風祭文庫・ヒーロー変身の館






「ふたりは宇宙超人」



原作・カギヤッコ(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-240





無限に広がる大宇宙。

死に行く星もあれば生まれ来る星もある。

そのような星々に囲まれたここ銀河系三丁目。

夕日に輝く太陽系よりさらに三軒隣の空き地にて一つの戦いが行われていたが、

しかし、悠久に見えて一瞬でもあるその戦いに

いまようやく終止符が打たれようとしていたのであった。



ジャオォォーンッ!

積み上げられた土管の上に出現した光の結界。

その結界に取り込まれた異形の怪物が断末魔とも言える叫びを上げると、

結界の外では”人型の存在”が怪物を無言で見つめていた。

たくましくも流線型のフォルムに大小無数の傷を浮かばせつつ

”人型の存在”は全身で大きく息継ぎをして見せた後、

ドゥワッ!

それを振り払うように構えを取ってみせる。

そして両腕を組んで構えを取った瞬間、

バババーッ!

放たれた光が結界を突きぬけ怪物を貫いた。

バッ!

ジャオオオオオオオオーッ!

光に貫かれた怪物は絶叫と共に結界の中で光の粒子となって消え、

同時に結界も凝縮してその粒子をもらす事無く消滅する。

ウォォォォン…

終業を知らせる工場のサイレンが鳴り響く中、

“……終わった……”

