風祭文庫・ヒーロー変身の館






「第4話:杏と怪獣」


作・風祭玲

Vol.1121





もふっ。

これは”とある時間軸”でのお話 もふぅ。

と言うことで、

その時間軸の報告書の紹介から始まる もふぅ。



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怪獣災害対策協議会
TSF・報告ファイル 20160909-001

被害発生時刻
 9月1日16時ごろ。

被害者
 少年A(16歳・高校1年生)他20名ほど

遭遇時の状況
 Aは女友達Bと共にヌマノハタ・シティ1番街の繁華街を散策中、
 地中より出現した怪獣Cと遭遇。

怪獣Cの詳細
 Bの証言によると怪獣の高さは約3m程度、
 南方・熱帯雨林等に見られる食虫植物を思わせる姿であり、
 明確な腕・足などは確認できてないが、数本の触手を持ち、
 その触手を以って被害者を捕縛。
 幹に数個下げている捕食袋の中に取り込まれた。

周囲の対応
 Aの捕食後、その様子を目撃したBがあげた悲鳴を聞きつけ、
 付近を警邏中だった県警巡査・Dが現場に駆けつけ駆除を試みるものの、
 怪獣Cを視認することが出来なかった。

 だが、Bには怪獣Cを視認出来るらしく
 Dに向かって怪獣Cの位置を知らせ続けるが、
 しかし、Dが視認できぬまま怪獣Cは捕食したAを吐きだし、
 地中へと姿を消す。

Aの容態
 周囲の対応が早かったため、軽いケガなどで済んだが、
 対応が遅かった場合、捕食された可能性が十分にある。
 

その後の状況
 同様の事件はその後も続発し、約20名が怪獣Cの犠牲となり、
 9月7日に召集された怪獣災害対策協議会は本件を第一種怪獣災害と認定。
 以降、TSFが第一次対応を行うこととなった。

怪獣Cの特徴
 市立博物館館長より提供された怪獣Cに関する重大な情報によると、

 怪獣Cは南方熱帯雨林に生息し、
 同地に居留している原始部億ヌーガが神として崇める生命体であり、
 それが何らかの方法でヌマノハタ・シティに持ち込まれたものと推測される。

 怪獣Cは食虫植物に似た姿をしているが虫類の捕食は行わず、
 主に16歳から18歳の男子を捕縛・捕食することで生命維持を行っており、
 対象年齢外の男性と全年齢の女性は捕食の対象外である上に、
 同年齢帯の女性以外はその姿を直接視認することが出来ない。

 怪獣Cは通常兵器は通用しないが、
 TSFが開発した特殊駆除弾による攻撃に有効性が認められる。
 なお、もっとも効果があるのは生身による
 打撃・蹴り・噛付き・引き裂きなどの直接攻撃である。

 怪獣Cと忌避関係にあるものとして、
 南方原産のウリ科の植物E、並びに怪獣Cを好んで捕食する鳥類Fが存在する。

 怪獣Cが生息場所に居住しているヌーガ族はこれらの特徴を理解しているため、
 男子が同年齢帯に達すると全身に植物Eの樹液を塗り、鳥類Fの羽飾りを付け、
 男性器を保護するため、植物Eの実で作ったペニスケースを被せた姿となって、
 怪獣Cと互角の戦いを行っている。

 以上のことから怪獣C退治にはこれら対策が有効である。

主な対策
 TSFには引き続き怪獣Cへの積極的な対応を行うが、
 ヌマノハタ・シティに居住する住民もまた怪獣Cへの対応をお願いすることとし、
 特に怪獣Cの捕食対象となる男子には危険通知のオレンジカードを発行、
 日頃からのヌーガ装備をお願いすることとなった。

 なお、怪獣Cの呼称をヨジラとする。

以上
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深夜のヌマノハタ・シティ郊外。

ギュォォォン

闇を裂いてTSFのファイター群が一斉に攻撃を開始すると、

ギャォォォン!

