風祭文庫・ヒーロー変身の館






「バニーエンジェル」
−強敵・アリジゴク女−
(後編)



作・風祭玲


Vol.497





アリジゴク女に追いつめられた俺・赤沢隼人だったが、

しかし、間一髪、

バニーイエローが放ったイエローボンバーに助けられると、

すかさず路地へと飛び込み、

そして、周囲に人の目がないことを確認すると、

サッ!!

制服のポケットより真紅のチョーカーを掲げながら、

「チェンジ・バニー」

と掛け声を上げた。

パキーーン!!

俺のかけ声と同時にチョーカーが紅色に輝くと、

そのチョーカーを首に当てた。

「うっ始まる…」

俺は次に来る変身に身構えると、

ザワッ!!

俺の肌の上を言いようもない感触が一気に走り去り抜け、

そして、それが終わるや否や、

ドクン!!

俺の心臓は大きく鼓動をした。

「くっ」

体の奥からジワジワと真綿を締め付けてくるようにして身体を締め付けてくる苦しさに

俺は思わず歯を食いしばると、

ミシミシミシ…

体中の骨が軋みだす。

そして、首に当てたチョーカーからの炎が制服を焼き尽くす中、

俺は苦しみながら体の変化に耐える。

「コレさえなければ…」

変化していく身体を感じながら、

俺は声を搾り出しそんなうわ言を放つが、

しかし、次第に俺の肌は敏感に感じるようになり、

胸に左右二つの突起が盛り上がると、

瞬く間に乳房が膨らみ、

そして、ウェストが吸い取られるように引き締まっていくと、

それとは反対にヒップが張り出してくるが、

ゴォォォォ…

俺の耳に飛び込んでくるのは俺の周りで飛び跳ねる炎の音のみだった。

「くぅぅぅぅぅ!!」

俺の体の女性化が進み、その変身が顔にまで及んでくると

俺は髪を伸ばしながら頭を抱える。

そして、その間に、

シュルルルルルル…

俺の身体にバニースーツが纏わりつくと、

真紅のバニースーツが膨らんだ胸、

括れたウェスト、

そして魅惑的に張り出したヒップを包み込み、

シュルリッ!

脛毛が消えた色白の脚を薄手のタイツが覆う。



シュォォン!!

変身の終了とともに俺は苦しみから解放され、

また周りを取り囲んでいた炎がかき消すように消えると、

カツンッ!!

「よしっ」

そこには真紅のバニースーツを身に着けたバニーエンジェル・バニーレッドとなった俺が立っていた。

「はぁ…

 それにしても、変身する度に苦しみが増してくるような気がするな…」

顔につけられた仮面を調整ながら俺はそんなことを呟いていると、

ドォォォォン!!!

大音響が響き渡り、

「きゃぁぁぁぁ!!」

俺と入れ違いにアリジゴク女と対峙していたバニーたちの悲鳴が響き渡った。

「苦戦しているな…」

響き渡った声に俺はそう判断するなり、

「バニーレッド出撃!!」

と気合を入れてあの公園へと向かっていった。




『あーはははははは!!!』

ドォォォン!!

「きゃぁぁぁぁ!!」

『そーれそれそれ!!

 乱れ打ちだぁ!!!』

ドォォォォォン!!!

ドォォォォォン!!!

「きゃぁぁぁぁ!!!」

『はははは

 愉快愉快

 くくくく…

 ここでウサギ共を倒せばコレまであたしのことを

 醜いだとか、

 臭いだとか、

 ウスノロだろか、

 散々馬鹿にしてきたあいつらを見返すことが出来るんだ。

 さぁ、死ねぇぇぇぇ!!!』

ドカァァァン!!

「きゃぁぁぁぁ!!」

「うわっ

 なんだこりゃぁ!!」

再び公園に駆けつけてきた俺の目に飛び込んできたのは、

アリジゴク女の攻撃に翻弄されているバニーエンジェル達の姿だった。

「ちっ!!

 何をやっているんだよ」

その姿を見ながら俺は舌打ちをすると、

「レッド・ウィップ!!」

と叫び、バニーレッドの武器である鞭を出そうとした。

すると、

『あっちょっと待って、レッド!!』

どこに隠れていたのかラビが飛び出してくると、

「あっ、ラビ!!

