風祭文庫・ヒーロー変身の館






「バニーエンジェル」
−バニーへの変身−



作・風祭玲


Vol.283





「はぁ…俺がバニーエンジェルだっただなんて…」

コト…

机の上に置いた真っ赤なチョーカーを前にして俺はため息をついていた。

俺の名前は赤沢隼人。

月華高校・空手部主将も務める高校2年の立派な男子高校生だ。

しかし、その”立派な男子高校生”という俺の基本原則が

現在大きくぐらついてしまっているのだ。

「じょーだんじゃないよぉ」

どよ〜ん、

額に縦縞を幾つも並べながら、

俺はほんの1時間前に遭遇した事件のことを思い出していた。



「バニーエンジェル?

 なんだそれは?」

昼休み、その言葉に俺は思わず聞き返すと、

「何だ赤沢、知らないのかよ、

 いま、巷で話題になっている謎の美少女戦隊のことだよ」

と呆れながら友人の八王寺が俺に説明をする。

「悪いな、TVの戦隊物には興味がないんでね」

しかし、俺はそんな赤沢の説明に面倒くさそうにそう答えると

手にしている雑誌に視線を落とした。

すると、

「ったく、判ってないな、

 いいか、これは現実…本当のことなんだよ、

 ほらっ、最近やたら貴金属店が襲われる事件がおきているだろう」

なおも食い下がる八王寺にそう指摘されて

「あぁ…そういえば…」

俺は最近よくTVや新聞などで目にする貴金属店の強盗事件を思い出した。

そして、

「で、それがどう関係あるんだ?」

と視線を八王寺に向けながらそう尋ねると、

ズィっ

待ってましたとばかりに八王寺が俺に迫ってくるなり、

「実はな、

 これら連続している強盗事件の裏にはある悪の秘密結社があって、

 その指示で事件を起きているんだってさ、

 んで、その秘密結社の野望を打ち砕くために、

 バニーエンジェルと名乗る4名ほどのバニーガール姿の女の子達が

 日々戦っているんだってよ」

と説明する八王寺の目はマジだった。

けど、その説明を聞いた途端、

ガシッ!!

っと俺は八王寺の両肩を固く握り締め、

「八王寺…お前が特撮オタだと言うことはよぉくわかった。

 だがな…」

と言いかけたところで、

すぅぅぅ…

っと肺に大量の空気を送り込むと、

「お前の下らん妄想に俺を巻き込むなぁぁぁ!!!」

まるで火山が爆発するかのように思いっきり怒鳴り声を上げた。

シーン…

響き渡った俺の怒鳴り声に教室はまるで波を打ったように静まり返る。

すると、

「隼人ぉ…

 あんまり大声を出さないでよ」

耳をふさぎながら幼馴染の黄土圭子が俺に文句を言ってきた。

「うるせー、

 八王寺の奴があまりにもばかばかしいことを真面目に言うからだ」

ドッ

俺は自分の椅子に深く腰掛けてそう言い返すと、

「でも…、

 そう頭ごなしに否定をしなくても良いんじゃない?

 あたしも、バニーエンジェルの話は聞いたことはあるし…」

「なんだ、圭子…お前…八王寺の肩を持つのか?」

八王寺を擁護するような圭子の言葉にカチンと来た俺はそう言い返すと、

「肩を持つとか持たないとか言うんじゃなくて、

 まずは話を聞いてみることが大事だとあたしは思うんだけど…」

「だったら圭子、お前が八王寺のホラ話を聞いてやれよ、

 まったく、お前は俺には文句ばっかり言うな」

「別に文句ばっかり言ってないよ」

「言っているじゃないかよ」

「言ってない」

「言った」

「言ってないって言っているでしょう」

徐々に圭子の表情に怒りがこみ上げてくるが、

しかし、俺も負けてはいられない。

「あぁ、判った判った、

 もぅ付き合いきれないわ」

そう言い残して俺は席を立つと、

「あっちょっと待ちなさい!!」

圭子は怒鳴りながら俺の後を追ってきたが、

しかし、俺は圭子を無視してそのまま廊下に出ると、

ピシャリ

と教室のドアを閉める。

そして、

「まったくぅ…

 こんなホラ話、誰が信じるかっ」

と捨て台詞を残すとそのまま立ち去っていった。



…そう、その時の俺はバニーエンジェルのことはまったく信じていなかった。

 しかし、後になって現実のものとして俺に迫ってくるとは…



「ふわぁぁぁぁ〜っ…

 あん?