地上を侵攻する大怪獣との間で大バトルが繰り広げられる。

「陸海空、ありったけの火力をつぎ込め!」

「出し惜しみは無しだ!」

遠く離れた発令所で制服組が声を上げている横では、

無数のコピー機がうなり声をあげて印刷を開始すると、

熱を帯びて印刷されていく書類はピタゴラ装置により次々とファックスへと送られ、

回線使用料を払い送信されていく。

膨大な予算を使い込んだ末、

ギャォォォン!

ついに大怪獣は雄叫びを上げると、

質量の80%を失って活動を停止したのであった。



『怪獣災害対策協議会発表。

 本日午前4時、

 TSFはヌマノハタ・シティ近郊に潜伏していたヨジラに対し

 特殊駆除弾による急襲作戦を実施、

 ヨジラ本体の約80%の殲滅に成功しました。

 なお、駆除が困難な末端部が残存しているため、

 現在、TSF部隊による凍結作戦が継続されています。

 市民生活の維持のため ヌマノハタ・シティに発令されていました警報は

 午前6時をもって解除となりますが、

 ヨジラ末端部による襲撃の可能性が残っているため、

 オレンジカード携帯者はヌーガ装備を怠らないようお願いします』



ツクツクボーシ!

ツクツクボーシ!

夏の名残の蝉の声が響く朝の住宅街。

「いーやーだぁぁぁ!」

その一角にある住宅から少年の声が響くと、

「ほらぁ、

 ぐずぐずしないで、

 さっさと家から出るぅ」

住宅の玄関先で制服姿の少女が家の中に向かって声を掛けた。

「い・や・だ・

 絶対出ないからなっ!」

その声に抗するように少年の声が響くと、

「もぅ、覚悟を決めなさい」

少女は呆れるようにして言うと玄関の中へと入り込み、

力ずくで引っ張り出して見せた。

すると、

「いやぁぁぁ!」

顔を手で覆い悲鳴を上げる少年が引き釣り出され、

「いってらっしゃーぃ」

その少年を送る声が玄関内から響くと、

バタンッ

とドアが閉められるや、

ガチャッ!

と戻って来れないよう鍵がかけられた。

その途端、

少年は少女の手を力尽くで振りほどくと、

閉じられたドアに駆け寄り、

「かっかぁーさん!