 この非常時にお前どこに隠れていた!!」

ラビの胸倉を掴み上げ俺は怒鳴った。

『くっ苦しい!!!』

ラビは目を赤白させながら

『あいつにはコレまでの武器は通じないわ』

と声を絞り出して俺に忠告をする。

「通じない?」

その言葉に俺はパッと手を離すと、

ボテッ!!

ラビは自由落下の法則にしたがって地面に落ち、

『(いたた!!)

 そうよ

 ブルーも

 グリーンも

 パープルも

 みんなの攻撃は全て始まれたわ、

 唯一決まったのはイエローの最初の一撃だけ』

「そっそうなのか」

『アイツ、

 コレまでの怪人とは比べ物にならないくらい戦闘力が高いのよ、

 あたしも驚いたわ』

乱れた毛を繕いをしながらラビはそう言うと、

「じゃぁ、どうしたら良いんだ?」

と俺はラビに尋ねる。

すると、

キラーン!

ラビを目を光らせ、

『黒蛇堂で受け取った物を使いましょう』

と俺に告げた。

「え?

 黒蛇堂って、

 さっき持ってきた新兵器か」

『そうよ、

 本当はここで使いたくはなかったんだけど、

 でも、仕方がないわ

 バニーレッド、

 あなたはコレを使って』

ラビは俺にそう言うと、

あの紙袋の中から小さな棒を取り出し俺に放り投げた。

「これは?」

棒を見ながら俺はラビに質問をすると

『レッド・ランス!!

 って叫んでみて』

「え?

 レッドランス…」

ラビからの返事に俺はそう呟いた。

すると、

キィィィン!!

俺の手の中の棒がいきなり光ると、

シャキィィン!!

瞬く間に自分の背丈ほどの槍へと変化してしまった。

「なっなんだこりゃぁ?」

粋なり姿を見せた槍に俺が声を上げると、

『レッドランス
 
 バニーレッドの新兵器よ、
 
 さっ、

 その槍であの怪人を貫くのよ!!』

とラビは俺に命令をした。

しかし、

「……

 なぁラビ…」

俺はラビを見下ろしながらそう話しかけると、

『なによっ』

ラビは口をモグモグさせながら返事をする。

「レッドウィップと言い、

 このレッドランスと言い、

 どうしてこう、

 直接相手の血が飛び散るようなものばかりなんだ?

 俺も他の連中みたいに光線系の必殺技が欲しいなぁ」

と文句を言うと、

『ゴチャゴチャ文句を言わないの、

 あなたにはそれがお似合いなんだから、

 さっさとあの怪人をやっつけてよ、

 みんな大変な目に遭っているんだからぁ』

ラビは俺の発言をあっさりと否定した。

「へいへい」

ラビのその言葉に俺はそう返事をすると、

ガシッ!!

レッドランスを持ち替え、

そして、公園で暴れているアリジゴク女を見据えると、

「せーのっ

 うぉりゃぁぁぁぁぁ!!!」

と掛け声とともにレッドランスをアリジゴク女目掛けて放った。



シュンッ!!

『なに?』

急速に近づいてくる物体に気づいたアリジゴク女が振り返った途端、

サクッ!!

『うがぁ!!!』

俺が放ったレッドランスが見事アリジゴク女の胸を貫き、

アリジゴク女は絶叫を上げながらその場に倒れこんでしまった。

「あっ!」

「え?」

まさに呆気ない幕切れであった。

胸を貫かれ倒れたアリジゴク女は空を見つめたままピクリを動かない。

「うわぁぁ、残酷ぅ〜っ」

(ゲシッ)

「グサだよグサ…」

(ドカッ)

「強敵でもこうもストレートにやられるとね」

(くぉのっ)

「ねぇ誰が放ったの?」

(よくもやってくれたわね)

「レッドちゃんでしょう、

 ホラ、柄が赤いから…」

(ここままくたばれ)

俺の槍で刺し殺されたアリジゴク女にコレまでの恨みを晴らすかのように

幾度も蹴りを食らわせながらバニーエンジェル達はそう言うと、

「レッドちゃんって残酷ぅ〜っ」

と俺を見ながら一斉に非難をする。

「おっおいっ!!

(どっちが残酷だぁぁ!!!)」

バニーたちの非難に俺は声にならない声を上げると、

『まーま、

 これで一件落着、

 さっ、ブルー、

 今日は燃えるゴミの日だから

 このゴミ、さっさと始末して…』
 
とラビは言葉で止めの一撃を食らわせた。
 
「ラビ…お前もか…」

ラビのセリフに俺は冷や汗を流しながらラビを見下ろすと、

『なによっ』

ラビは口を動かしながら俺を見上げた。

「いやっ

 なにも…」

そう返事をしながら女の残酷さを感じた俺は、

哀れみの視線で倒れているアリジゴク女へと向けた時、

ピクッ!!