 もぅ11時か…

 さて、寝るか」

その日の夜…

俺は自宅の部屋で時計を眺めながら大あくびしていると、

カチャッ

と言う音共にウチの隣に建っている圭子の家の門扉が開くと、

スッ

圭子が周囲を伺いながら姿を現した。

そして、慎重に門を閉めたと思った途端、

ダッ!!

と圭子は夜の街の中へと駆け出して行ってしまった。

「あん?

 またか…

 それにしても、こんな夜更けにどこに行くんだアイツ…?」

闇に消えていく圭子の後姿を俺は部屋の中から眺めながらそう呟くと、

ふと、

「そういえばアイツ…

 ここんところ、よく夜中に外出をするよなぁ…」

とここ最近の圭子の行動を思い出すなり、

「あっ」

俺は彼女の行動を説明できるある答えを思いつくと、

ニヤッ

と笑みを浮かべた。

そして、

「なぁるほど…

 そういうことか、

 んじゃっ、ちょっと確かめに行きますか」

と呟くとスグに俺は圭子の後を追った。

しかし…

「あれぇ、どこに行ったんだ?

 圭子の奴は…」

この程度の時間差なら楽勝に追いかけられると思っていたのだが、

しかし、圭子の姿を見つけるコトが出来ず、

俺は誰も居ない夜道を右往左往していた。

「っかしぃなぁ…(確かめてやろーと思ったのに)」

頭を掻きつつ、そう呟きながら歩いていると、



ガシャン!!

「キャァァァァァァ!!」



何かが割れる音ともに、人の悲鳴が響き渡った。

「!!」

ダッ

その音を聞いた途端、俺は反射的にそこへと向かっていった。

そして、クルマの流れが途切れた表通りに出ると、

ちょうど正面にある貴金属店のシャッターがかすかに開き、

その周囲には黒尽くめの奇妙な姿をした数人の人影が周囲をうかがう様に蠢いていた。

「連続強盗犯!!」

連中のその様子から俺は咄嗟にそう判断をすると、

一気にに車道を突っ切り、

「お前ら、なにをやってんだ!!」

と声を張り上げた。

すると、

『イーッ』

と言う奇声とともに、

ズザザザザザ!!

たちまち、十数人の人影が俺の周りを取り囲む。

「なんだ?、こいつらは…」

スッ

俺は空手の構えをしながら自分を取り囲む連中の素顔を見ようとすると、

「はぁ?」

思わずわが目を疑った。

そう、俺の周りを取り囲んでいる連中の格好は

全身を黒のタイツで包んだ某ライダー物に出てくる戦闘員そっくりの出で立ちだった。

『イーッ』

タイツ姿の戦闘員達は再びそういう奇声を発すると次々と俺に襲い掛かってきた。

「うわぁぁぁ、何だこいつらは!!」

ガシッ

ゲシッ

俺は襲い掛かってくる戦闘員を俺は次々と空手技で倒すが、

しかし、倒したはずの相手はスグに起き上がってくるとまた襲い掛かってくる。

「くっそう、どーなってんだ!!」

次第に息が上がって来るのを感じながら俺は叫ぶと、

『ほほほほほ、

 無駄よ、

 戦闘員達は何度倒してもスグに復活するのよ』

と言う声とともに

スゥ…

闇の中から浮かび上がるように奇妙な姿をした人物が出てきた。

「げっ、なんだよぉ…」

そいつ姿を見た俺は思わず泣きたくなった。

『ほほほ…』

俺の前に姿を現したそいつの格好は大きな蝶の羽を背中に背負い、

顔には昆虫を思わせるお面と、

そして筋肉質の身体を見せ付けるような薄い素材で出来た衣装を身に着けていた。

『ふふふ、

 なかなかやるのね、

 でも、あなたのその素質…

 我らが首領・ブンブン総帥に捧げるべきだとあたしは思うわ。

 さぁいらっしゃい…

 じっくりと改造してあ・げ・る』

と蝶男はオカマ言葉で俺に向かってそう言うと、

ブワサブワサ!!