 入れて!」

と泣き叫びながらドアを叩くが、

「杏は16歳のオトコの子でしょう。

 それなら何をすべきか判るよね」

自宅の中から母親と思える返事が返り、

パタパタとスリッパがなる音が遠のいて行った。

「そんなぁ」

ペタン

少年はその場に座り込んでしまうと、

「はいっ、

 一緒に学校に行こうね」

座り込む少年に向かって白い手が差し伸べられた。



朝日に照らされる道をバス通りに向かって少年と少女は並んで歩いて行く、

少年の名は木ノ下杏。

中学生までは少女であったが、

薬品工場の事故の遭遇した結果、男性に性転換に経歴がある。

一方の少女は杏とは同じ学校に通う親友の桜庭咲子と言い、

虐められていた彼女を杏が助けたことが二人が知り合うきっかけであった。

さて、二人はいつもと同じように並んで歩道を歩くが、

家の前を掃除している顔見知り婦人が人影に気づいて顔を上げると、

「あら」

と小さく声を上げ、

また、出勤途中のサラリーマンも

「おっ」

と杏を見て少し驚く仕草をしてみせる。

周囲の人のそれらの反応を杏は”肌”で感じ取ると、

うつむき加減になって耳まで顔を真っ赤にして見せるが、

同時に杏の股間はその感情に反して激しくいきり立ち

被せてあるケースを前へを押し倒そうとする。

しかし、

ギュッ

腰にからケースに廻している紐によってその動きが阻害されると、

杏の股間は前に向かう力と引き戻そうとする力がぶつかり、

「いててて」

杏は想定外の痛みを堪えていた。

「どうしたの?」

バス停に並んでも押し黙ったままの杏の姿を見て咲子は話しかけるが、

「うっうるさいっ」

痛みを我慢する杏は上ずった声でそう返事をするのが精一杯だった。

程なくして到着したバスに乗車するが、

「杏、コッチ」

いつもの立ち位置に行こうとした杏を咲子は呼び止めると、

背中を押して杏たちのために用意されているコーナーへと押し込んだ。



「木之下ぁ!」

そのコーナーに先客として乗っていた

クラスメイトの大隅拓馬が杏に向かって声を上げると、

「そっかぁ、

 お前も仲間になったかぁ」

と笑みを浮かべながらベタベタと杏の体を触り、

そして、股間に手を入れ剥き出しになっている陰嚢を掴みあげると、

「オレとお前は同士だ」

と囁きかけてくる。

「あっ、

 そこ、握らないでよ」

一旦は大人しくなっていた股間の敏感な部分を掴みあげられことに驚いた杏が

反射的に拓馬を押し戻してしまうと、

「嫌がっているんだから、

 やめなさいよ」

と咲子が注意をする。

「うるせーな。

 これが俺たちの歓迎方法なんだよ、

 だったら、お前も同じ格好をしてみるか?

 もっとも、女のお前がコレを付けても、

 引っかかるところが無いけどな」

と拓馬は自分の股間から伸びているペニスケースを指差しそう言い返すが、

その言葉を杏は複雑な思いで聞いていた。

すると、

「このスケベッ」

咲子の声が響くと、

パチンッ!

彼の頬が叩かれた。

すると、

「お客さんっ、

 車内ではふざけないでくださぁい」

と運転手からの警告が車内に流れた。



学校前バス停から学校正門までの間は

登校する生徒で歩道はほぼ一杯となり、

杏や拓馬、そして咲子もその中に混じって歩いていく、

コレまで靴を履いて歩いていた道を裸足で歩く感覚を感じながら、

「はぁ…」

つい杏はため息を付いてしまうと、

ペチッ!

露になっている肩が叩かれ、

「緊張するなって、

 木之下は水泳部なんだから、

 パンツ一枚の部活中と思えば良いんだよ」

と拓馬の声が響いた。

「うっうん、

 まぁ」

水泳部で穿くブーメランパンツ一枚とは違う勝手に

杏は困惑した表情を浮かべていると、

「ヨジラだ!」

突然、その声が響くや、

ヌォォォッ!

学校の正門前より植物の弦が湧き出し、

見る見るその数を増していくと、

捕食する獲物を探し始めた。

「いやぁぁぁ!」

女子生徒の悲鳴が上がり、

「朝の攻撃で残っていた根が湧き出したぞ!」

「触手の数が多いぞ!」

同時に男子生徒の叫び声があがる。

ピピッーッ!

ヨジラの姿は見えないものの、

警戒していた警官らによって周囲に交通規制が敷かれると、

シュルルルルル…

湧き出した触手は女子生徒や大人たちを避けながら伸びるが、

だが獲物となる男子たちの体に塗られている忌避植物の樹液や、

その植物の実で作られているペニスケースに触れるたびに、

ビクッ

ビクッ

と避けるように動き、

次第に動きが鈍ってくるとさ迷いはじめだした。

すると、

「ヨジラを狩るぞっ!」

突然声が響くや、

「おぉ!」

朱色の腕が次々と上がり、

同時に、

「うらぁ!」

全身に朱色の樹液を塗り、頭に鳥の羽、

そして股間にペニスケースを聳え立たせる男子生徒たちが

一斉に触手に向かって飛びついていく、

「俺たちも行くぞ!」

その様子を見た拓馬も飛び掛っていくと、

汗を吹き上げて戦う者達の中に消えて行った。



「このやろう!」

「しねや」

触手に取り付いた男子生徒たちが声を上げて幹を殴り、

鷲づかみにした触手に噛付き、

捕らえた獲物を取り込む袋を引き裂いていくと、

その一方で制服姿の女子生徒たちは遠巻きに取り囲んで、

「やれーっ」

「引き倒せぇ!」

と声援を送る。

だが、

「あっあっ」

目の前で起きている戦いを杏は呆然と眺めていると、

「何をしているのっ

 アンタも戦いなさいっ

 食べられたいのっ」

と咲子の怒鳴り声が響くと、

パァンッ!