ここまでに至る様々な理由や個人的な事情、親の事情、クラスの力関係、

可愛いあの子との恋愛や金銭的なやり取りはとりあえず横に置き、

三丁目、いや宇宙を破滅に導こうとした怪物との宿命の死闘の終焉を見届けたその存在は

自らも力尽きるように身をそらせて倒れてしまうとそのまま流れてゆく。

永きにわたる怪物との戦いは彼の肉体にも絶大な負担をかけており、

彼の胸に輝いていた緑色のクリスタルはすでに輝きを失い、

彼はそのまま静かに流れてゆく。

その周りをいつの間にか大小無数の流星が取り巻き、

やがてその一つにまぎれるように彼はその星――

地球へと流れていったのであった。



その日は年に何度かの流星群の降る夜であった。

多くの人達が各々の形でそれを見ようと望遠鏡などを携え星空の下に繰り出している。

そんな折……

クチュクチュ……

ネチャネチャ……

「あっ……美奈……

 うんっ……やめて……」

「あん……優ったら……

 口じゃそう言ってるけど……」

草むらに横たわり激しく絡み合っている二つの白い塊があった。

西寺優と北門美奈も本来はそうして余り人の来ない山沿いの場所で

キャンプを張って流星群を眺めようとしていた一組だった。

しかし、どちらかとは言わないまでも互いに「特別な感情」を抱く仲である二人は

一目に付かないのをいい事に折からの熱帯夜に耐えかねてと言う名目で

どちらからもとなくいつの間にか一糸まとわぬ姿で星を眺めていた。

しかし、只でさえ「そう言う関係」である二人が熱気を残し人目のない夜の空間で、

しかも互いに生まれたままの姿になっている以上

まともに流星群見物などできるわけもない。  

結局静かに望遠鏡をのぞきながら流星群を待っていた優に

そっと忍び寄った美奈が自分の胸のふくらみを優の裸の背中に押し当て、

両腕をそっと優の胸に沿わせたのをきっかけに

こうして二人は「始めて」いたのである。

「ひゃっ、

 あっ、

 みなっ、いい〜」

「あっ、

 きゃうっ、

 ゆうだって〜」

ムチュムチュッ

ムニュムニュッ

クチュクチュッ

互いの形のいい唇を相応の弾力のあるふくらみとその上に立つ固い突起を、

そしてうっすらとした飾り毛の中に潜む「唇」を優しく沿わせ、

激しくすり合わせながら二人は流星雨の下、

激しく絡み合う。

それはあたかも遥か昔宇宙創成の前兆を感じさせる混沌のようであった。

そして……

「あっ…

 ああぁぁぁーっ!」

「ひゃぁぁぁんっ!」

二人の頭の中でビッグバンが弾けた。

「はぁはぁ……

 まったく……

 これじゃ流星群見物どころじゃないじゃない……」

それから少し後、

ようやく絶頂ゆえのけだるさから回復した優が静かに体を起こす。

「ふぅ……でもいいじゃないの。

 余興よ余興」

対して余韻を余り残していない様に軽い動きで美奈が隣に座る。

「それに……ほら」

そう言って美奈が空を指差すと、

その先にはようやく一つ、二つ星が流れ始めるのが見える。

流星は少しずつ数を増し、

いつの間にか雨の様に空を流れてゆく。

「わぁ……」

優の瞳が大きく見開かれる。

「きれい……」

美奈もしばしその光景にみとれる。

流星雨の降り注ぐ下、生まれたままで寄り添う二人……

同性同士とは言えどこか絵になる一コマである。

「ね、優、

 何かお願いしてみた?」

「え、ええっ?」

うっとりと空を見上げていた優はそんな美奈の声に思わずびっくりしてしまう。

「そ、そんな暇ないわよ。

 こんなにきれいな流星群を見てたら……」

そう言って再び夜空を見上げようとするが、

そんな優の耳元に美奈はそっと近づくと……

「わたし、優と一つになりたい」

そうつぶやいた。

「……」

それを聞いた優の頬も少し赤くなる。

「わたしね、何度か思った事があるんだ。

 本当はわたしと優って一つの存在だったんじゃないかって」

「うん……

 それが何かのいたずらでこうして二人に分かれちゃって……

 こうして出会えたのってやっぱり運命、

 いや本能だったのかもね」

優も少し声を熱くしながらそう返す。

「だから、

 もしもわたしか優のどちらかが男だったら

 思い切り一つになれるのにと思って。

 ほら、わたし達女同士でしょ?

 だからどんなに頑張っても……」

逆に美奈の声が小さくなってゆく。

「でも、わたしが男だったら

 男の美奈を受け止める事はできないし、

 美奈が男だったら男のわたしを受け止められないし、

 どちらにしてももし男だったら女としての感覚は味わえないと思うな」

そんな美奈を励ますように優は優しく言う。

「それにわたしとしては女同士として美奈を感じたいな、

 と思ったりしてね」

「優……」

「わたし達が女同士で出会ったのって

 やっぱり意味があるのよ。

 例えホントに一つにはなれなくても……」

「わたし達は……一つ……」

そう言って二人の唇が重なる……瞬間。

ヒュッ!

ドスッ!

二人の頭上を何かが掠め、

近くの地面に落ちた。

「きゃっ!」

「な、なに?」

先ほどの甘い雰囲気をも切り裂くその衝撃に二人は我に返る。

「美奈、大丈夫?」

「わ、わたしは平気。

 優は?」

「わたしも……

 でも、一体何が落ちてきたの?」

少し恐れとおののきに囚われながらも二人して周りを見渡す。

「優……あれじゃない?」

「あ、あれ?」

美奈が指をさし優がそれを追った先、

そこには草むらの中に深々と突き刺さっていた石の様な物体があった。

「や、やっぱり隕石かな……?」

「美奈、危ないよ。

 ホントに隕石だったら色々……」

恐る恐るその石に近づこうとする美奈を止めようとする優だったが、

美奈は構わずその石を手に取り、

一気に引き抜く。

「……優、これってやっぱりただの石みたいよ」

そう言いながら美奈は手にした石を優に見せる。

確かにそれは一見ただの石ではあった。

しかし、薄い緑色をしたその石の長さは約30センチを越えており、

石と言うよりどこか石の棒を思わせる。

そして何より……

「美奈、

 この石、生きてない?」

「へ?」

そう言われて美奈はきょとんとした顔でその石を見つめる。

「気のせいかな……

 何か動いていると言うか、

 暖かさを感じると言うか……」

優は首をかしげながらその石を見つめる。

美奈も改めて石を手にしながらあちこち見回すが、

おかしな所は余り感じられなかった。

しかし、それをしばらく繰り返すうちに美奈の中にある感情がわきあがる。

「……優、これっていけるかな?」

「いけるって何が?」

不意の質問に少し首をかしげながら返す優。

それに対して美奈は少し興奮気味に、

「この石、使える。

 この石を使えばわたし達、女のままで一つになれる!」

ととんでもない事を言った。

「えっ?

