風祭文庫・ヒーロー変身の館






「神託戦士イシュタル」
(最終話:イシュタルよ永遠に)



作・風祭玲


Vol.539





『おいっ

 聞いたか?』

『あぁ…

 よくもあぁハッキリいえるよな』

女神イシュタルとモーリアの会話を横で聞きながら

スケとカクはマーブルスクリューを打つ姿勢のままひそひそ話をする。

『でも、どうするよっ』

『どうするって?』

『クレア様一人でも手に余るというのに…

 イシュタル様までご降臨されるとは…』

『もぅ!!

 やめてくれよ』

二人の女神の姿にスケとカクの目にうっすらと涙が浮かばせると、

シュンッ!!

『わたくしがここに来たことはそんなに迷惑ですか?』

つい、いましがたまでモーリアと会話をしていたはずのイシュタルが

スケ・カクの目前にいきなりドアップで迫ると心配顔で尋ねてきた。

『ひっ!』

迫るイシュタルの目に強い殺気を感じたスケとカクは身を引きながら、

『いっいえっ』

『そっそのような事は』

と震え上がりながら返事をすると、

『そうですか、

 安心しました』

イシュタルは安心したような表情をした後、

『で、これから何をやろうとしているのですか?

 マーブルサンダーなんて使おうとして』

とイシュタルはスケ・カクがガーディアンの必殺技

マーブルサンダーを撃とうとしていることを指摘する。

すると、

『それは余興でございます、

 イシュタル様』

割って入ったモーリアが訳を説明しはじめだした。

そして、モーリアの説明を聞いた途端、

『きゃははは!!

 なにそれぇ!!!
 
 クレアが邪悪なものに追われているですってぇ!!
 
 クレアそのものが邪悪じゃない!!』
 
と笑い転げながらイシュタルは床を叩き始める。

『イシュタル様…

 イシュタル様がそれを言ってはクレア様の立つ瀬が…』

笑い転げるイシュタルの姿を見ながらモーリアはそう呟くと、

『判ったわっ

 要するにクレアはそのザ・ケルナーって奴に追われていることになっているのね、
 
 はいっ
 
 その線で行きましょう』

お腹を抱えながらイシュタルは立ち上がると、

『で、

 今回は何をモンスターにするの?』

とターゲットを尋ねた。

『はぁ、

 今回はあのタコ焼きの屋台を狙っていますが』

イシュタルの質問にスケは眼下に見えるタコ焼き屋台を指差すが、

『うんっ

 そうねぇ
 
 でも、なんかセンスないわねぇ
 
 ちょっと待って』

イシュタルはタコ焼き屋ではない別のターゲットを探し始めた。

すると、

『はぁ…

 イシュタル様のお守りもすることになるのか』

ターゲットを探すイシュタルの背中を見ながらカクがぼやくと、

『こっこらっ

 この程度の事で泣き事を言う奴があるかっ』

スケ・カクの後方に姿を見せた執事のモーリアが

ため息をつく二人に注意をする。

『モーリアっ

 そうは言うけど』

『大変なんだすよ、

 お守り役は』

『それくらい判っておる、

 だがしかし、
 
 お前達はガーディアンであろうが、
 
 ガーディアンならガーディアンの職務を全うするのが、
 
 使命とは思わないか』

訴える二人にモーリアはそう言いきると、

『おーぃっ

 ターゲットはアレにしよう!!』

物色をしていた女神イシュタルは声を挙げ、

金魚すくいを指差した。

『かしこまりました。

 さっ

 早く職務を遂行しなさい』

イシュタルによるターゲットの指示に

モーリアはスケとカクの尻を叩くと、

『仕方がない』

『やるぞ』

スケとカクは頷き合い、

バッ

共に空いている片方の腕を空に掲げると、

再度気合を込め、

『スケサンダー!!』

『カクサンダー!!』

とかけ声を張り上げた。

その途端、

ビシャァン!!

天空より2本の稲妻がスケとカクが掲げた腕目掛けて走り、

それをしっかりと受け止めた二人は

掲げた腕に力が宿るのを感じつつ

『ガーディアンの美しき想いがっ』

『女神クレアの希望となるっ』

と叫び、オーラを吹き上げる腕を大きく構え直すと、

『スケ・カク!!』

『マーブルサンダー!!!』

その掛け声と共に握っていた手を大きく開き、

一気に突き出した。

その瞬間

カッ!!

一瞬の閃光を輝かせ、

ズドォォォン!!

スケ、カクの腕より噴出したオーラの流れが渦巻きながら

色とりどりの金魚が回遊する金魚すくいのたらいに向けて一直線に向かって行った。



ところが、

「え?

