風祭文庫・ヒーロー変身の館






「ウルトラウーマン・フロス」
(第15話:ナリタ博士の発明品)



原作・風祭玲

Vol.714





時は西暦20XX年、地球では怪獣や宇宙人の襲撃が多発し、

国連の外部機関たる地球防衛軍では対処しきれないと判断した人類は

専任の特殊科学戦隊TSFを結成し、迫り来る脅威に立ち向かっていた。



バチッバチバチバチ!!

ここは東京九段・国家鎮守の森の地下深くにあるTSF本部。

のさらに下層にあるTSF科学要塞研究所である。

そして、

「ふっふっふっ

 もうすぐだよ、

 もうすぐお前は完成する…」

円形の作業台の上におかれた物体を見据えながら

怪しげにつぶやく人物こそ、

TSFにその人ありと言わしめる

脅威の天才科学者(若干マッドが入っていますが)・ナリタ博士であった。

「くくっ

 さぁもぅ一息だ!」

自らが生み出そうとしている発明品を満足そうに見つめたのち、

ナリタ博士は遮光マスクをかぶると、

バチバチバチ!

再び工作に取り掛かった。



ババババ!!!

バチバチバチ!!

ナリタ博士の作業は昼夜を問わず延々と続き、

ババババ!!!

ビチビチビチ!

ウニョンウニョン!!

ムニムニムニ!!

プリンッ!

ありとあらゆる擬音を響かせた後、

沈黙をする。

そして、

「できた…」

と一言つぶやいたとき、

ドォォン!

ナリタ博士の前には金色の配管を血管の如く絡ませ、

いままさに目覚めようとしているモンスター…

あっいや、脅威の発明品が鎮座していたのであった。



「はぁ、

 今日もヒマだなぁ」

日ごろ、宇宙人による拉致・窃盗などの犯罪や

傍若無人に暴れ回る怪獣の対応に追われるTSFだが、

だが、そのような事件は毎日起きるはずもなく、

週のうち1日・2日は待機となることもある。

そんなとき、隊員たちは有事に備えての肉体の鍛錬や、

資格試験に備えての勉学などに空いた時間を当てているのだが、

この男・チシブキモンザエモンは、

そのような有意義なことに時間を使うわけもなく、

ただ一人、

極東本部の中をブラブラと歩き回っていたのであった。

「今日は宇宙人も怪獣も何も出てこないみたいだし

 どうしようかな」

完全に時間を持て余してしまっているチシブキは

キョロキョロと周囲を見た後、

「!」

何かを思いつくと、

「そういえば、

 下でナリタ博士が変なものを作っているって言っていたっけ、

 おっしっ、

 ちょっと様子を見に行こう。

 不審者の監視はTSFの役目だからな」

と滅茶苦茶な理由を付けて、

チシブキはナリタ博士が篭る科学要塞研究所への

直通エレベータに乗り込むなり、

「ポチとなッ!」

っとエレベータのボタンを押した。



「ふふふっ

 くくくっ

 出来たぁ…

 出来たぞぉ!」

研究所にこもって一月以上、

年末も正月も棒に振って、

心血を注ぎ込んだ発明品の完成にナリタは感慨深げにしていると

「ねぇ、ナリタ博士っ、

 今度は何を作ったのですか?」

の声とともにチシブキが研究室内に入り込んできた。

「うわっ、

 なんだ、お前は!

 ここに入ってくるときはノックをしろと、

 あれほど…」

突然姿を見せたチシブキの姿にナリタは慌てて

完成した発明品にシートを被せ怒鳴るが、

「ノックならちゃんとしたよ、

 で、今度は何を作ったんですか?

 博士」

とチシブキは身を乗り出して発明品を一目見ようとしながら言い返す。

だが、

「帰れ帰れ、

 ここにはお前に見せるものは何もない」

とナリタは言い切って、

シッシ!

とチシブキを追い払うしぐさをするが、

「けちっ、

 いいじゃないかよ、

 別の減るもんじゃないだろう?

 なにこれ?

 何かのパーツ?」

一瞬の隙を突いて、

チシブキはナリタを交わすと

さっきまでナリタが作業をしていたテーブルの前に立った。

その途端、

「あっ!