と背中の蝶の羽を羽ばたき始めた。

すると、

ブワッ

羽から吹き出した燐粉が瞬く間に俺の身体を包み込んでしまった。

「うわっ、ペッペッ!!

 なっ…

 かっ体が…」

鼻から燐粉を吸い込んだ途端、俺の体が自由を失ってしまうと、

『ふふふ…どう?

 あたしの燐粉のお味は…

 さぁて、まずはあなたのその魂から頂きましょうか』

蝶男は俺に向かってそう言うと、

カパッ!!

つい今しがたまでお面だと思っていた口を上下に開け、

シュルルル

その中より細長い管がゆっくりと伸ばしながら俺に近づいてきた。

「うそ…

 それ、お面じゃねぇのかよ…」

俺はその時になって初めてとんでもないことに首を突っ込んでしまったことを後悔した。

「くそっ」

『ふふふ』

近づいてくる管に俺は必死になって自由が利かない身体を何とか動かそうとしたが、

もはや指一本すら動かすことは出来なかった。

すると、そのとき

『大丈夫ですよ…

 さぁ目を覚ましなさい…レッド…』

と言う女性の声が俺の耳に響き渡った途端。

パァァァ!!!

閃光が光ると、

パァァン!!

俺の目の前に伸びていた蝶男の管が弾かれた。

『うげぇぇぇぇl!!』

そんな悲鳴を上げて蝶男はひるむと、

『ぬわにぃ!!

 この攻撃っ

 さては貴様っ

 バニーエンジェルかっ!!』

蝶男は俺を指さしながら声を上げ、

シュタッ!!

と間合いを取った。

「ばにーえんじぇるぅ?」

蝶男の言葉に思わず俺は聞き返すと、

「そこまでよ、

 ゴーストバグの会員怪人・蝶男!!」

という複数の女の子の叫び声が上がると、

シュタシュタシュタ!!

青・黄・緑・紫色のバニースールに身を包み、

顔に仮面をつけた4人のバニーガール達が蝶男の後ろ側に姿を現すと、

「バニーエンジェル、ただいま参上!!」

と声を揃えて叫んだ。

「えぇ!?

 バニーエンジェルって…

 ほっ本当に居たのか…」

俺は唖然としながら4人のバニーガール達を眺めていると、

『ほほほほ…

 現れたわねぇ…ウサギ娘共が!!

 者共っ、やっておしまい!!』

バニーエンジェルを指差しながら蝶男が声をあげると、

『イーッ』

たちまち俺を襲っていた全身タイツの戦闘員たちが

一斉にバニーエンジェルに襲い掛かった。

「あぶないっ」

その様子に一瞬、俺はそう感じたが、

しかし、

ダッ

バニーエンジェル達は軽々と四散すると、

「であっ」

「うらぁ」

かけ声勇ましく次々と戦闘員達を倒し始めた。

「すっげー」

しばしの間、俺は彼女たちの戦い方に見入っていると、

次第に劣勢に立たされていることを感じ取った蝶男は、

『えぇぃ、なにをしているの、

 どきなさいっ

 あたしがやるわ!!