 うっうそぉ!!!」

クレアのその声に翼は抱きしめていたジャックを放り出した翼が頭を抱えると。

『ウソォォォォ!!』

バサバサバサ!!

翼の手を離れ、

翼の叫び声を真似しながら飛び上がったジャックは

マーブルサンダーの射線上へと飛び込んだ。

そして、その直後、

ビシッ!!

『クワァァァァァァァァ!!!!!』

スケとカクが放ったマーブルサンダーがジャックを直撃してしまうと、

すると、

ムクムクムクムク!!!

マーブルサンダーを浴びたジャックは見る見る巨大化し、

”フハハハハハハ!!!

 ワタシハ
 
 ジャーック・キング
 
 ダァ!!”

インコ・モンスターとなったジャックが雄たけびを上げた。

「うわぁぁぁ!!

 じゃっくぅぅぅ!!」

自分のインコがモンスターになった事に翼は悲鳴を上げると、

『(あら…

  まっいいかっ)

 さっ勇者様っ

 変身を!!』

すかさずクレアはリングを差し出して翼に変身を促した。

ところが、

「うわぁぁぁぁぁん!!!」

肝心の翼はジャックがモンスター化したことにパニクってしまい、

思わずクレアの身体を叩いてしまうと、

『あっ!!』

キーンッ!!

キン

キン!!

クレアの手から離れたリングは金属音をたてながら

屋上よりはるか下の地面へと転がり落ちてしまった。

『あぁ!!

 りっリングがぁ!!!』

屋上の柵の上より地面を見つめながらクレアは叫ぶと、

『ちょちょっと、

 なんて事をしてくれるのよっ』

と翼に詰め寄るが、

しかし、肝心の翼はクレアが声はまったく届かない状態に陥ってしまっていた。

『あぁんっ

 もぅ!!!』

予想外な展開に半ば反省をしながらクレアが臍を噛んだとき、

パァァン!!

いきなり翼の頬が叩かると、

「おいっ

 しっかりしろ」

との怒鳴りと共に望が翼の胸元を掴み挙げた。

そして、

「のっ望さん?」

「パニクるお前の気持ちはわかるけどなっ

 お前しか居ないんだろう?
 
 あのインコを元に戻すのはっ
 
 だったら、そのザ・ケルナーとかいう奴を倒して、
 
 インコを元に戻してやれよ」

キョトンとする翼に向かって望が怒鳴ると、

「はっはいっ」

望に怒鳴られた事で翼は我に返り、

「クレアっ!!

 リングは?」

と女神クレアに変身のリングのことを尋ねると、

『もぅ!!

 バカぁぁぁぁ!!!
 
 翼が叩いたから
 
 下に落っこっちゃったわよ!!』

とクレアは泣きながら抗議した。

「うそぉぉぉ!!」

クレアの抗議に翼は飛び上がったとき、

パァァァァ!!!

いきなり屋上が金色の光に包み込まれると、

『あなたの落としたリングはこっちの銀のリングですか?

 それともこの金のリングですか?』

の声と共にクレアと瓜二つの女神が神々しい姿で現れた。

「なっ

 クレアさん?
 
 え?
 
 なっなんで?」

同じ姿形の女神の登場に翼は呆気にとられると、

「いっいったい…

 どうなっているんだ?」

望もまた混乱する。

しかし、その中で、

『いっイシュタル!!

 なんでここに来たの!!』

とクレアが怒鳴り声を上げると、

「クレアさん、

 コレは一体どーゆー…」

クレアに向かって翼が説明を求めた。

すると、

『はいっ

 初めまして、
 
 わたくし、クレアの双子の姉であるイシュタルと申します。
 
 よろしくね』

とクレアの姉・女神イシュタルは翼に向かって挨拶をした。

「いっイシュタル?

 イシュタルって僕が変身しているあの女の子と同じ名前?
 