 馬鹿者!

 見るな、つーとろうが!」

ナリタは慌てて制しようとするが、

そんなことにはお構いなしのチシブキはナリタを押しのけ、

発明品の上に被されたシートを取り払ってしまった。

すると、

キラ☆

シートの下より出てきたのは、

ハッキリ言ってよく判らないモノだったが、

ただ1つチシブキが感じたのは

極めて格好良かった。と言うことだった。

「へぇぇぇ

 なにかのメカですか?」

テーブルの上に載る発明品を眺めながらチシブキは尋ねると、

「ちっ!

 まぁいいか」

ナリタは小さく舌打ちをした後、

「いいか、よく聞け!」

と声を張り上げる。



「へぇぇぇ…

 地球温暖化中和装置ですかぁ」

ナリタの演説を聴いたチシブキは感心した口調でそういうと

「そうだっ」

ナリタは思いっきり胸を張る。

「で、何をする機械なんですか?」

そんなナリタにチシブキは聞き返すと、

ズルッ

ナリタは盛大にコケ、

「君ぃ、

 私の話をちゃんと聞いていたのかね」

と大粒の汗を流しながらチシブキに詰め寄った。

「えぇ、
 
 ちゃんと聞いてましたよ、

 ただ、地球温暖化と言っても、

 その要因は複雑に絡まって単純には解決できないんですよね、

 炭酸ガスの排出量を減らそうとしたり、

 木を植えて森を大きくしようとしたり、

 新しいエネルギー源を開発したりって…

 で、それらの対策のなかで、

 博士が作ったこの装置は何をするのか。

 っ聞いたんですよ」

とチシブキはサラリを聞き返し、

「まさか、

 地球が暑くなるなら、

 冷やしてしまえ…

 なんて単純な装置じゃないでしょう?」

と付け加えた。

「いっ!!」

チシブキのその指摘にナリタは盛大に冷や汗を流し始め、

「(まずい…)」

と心の中で大声を張り上げた。

「?

 ねぇ、博士っ

 いったい何をする機械なんですか?

 博士ほどの人が作ったのだから

 それは凄い発明品なんでしょう?」

そんなナリタに対してチシブキは再び尋ねると、

「いやぁ、

 そのぉ、

 なんだ、

 はははは…

 とっとにかく試運転をしてみようではないか」

と言葉をはぐらかしながら、

「(まずい…

  このような若造に見くびられでもしたら、

  私の研究者人生に重大な汚点が…

  うーん、どうする?」)

盛んに思案をしながらナリタは一枚の名刺を取り出すと、

「(そうだ!)」

と何かを思いつき、

すばやく携帯を操作をすると、

そこに書かれているアドレスへと1通のメールを送信した。

そして、

「おっおいっ手伝え、

 私の発明品を台車に乗せるのだ」

とナリタはチシブキに指示を出した。



ピロリーン!

『ん?』

携帯電話からメールの到着を知らせる音が鳴り響く、

『ほほーっ、

 客か…

 ん?

 TSFのナリタ博士からか』

長い顎をさすりながら髪を7・3に分けた男は微笑むと、

『ふむ、

 あのお方のコトも無事片付いたし、

 どれ、この世界での最後の仕事になるかな…』

男はそう呟くと、

フッ…

闇の中へと姿を消していった。



「ドッコラショ!」

ガチョン!

ナリタとチシブキ、

二人が力をあわせてテーブル上の発明品を大型電動台車へと移し替えると、

ピッ!

ナリタは手元のリモコンで台車を操作し、

そのまま地上へ向かうエレベータに乗せると、

「ちっチシブキ君も来てみるかね?」

とやや声を震わせながら尋ねた。

「え?

 いいんですか?」

ナリタの誘いにチシブキは嬉しそうな顔をして、

エレベータに乗り込むと、

キュルルルルルン!!!

TSFのエンブレムもまぶしく、

リニア駆動のエレベータは地上へと向かっていった。



そして、それから30分後

ガコン!!

グィィィィン!!!