思いっきり背中が叩かれた。

「いってぇ!」

杏は悲鳴をあげて2・3歩前に出るが、

しかし、

シュルッ!

足元で萎えている触手を掴みあげることが出来ずに躊躇していると、

触手の断末魔が響き渡って地面に引き倒されてしまった。

そして、

ボコボコボコ!!!

風船のごとく膨れ上がっていく触手の山が

飛びついていた男子生徒たちを押しのけて持ち上がったのち、

パァン!

ブクブクブク!!!!

その体が風船のごとく弾けとんでしまうと、

真っ白な泡が一斉に吹き出した。

「ヨジラを退治したぞぉ!」

「おぉっ!」

男子生徒たちが挙げる勝鬨が響き渡る中、

シュワァァァァァ!

杏の足元の触手も泡を吹きながら消えていくと、

「ほっ」

杏は安心し胸をなでおろすして見せるが、

いきなり頬が抓り挙げられると、

「あんな触手にも触れないの?

 杏の意気地なしっ、

 怪獣に食べられちゃえばいいのよっ」

と咲子の声が耳元で響いた。

「なっなんだよっ、

 お前は戦わないで済むからそれんなことを言えるんだよ」

咲子に向かって杏は怒鳴り返すが、

「ふんっ」

咲子はプイッと横を向くと、

杏を残してさっさと校門をくぐって行く。

「なんだよっ、

 他人事だと思って」

背中を向けた咲子に向かって杏は足もとの石を蹴飛ばすが、

メリッ!