 クレアさんっ
 
 説明してください。
 
 なんで、クレアさんのお姉さんの名前と
 
 僕が変身した女の子の名前が同じなんですかっ」

女神イシュタルの説明を聞いた翼はクレアに向かって詰め寄ると、

『あぁ…

 それねぇ…
 
 うん、実はね、
 
 まーそーゆーことなのよ、
 
 あまり深く考えない方が良いわ、
 
 世の中、深入りしない方が幸せなことっていっぱいあるじゃない』

とクレアは返答をはぐらかし、

『ちょっと、イシュタルっ

 なんでちょっかい出してきたのよっ』

クレアはイシュタルに詰め寄り抗議した。

『あら、ちょっかいだなんて…

 そんな…
 
 わたくしも天界から逃れてきたのよ。

 あなたを頼って…』

と女神イシュタルはクレアに詰め寄り、

そして、

『(ぽしょ)こんな楽しいことをしているのに、

 あたしだけ除け者にしようとするからよ』

と小声で警告をした。

『うっ』

女神イシュタルの忠告に言葉に詰まったクレアは、

『わっ判ったわよ』

そう言いながらそっぽを向くと、

「あっあのぅ…」

ずっと蚊帳の外に置かれていた望が声を上げた。

『はいっ

 なんでしょう』

望の言葉にイシュタルは返事をすると、

「あのモンスター…

 何とかしないとヤバイんでしょう?」

とモンスター化したジャックを指差した。

「あっそうだ!!

 ジャックぅぅぅぅ!!」

望のその言葉に翼は再度頭を抱えると、

『はいはいっ

 クレアのリング
 
 落っことしちゃったんでしょう?

 ということで、

 はいっ
 
 私の出番ですね。

 はい、翼さん、望さん
 
 コレをつけてくださいね』

ニコニコ顔の女神イシュタルは銀のリングをクレアに渡した後

翼と望の指に金のリングを一つづつはめさせる。

『イシュタル…

 それは?』

女神イシュタルが嵌めさせたリングの事をクレアが尋ねると、

『ふふっ

 あたし特製のリングよ、
 
 あなたのリングよりもパワーはあるわ』

と女神イシュタルはシレっと返事をした。

「あのイシュタルさん?

 なんで、東海林さんもですか?」

望の指にはめられたリングを見ながら翼が尋ねると、

『うふっ』

女神イシュタルは意味深な笑みを浮かべ、

『はいっ

 では、お二人とも手をつないで、
 
 デュアル・ギムナース・ウェーブ
 
 と叫んでくださーぃ』

と声を張り上げた。

「え?」

「はい?」

『はいっ

 行きますよぉ!!
 
 デュアル・ギムナース・ウェーブ!!』

「デュアル・ギムナース・ウェーブ!!…」

クレアの掛け声と共に翼と望が手をつないで声を合わせると、

カッ!!

指にはめた2つのリングが光り輝く、

と同時に、

「どわぁぁぁぁ!!」

「きゃぁぁぁぁ!!」

瞬く間に翼と望は光に中に飲み込まれ、

そして、その中で

「いてててて!!

 またこれかよぉ!!」

女性の姿へと変身していく翼と

「うわぁぁぁぁ!!!」

身に着けていた服が姿を消し、

代わりの衣装が巻きついていく望とに別れた。



やがて、

ドォォォォォン!!

二人の変身の完了と共に光がはじけ飛ぶと

シュタッ!

スタッ!

二人の人影が勢い良く飛び、

そして、インコモンスターを挟み込むように、

白地に金の文様が入るレオタードと

黒地に赤の文様が入るレオタードに身を包んだ

二人の新体操選手が立ちはだかり、

「ギムナース・ホワイト参上!!」

「ギムナース・ブラック参上!!」

続けざまに名前を叫んだ。

そして、

ビシッ

インコモンスターを指差しながら、

「人々の平和を乱す邪悪なモンスター、

 このあたし達が成敗してあげるわ!!!」

と口をそろえて口上を叫ぶと、

『パチパチパチ!!!

 がんばってぇぇぇ』

女神イシュタルとクレアは声をそろえて拍手と声援を送る。

その途端、

『あーっ

 なんだこれは!!!』

シニョンに結い上げられた髪と

身体を包む白系のレオタードを確認しながら

翼は驚きの声をあげた後、

『ちょっと、

 イシュタルさんっ
 
 これはどーゆーことですかっ』

レオタード姿の自分の身体を指差しながらイシュタルに迫った。

『なに怒っているのよ、翼っ

 じゃなかった、ホワイト』

迫る翼、いやホワイトに向かって余裕の表情でイシュタルは聞き返すと、

『なにをって…

 大体なんで新体操なんですかっ!
 
 しかも望さんまで巻き込んで、
 
 恥ずかしいでしょう!!』

と文句を言う。

すると、

『あら…

 動きやすさと、
 
 武器の豊富さから、
 
 新体操と言うのが格闘するには一番だと聞いていたんだけど、
 
 違うんですか?』

逆にイシュタルがホワイト(翼)に聞き返した。

『え?

 ぶっ武器ですか?』

イシュタルの質問にホワイト(翼)は返す言葉に詰まりながら

手にしていた手具である棍棒に視線を落とした。

その途端、

『ホワイト!!!』

ブラック(望)の声が響き渡る。

『え?』

その声にホワイト(翼)が振り返ると、

”もんすたぁー!!”