エレベータが停止すると、

ナリタが発明した機械・地球温暖化中和装置とともに

チシブキ・ナリタ両名は富士の樹海の真っ只中へと降り立った。

「ふぅ、

 帝都から20分。

 TSF富士樹海実験場。

 まぁ、こいつの試運転には最適の場所じゃな」

樹海の様子を眺めながら

ナリタはエレベータから降りると、

ズゥゥゥン!!

そのナリタの真横に発明品が下ろされた。

そして、

「ふむ」

すばやく発明品にナリタはよじ登ると、

装置の頂の真上に置かれた操縦席に座る。

「へぇぇぇ

 すごいなぁ」

そんなナリタの様子をチシブキは感心しながら見上げていると、

「ふふふっ

 驚いておる

 驚いているわ」

そんなチシブキを見下ろしナリタはほくそえみ、

「よーしっ、

 地球温暖化中和装置起動!!!」

と声を高らかに張り上げながら、

ポチッ!

っと自分の前にせり出している赤ボタンを押した。

その途端、

ブルルルインッ!!

ナリタが搭乗する発明品は大きく身を震わせて稼動を開始すると、

グィィィンン!!!

その身を青白く発光させる。

「おぉ!!!」

自分の目の前での出来事にチシブキは驚きの声を上げているが、

パチン!

そんな二人の背後で指が鳴る音が響き渡ると、

ジワッ

稼動を開始した発明品の背後から黒い霧のようなものが迫り、

ナリタもろとも発明品を瞬く間に包み込んでしまった。

「ん?」

ナリタと発明品に起きた異変にチシブキは気がつくが、

その途端、

ヒュゥゥゥゥゥ!!!

一陣の風が吹き抜けるのと同時に、

ゾクッ!!

チシブキは言いようもない寒さを感じた。

「なっなんだ?

 えらく寒いような…」

心底冷え込んでくる寒気にチシブキは体を震わせると、

ヒラリ

ヒラヒラ

っと雪が周囲を舞い始める。

「え?

 雪?」

舞い始めた雪にチシブキが驚いていると、

ビュオッ!

たちまちその雪は吹雪となってチシブキを襲いかかった。

「なっなんだぁ!!

 いっいきなり吹雪だなんて!!」

突然の猛吹雪にチシブキは驚き、

そして、

「はっ博士!!!

 これはいったい!」

と聞きながら発明品の上のナリタに声をかけるが、

カチン!

そのとき既にナリタの体は凍結し、

キラキラと輝く姿をさらしていたのであった。

「はっ博士が…」

衝撃の光景にチシブキが驚愕していると、

ピピーッ!!

腰に下げている怪獣探査機が大きく警報をあげた。

「え?

 怪獣?」

鳴り響く警報音にチシブキが装置を見ると、

ムクッ

ムクムクムク!!!

猛吹雪の真っ只中におかれた地球温暖化中和装置の周囲に雪が張り付き、

次第にそれは丸い姿へと変わっていくと、

ズゴゴゴゴゴゴ!!!!

ゆっくりと立ち上がっていく、

そして、

『ザケンナー!!!』

の雄たけびとともに雪だるま怪獣へと姿を変えると、

「うわぁぁぁ!!」

地上で呆然とするチシブキに向かって、

巨大な雪だまの手を振り下ろした。



フォンフォンフォン!!

TSF極東本部に警報音が鳴り響き、

『怪獣反応確認!!

 場所は富士樹海。

 TSF実験場内です』

と怪獣出現を知らせる放送が流れた。

「うむ、

 TSF出動!」

その放送をバックに隊長のゴウダが声を張り上げると、

「はっ!」

待機していた隊員たちが一斉に声をそろえた。

ところが、

「隊長!!

 チシブキがいません」

チシブキが不在であることに気がついたサイゴウが声をあげると、

「ほっとけ、

 アイツなら這ってもくるだろう」

とガクラはそう言い残して、

さっさと行ってしまった。



ギュォォォン!!!