 一体何をバカな……」

さすがに反論する優だったが、

石を見ているうちにどこか不思議な気持ちにかられてくる。

美奈にしろ優にしろ、

裸のままと言う状態がその石の持つ何かに反応しているのだろうか。

「そ、そうね……

 ちょっと固くて重そうだけど……

 これなら……」

「でしょ?

 きっとお星様がわたし達の願いをかなえるために

 この石をプレゼントしてくれたのよ」

「そ、そうかなぁ?」

「そうに決まってる。

 絶対決まってるよ」

と言いながら美奈は石をなぜか優に突き出す。

普通ならそこまで言う美奈自身が石を装着するものだが、

なぜか美奈は優にそれを差し出している。

「美奈、もしかして最初はわたしがそれを?」

ためらいと興奮にとまどいながらもそれを手にしようとする優だったが、

なぜか美奈はそれにも口を挟む。

「違う違う。

 まずは石をつかんでから」

そう言って美奈は優の両手を石をつかんでいる自分の手に沿わせ、

静かに下ろす。

そしてゆっくりと二人の足の間の辺りに沿わせる。

「あ……そう言う事ね……」

そこまで来てようやく優は美奈の意図を理解した。

「うん。

 やっぱり一緒に一つになろうよ、ね?」

「ええ」

二人はうなずくと静かに歩み寄り、

そしてゆっくりと石の先端を自分の中に入れてゆく。

ズブッ、

ヌチョ……

「んっ……」

「あっ……」

少なくとも互いの細い指くらいしか入った事のないそこは

まるで最初からそこに入るためにあったように石を受け入れてゆく。

その少しきついながらも柔らかい感覚に二人は酔うが……

「うっ」

「あっ」

少しきつい感覚が走った瞬間、

顔をしかめさせた二人の姿勢は狂い、そして……

パキン。

石はちょうど二人が手にしていた中心部で折れてしまう。

「ちょっと、何やってるのよ……」

「そ、そんな……」

またしてもせっかくのムードが断ち切られた事に不満そうな二人だったが、

互いの状況を見るやその空気は一変した。

「美奈、それって……」

「ゆ、優だって……くすっ」

そう、二人の股間、飾り毛を押しのけるように薄緑の石が突き刺さり、

ブラリと垂れている。

それはまるで男性のそれに近かった。

「わたし達、男になっちゃったかもね」

「もう、冗談はよして…うっ」

「あ……」

からかいあうのもつかの間、

その石はそこを視点にゆっくりと起き上がり、

見事にいきり立つような位置に付く。

同時に折れていた先端も少しずつ形を整え、

初めて石を見つけた時と同じ様な少しとがったような形になる。

「優……これって……」

「い、行くしかないわね……」

石を引き抜く事もせずに二人は再び体を沿わせると

あたかもそそり立つ男性のそれの様に伸びる石の先端を静かに沿わせる。

「あっ、あぁ〜ん……

 美奈がわたしの中に入ってくる……

 だけじゃない、

 わたしが美奈の中に入ってる〜!」

「きゃうっ、

 わたし、優に突っ込んでる、

 優に突っ込まれてるぅ〜!」

石は先端から混じり合うように融合し、

そのまま互いの中へと導かれる。

互いに入り、

入れられる感覚に二人は今までにない快感を味わっていた。

「はぁ、はぁ……

 やったね……

 わたし達、女同士で一つになれた……」

「はぁ……

 うれしい…

 うれしいよ……

 優〜!」

そう言いながら美奈は力いっぱい優を抱きしめ、

自分に突き刺さっているものをさらに優に突き込み、

優の中のものをより深く自分の中に導く。

「うぅ〜っ!」

「あぁ〜っ!」

そのまま二人は倒れこみ、

そしてどちらからともなく腰を、

いや、体中をぶつけ合う。

「優、優、優の中、

 美奈の中、

 気持ちいいよ、

 きもちいいっ!」

「美奈、

 美奈の中も、

 優の中も最高!」

互いに互いの中の快感を味わいながら二人は抱き合い、

さっき以上の勢いで互いをむさぼりあう。

ググッ、

ググッ、

ググッ!

「わたし達、もっと、もっと一つに……」

「なろっ、身も心も一緒になろっ……」

冷たくて硬い石の棒を入れているとは思えないほどの

激しい生身のぶつかり合いが繰り返される。

そして石もまたそれに合わせるように二人を導いた波動を

さらに二人の全身に満たしてゆく。

それは美奈を通じて優に、

優を通じて美奈に注がれ、

増幅・共鳴しあいながら互いの中に満ち満ちてゆく。

パンッ!