倒されたはずのアリジゴク女の体が微かに動き、

「きゃぁぁぁ!!」

「動いたぁ!!」

と悲鳴をあげるバニーエンジェル達を尻目に、

『グフッ

 グフッ

 グフフフフ!!!』

と笑い声を上げながらゆっくりと立ち上がった。

「なっ

 生きてやがった」

復活したアリジゴク女の執念に俺は肝をつぶすと、

ドゴォォォォォン!!

「きゃぁぁぁぁ!!」

『ふははははははは!!!』

アリジゴク女は一瞬のうちにバニーエンジェル達を吹き飛ばし、

大声を上げて高らかに笑い声を上げた。

そして、

ジロっ

俺の方を見据えると、

『このわたしへの攻撃は見事だったよ、

 さて、お前のお陰で私も変身の時を迎えたようだ、

 さぁ、見てもらおうか、

 この私の華麗な変身を…!!

 この醜い体と決別を私の変身を!!!』

レッドランスを受ける前とまるで違う言葉遣いでアリジゴク女は声を張り上げ、

体中に力を込め始めた。

「ちょちょっと

 あいつ、頭どうかしちゃったの?」

体中から猛烈なエネルギーを放ち仁王立ちをするアリジゴク女を見ながら

バニーエンジェルたちが俺の下に集まってくると、
 
「知らないよ」

俺はそう答えるのが精一杯だった。

そうしている間に、

ピシッ!!

ピシッ!!

アリジゴク女の身体に亀裂が走ると、

その背中より光で出来た6枚の羽がゆっくりと伸び始めた。

「なっ何が起こるんだ?」

予想外の展開に俺は呆然としていると、

『ふふふ…

 見せてあげよう

 私の真の力を…

 見せてあげよう

 私の本当の姿を…

 変っ身っ!!!』

顔を二つに切り裂きながらアリジゴク女がそう叫び声を上げた。

すると、

ドォォォォォォン!!!

アリジゴク女の身体は木っ端微塵に吹き飛び、

パァァァァァ!!!

その中より発した黄金色の輝きが公園を包み込んだ。

「うわっ」

「きゃっ!!」

俺も含めたバニーたちは一斉に逃げ惑いながら、

安全が確保されそうな物陰へと逃げ込む。

そして、

その影から光り輝くアリジゴク女を見ると

ゴゴゴゴゴゴゴ!!!

爆発的な光を放ちながら、

『はぁーはっはっはっはっ!!!』

アリジゴク女は妙に透き通った声で高笑いをし、

やがて、光がゆっくりと消えていくと、

そこには一人の人物が立っていた。

そして、

『ふふふふ…』

その人物は含み笑いをしながら

スーっと空に上っていくと、

ゆっくりと腕を伸ばし、

俺達に目掛けて指を弾いた。

すると

ビシッ!!!

いきなり俺の正面の地面が弾けとび、

「うわぁぁ!!」

その衝撃で俺は数メートル吹き飛ばされた。

「だっ大丈夫?」

吹き飛ばされた俺を見てバニーイエローが駆け寄ってくると、

「くるな、下がっていろ!!」

反射的に俺は声を上げた。

「くっ!!

 イエローボンバー!!」

俺の声にが終わるまもなく、

バニーイエローは空に浮かぶ人物目掛けてイエローボンバーを放つが、

ムンッ!!

シュバッ

そいつは手のひらを広げると、

向かってきたイエローボンバーをいとも簡単に弾き飛ばしてしまった。

「そんな…」

自分の攻撃をあっさりと弾き飛ばされたことにバニーイエローは唇をかみ締めると、

『ふっふふふふ

 無駄だ!!

 どのような攻撃もこの私には一切通じないぞ

 そう、私は頂点に立つ女…

 千を越すゴーストバグ会員怪人のトップに立つカゲロウ女なのだ、

 ふっふふふ

 はーははははははは!!

 完璧だ、

 パーフェクトだ、

 スタイル!

 フェイス!

 全てを持って私は完璧なのだぁ!!!!』

ドゴォォォォン!!