竹島・尖閣・北方四島から飛んできたファイターが現場に到着したとき、

既に樹海は一面の銀世界となっていた。

「うひゃぁぁぁ、

 富士の樹海がまるで北海道だな」

白く光る木々を見下ろしながらガクラが感心していると、

「見ろ、

 怪獣だ!」

サイゴウの声が響いた。

「!!!」

その声に皆が視線を変えると、

『ザケンナー!!』

樹海の中央、

TSF富士樹海実験場から

巨大な雪だるまが姿を見せると、

傍若無人に暴れまわっている姿が見える。

「ゆっ雪だるま…」

それを見たガクラが声を震わせると、

「あぁ、雪だるまだな」

ゴウダが落ち着いた口調で言う。

「たっ隊長!!

 雪だるまですよ、

 雪だるま。

 雪だるまが暴れているんですよ、

 そんなことって」

ガクラにとっては衝撃の光景なのだろうか、

ゴウダに向かって食って掛かると、

「落ち着けっ

 たとえ相手が雪だるまだろうが、

 凧だろうが、

 鏡餅だろうが、

 怪獣反応が検出された以上、

 われわれの敵であり、

 人類にとって災いなのだ。

 それを倒すのがわがTSFなのだ!」

ゴウダは声を張り上げ、

「目標、

 右前方、雪だるま怪獣!!

 全機攻撃開始っ!」

と指示を出した。

「了解!」

その声と同時にファイターから一斉射撃が始めるが、

『ザケンナー!!!』

新雪が固まって出来ているためか、

何発も雪だるま怪獣に命中しても致命傷を与えることは出来なかった。

「くっそう!」

「まるで手ごたえがない」

猛爆撃を食らっても健在の雪だるま怪獣に皆が臍を噛むが、

『ザケンナー!』

爆撃をしのいだ雪だるま怪獣は反撃に転じ、

ビュッ!

雪の塊で出来た腕をサイゴウ機へ向けて放った。

「サイゴウ!!

 避けろ!!」

それを見たガクラが声を張り上げるが、

『フロス!!』

命中する直前、

サイゴウは手を交差し大きく叫んでいた。



シュパァァァ!!!

雪原に煌々と光が光り輝き、

そしてそれが収まると、

『シュワッ!』

銀の肌に紅の帯をまとった

ウルトラーウーマンフロスが雪原に立っていた。

『雪だるま怪獣なんて…

 ギャラクシーポリスのリストにはないわ』

暴れる雪だるま怪獣のことが

全銀河怪獣怪人大百科にない事にフロスは戸惑うものの、

『とっとにかく…』

とおぼつかない足取りで雪だるま怪獣を取り押さえようとする。

だが、

『ザケンナー!!』

ズガン!!

雪だるま怪獣に近寄ったとたん、

フロスの鳩尾に雪だるま怪獣が放った雪だまパンチが

見事に決まってしまった。

『うぐっ

 くのぉ!!

 下出に出れば』

油断を突いた攻撃に鳩尾を押さえながらフロスの頭に血が上ると、

『ヘァッ!!!』

フロスは一気に飛び上がり、

ボフッ!

雪だるま怪獣を思いっきり蹴り上げた。

だが、

ブワッ!

雪だるま怪獣はフロスに蹴られたところだけが弾け飛ぶだけで、

すぐに雪を集めると回復してしまった。

『なに?

 こいつ』

雪だるま怪獣の驚異的な回復力にフロスは驚くが、

『ザケンナー!!!』

ビュオッ!

ビュオッ!

反撃とばかりに雪だるま怪獣は雪だまの腕を振り回し、

フロスに攻撃を掛ける。

『シュワッ!』

『ヘアッ!』

『ザケンナー!』

ズシーン

ズシーン

もうもうと雪煙を吹き上げ、

フロスと雪だるま怪獣は戦い続ける。

そして、

ピコンピコン!

ついにフロスのカラータイマーがなり始めだしてしまった。

『時間がない…』

焦りの色をフロスが見せたとき、

「うらぁぁぁぁぁぁ!!!!」

雪原に男の怒鳴り声が響き渡り、

ズドドドド!!!

一筋の雪煙が吹き上がっていく。

『ちっチシブキ!!!!』

フロスの目にはっきりと映るチシブキモンザエモンの姿が映し出される中、

「これでも喰らえ!!」

半ば凍結したチシブキはどこから持ち出したのか、

ミサイルランチャーを構えると、

シュバァァァァ!!!