パンッ!

パンッ!

「ああ、熱い、熱いよ……」

「溶けそう……壊れちゃいそう……」

流星雨はさらに激しさを増し、

二人の睦みを鮮やかに彩る中、

草むらに腰を下ろしながらあたかも発射を待つロケットのように

互いの勢いを高めあいながら二人は抱き合っていた。

変化が始まったのはやはりつながっているそこからだった。

すでに二人は打ち付けあわなくとも

それ以上の衝撃と快感を味わっていたが、
その部所が少しずつ癒着し、

文字通り溶け合いながら混じり合っている。

それは腰から脚に伸び、絡み合うように地面に伸びていた二人の両足が

アメ細工の様に溶けて変形しながらさらに絡み合い、

二人の腰の中に消えてゆく。

上半身もへその辺りまで融合が進み、

重ねあう互いのふくらみも癒着が始まっている。

それに気づく事無く二人は腕を回し、

唇を重ねあう。

“はぁ、はぁ、あれ……

 この子、誰だっけ……

 わたし、誰だっけ……”

“わたし、何やってるの……

 目の前にいるのって何……

 それに……わたしって何……”

激しい絡み合いと融合はすでに互いの精神も蕩けさせ、

もはや互いに互いをそして自分自身さえ認識できないまま

ただひたすら混じり合う事のみに走っている。

“ああ……

 ひとつに……

 ひとつにぃ……”

“まじらなきゃ……

 かえらなきゃ……”

ズブッ!

互いの両腕が背中に回る――

というより背中に突き刺さるように沈んでゆき、
顔同士も唇から癒着してゆく。

髪はすでに体の中に消えている。

もはや二人は文字通り粘土の塊の様な姿と成り果て、

見えざる手で練り込まれる様にいびつに動き続けていた。

グニャグニャ……

グニュグニュ……

“ああ……

 うう……

 おおお……”

精神もすでに溶けて混じり合い、

思考どころではないなか、

その塊は少しずつ変化を見せつつあった。

地面に付いていた場所が二点を軸にムクリと浮き上がり、

その二点は少しずつ太く長くなってゆく。

塊が全体的に少し細く形を整える中、

左右の両上端から細い塊が生えるとこちらを向き、

適度に太さを保ちながら長く細く整えられる。

文字通りの頭頂部からも大きな塊が生え、

ふもとが細くなるのと対照的に先端部は少し丸く、大きくなる。

ビクッ、

ムクッ、

ビクッ、

ムクッ……

あたかも人の形のようになったその物体は少しずつ形を整え

より人間に近い姿に変わってゆく。

腕に当たる先端からは手、

そして指の様な物が伸び、

胴体にあたる部分はたくましい胸板と引き締まった腹筋と腰が形成される。

ただ少し違うのは全体的にどこか流線的なフォルムを感じさせ、

その全身は白地に赤いラインが伸びている。

そして何よりその胸元にはいつの間にか緑色に輝く結晶体が浮かび上がっている。

それはかつてこの塊の「材料」となった二人の少女を結びつけた石の棒にも似ていた。

そうこうしているうちにも顔に当たる部分には目を思わせる一対の青い輝きがともり、

頭部全体もどこか流線型のフォルムに形作られる。

その姿はかつて使命を終えて力尽き、

流星と共に消えた異星の戦士のものであった。

“ドゥ……

 ドゥア……

 ドゥオァ……”

少しずつその口にあたる部分から体に似合うたくましい声が漏れ始め……

ドゥアーッ!

全てが終わった瞬間、

戦士は全身を大きくそらせながら歓喜の声を上げる。

それを祝福する様に流星雨も最高潮に降り注いだ。

“……思ったより早く再生できたな

 ……この星はそれだけ生命エネルギーに満ちているのだろうか?”

全身を見渡しながら戦士はつぶやく。

本来彼らは肉体が朽ちても結晶体が健在なら

周辺の生命エネルギーを少しづつ蓄積しながら再生する事ができる。

しかし、それにはかなりの時間がかかるだけに

余りにも早い再生に戦士は少し疑問を抱いた。

“そう言えば体中に力がみなぎる、

 と言うよりみなぎりすぎている

 ……これはどう言う事だ?”