周囲を威圧するようにエネルギーを放ちながらアリジゴク女改め、ガゲロウ女はそう言い放った。

しかし、

「はっ羽を背負っているよぉ…」

「うわぁぁ、メイク濃いぃ…」

「たっタカラヅカ…ですか…」

金ラメの燕尾服に光の羽を背負い、

そして、見事に決まった髪と濃いメイク…

そう、あのタカラヅカの男役を思わせる怪人・カゲロウ女を見上げながら

バニーエンジェル達は呆気にとられると、

その中でただ一人、俺ははガックリと膝を着き、

「どっどうして…

 こんなヤツばっっっかりなんだ…」

と愚痴をこぼしていた。

そして、その持って行き様もない気持ちをぶつけるようにして、

「この野郎!!!」

と怒鳴りながら飛び上がると、

悠然と空中に浮かぶカゲロウ女目掛けて蹴りを入れた。

しかし、

『ふんっ』

カゲロウ女は俺の蹴りを寸止めで止めてしまうと、

『無駄だといっているでしょう!!』

と大振りの演技をしながら俺を叩き落してしまった。

「レッド!!」

「レッドちゃん!!」

地面に叩きつけられた俺にバニーエンジェル達が駆け寄ってくると、

「ちくしょう!!」

俺は痛みを堪えながら地面を叩いた。

そして、

『ふふっ

 さぁ覚悟をするのです』

と勝ち誇ったカゲロウ女の声が響き渡り、

「くっ」

覚悟を決めた俺は目を瞑った。

しかし、

「………」

いくら時間が経ってもカゲロウ女からの攻撃はなかった。

「?」

なかなか来ない攻撃に疑問を持ちながら俺は振り返ると、

『そんな…

 そんな…』

カゲロウ女は手鏡で自分の顔を見つめながらショックを受けていた。

「何やっているんだ、あいつ」

起き上がった俺はバニーグリーンに尋ねると、

「さぁ?」

とグリーンは首を捻る。

すると、その疑問に答えるかのように、

『あぁ!!

 メイクがぁ〜っ

 私のメイクがぁ!!!』

再び大振りのアクションでカゲロウ女は悲鳴をあげ、

『お前達、

 許しませんよ!!』

と俺達を睨みつけながら怒鳴った。

「なっなによっ!!」

その声にバニーブルーが言い返すと、

『ちっ

 今すぐ消し飛ばしてやりたいけど、

 その前にメイクを直さなくては…

 少し待っていなさい!!!』

カゲロウ女はそう言い残して、

メイク道具を取り出すと公園の隅でメイク直しを始め出した。



「とっとにかく助かったな…」

時間稼ぎが出来たことに俺はほっとしたが、

しかし、それは甘かった。

30分…

1時間…

と時間が過ぎていく…

「ねぇ、まだ終わらないのぉ?」

なかなか終わらないカゲロウ女のメイクに痺れを切らせたバニーパープルが催促をすると、

ビシッ!!

いきなりパープルの足元の石が弾けとび、

『うるさいっ!!

 完璧こそが私の源。

 メイクひとつ疎かに出来ないの。

 今しばらく待っていなさい』

とカゲロウ女は怒鳴るとイソイソとアイシャドウを塗り続ける。

「パープルぅ、

 放って置いといたら?」

そんなカゲロウ女の様子にバニーブルーはお菓子をほおばりながら言う。

「あっブルー、いつの間に」

「ん?

 あぁいや、長くかかりそうだからそこのコンビニで買ってきたのよ」

と驚く俺にバニーブルー悪びれることなくお菓子の袋を見せた。

「まったく、その格好で買い物に?」

「ううん、ちゃんと変身を解いていったわよ」

「それなら良いけど」

「でさぁ、

 今日のアレなんだけど…」

とメイク中のカゲロウ女をよそに俺の除いたバニーエンジェル達は茶飲み話をし始めだした。

そして、約3時間が過ぎようとした頃、

カタン!!

『ふっ終わった…』

綺麗に決まったルージュの形にウットリとしながらカゲロウ女はメイク道具を置くと、

『ライト!!』

と叫び声を上げた。

すると。

カッ!

カッ!

カッ!

パァァァ!!!

いつの間に仕掛けたのか三方よりスポットライトが一斉にともされ、

その光を浴びながらカゲロウ女はゆっくりと立ち上がり、

『さぁ

 待たせたね』

と大ぶりのアクションをしながら俺達を指差した。

ところが、

パチパチパチ!!