裸足の爪に石の角が当たると、

「いてぇぇ!」

足を抱えて飛び上がった。



校門前での怪獣退治があったため、

二学期の始業式は少し遅れて始まるが、

心配されていた再襲撃などはなく、

当日の行事は滞りなく進んでいった。

「やれやれ、

 やっと落ち着ける」

教室に戻った杏は安心した表情で自席に腰を下ろすが、

直接お尻にヒヤッと来る感覚と、

ズンッ

目の前に聳え立つペニスケースの存在に困惑をする。

「うーっ、

 邪魔だな…」

当初、使い勝手から長さの短いケースを所望したものの、

長いほうが怪獣が逃げていく。と言う噂をに流されて、

長いペニスケースを希望したことを後悔するが、

だが、途中で切るわけには行かず、

杏は腰の位置や足を組み替えたりして、

落ち着き場所を模索する。

すると、

「邪魔なんだろう」

見かねたのか拓馬が話しかけ、

「そういう時は、

 ここをこう廻して、

 ずらすと良いよ」

アドバイスしながらペニスケースの位置を修正してみせる。

「あっありがとう」

「なぁに、

 最初はみんなこんなもんだよ。

 慣れれば同ってことはない」

礼を言う裕也に拓馬は笑って見せると、

「しかし、このクラスの男子もペニスケース組が増えたな」

とグルリと教室の中を見回してみせる。

夏休み前は数人しか居なかったペニスケース装着者が、

夏休み後の今ではクラスの男子の半分近くを占めていた。

「うんっうん、

 そうだね」

恐縮しながら杏は返事をすると、

「まったく、女は良いよな、

 そうやって服を着られてさ。

 こっちは19歳になるまで素っ裸だよ」

ペニスケース姿の男子が女子を眺めつつ文句を言う。

すると、

「なに言っているんだよ。

 裸の生活がいやなら、

 怪獣に食われることだね」

「あほっ、

 食べられるくらいなら

 裸のほうがましだ」

「せいぜいがんばんな」

「うるせーっ!」

裕也と女子はそんな口げんかをはじめだした。

それを横で聞きながら、

「ふぅ」

杏は再びため息をついた。



始業式の日は学校が早く終わり、

杏は昼過ぎには帰宅の準備をしていた。

すると、

杏の傍に咲子がやってくると、

「まっすぐ家に帰るの?」

と話しかけてきた。

「ん、そうだけど?」

振り向かずに杏は下げていく麻袋に持ち帰るものを詰め込んでいくと、

「ねぇちょっとぐらい体、鍛えてみない?」

と再度話しかけてきた。

「なんで、面倒くさいよ」

「そうかなぁ」

「なんだよっ」

「ほらっ、

 杏ってその体一つで怪獣に立ち向かわないとならないじゃない。

 体、鍛えておいたほうが楽かなぁって」

遠まわし気味に咲子は言うと、

「いまはそんな気分にならないんだ。

 放っておいてくれ、

 じゃなっ」

と言い残して教室から出て行った。



自宅に戻った杏は自室でボディペイントのまま寝転ぶと、 

股間のペニスケースを触りながら、

朝、怪獣退治のことを思い出していた。

鍛え上げた体を晒して怪獣に飛びつく男子生徒達、

そんな彼らの姿を思い出すと、

「はぁ…

 男として生きて行くには戦わないとだめなのかな」

杏は自分の手を天井に向けて伸ばしてため息を付く。

そして、

「えぇいっ」

腿を叩いて起き上がると、

付けていたペニスケースを外して風呂場に駆け込み、

ボディペインティングを洗い流し、

着ることはないと思っていた服に袖を通すと、

自転車に乗って自宅を飛び出していく。

「ヨジラめ、

 来るなら来い」

そう叫びながら杏は自転車を漕ぎ繁華街へ向かうと、

いつも遊んでいるゲームセンターに入っていく。



夕方

所持金をほぼ使い果たしたため杏はゲームセンターから出てくると、

朱塗りのボディペイントにペニスケース姿の高校生たちの姿が目に入った。

「………」

小さな罪悪感を感じた杏は置いてある自転車のところに向かったとき、

「ヨジラだ!」

不意にその声が響き渡った。

「え?」

その声に裕也は顔を上げると、

ヌォォォォッ!

繁華街にあの食虫植物を思わせる怪獣が立ち上がり、

同時に人々のざわめきが周囲に響き渡った。

「ヤバいっ」

今の自分の姿がヨジラの捕食対象であることを感じ取った杏は、

自転車を出して慌ててその場から去ろうとするが、

ギュッ!

いきなり彼の足を強い力が掴み上げた。

「ひっ!」

悲鳴を上げる一瞬のうちに裕也の視界は上下さかさまになり、

自転車が地面に落ちる音が響き渡る。

そして、

グンッ!

瞬く間にヨジラの幹へと引き寄せられると、

そのまま下で口をあけている捕食袋へと押し込まれた。

「助けてくれ!」

悲鳴を上げて杏は捕食袋の淵にしがみ付こうとするが、

しかし、

ツルッ

伸ばしたその指先を淵は弾いてしまうと、

「あぁぁぁ!」

杏は捕食袋の中へと取り込まれ、

ザブッ!

その中で溜まっていた溶液に浸される。

「うわぁぁぁ」

瞬く間に溶液は杏の体にまとわりつき、

着ていた衣服を溶かしてしまうと、

ニュルッ

コレまで突起物が無かった内部の壁から無数の突起が突き出して、

杏の体を動けないように押し込み拘束していく、

「イヤだ、

 このまま食べられたくない」

突起物に埋もれながらも杏は抵抗するが、

ズブッ!

伸びていた突起が杏の肛門を押し開けて潜り込んでくると、

「もがぁ」

杏の口にも突起が押し込んでいた。

すると、

グググググッ

萎えていたはずの杏のイチモツがはち切れんばかり膨らむや、

ビュッ!