そう言いつつ戦士は結晶体に念を込め、

その記憶をたどる。

少しして彼はその原因にたどり着いた。

“……なるほど

 ……この星の女性型生命体、

 しかも二人分と融合してしまったのね”

なぜか女性――優の様な声で戦士はつぶやいた。

“でもこのままじゃまずいわ。

 まだ再生が完全じゃないのにエネルギーが飽和しすぎてる”

今度は美奈のような声でそう言うと戦士は全身に力を込める。

“しばらくはこの星に厄介になる事になりそうだな……”

元の声でそう言い終えた途端、

再び戦士の体はぼやけ始め、

再び粘土細工のような形に変わる。

胸元の結晶体が埋もれるのと同時に

ちょうど戦士の体の中心部がピッタリと分かれ、

ゆっくりと分裂する。

腕の辺りと脚の辺りもゆっくりと縦に二つに分かれ、

それぞれ横に広がりながら細い両腕と両足に変わってゆく。

胴体の分かれ目も癒着しながら変化してゆき、

柔らかなふくらみと括れをたたえた女性の体を形作る。

顔の形も整ってゆき、

目と鼻と口と耳、

そして髪が生えてくる。

そうするうちにかつて戦士が居た所には二人の女性――

優と美奈が融合する前と変わらぬ姿で、

ただし少し恍惚とした顔で向かい合いながらたたずんでいた。

そして二人はどちらともなく意識を取り戻す。

「美奈……

 わたし達、一つになれたんだね……

 ほんのちょっとの間だったけど……」

先ほどの余韻に浸りながら優は美奈に声をかけるが、

美奈はそれを軽く嘲笑する。

「やだ、わたしが美奈だってまだ思ってたの?

 わたしはもう美奈じゃない。

 あなただってもう優なんて地球人じゃないって事はわかってるでしょ?」

想いもよらない言葉をかける美奈に一瞬驚きを見せるが、

優もしばしして苦笑する。

「そうだったわね。

 もうわたし達は優でも美奈でもない。

 まして地球人でもない。

 遠い宇宙から来た戦士。

 その仮の姿だもの……」

そう言う優の顔には憂いや後悔の色はなかった。

「まあ、形はどうあれわたし達は一つになって生まれ変わった、

 それでいいじゃない……」

と美奈は優を戦士の名前で呼んだ。

「そうよ、そうよね……」

優もまた美奈を戦士の名前で呼んだ。

生まれ変わった二人を祝福する流星雨の中、

再び二人は唇を重ねあわせる……



翌朝。

「う〜ん、身も心もすっきりしたな〜」

大きく伸びをして場所を後にしようとする美奈。

もちろん衣服を身につけ、

荷物も片付け終わっている。

「まあ、文字通り生まれ変わったって感じだものね。

 それに、ようやくもとのわたし達の意識も落ち着いてきたし」

こちらも衣服を身に付け、片づけを終えた優が後を追う。

「でも、どうせならあのままずっと

 ”彼”

 のままで居られたらよかったのにね。

 優だってそう思うでしょ?」

少し不満そうな顔をする美奈。

「もちろんわたしだって美奈と一緒に

 ”彼”

 でいたいけど、

 わたし達が合体して

 ”彼”

 になったせいで

 思った以上に力がみなぎって制御できなくなってるから

 こうして普段は元のわたし達でいるんじゃない」

優も残念そうな顔をこらえて答える。

「あ〜あ、せっかく願いがかなったのに、

 これじゃうれしいのか何なのかわからないわ」

「いいじゃない。

 またいくらでも一つになれるんだしね」

そう言って軽くウインクをする優。

それに対して苦笑いで返す美奈。

「じゃ、帰ったらとことん“合体”よ!

 ”彼”になる限界までいくわよ〜!」

「……その前にたっぷり休んでお腹いっぱいにしないとね」

そう言い合う二人は体こそ分かれてこそいたが、

心は、

そしていつの間にかその影は一つに混じり合って伸びていた。



こうして宇宙を守りぬいた戦士は二人の少女の体を借りて蘇った。

このあと二人は戦士が完全に再生するまで様々な事件に立ち向かう事になるのだが、

それはまた別の話である……



おわり



この作品はカギヤッコさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。