれかかってしまう。

「アキラか。

 終わったのならどけ」

「は、はいっ」

僕はそっと腰を引き抜く。

お口でフューラー様のおちんちんをきれいにすると、

ウェットティッシュで拭いて差し上げる。

僕はその後、玉座から離れ、

再び下座で跪き畏まる。

きれいにくびれた腰。

Cカップの胸。

ハート型に繰りぬかれたレオタードからむき出しの女性器。

完璧な女性の体だ。

ああ…何でこんな事になってしまったのだろう。

フューラー様には全然逆らえないし。

僕はテロなんてしたくないのに…

とろりと先ほどのフューラー様のものが僕のあそこからあふれだす。

もったいない。

思わず僕はそれをすくって口に含む。

どろりとした感触が口に心地よい。

あ…始まった。僕の体が震える。

あ…ん…、

ふ…、

もぞもぞ。

女性器が一旦収縮し、穴が小さくなる。

やがてそれは強烈な快感を伴い、起伏しはじめる。

はあ。

ん…、戻って来た。

僕のおちんちんが戻ってきた。

急に、

口に含んだフューラー様の精液に強烈な不快感を催す。

うえっ。

またやっちゃった。僕はあわてて口を押さえる。

「駄目よ!

 フューラー様のものなんだから。

 飲み込みなさい」

ジーナスの命令。

ごくん。

僕は必死にそれを飲み下す。

ジーナスにも逆らえないのだ。

「はあ…」

熱い息を吐く僕のおちんちんは既に勃っていた。

僕の男性が目覚める事で、

徐々に胸や御尻の膨らみも小さくなっていき、

男のそれへと変化する。

アーシラの方が僕より大きいのでサイズが余ってしまう。

真っ赤なレオタードに包まれた男の子がフューラー様の玉座の間に跪いている。

沖田あきら…そう僕だ。

しかも、性器の部分はハート型に繰りぬかれている。

ああ、なんでこんな事に…

僕は今日の破壊の数々を思い出していた。

アーシラに成っている時は全く罪悪感が無いのだ。

今日もたくさんの人に怪我をさせてしまった。

何て事だ…

おまけに、年金制度の崩壊を企むネオ新撰組の一員なのだ。

本当に…何でこんな事に…



つづく



この作品はあむぁいさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。