激しく射精を始めだした。

「あっ」

「あがぁ」

「うがぁ」

出しても出しても射精はとまらず、

その快楽の中で杏の身体が溶け始め、

ヨジラがそれを養分として吸い取っていく。

「いやだ、

 食べられたくない」

杏がそう強く念じた時、

ドンッ!

強い衝撃がヨジラを襲った。

と同時に触手の動きが止まると、

さらに強い衝撃がヨジラを襲う。

そして、

グラリ

杏を取り込んだ捕食袋が一気に傾きだすと、

ズズーン!

と言う衝撃と共に横倒しになってしまった。

「うっ何が…」

動きが止まった捕食袋の中で杏はもがいていると、

ベリベリベリ

バキバキバキ

ヨジラの体が引き裂かれる音がゆっくりと近づいて、

バリッ

その音共に杏を包んでいた捕食袋が裂かれると、

「大丈夫か?」

の声と共に朱に染まった手が差し出された。

「うぐっ、

 うっ

 うん」

突起物で口をふさがれているため満足な返事が出来なかったが、

杏は何度も頷きながら差し出された手を掴みと、

グイッ!

強い力で捕食袋から引き出されていく、

そして、

「大丈夫か?」

と声を掛けてきたペニスケース姿の赤い体を見た途端。

トクン

杏の中に言いようも無い気持ちが湧き上がってきた。

「はっはいっ

 助けてくれてありうがとうございます」

ブシュゥゥゥゥ

倒されたヨジラが泡となって消えていく中、

恩人に向かって杏は頭を下げると、

「とりあえず医者の診察を受けたほうがいい」

そう声を残して彼は去って行く。

その後、杏は駆けつけた救急隊の手により病院へと担ぎこまれるが、

体には特段の変異は見られないのでしばらく観察と言うことになった。

しかし、事が警察に呼び出された両親に知らされたため、

こってりと叱られてしまい、

19歳になるまでペニスケース姿でいること、

そして、一人で怪獣に立ち向かえるられるように

体を鍛え上げることを約束することで

何とか許してもらうことが出来たのであった。



「うっうん、

 大丈夫だよね」

ボディペイントした自分の体を眺めながら、

杏は自分のイチモツにペニスケースを被せた。

玄関の呼び鈴が鳴り響くと、

「よしっ」

杏は鳥の羽を頭につけ、

「いってきまーす」

の声を残して玄関のドアを開けた。

「よぉ、

 女の子にはなってなかったか」

制服姿の咲子が杏の体をグルリと見回し、

パシッ!

と背中を叩いた。

「食べられてなくて残念だったな」

そんな咲子に向かって杏は勝ち誇ったように言うと、

「そっかな?

 なんか一回り小さくなったんじゃない?」

と耳元でささやいてみせる。

「ひっ」

その声に杏は驚くと、

「うそ」

と悪戯っぽく笑ってみせる。

「てめぇっ、

 だましたな」

「こんなうそ

 引っかかるほうが悪いのよ」

「許さんっ」

などの声と共に二人はバスに乗り、

そして、学校前の停留所で降りると、

シュワァァァァァ!!

学校の前では怪獣が泡となって消えていくところだった。

「また襲って来たの?」

呆れながら咲子が声をあげると、

「おっしゃっ!」

怪獣を倒した上級生が泡の中でガッツポーズを見せていた。

「あっあの人…

 昨日助けてくれた人だ」

上級生のその姿を見た杏は彼が昨日の恩人であることに気づくと、

「あっ、

 遠山くん」

杏は彼の名前を呼ぶ。

「知っている人?」

「うん、

 まぁね」

トクンッ

彼の猛々しいその姿を見て

杏は胸をときめかせてしまうが、

ふと自分の体を見るなり、

「もっと鍛えないとダメだな」

そう呟く。

「え?

 体を鍛えるの?」

「うっうん、

 助けられるのって格好悪いし」

「そうだね、

 怪獣倒せるようにならないとね」

「うん」



もふっ、

杏クンはこの時間軸でも苦労しているね。

さぁ、次はどんな杏くんに出会えるかな。

もふぅぅ



おわり