シュパァァァァ!!!

シュパァァァァ!!!

雪だるま怪獣に向けて数発のミサイルを続けざまに放った。

そしてそれらのミサイルは

一斉に雪だるま怪獣の下部に向かって突き刺さると、

ズドドドドドドン!!!

雪だるま怪獣の下半身を吹き飛ばしてしまい。

ズシン!!

足を失い上半身だけとなってしまった雪だるま怪獣だったが、

だが、

『ザケンナ!!』

一度は消えかけていたその目に再び火がともると、

ブワッ!

一気に浮上した。

「なにっ

 足なんて飾りだ。とでもいうのか!!!」

それを見たチシブキが驚きながら声を張り上げると、

『さて、

 これは私からのほんのサービス…』

と森の中から男の声が響くと、

パチン!

またしても指が鳴り響いた。

すると、

シュッ!!

天空よりハート型をしたピンク色のバトンが落ちてくると、

シュタッ!

それがチシブキの手のなかへと落ちた。

「こっこれは…」

突然落ちてきたバトンにチシブキは驚ものの、

「よしっ」

すぐに使い方がわかったのか、

チシブキはそのバトンを構えた。

すると、

カチャン!

バトンの裾が割れて開き、

シュルルルルン!

チシブキはそのバトンを巧みに回した後、

シュルン!

バトンから手を離し、

ダンッ!

気合を込めながら

「チシブキ・ハーティエルアクション!!!」

と叫ぶと、

ズーン!

チシブキの正面に巨大なハートが現れ、

雪だるま怪獣へ向かって飛んでいき、

その直後、

『ザケンナァァ…』

七色の光を放ちながら雪だるま怪獣が麻痺をしてしまうと、



「いまだ、

 フロス!!」

それを見たチシブキが声を張り上げる。

すると、

『シュワッ』

フロスは片手を雪だるま怪獣に向けた途端、

『ジュワッ』

どこから現れたのかクレスがフロスの背後に立ち、

天空に向かって片手を掲げた。

すると、

ビシャァァン!!!

天空より白と黒の雷が落ち、

二人の体が輝き始めた。

そして

『ジュワッ!(ウルトラの美しき魂が)』

『シュワッ!(邪悪な心を打ち砕く)』

『シュワァァッ!(ウルトラ・マーブルスクリュー・マックス!)

ズシャァァァン!!

そのパワーを得たフロスとクレスは雪だるま怪獣に向け、

必殺技・ウルトラ・マーブルスクリューを放つと、

『ザケンナーぁぁぁぁぁ』

ボムッ!

ウルトラ・マーブルスクリューの直撃を受けた雪だるま怪獣は

断末魔をあげながら自爆し、

『ゴメンナー』

『ゴメンナー』

『ゴメンナー』

と小さく声を上げる黒い星となって一斉に散って行ってしまった。



「なっナリタ博士!!」

「やっやぁ」

ファイターから降り立ったTSFの隊員たちに向かって、

地球温暖化中和装置から降りてきたナリタは

はにかみながら手を上げた。

「どっどうしたんですか?」

「いっいやなぁ…

 チシブキ君とともにここでこの装置の起動試験をしたのだが、

 宇宙人にのっとられてしまってな、

 いやはや、

 とんでもない目にあってしまった」

と理由を尋ねる隊員たちに言い訳をする。

「それは大変でしたね」

ナリタのその話を聞いた隊員たちは皆ねぎらうと、

「ははは…

 装置は見てのとおり壊れてしまったし、

 仕方がないので、

 私は一足先に研究所に帰らせてもらうよ」

とナリタは告げて、

妙に足取り軽くエレベータへと向かって行った。

そして、その後ろでは、

「おーぃ、

 チシブキっ

 生きているか?」

雪に埋もれているチシブキを見つけだしたサイゴウが、

彼の腕を引っ張りあげていたのであった。



        請求書

ナリタ博士殿

ザケンナー一体  ○○○○○○円
演出料      ○○○○○○円
手数料       ○○○○○円
合計       ○○○○○○円

以上の金額を期日までに
スイス銀行の指定口座までお振込みください。

黒蛇堂商会



おわり