 ウサギ娘を倒せば2階級特進なのよ!』

と叫ぶびながら、バニーエンジェル達の前に立ちはだかると、

『…ほほほ…

 ご苦労ね…バニーエンジェル。

 あそうそう、言っておきますが、

 ここにも、ゴールドクリスタルはありませんでしたわ』

と得意気な口調でバニーエンジェル達にそう告げた。

「なに?」

「そんな…」

蝶男からその話を聞いたバニーエンジェル達の間に動揺が広がると

『ふふ…

 かかったわねっ

 これでも喰らいなさい!!』

その隙を突いて蝶男はそう叫ぶと、

ブワサブワサ

っと羽を羽ばたき始めだした。

「なにっ」

「しまったっ」

「くっ」

たちまちバニーエンジェル達に燐粉が襲い掛かると

その毒気に次々とあてられ倒れていく、

「あっ」

その様子に俺は思わず声を出すと、

『ねぇ、そこのあなた…』

と言う声が後ろから響いた。

「誰?」

何とか動く首を廻して振り返ると、

モグモグ

俺の後ろに盛んに口を動かす黒ウサギが一匹、じっと俺を見つめていた。

「なんだ、ウサギか…」

平和そうなウサギの姿を見た俺は一瞬ホッとしながらも、

「でも、なんでこんな所にウサギが…

 それにさっき声をかけたのは…誰?」

と疑問を持つと、

『ねぇあなた…バニーエンジェルの魂を持つ者ね』

その黒ウサギが俺に向かって話しかけてきた。

「うっうっうっ、ウサギが喋った!!」

『ダメよ、騒いじゃぁ

 あいつらに気づかれるでしょう?』

驚く俺を黒ウサギはすかさず窘めると、

ぴょんと空中に飛び上がると、

クルリと一回転した。

すると、

ポト!!

真っ赤なチョーカーが俺の手の上に姿を現すとその上に落ちてきた。

「なんですか?

 これは…」

チョーカーを眺めながら俺はそう呟くと、

『あたしの名はラビ、

 詳しい説明は後でするから、

 大急ぎでそれを首元に当てて、

 そして、

 右手を上に掲げながら、

 チェーンジ・バニー!!

 って叫んで!』

と黒ウサギ・ラビは叫ぶと、俺にそれを強制をした。

「はぁ?」

ラビの言葉に俺は思わず聞き返すと、

『とにかく急いで!!

 みんなが危ないんだから!!』

ラビはそんな俺を急かすと、

「あっあぁ…」

俺は言われるままチョーカーを首に当て、

そして、

「チェーンジ・バニー!!」

と右腕を掲げながらそう叫んだ。

すると、

シュパァァァァァァ!!

たちまちチョーカーから炎が噴出すと、

見る見る俺の身体を包んでいく、

「うわぁぁぁ、なんだこれぇ」

予想外の事態に俺は驚くが、

しかし、さらに驚く事態が俺を待っていた。

ボワッ!!

炎が俺が着ている服を焼き尽くすと、

代わりに真っ赤な網タイツが俺の脚を覆い、

光沢を放つバニースーツが俺の胴体を包み込んでいく。

また、それに併せるように空手で鍛えた俺の体から筋肉の陰影が消えると、

俺の手足は細くなり、俺の身体は次第に女のような柔らかい曲線美を描きはじめた。

「うそっ」

その様子を俺は唖然としてみていると、

プルン!!

胸にたわわに揺れる膨らみが姿を現すとバニースーツを下から押し上げ始めた。

「ひぃぃぃ!!」

その光景に俺は思わず声を上げるが、

スッ

そんな俺の唇に真っ赤なルージュが引かれ、

俺の声も見る見る女のようなトーンの高い声へと変わっていった。

その一方で、

ピンっ!!

腰まで長くのびた髪の上に2本の耳が立つと、

顔には真っ赤な仮面と、

最後に変身を締めくくるかのように

カッ!!

足先にハイヒールが姿を現した。

シュパァァァ!!

俺の変身が終わり、包んでいた炎は飛び散ると、

すっかりバニーガールと化してしまった俺がそこに立ち尽くしていた。

「かっ体が動く…」

自由に動くことが出来るようになった身体に俺は驚いていると、

『変身の際に毒は中和されたわっ

 さっ、バニーレッド、

 みんなを助けるのよっ』

とラビが声を上げた。

「よしっ

 さっきの借りもあるし、
 
 あのふざけた野郎をぶっ飛ばしてやるっ」

キッ

俺は蝶男を睨みつけながらそう言うと、

ズカズカと蝶男の方へと向かっていった。

『なっ…

 ちっ!!

 5人目のバニーエンジェルか…』

俺に気づいた蝶男は振り返りながらそう言うと、

『おーほほほほほほ!!

 バニーエンジェルが何人現れようと無駄よ!!

 お前もこれを喰らいなさい!!』

と叫びながらバサバサと羽を羽ばたき始めた。

「同じ手をそう何度も喰らいますか!!」

ピョンッ

ブワッ!!

襲ってくる燐粉を俺はウサギのように跳躍しながら避けると、

『おのれ!、ちょこまかと』

ブワサブワサ

蝶男は執拗に攻撃を仕掛けてくる。

「くっそう、何かあいつの動きを止める方法無いのか」

なかなか止まない鱗粉攻撃に俺はそう呟くと、

『武器を使うのよっ、バニーレッド!!