バサッ

バサッ

インコモンスターが大きく羽ばたきながら上空に浮き上がると、

一直線にホワイト(翼)へ向かって降下してきた。

『うわぁぁぁ!!』

自分に向かって襲い掛かってくるインコモンスターから間一髪、

シュタタタッ

すばやく脱出したホワイト(翼)は屋上の安全柵の上に立つブラック(望)の傍に寄ると、

『望さんっ

 ごめんなさいっ
 
 巻き込んじゃったみたいで』

と謝る。

ところが、

『何を謝っているのよっ

 ふふっ
 
 あたし、昔っからこういうのに憧れていたのよっ
 
 なんか夢みたい…』

とブラック(望)はそう言うなり、

『行くわよっ』

の掛け声と共に、

目標をはずし、校庭へ向かって行ったインコモンスターを追いかけ始めた。

『あっちょっと…

 もぅ…
 
 なんで、こうなるんだ…』

やる気満々のブラック(望)の姿にホワイト(翼)は躊躇するが、

『さーさ、

 早くしないと美味しいところ取られちゃうわよ』

と見物をしているクレアが後ろからたきつける。

『クレアっ!!!』

そんなクレアに向かってホワイト(翼)が声をあげた途端、

『ぐっどらっく!!』

どぉぉん!!

女神イシュタルのその一言共にホワイト(翼)は突き押され、

『うわぁぁぁ!!』

その叫び声を響かせながら落下していった。



ブワッ!!

「うわぁぁぁ

 なっなんだ!!」

「かっ怪鳥!!!」

「逃げろぉ〜っ」

「警察を呼べぇぇぇ!!」

「いや、自衛隊だ!!」

「って、どこに逃げればいいんだよ?」

「広域避難所はここだぁ!!」

「んなもん判っているっ」

突然校庭に舞い降りたインコモンスターの姿に

慌てて校舎へ逃げ込む者、

ただパニックに陥いり逃げ惑う者などで、

たちまち学園祭は大混乱に陥り、

そして、その真っ只中に

シュタッ

新体操戦士・ギムナースブラックとなった望が校庭に降り立つと、

ビシッ!!

武器となる手具・リボンを舞わせながら、

『お待ちっ

 インコモンスター!!

 このあたしが成敗してあげるから
 
 じっとしていなさい』

と声をあげると、

”もんすたぁ!!!”

インコモンスターは雄たけびと同時に羽ばたき始める。

すると、

ブワッ!!

インコモンスターの羽ばたきによって巻き起こった暴風が襲い掛かると、

ズドドドド!!

たちまち校庭に設置してあった模擬店は吹き飛ばされ、

『くっ』

ブラック(望)は自分の身を庇うことに精一杯になってしまった。

『(参ったな…

  ぜんぜん近づく事が出来ない)』

歯をかみ締めながらブラック(望)はそう呟いていると、

『こらぁ!!

 ジャック、
 
 いい加減にしろ!!』

ドカッ!

との叫び声と共にギムナース・ホワイトが

後ろからインコモンスターに一撃を加えた。

”もんすたー!!!”

ホワイト(翼)の一撃を受け、

インコモンスターは向きを変えて羽ばたくが、

『よっ』

『はっ』

シュタッ

タタッ

スタッ

ホワイト(翼)はすばやく動き、その攻撃を巧にかわしてゆく、

そして、

『ブラック!!』

の声と共にブラック(望)の隣にたどり着くと、

『このままでは騒ぎが大きくなる。

 その前にさっさと片付けよう』

と相談をする。

『判っています。

 で、どうすればいいの?』

『えっそれは…』

ブラック(望)の問いにホワイト(翼)は言葉に詰まると、

『ギムナース・ショック・ストームをお使いなさい』

女神イシュタルの声が響いた。

『えぇ?

 そんなもんどーすればいいんだよっ』

イシュタルの声に向かってホワイト(翼)が怒鳴ると、

『大丈夫、大丈夫、

 イシュタル・バーストと同じ要領ですればいいのよ』

とイシュタルの隣のクレアがアドバイスをする。

『また、それかいっ』

クレアのアドバイスにホワイト(翼)は膨れると、

『いいわっ

 その提案、受けましょう』

ブラック(望)は頷き、

そして、二人は互いに頷き合った後に手を握り締めあうと、

『天界の神々よっ』

とホワイト(翼)が声をあげ、

『我らに力を貸し』

とブラック(望)が叫ぶ、

そして、声を合わせて、

『女神イシュタルの助けとなれ

 ギムナースっ

 ショックっ

 ストォォォォム!!』

と声を合わせて掛け声を掛けた後、

片足を引き、腕を突き出すと、

ズドムッ!!