「おぉ、

 こうしてみるとすごいねぇ」

「うわぁぁ…格好いい」

「うんうん」

待ちくたびれすっかりお客様モードに入っていたバニーエンジェル達はカゲロウ女に向かって拍手を送る。

「おぉーぃ、お前ら、なにだらけているんだよ」

そんなメンバーの様子を見ながら俺はそう呟くと、

『お前達ぃ!!

 お客様になっているんじゃなぁ、ない。

 戦いは…

 すでに始まっているのだよ』

と相変わらずの大ぶりアクションをしながら

カゲロウ女は中断をしていた戦いが始まっていることを指摘した。

「だってよ」

その言葉に俺はそう言うと、

「えぇ」

「もぅ、しょうがないなぁ」

広げていたお菓子を片付けながらバニーエンジェルたちは立ち上がり、

「じゃぁ始めようか…」

相変わらずだらけ切った声を合わせた。

『ふっ待たせたね、バニーエンジェル

 さぁ行くよ』

その一方でやる気満々のカゲロウ女は気合を入れ始めると、

「ねぇ、

 続きは明日にしない?

 今日はもぅ遅いよ」

とバニーブルーが話しかけた。

ところが、

『いまをなにさら、

 お前たちは私の手で倒される運命にあるのだよ、

 さぁ、

 苦しまずに引導を渡して上げよう』

右腕を高く掲げカゲロウ女はそう叫ぶと、その腕を輝かせる。

「くるっ」

それを見た俺は身構えたとき、

ウグッ!!

突然、カゲロウ女は苦しそうに胸を押さえると、

その場に膝を突いた。

「え?

 ちょちょっと」

急なことにバニーエンジェル達は慌てると、

「くっくそぉ…

 ざっ残念だが、時間切れだ…
 
 ぶっブンブン総帥…
 
 申し訳ございません!!!」

カゲロウ女はそう言い残して、

光の塊になると、

シュパァァァン!!

かき消すように消えてしまった。



「なに?」

「どうしたの?」

呆気ない展開に俺を含むバニーエンジェルたちは困惑をすると、

「あっそうだ、

 カゲロウって羽化してから3時間しか寿命がないんだって」

とバニーパープルが声を上げると、

「あっそっか!!!」

俺を含む全員が大きく頷き、

「じゃぁアイツはメイクで寿命を使い切ってしまったのか」

と呆れた視線で俺はカゲロウ女がいた空間を眺めた。

「でも、よっぽど前の姿にコンプレックスを持っていたんだねぇ…」

「うん、でも、

 最後は輝いていたね」

とバニーたちは囁きあう。

「強敵だったなぁ…」

そう言い残すと俺はくるりと背を向けた。

「あっレッドちゃん何処に行くの?」

公園から去り始めた俺にバニーブルーが声をかけると、

「帰るんだよ、

 遅くなったしなぁ…」
 
片手を上げながら俺はそう返事をすると、

タッタッタッ

何を思ったのかバニーイエローが俺の傍によると、

「ねぇ…」

と話しかけてきた。

「なっなんだよっ」

イエローの問いかけに俺は聞き返すと、

スンスン

とイエローは俺の胸元を匂い、

「あのさっ」

と言いかけた。

「だからなんだよ…」

意味深なイエローのその言葉に、

俺は言い返すと、

「うっううん…

 じゃぁまたねっ」

バニーイエローはそう言うと、

タタタタッ

っと公園へと戻っていった。

「?

 変な奴…」

そんなイエローの後ろ姿を見ながら俺はそう呟くと

「はぁ…

 ある意味、俺もアイツみたいなものかもしれないな…」

路地裏でバニーレッドから隼人へと姿を戻した俺は

夜空を見上げながらそう思っていた。

そのとき、

「あれ?

 隼人」

と俺を呼ぶ声が響いた。

「え?」

その声に振り返ると、

「よっ」

と言う声とともに制服姿の黄土圭子が俺のところに駆け寄ってきた。

「圭子…

 こんな時間に何しているんだ?」

圭子の登場に俺は驚くと、

「うん、ちょっとね」

圭子は答えをはぐらかせながら俺の腕にしがみついた。

そして、クンクンと俺の胸元を嗅ぐと、

「なっなんだよっ

 気持ち悪いなぁ」

と俺は文句を言う、

しかし、

「良いじゃないの」

圭子は俺の文句に怒ることなく体を寄せ一緒に歩き始めた。

「変だぞ、お前…」

「ふふっ

 何でもないわ」

「え?」



おわり