 あなたにはレッドウィップという武器があるわっ

 レッドウィップ!!って叫べば良いのよっ』

というラビの声が響き渡った。

「武器っ?

 レッドウィップ?」

俺は思わずそう言うと、

ピシッ!!

俺の手首から伸びるように真っ赤な鞭が飛び出すと、

燐粉を撒き続ける蝶男目掛けて攻撃した。

『ギャァァァ!!!』

蝶男の悲鳴があがると、

もわっ

一瞬、燐粉が多く飛び散った後、次第に薄れはじめる。

「よしっ」

手応えを感じた俺は自信をつけると、

「うりゃぁ!!」

と叫び声を挙げながら連続で攻撃を始めた。

ヒュン!!

ピッィ!!

『ギャッ!!』

ピシッ!!

『グェッ!!』

ピシッ!!

俺の鞭攻撃を受けて次々とタイツ姿の戦闘員達が姿を消していくと、

攻撃の矛先を再び蝶男へと向けた。

ピシッ!!

ピシッ!!

『うぎゃぁぁぁぁぁ』

一度受けた鞭攻撃で戦闘能力を奪われていた蝶男は

再度、俺の鞭を2・3発まともに喰らうと

その場にガックリと蹲ってしまった。

『とどめはバニーブルーに任せて!!』

ラビの声が響くと、

俺はゆっくりと立ち上がる青いバニースーツの少女に向かって、

「バニーブルー、いまよっ」

と声を上げた。

すると、

「ありがとう、バニーレッド!!

 いくわよぉ蝶男!!

 覚悟しなさい!!

 バニー・フラッシュ!!」

とバニーブルーが必殺技の掛け声を上げた途端、

シュパァァァァン!!

彼女の体から光のウサギが飛び出すと、

『ブンブン総帥っ

 申し訳ありませーん!!』

と叫び声を上げる蝶男を一気に蹴散らしてしまった。



「終わったのか?」

蝶男が残した影を眺めながら俺がそう呟いていると、

スタッ

俺の目の前に4人のバニーエンジェルが勢ぞろいするなり、

「初めまして…でもないか」

「やっと会えましたね」

「でもまだすべての記憶を思い出していないみたいだけど」

「力をあわせて、クィーンバニーを探しましょうね」

と口々に言いながら俺に手を差し伸べた。

「え?、いやっあのぅ」

俺は目の前に迫るバニーエンジェル達になんて答えたら良いのか判らないでいると、

「あぁ…そんなに緊張しなくても良いから…」

とバニーブルーが俺に優しく話しかけてきた。

「そうよ、まぁなんと言いますか、

 あたし達友達みたいなものだからね」

「うん、そうそう…

 あいつらが出てこないときは、みんなで集まってお茶なんかしているしね」

「うん…、

 別にバニーエンジェルなんてこと意識しなくてもいいのよ」

などと俺の緊張を解こうとしているように気軽に話しかけて来た。

すると、

「ねぇ、バニーレッドちゃんってどこの学校に通っているの?」

とバニーブルーが俺に尋ねてきた。

「え?、学校ですか?」

その言葉に俺は思わず聞き返すと、

「そー、バニーレッドもあたし達と同じ高校生でしょう?」

とバニーパープルが話しかけてくる。

「はぁまぁ…月華高だけど…」

その言葉につられるようにして俺は思わず通っている学校の名前を出してしまうと、

「えぇ!!、そうなの?

 あたしと同じ学校じゃない」

とバニーイエローが声を上げた。

「へぇ…バニーイエローちゃんと同じ学校なのか」

「それなら、話が早いわね」

「うん、作戦会議なんかもしやすいね、

 ねぇねぇ、どこのクラスなの?」

「いやっ、あのぅ…」

俺はこれ以上自分の情報が漏れていくコトにヤバさを感じると、

「あっ明日早いので…では」

と言い残してダッシュで逃げ出してしまった。



「まずい…絶対に俺が男だなんて言えないし…

 くっそう…何でこうなったんだ!!」

変身を解くと男の身体に戻ることに気づいて一度はホッとしたものの、

しかし、美少女戦隊の一員であることには変わらないことに俺はただ頭を抱えていた。


「あっそういえば…

 圭子のことはどーなったんだ(すっかり忘れていた)」



おわり