二人の間から巨大な光球が飛び出し、

インコモンスターへと襲い掛かった。



”もんすたぁぁぁぁぁぁ!!”

光球の直撃を喰らったインコモンスターは叫び声を上げながら、

その姿を消してしまうと、

バサバサバサバサ!!

『オシオキ』

『オシオキ』

『トラトラトラ!!』

と声をあげながら飛び回る普通のインコ・ジャックの姿に戻り、

校庭の上を周回し始める。

『あは…

 ジャック…よかった…』

その姿にホワイト(翼)がホッと一安心すると、

『ねぇ、

 ホワイト、
 
 ちょっと確かめたいんだけど、
 
 この間堤防であったのはあなただったのね』

とブラック(望)は堤防でトラックモンスターに襲われたときに助けてくれた、

少女の正体を尋ねる。

『え?

 いっいや…
 
 あっちは、その…』

『いいわっ

 隠さなくても、
 
 ふぅぅん、そういうことだったのね…』

返答に戸惑うホワイト(翼)姿を上から下へと舐めるようにして見た後、

『あなた、新体操部に入らない?』

ブラック(望)は声を掛ける。

『え?』

ブラック(望)のその言葉にホワイト(翼)はギョッとすると、

『ふふっ

 まぁいいわ』

ブラック(望)は笑みを浮かべ去って行った。

そして、

『なっなんなんだ』

去っていくブラック(望)の姿を見送りながらホワイト(翼)はへたり込むと、

『まぁ、

 色々と大変なことになりそうですわね』

と他人事のようなことを言いながら

クレアとイシュタルは一件落着という表情をするが、

『あのぅ

 クレアさん。

 クレアさんのイシュタルの方はどーなるんのですか?』

そんなクレアに向かってホワイト(翼)はイシュタルのことを尋ねた。

『うん、そうねぇ

 まぁ、一応、発展的解消という事にしておきましょうか』

ホワイト(翼)の質問にクレアは少し考える表情をした後、

そう返事をすると、

『発展的解消ぉ?』

ホワイト(翼)の顔がクレアにアップで迫った。

『不満ですか?』

『不満も何も、

 イシュタルってそんなもんだったのですか!?』

『もぅうるさいわねっ

 そんなにイシュタルがいいのなら
 
 はいっ!!』

抗議するホワイト(翼)に向かってクレアは怒鳴ると、

女神イシュタルが嵌めさせたリング引ったくり

サッ!

変身の銀リングを掲げ、

すばやくそのリングを嵌めさせた。

そして、

『シルバー・トランス・フォーメーション!!』

と神託戦士イシュタルになるための呪文を唱えると、

『え?

 ちょっと待て、

 うわぁぁぁぁ!!!』

クレアが唱えた呪文の直後、翼の叫び声が響きわたり、

その後で、

『なんでだよぉ!!』

ギムナース・ホワイトから神託戦士イシュタルに変身した翼が泣き叫んでいた。

『へぇ…

 これがクレアの戦士?』

『えぇそうよ

 わたしの戦士・イシュタル』

女神イシュタルの質問にクレアは自慢げにそう返答すると、

『で、なんでわたしの名前と同じなの?』

女神イシュタルはその訳をクレアに尋ねた。

『え?

 それは…』

イシュタルの質問にクレアは返答に困ると、

『ふっふーんっ

 要するに…自分の手下にわたしの名前を付けて

 コキ使って悦に浸ろうって魂胆ね』

そんなクレアの様子を見たイシュタルはそう推測すると、

『そんなぁ、イシュタル…

 わたしたち、双子の姉妹じゃない。

 一度だってそのようなことを考えたことはないですわ…』

ジロっ

疑いの眼で自分を見るイシュタルと間合いを取りながらクレアはそう言うと、

『あっ!!

 UFO!!!』

突然空を指差し大声を張り上げると、

スタタッ

衣装の裾をまくって逃げ出してしまった。

すると、

『お待ちっ!

 よくもこのわたしをコケにしてくれたわねっ』

『だぁって』

逃げるクレアを女神イシュタルは追いかけ始めた。



『さてと、

 これからまた忙しくなりますな』

追い掛けっこに興じる女神達と

落ち込む翼を横目で見ながらモーリアはそう呟くと、

『はぁ…』

『厄介者がまた増えたか…』

任務を終えたスケとカクはため息をつきながら背中合わせに座り込むと、

『オシオキ

 オシオキ』

と声を挙げ青空を舞うジャックを見上げていた。



おわり